3時  就きたい職業について、尋ねたり答えたりする表現に慣れ親しむ

@ステレオゲーム( p.95)

Aチェーンゲーム

5-6人の班を作り隣の児童に質問し、答える児童は自分の答えとともにその前に出た職業名を加えて答える。ほかの児童が挙げた職業名を覚えておかなければならないという負荷を与えることで児童が集中して取り組む。

慣れてきたら,カードなしで聞いてみる。聞かれた児童が答えを言う前にみんなでこの友達はいったい何になりたいのだろうと予想を立てる。そのあと全員で質問する, といった本当の情報にこだわった班活動へと発展させたい。

B友だちにインタビュー(友達のなりたい職業をインタビューする)

クラスの友だちになりたい職業をインタビューして回る。その時にはしっかりとあいさつをして質問をするよう指導する。

 

4時  世界には様々な夢を持つ同世代の子どもがいることに気付き、相手意識をもって自分の夢を紹介しようとする

@チャンツ

A発表活動

班ごとに分かれ、児童が各自予め作成したポスターをもとにクイズ形式で「なりたい夢」の紹介を行う。

 

13.3まとめ

定型文を何度も繰り返し発話するといった活動をゲームにすることで楽しく取り組めるのは小学生の大きな特性。

模倣や反復練習によって築かれた基礎がやがて「自分の思いや気持ち伝えるためのツール」として英語を使おうとする姿勢を育てることに繋がっていくのだろう。

一番重要なのは、十分な練習を経て初めて何かを話させるのではなく、日々の授業の中で思わず「聞きたい」「話したい」と思わせる場面をたくさん作ること。そこで生まれる意味をやり取りするインタラクション(先生と児童、あるいは児童同士)がスピーキング力につながるからである。

そういった機会をふんだんに与えるために簡単に取り入れることができる3つの方法を提案したい。

 

(1)スモールトークで始める授業

児童が共通して知っていると思われるトピックを担任が取り上げ、

「今日のトピック」として英語で話をする。

それに対して常に質問を児童に投げながらインタラクションを行う.

できれば,画像を準備するとさらに興味を深めることができる。

(2) TTでインタラクションする授業

小学校の英語の授業では、T1となる担任(あるいは日本人専科教員)に加えて、ネイティブ(または英語の堪能な日本人教師)T2で入ってティームティーチング(TT)を行う場面が多くみられる。その場合、出来るだけその二人のやり取りを生徒に聞かせて, さらにはその会話に児童を巻き込む。

(3)絵本の読み聞かせを取り入れた授業

英語絵本の読み聞かせは小学校で多くみられる。

絵本の読み聞かせを通して、児童は英語の繰り返しを楽しみながら日本語とは異なる音声に慣れ親しんだり、文化的な違いや音と文字の結びつきに自然に気付づくことができる。

さらに、教師が読み聞かせの談話手法を工夫することで児童のアウトプットを促す貴重なスピーキング教材となる。

 

背景情報8  音韻ループを鍛える学習法

1・ リピーティング

リピーティングは、一定の音声英語(通常は2秒以内が目安)を聞いてもらい、その後十介なポーズをあけ,その間に学習者に聴取した音声の復唱を求める学習タスクである。

英語の音声知覚を伸ばすだけでなく,音声の一時的な保持能力を高める学習法である。

このリピーティングは、シャドーイングなどとはやや異なる効果が期待できる。

2. Read, Memorize, and SayRead, Memorize, and write

リピーティングを,文字英語を素材にして行うのが, リードアンドルックアップ(read and look up)である。もともと、音読から再生、暗誦への橋渡しになる活動で, west(1968),大教室かつ大人数など困難な状況の中にあっても効果がある方法として提唱したタスクである。

句や節のチャンク単位で区切られた英文を、チャンク単位で黙読して、一時的に記憶し、その後記憶した英文を声に出して言う練習である。

転写(copying or transcription):これまで英作文に至る学習法として捉えられてきた。しかし、元の英文を見ながら書き写すのではなく、紙を裏返す、あるいはページをめくるなどが必要な状況をつくり、学習者が一旦一時的に記憶しなければならないようにすることで、短期記憶(音韻ループ)を鍛える学習法になる。

 

3.  Read. Memorize, and Sayの指導上の留意点

(1)チャンクの拡大

できるだけ一時的に記憶するチャンクのサイズを拡大させ矼夫が必要。一気に短期的に記憶できる容量は、通常、時間にして2秒がリミットである。

英文は教師の側で、予め句単位のチャンクに区切っておくと,それが生徒の目安になるので、チャンク境界をめぐって混乱が生じない。

(2)正答率の測定

どれだけ正確に発音できたかを測定する。

どれだけのサイズのチャンクを、教師対生徒(学生)だけでなく、ペアを組んで実施することでることで、学習者自身で設定したチャンクのサイズと、正答率の両方を指標にしたスコア(各チャンクの語数の平均値×正しく発音できたチャンクの割合など)を算出する。

 

4.  Read. Memorize, and writeの指導上の留意点

これは、できるだけたくさん記憶して書かせることがポイントである。

(1)転写スパンの拡大

Read, Memorize, and Sayにおけるチャンクのサイズとも関連するが,一時的に記憶して書き写すスパンをできるだけ多くとって転写するよう指導する。

サイズが拡大すると,記憶転写のスピードが格段に向上する。

(2)時間の測定

(1)のトレーニングとして,英文パッセージ全体を正しく転写するのに要した時間を測定し,その時間を競うようなゲーム(コンテスト)を行う。

ただし、正確に転写することにも同時に意識を向けさせるように指導する。

(3)転写タスク終了後、どれだけ英文パッセージが自然に覚えているか、うまく再生できるかを、キュー再生(cued recall)や、再認テスト(文を示し同一の文が出ていたかどうか答えさせる)を与え、同じ英文をシャドーイング、音読、リピーティング等をしたときと比較してもよい。