10.4.2 ディスコースレベルのインフォメーションギャップ活動
■文レベルでのやりとり
■複数の文を使ってやりとり
@トピックを中心としたやりとり
A場面を中心としたやりとり
B機能を中心としたやりとり
トピックを中心としたやりとりをする活動
■身近な話題を取り上げ、よく使われる表現を使ってやりとりを練習する。
■好きなテレビ番組に関する会話
・一つの話題について複数の事柄を尋ねていく点に特徴がある。
・さらにこの話題を発展させて自分で問いを考えさせることもできる。
・この他,話題としては,
pastime, favorite movie, favorite sports, club activities, favorite musicなどについても同じような活動が応用できる。
・このような練習を積むことで,初めて会った人とのちょっとした会話(small talk)を教室の中で練習することができる。
場面を中心としたやりとりをする活動
■場面を中心としたインフォメーションギャップ活動は、日常的な場面でよくあるやりとりや、よく使われる表現を練習するために行う。
■レストランでの注文の場面
・これは、レストランでよく行われる英語でのやりとりを、生徒が店の人と客になりきって行うインフォメーションギャップ活動である
・この他にも身近なコミュニケーション場面として、道案内、買い物、電話での会話、病院での診察・ホテルでの受付なども同じようにインフォメーションギャップ活動を考えることができる。
・特定の場面でよく行われる会話を想定して、その場面で使われる定型表現をロールプレイの形で練習するのに役立つ。
機能を中心としたやりとりをする活動
■機能を中心としたインフォメーションギャップ活動とは,ある目的を達成するためによく使われる表現を練習するために行う活動。
・この機能とは,ことばの働きをさし,例えば,「礼を言う」「苦情を言う」「褒める」「謝る」「約束する」「断る」「依頼する」「招待する」などがある。
・このような目的を達成するために、どのような英語表現をどのように使えばよいか疑似的に体験させることができる。
・友達を映画に誘う
・この活動では、放課後のスケジュールを確認し合った上で,映画に誘って待ち合わせの時間と場所を約束することが目的となっている。
・使用場面や会話者が決まったロールプレイの形で、生徒自身が情報を選択したり作り出したりして情報交換させながら、あるコミュニケーションの目的を達成させるというこのパターンは、他のさまざまな機能にも応用させることが可能であり、コミュニケーションの擬似体験として汎用性が高い。
10.5 インフォメーションギャップ活動における留意点
■発話が非文法的なものになったり、単語だけでやりとりが行われたりする
・活動前の準備が十分でないこと
・活動での重要な表現や語が十分に練習されていたければ、生徒は自信をもって活動を行うことはむずかしい。
・いきなり活動を始めるのではなく、教師がどのようにやるかモデルを示したり,活動で生徒が使う表現や語句をしっかりと練習したりなど、ステップを踏んで活動に取り組ませたい。
・活動に慣れてくると、英語によるやりとりではなく、表や絵を見せ合ったりジェスチャーや日本語でやりとりをしたりしてしまうことも考えられる。
・なぜその活動を行うのか、活動の目的を説明し、お互いに持っている表や絵を決して見せ合わないこと、活動中は必ず英語で行い日本語は使わないことを徹底する必要がある。
・教師は活動の目的とルールを丁寧に説明する必要がある。
■活動内容が固定化され自由度が少ないため、発展性がなくなり、活動が単調になってしまう。
・やりっぱなしで終わることがないよう、活動後には生徒にクラスの前で発表させたり、教師からフィードバックを返したりして、次の活動につながるよう評価することも大切である。
・口頭でやりとりしたことの一部をノートに書かせたり、ワークブックなどで文法項目や表現を復習してみたりすることで文法や表現の定着を図ることもできる。
・インフォメーションギャップ活動に生徒が積極的に取り組めないクラス
・友達とペアを組みたがらないクラスでは英語の時間限定のペアを作るなど、ペアの組ませ方の工夫も必要である。
・また、日頃からの授業中の教師と生徒とのやりとりそのものもインフォメーションギャップ活動の応用として捉えることも大切である。
・教師は生徒に対し,答えがすでにわかっているような展示発問(display questions: How is the weather today?") のみを繰り返しているのでは、やりとりしようという積極性は育ちにくい。
・生徒が何を答えるか予想できない参照発問(referential
questions: "Where did you go yesterday ? )をうまく活用する。
背景情報6
タスクに基づくスピーキング指導
タスクとは
タスクは、コミュニケーション能力を育成するという目的のもと、自然な言語使用の機会を生徒に与えるために行われる言語活動であり、スピーキング指導の在り方を考える重要なキーワードのひとつ。
タスクの定義
Ellis (2003)は次のようにタスクの条件を示している。
(1)意味に焦点がある
(2)やりとりする情報にギャップがある
(3)課題を終えるために学習者がもつ知識を活用する
(4)言語使用以外の明確な成果が求められる
タスクでは,やりとりする内容に情報の差があり,その差を埋めるために言語のやりとりが求められる。そのため生徒の意識は,文法などの言語形式ではなく、やりとりする意味内容に向けられる。また、複数の選択肢の中から最善の方法を1つだけ選ぶといったタスクの成果が必ず求められ、成果を達成するために学習者は自分の知識をフルに活用するという特徴がある。
3. タスクのタイプ
■どのような認知的作業に生徒を取り組ませるかによる分類
・理想の友達の条件をできるだけ挙げさせる「リストアップ」
・好きなスポーツ選手ベスト5を考えさせる「順序づけ」
・クラスで人気のある芸能人ベスト3を予想させた後に、実際のアンケート結果を聞かせる「照合」
・朝食はパンとごはんのどちらがよいかを考えさせる「比較」
・もっとも優れたストレス解消法を考えさせる「問題解決」
・もっともラッキーだった最近の出来事をグループで話させる「個人的経験の共有」
・13枚の写真を見せてストーリーを作らせる「プロジェクトや創造的課題」
■タスクの内在的な特性によってもタスクを分類
・話し相手と情報のやりとりを必ず行う双方向型(two-way)
・相手の説明を一方的に聞いて作業を行う一方向型(one-way)
・課題に対する答えが決まっているクローズ型(closed)
・複数の答えを出すことができるオープン型(open)
・一つの結論に収斂させる必要のある収斂型(convergent)
・一つの結論に至る必要のない忙散型(divergent)
■これらのタスク特性を理解した上で、タスクをペアで行うのかグループで行うのか、タスクの制限時間をどのくらい設けるのかなどを考え、もっとも効果的なタスクを考える。
4.
スピーキング指導におけるタスクの位置づけ
■「学んでから使う」アプローチ
・指導すべき項目が先に決められ、それらを一つずつ生徒に提示し、練習・表出させる指導スタイルであり、PPP (Presentation-Practice-Production) とも呼ばれる。
・語彙や用いる文法や表現をあらかじめ練習して活動させる
■「使いながら学ぶ」アプローチ
・実際のコミュニケーション体験をさせることで学習者独自のペースで言語を習得させようと試みる。
・タスクに基づく言語指導(task-based language
teaching)がその具体例。usingのための指導であると言うこともできる。
・したがって,スピーキング指導においてタスクを活用する指導は、スキル獲得(skill-getting)のための指導ではなく、スキル使用(skill-using)のための指導である。
スピーキング指導におけるタスクの役割
■授業でタスクを使うことにより、自然な言語使用の機会を作り出すことができる。
・タスクを活用することで、英語によるコミュニケーションを生徒がなんとかやり遂げる力を試すことができる。
■スピーキング指導においてタスクを活用すれば、実際のコミュニケーションを行う上で、どのような言語知識が欠如しているかを生徒に気づかせる機会を作りだせる。
■タスクにもとづくスピーキング活動で育成を目指す力とは、今持っている言語知識を総動員しながら、コミュニケーションの目的をなんとか達成させる力である。
【DP】タスクを課せられた生徒間での英語力の違いを埋めるためにどのような対策をすべきか。
→予習をしっかり行う。
→教師がモデルを示しておく。
→見て回って声掛けをする。