実践編B・C pp.141-162

 

?中学3年生の授業におけるスピーキング活動の実践と評価

・普段のコミュニケーション活動の積み重ねこそが生徒のスピーキング能力を伸ばしているのであり、特別に時間を設定したパフォーマンステストだけでなく、普段のコミュニケーション活動を適宜評価し、生徒たちにフィードバックする方法が確立できていれば彼らの力を一層伸ばすことができる。

○授業の概要と目標

中学3年生のクラスでアメリカの少年少女向け小説を使用し、単語導入の場面とまとめのコミュニケーション活動においてスピーキングの活動を取り入れた。そしてこれらの活動の中で、評価とフィードバックを行った。

○レッスンプラン(pp.141-142

話し合い活動ではすべての生徒に自分の意見を発表させるようにした。ペア活動は「誰とペアになってもしっかりと活動すること」の指導を徹底し、ローテーションを組んで様々な相手と活動させるようにした。

○ペア活動の実践と評価

3.1の授業案(2時間目)の例のような段階を踏んでペア活動を実践した。ペア活動の評価において評価規準はあらかじめ生徒に示し、その達成を目標にさせた。また、文法的な正確さより、意味が通じることを目標とさせた。

○評価結果と生徒へのフィードバック

対象3年生2クラス64名の評価結果は以下のようになった。

?     A評価となった生徒・・・49%

?     B評価となった生徒・・・46%

?     C評価となった生徒・・・5%

生徒へは下記の2点のフィードバックを与えた。

?     発表終了後、班隊形になりそれぞれの内容をお互いに共有させた

?     発表内容を書いた用紙を集め、良かった内容を紹介した。また間違いやすい文法項目などは説明を行った。

○考察

今回の活動は「例文に頼らず、工夫して自分の考えを表現すること」を目標として評価した。A評価を得た生徒は必ずしも英語成績上位の生徒ではなく、簡単な英語を使って自分の言いたいことをうまく表現できた生徒であった。

 

○話し合い活動の実践と評価

教師が決めたテーマに対して、生徒たちが指定された文法を使用して10分で30語以上を目標に作文をし、最終的にそれを発表する活動。

○評価結果と生徒へのフィードバック

(1)  A評価となった生徒・・・56%

(2)  B評価となった生徒・・・33%

(3)  C評価となった生徒・・・8%

活動中・活動後に生徒に下記の3点のフィードバックを与えた。

(1)  授業の中で、生徒の発表で表現が間違っているときはその場で指導する

(2)  生徒のスピーチの内容に対して英語で質問をする

(3)  原稿を集めて、ALTに添削してもらう

○考察

最終的に生徒には自分を表現する能力と共に英語で会話を広げていく技能を習得させたいため、生徒の発表に対して英語で質問をし、話題を広げていくようにつとめた。今回は教師からの質問だったが、将来的には生徒同士で英語を使ったやり取りをできるような方向を目指している。

 

●ディスカッションポイント

「最終目標である生徒同士で英語を使ったやりとりをさせるためにはどのような工夫が考えられるか?」

・発表の際に聞き手の生徒にも一人必ず1回は英語で質問をしなければならないなどの課題を与え、発表者以外の生徒も参加させる。

・聞き手の生徒が質問じゃなくても感想を英語で伝えるのでも良いのではないかという意見もでた。

・また、Aの評価を得た生徒のほとんどが簡単な英語を使ったものが多かったことから、評価基準に工夫を加えなければ生徒が新しい表現などを使おうとする意欲を育てることができないのではないかという問題も指摘された。

 

 

 

 

 

?インタビュー活動における生徒の形成的自己評価用ルーブリックの作成

○背景

これまで教科書の音読や暗唱を実践してきたが、自由会話になると覚えたはずの構文や単語をうまく活用できないことがわかった。つまり教科書で学習した英文が本当に意味を持つ言葉として生徒の中に取り込まれていないことが問題になっていた。英語で即興会話を続けるためには生徒の英語に対する自信と意欲を高めることが必要とされている。形成的自己評価を通じて段階的にスピーキング力を伸ばすためには、その提示や作成方法が非常に大切になってくる。

○インタビュー・プロジェクト

ターゲット表現を使用したパターン・プラクティスや、暗唱ロールプレイではなく、話題やおおよその流れは事前に共有するが、相手が何を、どんな順番で、どんな言い方でいうかはわからない状況で、即興でやりとりする能力の育成を目指すもの。教科書の登場人物になりきって行う「なりきりインタビュー」を実施した。

○目標

「相手の質問を聞き取って適切な答えを返す力/intervieweeとしての訓練がメイン(IP-1)」と「相手の発言を引き出す質問をしたり、相手の発言に対してコメントを付け加える力/interviewerとしての訓練がメイン(IP-2)」の育成。

○評価用ルーブリックの作成

IP-1 Interviewee

事前指導で使用したものでは、生徒が必要以上に厳しい自己評価を行ったため、改訂版では規準達成の判断基準を詳しく記述することによって軽減された。(p.156 3

IP-2 Interviewee

なにを話すときに関しても一本調子の話し方をする生徒たちの問題を解決するために、評価項目に「言語」の代わりに「感情」を入れたルーブリックを使用した。(p.158 4

IP-2 Interviewer

事前指導では質問練習、コメント練習の2段階に分けてルーブリックを作成した。ルーブリックは指導段階に応じて「適切な内容」(4点分)の項目のみを作り変え、他はinterviewee用ルーブリックと共通とした。(p.159 5, 6

IP-2では会話が続くということを重視し、最終的なルーブリックには「時間」という評価項目を設け、ペアで共通のポイントとした。また、コメント回数による採点基準は削除した。(pp.160-161 7, 8

○生徒の変容

最初に比べて、IP-2ではほとんどの生徒がインタビューを継続できるようになった。アンケートによると、多くの生徒がスピーキング力及び英語の総合力の伸びを実感しており、6割ほどが英語で話すことに対して自信が持てるようになったと述べていた。(p.161 9

 

●ディスカッションポイント

「なりきりインタビュー」を行ったことはあるか?
・実践したことがある人はいなかったが、一本調子になりがちであるという問題を解決するために感情を込める活動としてはとてもよいのではないかという意見が出た。

・ただ、思春期を迎えた男子生徒などは恥ずかしがってなかなか真面目に活動に取り組まないのではないかという心配も考えられた。