実践編13 ライティング+スピーキング+リスニング[中学]
中学校におけるディベート活動の実践と評価
1. はじめに
l 学力調査の結果から、思考力・判断力・表現力等には依然として問題があることが分かっている。
l 中央教育審議会答申では互いの考えを伝えあい、自らの考えや集団の考えを発展させるための活動例としてディベート形式の議論を挙げている。
l 中学生のうちにディベートの経験を積ませ、段階的に指導していく必要がある。
2. ディベート形式の議論を取り入れた指導
2.1 授業の概要と目標
l あるテーマについてディベート形式で議論することにより、視野を広げ、思考・判断力を伸ばす機会とする。
l 英語で議論することは容易ではないため、話し合いの時間を十分にとる、シナリオ・ディベートにするという工夫も必要。
2.2 レッスンプラン
時 |
学習目標 |
指導上の留意点 |
1 |
現在分詞の後置修飾を習得しよう |
・ふさわしい場面設定をしながら表現活動を行う |
2 |
過去分詞の後置修飾を習得しよう |
・ふさわしい場面設定をしながら表現活動を行う |
3 |
電子辞書の利用について肯定・否定それぞれの意見を理解しよう |
・肯定,否定どちらかの立場に立って意見を書く |
4 |
若者の優先席利用について肯定・否定それぞれの意見を理解しよう |
・肯定,否定どちらかの立場に立って意見を書く |
567 |
ディベートの準備をしよう |
・自分の気持ちと一致しなくても肯定否定どちらかの立場に立って主張する ・反駁に対処できないと思われるチームにはあらかじめ質問事項を示唆し、応答を準備させておく |
89 |
ディベート (4人1チーム) |
・原稿を読むのではなく、感情をこめて伝えるように助言する |
3. 評価
3.1 生徒による相互評価
l 生徒による相互評価は二回行う。
l 一回目:第7時に行う形成的評価。関心・意欲・態度、表現力、知識・理解の三つの観点について到達していれば○をつける
l 二回目:8,9時に教師による評価と同時に行う統括的評価。評価はABCの三段階。
3.2 教師による評価
l 5〜7時の準備の時と8,9時のディベートの時の二回行う。
l ディベート時の評価の際には上記の3つの観点に加え、理解の能力についての評価を加える。
3.3 生徒へのフィードバック
l 5〜7時の教師による評価は活動の中で生徒本人にアドバイスとして使用
l 第7時の生徒相互評価の結果をもとに発表に臨んでいる。
4. 結果と課題
l 生徒の能力から反駁、作戦をその場で行うことは困難であると判断し、予め質問を与え、応答を用意させた。
→相手の話を聞かなくなるのではないかという懸念があったが、内容確認の後、応答ができていた。
l 自力で英文を書くことは容易ではないが、チームの協力により目標を達成できた。
l このことにより、多くの生徒が達成感を味わうことができた。
l 自分の書いた英文を読み上げるだけの生徒も存在し、納得させる気持ちが薄かった。
→評価基準に「強弱をつけながら話す」という項目を追加
l 内容をよく理解せずにとりあえず友人や教師の助けを借りて上手に発表を行い、良い結果になった生徒がいた。
→何ができて何ができなかったのかわかるような評価の工夫が必要
◎ディスカッションポイント
・シナリオ・ディベートによるデメリットはどのようなものがあるのか
…やはり応用力を身に着けられないというのが最も大きい。
・評価の工夫についての具体案
…準備の時間に理解の能力についての評価を加える
…感情や、アクセントにかんする観点を加えるなどの案が出た。
実践編M リーディング+ライティング+スピーキング[高校]
英語Uの授業における技能統合的活動の実践と評価
1. はじめに
1.1 本実践までの経緯
l 言語活動の指導と評価の改善、特にCAN-DOリストの作成に取り組んでいる
l 教科書で学んだことだけでは不十分で、どれだけ自分のものとして使えるかが重要である、それを意識しながら指導をしている
1.2 本実践の目的
l 教科書で学んだ知識・技能を活用し自ら考え、適切な形で表現する統合的指導・評価
2. リーディングとライティング、スピーキングの技能統合的活動を取り入れた指導
2.1 実践の概要
l 教科書の本文読解後、学習内容に関連したトピックについて本やインターネットで調べたり、生徒自身がアイディアを出したりして書き、口頭で発表するなど英語でその成果を発表する実技テスト(パフォーマンステスト=PT)を行う
l 当初は単元毎であったが達成できず、最終的に年4回行った。
2.2 レッスンプラン
l 英語力は中〜低程度。単元全体ではリーディング13時間、ライティング3時間スピーキング1時間の計17時間
2.3 各活動の指導
2.3.1 リーディング活動
l @英文の内容把握 A音読 Bディクトグロスの三点に力を入れてパートごとに指導
※B 各パートの要約をCDで三回程度聞かせ、メモを取らせた後、聞き取った内容をもとに本文の内容を復元させるというタスク。難易度が高い。
2.3.2 ライティング活動
l 単元のトピックに関する内容(ロボット)でPTの準備
l グループを作り、授業内で2〜3時間の活動。終わらなければ授業外課題
2.3.3 スピーキング活動
l 3分間でPTを行う
l 発表は録画し、ほかの生徒には評価を行わせた。
3. リーディングとライティング、スピーキングの技能統合的活動の評価
3.1 各活動の評価方法と判定基準
3.1.1 リーディング活動の評価方法
l タスクごとの正答率や取り組み具合について自己またはペアでの評価を行わせた
l 各パート後にもABCの三段階で自己評価、感想を自由記述させた
l 生徒の自己評価は成績に含めなかった
3.1.2 ライティング活動の評価方法
l 各グループの発表原稿は一度添削し、事前に提示したルーブリックに基づいて5点3点1点の三段階で評価した
3.1.3 スピーキング活動の評価方法
l @イラストの出来映え A発音の流暢さ B発表態度 の三観点で評価
l ライティング活動の内容・創造性と合わせ、計20点満点で評価
l 教員・生徒による相互評価・発表者の自己評価の三種類
3.2 生徒へのフィードバック
l 発表後、各グループ、全体の良かった点を伝えた
l PTの評価割合は全体の20%(定期試験50% PT20% 小テスト15% 提出物15%)
4. 結果
4.1 得点の分布
l 準備の後すぐにPTを行ったクラスは教員と生徒の評価に差は少ない
l そうでないクラスは差が見られ、生徒評価が甘くなった
→クラスの雰囲気の問題である可能性もある。
4.2 生徒の反応と変容
l 最初は遠慮しているグループが多かったが、回を経るにつれ、改善された
l 成績に反映されるため、責任を感じて取り組む生徒が多かった
l 全体的にPTに対して好意的な意見が多かった
5. 今後の課題
l 評価の信頼性
→一名で評価をしていたため、互いの授業に参加するなどして評価者間信頼性を高める必要がある
l グループ評価の妥当性
→グループによって英語力に差が出ることがあったため、妥当性を高めるような構成を考えるべきである
l 生徒の相互評価と自己評価の扱い
→教員と生徒の評価のずれが少ない観点に関しては生徒に評価を任せるなど、生徒と教員の評価をうまく組み合わせるべき
l 発表のスタイル
→暗記しているものを発表しているに過ぎないため、キーワードのメモを見ながら発表させるなどの工夫が必要
◎ディスカッションポイント
・上記の改善策は適切か。より良い案はないか。
…キーワードというのは良い案である
…また、生徒と教師で評価者間信頼性を測る必要がある。
・特に、教師が互いの授業に参加することは現実的に可能なのか。
…ビデオを使用すれば、ほかのクラスと協力してできるのではないか。イラストのウエイトを下げてはどうかという提案があった。