実践編11
スピーキングとライティングを活用した中学1年生のリーディングテスト
細谷恭子
内容:中学一年生という初めて英語の学習に取り組む生徒への指導案の紹介
中学1年生にとって文字認識(アルファベット)は容易くない
1 技能統合型テスト(一学期中間)「簡単な自己紹介」
目標:@アルファベットの読み方を知る
Aアルファベットを使って単語を書く
B自分の名前などを正しく英語で書き、読む
C相手の質問に簡単な英語で答えることができる
単元:アルファベット→単語→文
狙い:自己紹介カード(p226)内容を英語で紹介できるようにする
事前指導
@自己紹介カードの書き方を説明する
Aカードを配布して、記入してもらう
Bカードを提出してもらい、教師がチェックする
C発音練習、机間巡視しながらALTとともに指導する
→テストへ
(自信がなければテスト中カードを見てもよい)
発音練習で生徒はカードの内容を覚えようと、読むのでリーディングの要素がある
テスト
p227参照
テストの答え方としてAとBの二種類を生徒に提示、Bで答えるほうが点数が高くなることを伝える
A=単語、B=文
評価
P228参照
評価項目
アイコンタクト、カードを見ない、A/Bのどちらをつかっているか、発話の正確性、声の大きさ
テスト実施後に評価は点数化→表現の能力として処理
自己紹介カード(関心意欲態度として処理)には絵を描かせるなどして、優れたものは掲示板に貼る
→学習意欲の向上へ
2 リーディングテスト(2学期) 「本文の音読」
目標:@正しい発音を意識しながら繰り返し練習する
A教科書の本文を正しい発音で流暢に音読できる
狙い:日常口語表現をリーディングテストで覚えてもらう
事前指導
音声指導+CDを使ったリスニング
一人一文ずつ順番に教科書を読ませる
→細かい音声指導を一人一人に
(音読が苦手な生徒のためにグループ、ペアでの学習の場も設ける)
テスト:生徒一人で全文を暗記し、リーディング。教師との対面方式で行う
評価
P230参照
教師二人で分担して行う
評価項目:発音の正確さ、流暢さ、暗記の程度、読みの可否
→教師は生徒にフィードバックをおこなう
3 スピーキング、ライティング、リーディングの統合型テスト(2学期)「発表」
目標:@自分の言いたいことをどう表現するか、尋ねたり調べたりすることができる
Aよいパフォーマンスをするために、協力してアイディアを出し合い、練習をし、発表することができる
狙い:実践的な英語を自ら求め、表現する能力を手に入れる
事前指導
テストでは黒板の前で、ペアでのパフォーマンス(寸劇)を行う
@基本的事項の説明、本文のリーディング練習)
Aオリジナルスクリプトの配布、スクリプトシート(p232参照)の配布、ペア作成
Cオリジナルスクリプトの作成
Dペアでのリーディング、パフォーマンス練習
身近な内容で楽しいスクリプトを作ることを目指させる
ペアでの協力の重要性を教える
スクリプト作成のために和英辞書を活用することを教える
スクリプトの完成に際して、どんな演出をすれば効果的か考えさせる(ALTに質問させてアイディアを引き出させるのもあり)
評価
P232参照
教師二人で行う
生徒用の評価欄も設け、自己評価、相互評価もおこなう
評価項目:暗記、発音、独創性、躍動感
スクリプトもライティングの技能として評価する
相互評価の中で特に優れていた生徒を3人選ばせる、最も多かった生徒を表彰
ディスカッションポイント
@中学1年生(英語学習の初体験の生徒)を指導するうえで注意する点は何か
A音読や人前に立つのが苦手な生徒の負担を軽減させる方法
具体案
@・発音など、これからの英語活動に直接結びつきそうな活動には特に注意を払う
・英語に苦手意識を持たせない
・自己紹介カードなどで、単なる暗記活動に陥ってしまわないようにする
A・中学1年生は特に、英語の熟達度に差があることが多いため、熟達度の低い生徒は高い生徒と組ませるなど熟達度の低い生徒の負担を軽減させる
・前に立たせずに先生と一対一でテストをおこなう
実践編12
インプットからアウトプットをつなぐリスニング指導の実践と評価
大嶋秀樹
ことばの能力
@ことばそのものについての知識、能力
Aことばを使用する能力
→2つの能力をバランスよく伸ばす必要がある
授業では、具体的に英語でどんなコミュニケーションができるようになったか、いわゆるCAN-DOの成果保証が必要になる
本章の内容=聞くというインプットからアウトプットへつなげる活動の実践と紹介
1 PIE taskを活用したリスニングの指導
T PIE task=Perspective Input Enhancement(インプットへの知覚力を高めるタスク)
インプットに対する音声知覚力向上をはかる。情報として、音声のことばからインプットの量を確保できるようにする
インプットからインテイク(理解されたインプット)に移行するためには、インプットを言葉として知覚する必要がある。
目標=インテイクになるインプットの絶対数を生徒一人一人が増やす
U リスニング処理
@音声知覚(個々の音声をキャッチする)
A単語認知(キャッチした音声から個々の単語を照会する)
B語彙情報の解読(単語のもつ意味・文法の情報を読み出す)
C文章理解
処理はボトムアップ(小→大)とトップダウン(大→小)の両処理がトレードオフの関係で補完しあうことで得られる
母国語は主にトップダウンが占める割合が多い
→外国語では音声が未知の語に逐一ボトムアップ方式をとる必要があるので、トップダウンが追いつかない。結果聞き取れるはずの部分をインプットできなくなる
⇒音声の知覚ができれば、ボトムアップ処理の負担が軽減される
V レッスンプラン
P237参照
中学=既知語がインテイクを起こすのに十分そろっていない
→確実にキャッチできる語を増やす
高校=ボトムアップ処理を自動化し、インプットの意味内容に意識を向けたトップダウン処理の効率化をはかる
→確実にキャッチできる語を増やす+リスニングの負担感を減らす
W PIE taskを取り入れたリスニングの授業
PIE task=短い語や表現にも適応可能
→Uの@〜Bまでの能力を促進
PIE taskはリスニング以外にも言語活動(英文読解、会話)でも可能
2 PIE taskを利用したリスニングの評価
T 評価観点、評価基準、評価方法
観点:学習指導要領「言語使用に関わる評価の観点」から「聞くこと」に沿って評価
基準:CAN-DOリストうち「確実に知覚できるインプットの絶対数が増えた」をCAN-DO
CAN’T-DOで評価
方法:@リピーティング(ポーズに続いて逐次、復唱)
Aシャドーイング(音声とほぼ同時に復唱)
U リピーティングとシャドーイング
音声化=処理負荷が高い
各タスクに関して、CAN-DOかCAN’T-DOか、CAN’T-DOの部分と回数はどうかを基に評価
授業の2回の部分、まとめと導入で計2回おこない増減を生徒にフィードバック
3つの観点をもとにCAN-DOの判断
@個々の語の音声化力
A個々の語の音声化の正確さ
B個々の語の音声化の流暢さ
点数
@ができた語の数/総語数
Aができた語の数/総語数
合計を5段階評価
Bが総語数の何パーセントの部分でできたかに関して
5段階評価
日本人教師とALTがいればALTが評価する(成績の90%)
V 生徒の振り返りによる自己評価
Uの@,A,Bに関して5段階で自己評価+自由記述
→成績の10%(関心・意欲・態度)として評価
(CAN-DO評価は関心、意欲、態度の組み込みが難しかったが折衷案として本稿が機能する)
3 FO taskを取り入れた技術統合型リスニング活動の指導
T 授業の内容と概要
FO task=アウトプットの誘出をスムーズにするタスク
狙い=生徒がまとまった内容について英語で表現する力・発信する力、英語でスムーズに表出する力を伸ばす
授業内容
ビデオを見る→メモを取りながら音声を聞き取る→ペアで再話
2により自動化された音声知覚処理を用いて、内容理解、アウトプットを促す
U レッスンプラン(P243参照)
4 FO taskを取り入れた統合型リスニングの評価
T 評価観点、基準
観点:「話すこと」、「書くこと」の観点に沿って評価(「話すこと」で発表「書くこと」でまとめる)
基準:「話すこと」=口頭による再話の発表全体の達成度、内容のどれだけを再話できたかをパーセンテージ化して5段階評価
「書くこと」=再話を基にした文章の出来栄え、再話した内容のどれだけを文章としてまとめることができたかをパーセンテージ化して5段階評価
+2-Vのように生徒は振り返りによる自己評価を行う
ディスカッションポイント
@PTE taskとFO taskについて他の具体例
APTE taskの評価として、従来のリスニング課題を実施していないが、その利点と欠点
BCAN-DO評価の利点と欠点
具体案
@・PTE task:音読、対話、
・FO task:文章の再話、ディスカッション
A・利点:音声課題の全体を把握する必要がある(従来のリスニング課題では一部が聞き取れれば問題に答えられることがある)
発音能力にも注意が向く
・欠点:採点の際、教師の負担が増す
音声を再生することに頭がいって内容理解に追いつかない
B・デメリット:できたかできなかったかの二つの指標でしか評価できない
・メリット:評価方法が明確
⇒すべての評価方法にはメリットもデメリットも存在する。状況に応じて使い分ける必要がある