《実践編1:ライティングの授業における自由英作文の実践評価》

 

はじめに

自由英作文の指導=思考を論理立てて構成する力の育成

授業の準備・実践

授業の概要

対象:高校二年生の選択科目Writing T(B)選択者の内の24

内容:週12時間続きの講座。最初の一時間が教科書を用いた文法指導、次の一時間はALTとのティーム・ティーチングで発展的な内容、主にパラグラフ・ライティングの指導を行う。この講座内での「パラグラフ・ライティング」とはパラグラフという構成を意識したプレゼンテーション活動、ディベート活動なども含める。

年間計画と学期目標

一学期:実践を通じてパラグラフ・ライティングの形式を学ぶ。

二学期:プレゼンテーション活動に応用させる。

三学期:ディベートを行う。

授業

一学期、パラグラフ・ライティングの指導

ITBCSが定着してきたところで前半の一時間で学んだ文法事項を実際にエッセイで使い、

文法事項の定着を図るGrammar Challengeを行う。

・ディスコースマーカーの使い方を指導。

・手紙の書き方を指導。

・家庭学習でエッセイを課す。テーマは生徒の生活や教科書の題材からとる。

二学期、プレゼンテーションの指導

・生徒を5つの班に分け、班ごとに修学旅行についてのポスター作成、プレゼンテーション

を行う。

・各班が旅行代理店になったと仮定。生徒はグループの中で一人一つの担当を持って、それ

を発表する。

・それぞれの発表、プレゼンテーション全体どちらにおいてもパラグラフ・ライティングの

書き方に従ったものとなるように指導。

三学期、ディベート活動の指導

6つの班に分け2班ずつ班対抗で行う。各班にALTJTEが補助として入る。ディベー

トの勝敗は評価対象としない。

・ディベートを聞いている班は発言の要旨をメモするように指導。

・生徒にそのメモから一箇所選ばせ、その箇所をパラグラフ・ライティングの書き方に則り

エッセイを書かせる。

・目的はディべートにおける自分たちの発話を記録し、それをもとに反省、改善すること。

評価

〇パラグラ・フライティングの評価

ALTが評価。

・はじめの頃は生徒が萎縮しないようにあまり細かな項目別の評価はしない。生徒がなれて

きた頃に項目別の評価を始める。項目はGrammar, Content, Organization, Structure

4つ、それぞれ4段階で評価。

〇プレゼンテーションの評価

ALTJTEが構成重視で評価。

・生徒同士で発表内容を相互評価。あくまで生徒が真面目に発表を聞くための方策であり、

最終評価には加算しない。

〇ディベートの評価

・メモに基づいたエッセイを評価対象とする。

・構成の評価を主に行い文法的正確さなどについては朱書きでの訂正に止める。

・構成はITBCSの目標が達せられたかどうかを5段階で評価。ITBCSの内、が全て達成され

ていれば4、一つ欠ければ3というように評価。

結果と課題

・パラグラフという考え方を生徒に根付かせることに成功した。

・自由英作文を通じて伸ばすことのできる領域は多岐にわたり、その全てを評価することは

難しい。しかし技能の向上のみに観点を絞ればその点は問題にならない。

・生徒が改善すべき点を理解しやる気をもって活動に取り組むために、個人向けの指導を行

うことが欠かせない。

・選択科目だけでなく必修科目においても自由英作文を取り入れていくにはどのようにし

たらよいか、より多くの生徒を相手にどのような指導を行うのか、ピア・コレクションを

取り入れることができるか、以上が今後の課題となる。

ディスカッションポイント

・ディスコースマーカーに加えて、パラグラフごとに使用頻度が高そう語やフレーズを併せて教えると、より簡単に文を作りやすくなるのではないか。

 

リアクション

・学習者に下地があると効果が見込める。

 

実践編2:中学校における英語インタラクティブフォーラムの実践と評価》

 

はじめに

茨城県で年一回開催される「英語インタラクティブフォーラム」のような手法を授業にも取り入れることで生徒たちの表現能力、理解力、会話に対する意欲を伸ばすことができる。

 

英語インタラクティブフォーラム

三名一グループになり与えられたテーマについて5分間会話し、個人のパフォーマンス

2名の審査員が「表現」「内容」「態度」の3観点から評価する。グループのメンバーを

変えながら3回戦まで行ない合計得点の高い者が勝者となる。

 

インタラクティブフォーラム学級大会の指導

〇授業の概要と目標

・あるテーマについて3人で3分間会話する。

4段階に分かれる。

  第一段階:テーマについて自分が話したい内容を考える。その際、マッピングを取り入

れるようにする。英文を書きため、モノローグを練習。

  第二段階:相手に対して質問する内容を考える。

  第三段階:ペアで練習を行なう。相互評価を取り入れるとよい。

  第四段階:3人グループでの練習を行なう。

 

 

〇レッスンプラン

学習活動・内容

1. 学習活動及び評価基準を確認する。

2. テーマについて話したい内容を考え、英文を書く。

“My Dream”について話す内容を書こう。

3. 思いついたことを英文で表す。

2

  自分が話したいことが相手に伝わるように練習しよう。

1. 書いた英文を何度も読みながら話す練習をする。

2. ペアになって、最初はワークシートを見ながら話し、そして次第に見なくても話せるように練習し合う。

3

  相手に対する質問を考えよう。

1. 相手に対する質問を考え、英文を書く。

2. 書いた英文を言えるように練習する。

3. ペアで2分間ずつ練習する。

4

  ペアで会話練習をしてみよう。

1. ペアで2分間の会話練習を行う。

2.ペアごとに相互評価を行う。

5

3人で会話練習をしてみよう。

13人で3分間の会話練習を行う。

2.表現や内容に修正を加えながら、3分間の会話を23回行う。

3.グループのメンバーを換えながらいろいろな内容を話せるようにしていく。

6

1.学級フォーラム1回戦を行う。

7

1. 学級フォーラム2回戦、決勝戦を行う。

2. 学年フォーラムに進出する学級代表45名を選出する。

  内は本時の目標。

 

評価

・相互評価は全体の活動の中盤に導入。5観点二段階評価。

・教員による評価は3観点を3段階で評価。

〇生徒による相互評価

・第4時のペアワークで導入。

・表1の観点で評価。

・教師も机間巡視をしながら生徒と同じように評価し、アドバイスを行う。

1. 生徒による相互評価の観点

観点

大きな声で話している。

相手の目を見て話している。

相手が話しやすい話題を提供している。

自分の考えを伝えようとしている。

相手の話に寄り添って話している。

6, 7時の学級フォーラムにも同じものを用いて評価する。

〇教師による評価

・第6時は学級を半分に分けて別教室で行う。JTE2名も分かれる。

・表2に基づいて評価。B基準を満たさない場合はCとなる。

・判定基準は第5時の冒頭で生徒に示す。

2. 判定基準

<表現>

A

・多少のエラーはあるものの、コミュニケーションに支障はない程度である。

・適切な表現(語彙、円滑さ)ができている。

・相手に伝わるように言い換えて表現することができる。

B

・多少のエラーがあり、コミュニケーションに小さな支障がでる。

・言いよどみやポーズがあるものの、ほぼ適切な表現ができている。

<内容>   

A

・ふさわしい内容を提供したり、相手の話題に添ったりしながら会話を進めること

ができる。

B

・予期せぬ話題に対しても何とか会話に入ることができる。

<協調性のある親しみやすい態度>

A

・協力的な話の内容の提供、質問やコメントをしている。

・間違いを恐れないで話している。

・困っている相手を助けることができる。

B

・急に話題を転換したり自分のことを優先してしまうことがある。

・相手の話題に少し興味をもっている。

〇生徒へのフィードバック

・第4時の相互評価は本人にその都度知らせる。第6, 7時の相互評価は本人に伝えない。

・第6, 7時の教師の評価は全て本人に知らせ、それと同時に具体的な表現のアドバイスも

行う。

 

結果と課題

・第二学年対象に三学期に実施。

〇結果

・第4時相互評価にかんするアンケート調査を行った。結果は表3に示す。

 

3. 相互評価のアンケート結果

質問事項

はい

いいえ

友だちによる評価がよいアドバイスになった

80

20

友だちによる評価によって意欲向上につながった

60

40

友だちを評価することが自分のパフォーマンスによい影響を与えた

54.2

45.8

友だちを評価することにより自分の意欲向上につながった

71.4

28.6

調査人員35

 

・アンケート調査の結果から、生徒相互の評価は半数以上の生徒の意欲や能力向上によい影

響を及ぼしている反面、あまり会話能力の高くない生徒にはさほど影響を及ぼさないと

いえる。

・一回戦と決勝戦の教師による評価をそれぞれ表4, 5に示す。

 

4. 教師による一回戦の評価

<表現>

A

8

B

21

C

6

<内容>

A

6

B

18

C

11

<強調性のある親しみやすい態度>

A

5

B

22

C

8

 

5. 教師による決勝の評価

<表現>

A

3

B

6

C

0

<内容>

A

4

B

5

C

0

<強調性のある親しみやすい態度>

A

5

B

4

C

0

 

〇課題

・会話の内容が表面的。相手の発言が理解できないとごまかす。

・生徒がより正確に相互評価ができるようにするにはどうしたらよいか。

・相互評価がより正確になれば、それを有効に活用できる方法を考えていく必要がある。

 

ディスカッション・ポイント

・授業でトーナメント形式のプロジェクトを行うとフォーラムをこなす回数が生徒の実力によって異なってくる。実力の低い生徒ほどフォーラムを行う回数が少なくなってしまってよいのだろうか。

 

リアクション

・生徒による相互評価は2段階だと荒い、より多く段階を設けて細かく評価できるようにすべきではないか。

・下地のある学習者に対してインタラクティブフォーラムは有効である。

・大会の場合、予め本番で出題されるテーマを予想して会話練習を行う。

・教師は同時に3人の評価を行うので負担が大きい。

・生徒の実力を考慮すると中学校での実施は難しいのではないか。