実践編1314 論文紹介

与那覇恵子(2005)「ディベートを英語教育に生かす」名桜大学総合研究(7) 63-69

 

1.    はじめに

l  筆者は、日本人の若者に対し、コミュニケーションの手段としての英語力の不足、思考力の不足を課題にあげている

 

2.    英語教育としてのディベートの魅力

l  4技能全てを必要とし、それらを統合された教材である

l  以下がディベートのプロセスである

@論題の決定…思考力を高め、生徒に社会の諸問題への意識を深める

Aリサーチ…英語の文献を読むことでskimmingscanningの能力を養成する

B原稿の作成…ライティング能力・論理力を養う

Cディベート本番…スピーキング・リスニング能力に加え、Note taking力も養成する

 

3.    ディベートへと至るための諸活動

(1) 授業のSmall TalkWarm-up Activityの時間を活用する

l  教師の個性を出しやすいこの時間に、英語で身の回りの問題について考える時間を設ける

例)自称 One minute non-stop talking

→ペアを組み、決められたトピックについて一分間ノンストップで話す。相手が詰まったらすかさず5W1Hで質問するなどして話し続けられるよう助ける。

 

(2)  ディベートへの抵抗感を取り除くゲーム的活動を取り入れる。

例)自称 Debatable topic collection game

→授業で学習した論題に関してdebatableな論題をできるだけ挙げ、数を競う

例)自称 Why Because Game

 →あるトピックを支持するか聞き、(do you like~.)、それにYes/Noで答える。さらにその理由を尋ね、答えるというもの。

生徒の熟達度に応じて、自分の考えと異なる意見を述べなければならない、相手と同じ理由を述べてはいけないなどのルールを設ける

 

(3) Authentic な教材をできるだけ取り入れる。

→時事問題などを積極的に取り入れる

(4) 普段の授業の中で英語の Input Output の量を増やす。

l  教師が英語をoutputするだけでなく、生徒にもoutputさせる

l  文法学習後は、それを用いた英作文の時間を設ける

l  日常的に英語で書く課題を与える

 

4.    ディベートを授業に取り入れる

l  A高校1クラス、B高校2クラスの計3クラス。それぞれ1113時間の授業。

l  ディベートの評価は生徒にも Evaluation Sheet を配り、評価させコメントを書かせるが、 生徒の評価は成績には反映させず、 教師のみの評価で成績はつける。

l   評価の観点は論理性、証拠資料、英語の流暢さ、音量、発音、態度

l   普通はディベート本番での出来だけで評価するが、レベルに応じて原稿とディベート の両方の評価を合計して成績をつけた

 

5.    ディベートそれぞれのプロセスにおいて考慮するべき点

@論題の決定

…一つの命題で表現できるか。問題を含んだ、時代に合うテーマか。

Aリサーチ

…情報源がAuthenticなものか注意する

B原稿の作成

…表現例を示し、時には形式的なパターンを使わせる。英語力が十分でない場合は日英の両原稿を提出させ、評価の後、添削し返却する。

C本番

…相手の論をできるだけ多く推測し、反論を考えておく

 

6.    生徒の反応及び感想

l  最初は「難しそう」などの否定的なコメントが多かったが、終了後は満足感を得られた、役に立ったなどの肯定的なコメントが多い

l  学力の高い生徒ほど関心が高い

l  時間に余裕があれば好感度が高く、逆に時間が足りないと苦痛に感じる生徒も多い

 

7.    問題点・課題点

l  最も面白く、かつ難しいCross Examinationをどうするかが課題

l  相手の主張を理解したうえで、的確な質問をすることはかなりの英語力が要求される

l  英語力が十分でない場合は事前に情報交換し、質問を準備することを許す

12つは情報交換無しの質問も準備させる

l  ディベートを聞いている生徒がどれくらい理解しているか見極める

l  統一課題ならばわかりやすいが、テーマが別である場合、専門用語の理解が難しい

Key Wordsを配布したり、板書したりする

l  時間の確保が難しい

→特に三年生は難しいため、二年次に取り入れる

l  いくつか課題はあるが、優れた教材として推薦したい

 

◎ディスカッションポイント

・例に挙げたアクティビティについての意見、改善案

・ディベートを授業で行うことついての是非(高校・中学)

 

今回“One minute non-stop talking”を実践していただいたが、その感想として挙がったのが、

・考える時間がもっと欲しい

・話す時間(聞き返す時間)が欲しい

・ゆっくり話すと時間がない

 

以上のことから、時間が足りないという意見が多かった。よって、この活動は1分間ではなく2分間で行ったほうが良いという結論が出た。また、5W1Hをどう含めるのかが課題である。

 

ディベートを授業で行うことの是非については英語の前に日本語で行うべきであるという意見や、中学生には難しいという意見や中学生がわざわざディベートをする必要性などが議論された。ディベートは有効であるがレベルの低い学習者には向かないので高校生からがふさわしいのではないかというのが私の意見である。