東正一.(2005).「観点別評価を意識した定期テスト問題の作成」
『高校教育研究』.57巻.pp.105-115

はじめに
・観点別絶対評価の開始→保護者や社会全体の評価方法に対する関心が高まる
・「関心・意欲・態度」や「思考・判断」など知識や技能以外の観点の評価も行うように要求されている
○負担の少ない現実的な観点別評価の方法としての定期テスト問題の作成

現行の観点別評価の問題点
・学力を観点別に分析するという評価方法の利点
なぜその点数になったかという説明がしやすい
学力の不足部分が明示されるため学習に役立つ

<問題点1>なぜ4観点なのか
・教科教育の実情と離れた決め方
・英語であれば「speaking」「listening」「reading」「writing」の4観点の方がよいのでは
<問題点2>「関心・意欲・態度」をどのように評価するか
・「関心・意欲・態度」は一番優先される点
・主観的、相対的な判断を避けることが難しい
・生徒の学習意欲は教師の授業・工夫次第で変えることができる
・コミュニケーションに対する「関心・意欲・態度」よりも「学習全般に対する意欲」
○コミュニケーション活動のみにとらわれない、学習意欲に関する幅広い評価

・言語教育において「単元」という概念がないため、目標規準評価ではなく教材規準評価にならざるを得ない
→単元ごとに評価規準・基準を決める必要はない
○4技能や語彙文法などの知識に関して学年という枠組みを超えた技能別・言語知識別の到達基準作成

観点別評価を意識した定期テスト作成の手順
・ペーパーテストの限界点
 …「関心・意欲・態度」「speaking」については試験以外で評価
  「関心・意欲・態度」授業中の観察や課題の提出状況など
  「speaking」授業中の発表やインタビューテスト
・評価方法の明示

・定期試験は教師の学習理論や学力観を具体的に体現するもの
 →教師と生徒の間の信頼関係を大きく左右する

各観点を評価するための問題形式
<表現の能力>writing
Idiom空所補充
・与えられたリストから選ぶ形式ではなく実際に語句を書き込む形式
・語数を指定しないことで様々な回答を可能にする
・教科書や辞書の例文ではなく日常生活や時事的な題材に関連したものを作る
和文英訳
・試験範囲の文法項目を含んだものにする
・表現能力のみならず文法項目の定着も確認できる
エッセイクエスチョン
・教科書の内容を英語で説明するもの、自分の経験や考えを述べるもの
・試験時間内に回答することは難しい→授業中や課題で
<理解の能力>listening, reading
① 教科書の要約の空所補充
・リストから選んで回答させるものとヒントを与えてスペリングさせるもの
・語彙の問題としても扱える
② 教科書と同じ題材の異なる文章を使った応用問題
・検定教科書などから題材を探す→語彙や構文のコントロールがされている
③ 教科書の題材とは関係のない応用問題
・到達度を測定すべき定期テストとしては不適当
<言語文化に関する知識・理解>
・「言語に対する理解」…文法や語彙などの知識
語彙…高校以降に学習する語の多くはreceptive vocabulary
 語彙の空所補充問題
 ・実際にスペリングできなくてもよい選択肢式
文法…特に動詞・前置詞の用法・語順が重要
 ① 空所補充(動詞・前置詞の用法)
 ・動詞を正しい活用に直すこと、前置詞を正しくつかうこと
 ② 語句整序
 ・文法規則の定着

 ③ 誤文訂正
 ・正しい文法や語法の定着
・「文化に対する理解」…指導や評価方法が漠然としているため困難

おわりに
・観点別評価は教師の負担が大きい
→定期テスト問題に観点別評価の情報を加える工夫を凝らすことでより実用的なものに

<考察>
・観点別評価をされることで、学習者側には具体的にどのような効果があるのか
・スピーキングテストに関するより詳しい分析も必要
・「文化に対する理解」はどのように教育・評価していくべきか