岡崎弘信(2004)「リスニング中心のクラスにおける語彙学習:インターネット掲示板の効果的利用法:実践報告」『映画英語教育研究会:紀要』, 9, 3-16
0. はじめに
・映画を授業に導入し、語彙・文法・表現・リスニング・内容に関するフリートークなどを試し現在ではその中でもリスニングとスピーキングに焦点を当てた授業にしている。
・授業であまり触れることのできない語彙や表現を効果的にかつ自主的に学習させたい。
→インターネット掲示板の利用をした学習
1. 授業形態の変化
・語彙チェックや解説を行うと最低15分
かかってしまう。
・生徒の意識がリスニング中心ではなく
なってしまう。
・頻出語彙以外は取り上げず、音声中心の学習に時間をかける。
→取り上げられない分の語彙・表現学習を、インターネット掲示板を利用して行う。
2. 語彙、表現に関する課題提出
<課題の内容>
・授業で使用しているスクリーンプレイの中から語彙・表現に関する問題を5問作成し、
各問題に解答と解説をつける。
・作成した問題をインターネット掲示板に提出
・良問に関しては定期試験に出題する。
・評価は30点、20点、10点、0点の4段階で行う。
<目的>
・問題作成までに至る能動的な自己学習を促す。
・他の学生が作成した問題をとかせることで多くの視点からテキストを眺めさせる。
・掲示板に書き込むことで学生間の競争意識を高める。
3. 学生アンケート
・本課題に関しては学生の肯定的な意見が多かった。
問題作成のために自主的に学習できる、難しさ面白さを感じる。
定期試験への出題や他の学生の問題を解くことはいい刺激になる。
・一方で否定的・中立的な意見もあった。
競争意識は感じない、ネット環境がないとできないため面倒
評価基準が曖昧
4. 掲示板のストレージ機能
・過去の学生の問題が蓄積されているため、課題を解く参考にすることや復習ができる。また、学生間の競争意識をもたせることも可能。
・他クラス、他大学の学生も閲覧可能であり、所属の枠をこえて様々な課題を閲覧することができる。
5. 今後の課題と問題点
・嫌がらせを受けたり、他者に悪用されたりというような公開性のデメリット
・過去の問題を参考にできることによる全体の均一化
・動画配信の著作権の問題
6. まとめ
・動画配信などを利用した教師側からの教授法は珍しくないが、学習者からの情報発信型授業は多くない。
・ネット環境があればインターネット掲示板を利用した学生主体の学習をすることが可能。
・あくまでも授業外の課題であり、主はクラスワークである。
<ディスカッションポイント>
・英語の授業で問題作成というタスクを解いたことがあるか。
あまりない。
他の教科などでテスト予想問題などを作成したことはある。
・どのような評価基準を設けるべきか。
試験に採用されたらボーナス点というようにし、細かく採点項目を設けない。
しっかり採点するなら項目を提示する(オリジナリティ、論理性など)。
教師ではなく生徒間で問題を解かせ、投票などをさせて評価の参考にする。
・その他
掲示板に載せるのは全員分だけでなく良問のみでもよいのではないか。
→全員分載せると例題が多くなるため問題作成しにくくなるのではないか。
映画を題材とすると長すぎるのでリーディング題材でもできるのではないか。
→映画というタスク性のないものからあえて問題をつくらせるという教師側の目論見もあるのではないか。