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2020年度 英語教育学Ⅶ |
16章 Beyond testing:
other means of assessment
H.I
■形式にとらわれない評価のメリット
1何が学習されたか、何がまだ学習されていないかについての継続的な情報を提供する。ほとんどの生徒が教えられたことを学べなかったことを示している場合、教師により効果的な教え方を検討するよう促す。
2 生徒にフィードバックすることができる。生徒は自分がどのように進歩したかを知ることができる。
3 フィードバックが短期および長期のコース目標に関連して表現されていれば、学生にその目標を意識させることができる。
4 学習者の自律性を促すことができる。
5目標に向かって自分の進みを意識することで生徒の内発的なモチベーションを高めることができる。フィードバックに基づいて、学生が自ら補習のための計画を立てようとしている場合、さらにモチベーションを高める可能性がある。
6 この評価方法によって得られた情報は、テスト結果を補完するために使用できる。
→境界線上の学生の場合に特に有効。受験者の得点と他の言語能力の測定値との間に大きな不一致がある場合、さらなる調査が必要。通常はテストスコアと他のテストスコアと他の評価の間に不一致があるのは当然のことだが、あまりにも大きな違いがある場合は、最終的なテストと継続的な評価の両方の妥当性を検討する必要がある。
■教室内評価の一般原則
- 評価の性質と頻度は、クラスの規模による。
- 評価はクラス内またはオンラインで、個々の学生または学生のグループに対して行われる。
- 評価は非公式であり、可能な限り通常の授業に組み込まれていなければならない。
- 評価のセッションは慎重に準備されるべき。(無秩序で断片的なものになってしまうから)
- パフォーマンスのポジティブな特徴に重点を置いて即座にフィードバックを行う。
- 入念な記録を残すべき。
【評価の方法】
■パフォーマンスの観察
・指導目標に関連した言語の特定の側面に焦点を当て、教師はその目標が達成されたかどうかが分かる行動を引き出そうとする。
例)特定の不規則動詞の過去形を習得しているかどうかを確認するために、過去の出来事に関する質問をし、生徒自身が他の生徒に質問する。
→各生徒のパフォーマンスを評価し、記録する。結果に応じて一般的な指導や練習が必要。
・教師は観察結果を記録し、テストの結果と比較できるようにしておく。
■カンファレンス
・1人または2人の生徒との面談で、教師が観察したパフォーマンスについてフィードバックを与える(または、文面で生徒に提示して事前に読んだフィードバックについて話し合う)こと。
→話し合うことで、教師は生徒についてより深く知ることができる。
・コンファレンスは、さらなるパフォーマンスを引き出すためにも使える。
例)生徒にテキストを音読してもらい、それに関する質問に答えてもらう。
・学習プロセスへの積極的な参加を促すために、生徒は質問やコメントを持ってカンファレンスに参加するよう求められるべき。
■プレゼンテーション
・関連するテーマについて短い話を準備し、クラスで発表する。
→スピーキング能力の様々な側面を評価尺度を用いて評価することができる。
■ジャーナル
・ライティング能力を、自分の言語学習経験や生活のあらゆる側面を振り返る日記を使って評価することができる。
・教師と生徒の両方が1つの日記に投稿し、互いの投稿にコメントする場合、それは対話日記と呼ばれる。
→生徒に新しい言語を本物のコミュニケーションの手段として使うという感覚を与える。
・日記は紙に書くことも、オンラインで書くこともできる。
・教師と一人の生徒の間で書かれることもあれば、教師と複数の生徒の間で書かれることもある。
■プロジェクト
・プロジェクトは、生徒が個人的に、またはクラスメイトと協力して何かを作ることである。
・プロジェクトは通常、すべての言語スキルを統合し、純粋に言語的なスキル以外のスキル(批判的思考や問題解決など)を必要とする。
・プロジェクトの達成度は、プロジェクトの進行中または完了時に評価される。
・プレゼンテーション(上記)の基礎となることもある。
■オンラインおよびコンピュータベースのプログラム
例)DIALANG(前章で紹介)
・ケンブリッジ・イングリッシュのオンラインプログラム「Write &
Improve」:生徒が発表した文章に対して即座にフィードバックを行い、生徒が改善を試みた後に再度発表することができる。
・ピアソンの「English Benchmark」:タブレット端末を使って、スピーキング、リスニング、リーディング、ライティングのテストが可能。
・Socrative:人気のあるインタラクティブなプログラム。教師が自分でクイズの項目を入力することができる。
■自己評価(self-assessment)
・生徒は、自分のパフォーマンスや現在の能力レベルを、簡単な評価尺度を使って評価するよう求められる。
・その後、個々の学生は教師と会い、自分の評価と教師の評価を比較し、2つの評価の間に矛盾があるかどうかを議論する。
・教師が矛盾点を説明することで、生徒は自分の能力を正しく把握することができる。
・学習目標(短期または長期)に関連する評価尺度は、教師が作成することができる。
※Council of Europe 'Can do' scales(オンラインリソースのセクションを参照)など、一般に公開されている評価尺度を使用することもできる。
■相互評価(per assessment)
・学生が、他の学生の作品(文章または会話)についてコメントすること。
論文を交換し、ペアや小グループで作業し、コメントや改善のための提案を行う。
利点:実際の目的のために、教師以外の人を対話者として、その言語を話す機会が得られること。学習者の自主性を高めること。
・相互評価がうまく機能するためには、タスクの目的を十分に説明し、生徒が適切な質問をしたり、協力してアドバイスをしたりする訓練を受けていることが重要。他の生徒の作品を読むときに従うべきプロフォーマが与えられることもある。
■ポップクイズ
・教師がクラス全体に少数の質問をすること。生徒は一人一人答えを書き、他の生徒と答えを交換し、教師が答えを言うと、他の生徒がそれを採点する。生徒はお互いに紙を返し、自分の回答を比較し、間違いを理解しようとし、必要に応じて教師に説明を求める。
■ポートフォリオ
・一定期間に書かれた生徒の作品のサンプルが入ったフォルダやバインダーのこと。
教室で保管され、生徒はいつでも見ることができる。ポートフォリオを維持するのは生徒の責任であり、自分の最高の作品だと思うものを挿入する。
・ポートフォリオを見ることで、生徒は自分の進歩を実感することができる。
・ポートフォリオは、オンラインで構築・管理することもできる(「Eポートフォリオ」と呼ばれることも)。
・ポートフォリオは、他のクラスの評価情報の記録とともに、テストスコアと比較することができる。
【警告】
特に重要な意思決定を行う場合には、テストを排除して授業評価を行うことを強くお勧めする。テストがない場合、あるいはテストの点数がわずかな役割しか与えられていない場合、教師と生徒の関係があまりにも心地よく発展する危険性がある。生徒の達成度について誤解を招く恐れがあり、誰のためにもならない。
《リーダーアクティビティ》
1
How would you convince a
hard-nosed language tester that the results of other means of assessment should
be taken into account when making important decisions about students?
(学生に関する重要な決定をする際には、他の評価手段の結果も考慮すべきであると、堅物の語学試験官をどのように説得しますか?)
→特に、試験点数のボーダーライン前後の生徒に関しては、一発勝負だけではその生徒の能力を測りきれないことを強く伝える。その為にテストに加えて他の評価手段の考慮を強調する。
2
Imagine that you want to assess
your students' ability with respect to a particular language structure. Choose
a structure and then say how you would elicit performance in class. Design a
simple chart to record your assessments.
(特定の言語構造について生徒の能力を評価することを想像してください。構造を選択し、クラスでどのようにパフォーマンスを引き出すかを述べてください。あなたの評価を記録するための簡単なチャートをデザインしてください。)
→何か質問をしてその答えを評価する。例)未来形
・Where are you going to go on your school trip
to Okinawa?
・What will you do afterschool? など
毎授業開始時に1~2人に当てて訊くor出席を取っているときにランダムに質問を挟む。
名前 |
質問への理解 |
文法 |
A |
|
|
B |
|
|
評価は〇△×でつける。
3
Look at the various rating
scales presented in earlier chapters. Which of them do you think could be the
basis for creating a self-assessment instrument? What modifications would you
need to make?
(前章で紹介した様々な評価尺度をご覧ください。これらのうち、どれが自己評価ツールを作成するための基礎になり得ると思いますか?どのような修正が必要でしょうか?)
→
4
Take the various methods of
assessment that we have advocated and place them in order according to the
usefulness of the information they may provide. Compare your order with that of
a fellow teacher who has done the same thing, and discuss.
(これまで提唱してきたさまざまな評価方法を取り上げ、それらが提供しうる情報の有用性に応じて順番に並べます。同じことをした同僚の教師の順位と比較し、議論してください。)
→【パフォーマンスの観察、カンファレンス、プレゼン、ジャーナル、プロジェクト、コンピュータープログラム、自己評価、相互評価、ポップクイズ、ポートフォリオ】
1ポートフォリオ、2パフォーマンスの観察、3プロジェクト、4プレゼン、5相互評価、6ポップクイズ、7コンピュータープログラム、8カンファレンス、9ジャーナル、10自己評価
5
Find Socrative online.
How useful do you think it might be for assessment purposes?
(Socrativeをオンラインで探し、それを評価の目的のためにどのくらい有用だと思いますか?)
→https://www.socrative.com/
リアルタイムで結果を集計でき、多肢選択式問題からTF問題まで自由に作成できる点から、ポップクイズの代用として使うことができるのではないかと考えた。どの問題を誰が間違えたか/正解できたかが簡単に分かるため、そのクラス内で生徒間の相対的な評価として使えそうだと感じた。
《ディスカッションポイント》
これまで提唱してきたさまざまな評価方法を取り上げ、それらが提供しうる情報の有用性に応じて順番に並べてください(個人で)。グループ内で全員がそれを共有し、すり合わせてそのグループ内で順番を決定してください。
*どのような経緯で決定したかも教えてくれると嬉しいです。
②
What would you like to do in
your class and how would you do it? Please share your ideas.
自分が実際にクラスで実施するなら、何をどのようにやってみたいですか?アイデアを教えてください。