筑波大学 人文社会科学研究科                                                現代語・現代文化専攻                                           平井 明代研究室



2019年度  英語教育学Ⅶ


REVIEW

 

Llanes, A. & Munoz, C. (2013). Age Effects in a Study Abroad Context: Children and Adults Studying Abroad and at Home. Language Learning, 63(1), 63–90.

 

Introduction

 

Research Questions (RQs)

子供(Children: CHI)と大人(Adult: AD)を留学した(Study Abroad: SA)群と留学しなかった(At Home: AH)群に分類したとき、学習環境(SAAH)と年齢層(子供と大人)は、L2英語のスピーキングとライティングにおける流暢さ、語彙的・統語的複雑さ、正確さの発達にどれほど影響を与えるのか。

 

RQ1.         どちらの学習環境(SAAH)が、L2英語のスピーキングとライティングの発達により影響を与えるのか。

RQ2.         どちらの年齢層(子供と大人)が、2つの異なる学習環境(SAAH)におけるL2英語の発達により影響を与えるのか。

 

Research Method

対象者

139名のスペイン人L2英語学習者を対象とした。

 

 

 

手順

l  子供の場合

留学の1週間前に事前テストを行い、その23ヶ月後の帰国直前(28人)か帰国1週間後(11人)に事後テストを実施した。ライティングテストの翌日にスピーキングテストを行った。

l  大人の場合

留学後に事前テストを行い、その2ヶ月後に事後テストを実施する(25人)か、留学の1週間前に事前テストを行い、留学の1週間後に事後テストを実施した(21人)。

 

材料

 

分析

以下の指標を使って分析を行った。

l  流暢さ

スピーキング syllables per minute (SPM)

ライティング words per T-unit (W/TU)

l  語彙的複雑さ Guiraud’s Index of Lexical Richess (GUI)

l  統語的複雑さ clauses per T-unit (CL/TU)

l  正確さ    errors per T-unit (ERR/TU)

データのコード化にはCLANを使った。評価者間信頼性は92.4%、評価者内信頼性は95.4%だった。

 

Results

被験者内効果

有意水準を.006に調整し、t検定を使って分析した。

       子供のSA群では、事後スピーキングテストのすべての得点が有意に高かった(SPM: t(38)=−11.129, p=.000; GUI: t(36)=−6.501, p=.000; CL/TU: t(37) = −3.550, p = .001; ERR/TU: t(36) = 5.175, p = .000)。また、ライティングの語彙的・統語的複雑さも有意に向上した(t(37) = −3.822, p = .000, and written accuracy, t(37) = 3.180, p = .003)。一方、子供のAH群では有意な差はみられなかった。

       大人のSA群では、スピーキングの流暢さが有意に向上した(t(45) = −7.507, p = .000)。しかし、ライティングにおいて有意な差はみられなかった。対照的に、大人のAH群ではスピーキングにおいて有意な差はなかったが、ライティングの語彙的複雑さが有意に向上した(t(17)=−3.383, p = .004)。

 

被験者間効果

子供と大人では留学前の熟達度に差がある。そのため、学習環境と年齢層を独立変数、事後テストのスコアを従属変数、事前テストのスコアを共変量とし、多変量共分散分析(MANCOVA)を行った。サンプルサイズが異なるため、スピーキングとライティングの結果について別々に分析した。正規性、共変量の独立性、回帰直線の平行性および有意性に問題はなかった。

 

 

 

       学習環境

 

       年齢層

 

       学習環境と年齢層

 

 

Discussion

 

Conclusion

 

【考察】

l  事後テストの時期が統一されていないので、対象者によってincubation periodGardner, 1979)が異なってくる。これが英語熟達度のretention/attritionに影響している可能性もある。

l  t検定において有意水準をどのように調整しているかが記載されていない。

l  t検定の前提として正規性の確認が行われていない。

l  t検定の結果を検討するにあたり、効果量と検定力の記載がないので、統計量を十分に解釈することができない。

l  MANCOVAのデザインが少しわかりにくかった。2元配置との記載はないが、学習環境と年齢層の交互作用について記されていた。

 

【質問】

l  MANCOVAを行うにあたり、「正規性・共変量の独立性・回帰直線の平行性および有意性に問題はなかった」と報告しているが、客観的な数値を示す必要はないのか。

l  本研究のようなデザインのMANCOVAを行う場合、効果量の指標としてより適切なのはイータ2乗と一般化イータ2乗のどちらなのか。

l  F値の記載方法がよくわからない。また、どのようなときに記載する必要があるのか。

l  多変量分散分析には主に4つの検定法があるが、どのように使いわけるべきなのか。特に、本研究で使われているWilksのラムダにはどのような特徴があるのか。