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2019年度 英語教育学Ⅶ |
Hsiu-Ting Hung (2017) Design-Based Research: Redesign of an English
Language Course Using a Flipped Classroom Approach. 51(1), 180-192.
l 概要
英語を第二言語として教える大学レベルのコースでの反転授業の教授の可能性についてデザイン研究によって調査する。
l Questions
(1) 反転授業は生徒のより良い学業成績を導くか。
(2) 反転授業は生徒の学習態度に良い影響を及ぼすか。
l 方法
(1) 対象者
台湾人の大学2年生43人 男女比は1 : 2.3
平均8~10年の英語教育を受けた経験を持つ中級の英語学習者であり、誰も反転授業を受けた経験を持たない。
(2) 教授のデザイン
英語のコミュニケーション能力向上を主な目的としたコース。
対象者を基準とするコースと観察されるコースの二つに分け、どちらのコースもよく知られたsituation comedyのFriendsの10個のエピソードを授業の材料として用いて授業を行った。
基準とするコース (22人)
communicative language teaching(CLT)のアプローチを通して学ぶ。
授業手順
① ミニレクチャーでプロットの要約を行い、重要な語彙アイテムを強調する。
② エピソードを英語字幕付きで観る。生徒は必要に応じてメモを取る。
③ 小グループでビデオの内容についてのディスカッションクエスチョンについて話し合う。それぞれのグループのディスカッションを要約して全体で共有する。
観察されるコース (21人)
反転授業で学ぶ。
授業手順
Preclass
Friendsのエピソードを自分で事前に観る。エピソードについての質問リストを作るワークシートに取り組む。
In-class
① 4,5人のグループでワークシートをシェアし、クラス全体に提示するための二つの質問を選ぶ。
② グループの代表者が仕切って質問についてクラス全体で話し合う。
③ ランダムのペアで質問、回答をしあう。
(3) データ
・学期末テスト(語彙30%,リスニングの穴埋め問題30%,スピーキング40%)
・態度についての質問
学期末テスト後に実施。授業満足度,学習態度,生徒のコミュニケーションへの意欲にどれほど影響を与えたかを5段階のリッカート尺度で調査。
l 結果
・学業成績における反転授業の効果
対応なしt検定を使って分析した。
反転授業を行ったクラスとそうでないクラスの学期末テストの平均点はそれぞれ77.67(SD = 6.00)と71.36(SD = 6.71)であり、t = −3.247, p = .002, d = .990で有意差があり、反転授業を行ったクラスの方が有意にテストの成績が高くなっていることがわかった。
語彙、リスニング、スピーキングのスキルの間には有意差が見られなかった。
→反転授業は生徒のより良いパフォーマンスを引き出す。
・学習態度における反転授業の効果
対応なしt検定を使って分析した。
授業満足度は両方のクラスで高く、t = −1.009, p = .319で有意差は見られなかった。
学習態度はt = −8.985, p < .001, d = 2.741で有意差があり、反転授業を行ったクラスの方が高い結果となった。
コミュニケーションへの意欲への影響はt = −6.511, p < .001, d = 1.986で有意差があり、反転授業を行ったクラスの方が高い結果となった。
→反転授業は生徒の学習態度に良い効果を与える。
l 考察
反転授業は多くの学問に適用できる。
反転授業は学習者が言語のインプットの予習、復習を自分のレベルに合わせて行うことができる柔軟な学習環境を作ることができるため、生徒のインタラクションを強化できる。
注意深くデザインされた反転授業の中では生徒は能動的な学習者となり、常に自分の学びをコントロールしようと思わされる。
l 結論
本研究からわかったことが大学レベルの英語学習者への反転授業の将来性を示している。
対象者の人数が比較的少なかったことや反転授業の定義が曖昧なためより広いELTのコンテクストで本研究で観察されたようなよい学習成果が適用されないかもしれないなどの制約はあるが、本研究はELTのコンテクストの中での反転授業のポテンシャルについての重要な見識を示している。