筑波大学 人文社会科学研究科                                                現代語・現代文化専攻                                           平井 明代研究室



2019年度  英語教育学Ⅶ


Harsch, C., & Hartig, J. (2015). Comparing C-tests and Yes/No vocabulary size tests as predictors of receptive language skills. Language Testing, 33, 555–575.

 

   Abstract

n  Placement testの役割は学習者を適切なレベルのコースに振り分けることだけではなく、test batteryの効果を最大限高めることでもある。

n  本研究では、脱文脈化されたYes/No vocabulary testと文脈に埋め込まれたC-testのどちらが上記の目的に適しているかを検証する。

 

   それぞれのテストの性質

n  C-test: 45個の短いテキストから成り、目標語を2分割しその後半を削除した状態で提示するテスト。

→先行研究 (e.g., Eckes, 2014) においてその妥当性は示されており、語彙知識や英語熟達度に対する予測力は高いとされている。

n  Yes/No test: 目標語が単独で与えられ、その語を知っているかどうかを回答する形式のテスト。リストには擬似語も与えられる。

→「受容的な」語彙知識に対する予測力は高いとされている。

 

   Research Questions

1.         リスニング・リーディングの能力に関して、C-testYes/No testから得られる結果はどのような関係にあるか。

2.         C-testYes/No testのどちらの方が、リスニング・リーディング能力に対する予測力がより高いのか。

 

   Methods

Sample

n  協力者は1416 (910年生) のドイツ語を母語とするドイツ人学生であり、英語熟達度は中級レベルである。

n  148クラスから計3404人の生徒をサンプリングした大規模実験であり、subsampleとして24クラスから計559人の生徒もサンプリングされた。

 

Instruments

n  C-test: 25個の項目を含む4つのテキストで構成され、20分で実施された。

n  Vocabulary measure: 100個の目標語と20個の擬似語で構成され、20分で実施された。

n  Listening test: CEFRA2~B2レベルの項目で構成された。

n  Reading test: リスニングテストと同様のレベルで、20分で実施された。

Data preparation

n  C-test: 100個の項目のうち正答の割合を算出した。

n  Vocabulary measure: 100個の語彙項目のうちの正答の割合 (HR) 20個の擬似語のうちの誤答の割合 (FR) をそれぞれ算出した。

n  Listening test: 点数を算出した。

n  Reading test: リスニングテストと同様の手順で行った。

 

   Results

Data analysis

(1)      観測されたテストの点数に関して、リーディング・リスニングテストの点数を従属変数として線形回帰分析を行った (RQ1への回答)

(2)      潜在レベルでの分析を行うため、構造方程式モデリングによる分析 (Figure 3) を実施した (RQ2への回答)

SEMを行うために、確認的因子分析 (CFA) も実施した (Table 2)

 

 

   Research Questionsに対する回答

n  RQ1に関して、相関分析 (Table 3) と構造方程式モデリング (Figure3) を実施した。

 

n  どちらの分析においてもC-testの方がX-Lex testよりもリーディング・リスニング能力との相関が高かった。

→最も相関が高いのはC-testとリスニングであり、次いでC-testとリーディング、リスニングとリーディングの相関が高かった。

 

n  RQ2に関して、リスニング・リーディング能力をともに従属変数として回帰分析を行った (Table 5)

 

n  X-Lex testにおいてはリスニング・リーディングともに同様の結果が見られ、HRは正の効果を与えるが、FRは不の効果を持つことが予測される。

n  C-testの点数はX-Lex testの点数より説明量が大きいと考えられる。

 

   Discussion and conclusion

n  本研究ではC-testYes/No test (X-Lex test) の機能を比較し、どちらがよりplacement testに適しているのかを検証した。

n  RQ1に関して、どちらのテスト指標もリーディング・リスニング力と有意な相関が見られた。

n  RQ2に関して、どちらのテスト指標もリーディング・リスニング力に対する予測力は高かったが、リスニングに対する予測力の方が高い傾向にあった。また、C-testの点数はX-Lex testの点数より説明量が大きかった。

n  結論として、受容的な能力を測定するテストとしては、C-testの方がYes/no testよりも優れていると考えられる。