ラッセル、B.
Russell, Bertrand Arthur William; 3rd Earl Russell, 1872-1970
 論理学者、哲学者、社会活動家。ウェールズのトレレック生まれ。ケンブリッジ大学で数学と哲学を学ぶ。母校などで教鞭も執るが、もっぱら著述活動で生計を立て、哲学、論理学、哲学史、宗教、道徳、教育、政治など、様々な問題に関する膨大な量の著作を発表する。1931年、兄を継いで第3代ラッセル伯爵となる。1950年、ノーベル文学賞受賞。
 数学的真理の絶対性・完全性・確実性を信じ、論理学から数学を導くことでそれが示せると考えた。事実、矛盾(ラッセルのパラドックス)を免れたタイプ理論という論理体系を考案し、ホワイトヘッドと協働して、そこから数学の多くの部分を導くことに成功した。しかし、のちにウィトゲンシュタインの影響により、論理学も数学も単なるトートロジーにすぎないことを認めるようになり、数学に対する初期の信念は大きく揺らぐことになった。なお、この研究の過程で見出された記述の理論は、その後の言語哲学の展開に対して決定的な影響を与えた。
【主要著作】(With A. N. Whitehead) Principia Mathematica, 3 vols., Cambridge University Press, 1910-13; 2nd ed., 1925-7(岡本賢吾/戸田山和久/加地大介訳『プリンキピア・マテマティカ序論』哲学書房,1988). An Inquiry into Meaning and Truth, Norton, 1940(毛利可信訳『意味と真偽性』文化評論出版,1973).
(橋本康二)