現代思想入門演習
2012年度 木曜5時限
1学期のシラバス
1学期担当:橋本康二(人文社会系)
教室:2D305
■ 主旨
大森荘蔵『流れとよどみ』を読んで、哲学するとはどういうことなのかを学ぶ。
■ 内容
大森荘蔵(1921-97)は西洋哲学の流れの中にありながら独自の思想を展開させた数少ない日本人の一人である。『流れとよどみ』には彼が『朝日ジャーナル』で一般読者向けに執筆した連載論文が収められている。この連載の意図を彼は次のように述べている。
「そこで私が試みたのは、いくつかの哲学的問題、あるいは哲学的困惑とでもいうべきものを、それが生れてきた元の場所である日常生活の場に戻してみることであった。およそ哲学の気などない明るい茶の間や台所の床板一枚下にはそれらの問題や困惑がよどんでいることを示したかったのである。」(『流れとよどみ』、i-ii頁)
このように同書は、我々になじみのある題材が平易な文章で語られており、初学者でも取り組みやすくなっている。しかし、そこで扱われているのは、紛れもなく哲学の第一級の問題である。大森は自らの哲学的意図をこう述べている。
「私の目指したのは、世界と意識、世界と私、という基本的構図を取り壊すことである。・・・この構図、世界と意識とをまず剥がしてそしてダブらせるというこの構図は、錯覚であり誤解であると私には思われる。」(『流れとよどみ』、ii-iii頁)
『流れとよどみ』は、この問題意識に貫かれた以下の21本の論文から構成されている。
1 夢まぼろし
2 確率と人生
3 記憶について
4 真実の百面相
5 ミリンダ王の車
6 「論理的」ということ
7 音がする
8 見る―考える
9 ロボットが人間になるとき
10 同じもの、同じこと
11 身振り、声振り
12 逆さメガネと股のぞき
13 古くて新しい生理学
14 時を刻み切り取る
15 心の中
16 幻滅論法
17 ロボットの申し分
18 世界の眺め
19 夢みる脳、夢みられる脳
20 心身問題、その一答案
21 過去は消えず、過ぎゆくのみ
1回の授業で1ないし2本の論文を取りあげる。論文ごとに担当者を決め、ハンドアウトを作成した上で内容を報告してもらい、それからクラス全体でディスカッションを行う。
■ 評価方法・基準
担当した回のハンドアウトと報告内容、ディスカッションへの貢献度をもとに総合的に評価する。
■ 参考文献
大森荘蔵、『大森荘蔵セレクション』、平凡社、2011年。
■ その他
(1)各論文の報告担当者を決めるので、初回の授業には必ず出席すること。
(2)欠席は望ましくない。特に報告担当の回は必ず出席すること。報告担当の回にやむを得ず欠席するときは、事前に電話かメールで連絡すること。なお、「欠席届」は意味がないので、持ってこないこと。
(3)授業開始後の途中入・退室は禁止する。私語も禁止する。
(4)オフィスアワーは授業期間中の水4。研究室は人社棟 A819。