AC41532
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3単位 標準履修年次3年次 1〜3学期 水曜2時限
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教室:2D404
現代論理学演習[第1専門外国語(英語)II]
(English for Specialized Subjects II)
担当教員 橋本康二
■ 主旨
現代論理学の基礎を哲学的に考察している論理哲学の著作・論文を英語で読む。
「哲学」も「英語」も通常の日本人には異質なものである。そうした異質なものに取り組むことによって、自己の限界を超え出て行き、より自由な思考を獲得することを試みる。
■ 内容
ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』を読む。原著はドイツ語で書かれているが、授業では以下の英訳で読む。
Ludwig Wittgenstein, Tractatus Logico-Philosophicus, translated by D. F. Pears and B. F. McGuinness, Routledge and Kegan Paul, 1974.
同書には以下の七つの主要命題が含まれている。
1 The world is all that is the case.
2 What is the case -- a fact -- is the existence of states of affairs.
3 A logical picture of facts is a thought.
4 A thought is a proposition with a sense.
5 A proposition is a truth-function of elementary propositions. (An elementary proposition is a truth-function of itself.)
6 The general form of a truth-function is [p, E, N(E)]. This is the general form of a proposition.
7 What we cannot speak about we must pass over in silence.
各々の主要命題に対していくつかのコメントが付けられ、それに対してまたコメントが付けられる、ということが繰り返される形で叙述は進んで行く。内容は、存在から倫理まで多岐にわたるが、ウィトゲンシュタインはそれを「序」で次のように総括している。
「本書は哲学の諸問題を扱っており、そして——私の信ずるところでは——それらの問題がわれわれの言語の論理に対する誤解から生じていることを示している。本書が全体としてもつ意義は、おおむね次のように要約されよう。およそ語られうることは明晰に語られうる。そして、論じえないことについては、ひとは沈黙せねばならない」(下記野矢訳、9頁)。
この『論理哲学論考』をじっくりと読むことを通して、ウィトゲンシュタインの思想と格闘していきたい。
授業では、まず指名された受講生にいくつかの命題を日本語に訳してもらい、その内容について出席者全員で討論を行う。必要に応じて講師が背景的知識などの解説も行う。『論理哲学論考』は比較的短い著作だが、一年ですべてを読み終えることは難しいので、前半の「像の理論」と呼ばれている理論を読み、余裕があれば、後半の「真理関数論」の最初の部分を読むことにする。
■ 評価方法・基準
各学期末に『論理哲学論考』を論じた英語論文の一部を和訳して提出してもらう。その出来具合と授業への参加状況をもとに、総合的に評価する。
■ 参考文献
オリジナルのドイツ語版は以下を見よ(C. K. オグデンによる英訳付き)。
- Ludwig Wittgenstein, Tractatus Logico-Philosophicus, German text with an English translation en regard by C. K. Ogden, Routledge and Kegan Paul, 1922, reprinted (with corrections) 1933.
日本語訳として以下のものがある。
- ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン、『論理哲学論考』、法政大学出版局、1968年(坂井秀寿訳)。
- 山元一郎(責任編集)、『世界の名著58 ラッセル/ウィトゲンシュタイン/ホワイトヘッド』、中央公論社、1971年(編者が『論理哲学論』という題名で訳している)。
- 山本信・大森荘蔵(編)、『ウィトゲンシュタイン全集1』、大修館書店、1975年(奧雅博が『論理哲学論考』という題名で訳している)。
- 末木剛博、『ウィトゲンシュタイン論理哲学論考の研究 I 解釈編』、公論社、1976年(著者が『論理哲学論考』という題名で解釈・説明を付して訳している)。
- ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン、『『論考』『青色本』読解』、2001年(黒崎宏が『論理的-哲学的論考』という題名で解説を付して訳している)。
- ウィトゲンシュタイン、『論理哲学論考』、岩波書店、2003年(野矢茂樹訳)。
- ルートウィヒ・ウィトゲンシュタイン、『論理哲学論考』、筑摩書房、2005年(中平浩司訳)。
- ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン、『論理哲学論考』、社会評論社、2007年(木村洋平訳)。
日本語の解説書としては以下を勧める。
- 野矢茂樹、『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む』、哲学書房、2002。文庫版、筑摩書房、2006年。
■ その他
(1)毎回1時間程度の予習が必要。
(2)テキストに関する注意を与えるので、初回の授業には必ず出席すること。
(3)授業中の入退室は禁止する。
(4)オフィスアワーは授業期間中の水4。研究室は人社棟A819。