E312302 / AC31272
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3単位 標準履修年次3・4年次 1〜3学期 火曜6時限
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現代論理学演習
(Seminar in Modern Logic)
担当教員 橋本康二
■ 主旨
現代論理学の基礎を哲学的に考究している論理哲学の著作・論文を英語で読む。
「哲学」も「英語」も通常の日本人には異質なものである。そうした異質なものに取り組むことによって、自己の限界を超え出て行き、より自由な思考を獲得することを試みる。
■ 内容
今年度はルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』を読む。原著はドイツ語で書かれているが、授業では以下の英訳で読む。
Ludwig Wittgenstein, Tractatus Logico-Philosophicus, translated by D. F. Pears and B. F. McGuinness, Routledge and Kegan Paul, 1974.
同書には以下の七つの主要命題が含まれている。
1 The world is all that is the case.
2 What is the case -- a fact -- is the existence of states of affairs.
3 A logical picture of facts is a thought.
4 A thought is a proposition with a sense.
5 A proposition is a truth-function of elementary propositions. (An elementary proposition is a truth-function of itself.)
6 The general form of a truth-function is
. This is the general form of a proposition.
7 What we cannot speak about we must pass over in silence.
各々の主要命題に対していくつかのコメントが付けられ、それに対してまたコメントが付けられ・・・、というスタイルで叙述は進んで行く。内容は、存在から倫理まで多岐にわたるが、著者はそれを「序」で次のように総括している。
「本書は哲学の諸問題を扱っており、そして——私の信ずるところでは——それらの問題がわれわれの言語の論理に対する誤解から生じていることを示している。本書が全体としてもつ意義は、おおむね次のように要約されよう。およそ語られうることは明晰に語られうる。そして、論じえないことについては、ひとは沈黙せねばならない」(下記野矢訳、9頁)。
授業ではこの『論理哲学論考』を少しずつ訳読しながら、ウィトゲンシュタインの思想と格闘していきたい。
■ 評価方法・基準
各学期末に『論理哲学論考』に関連した英文を和訳して提出してもらう。その出来具合と授業への参加状況をもとに、総合的に評価する。
■ 参考文献
オリジナルのドイツ語版は以下を見よ(C. K. オグデンによる英訳付き)。
- Ludwig Wittgenstein, Tractatus Logico-Philosophicus, German text with an English translation en regard by C. K. Ogden, Routledge and Kegan Paul, 1922, reprinted (with corrections) 1933.
日本語訳として以下のものがある。
- ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン、『論理哲学論考』、法政大学出版局、1968年(坂井秀寿訳)。
- 山元一郎(責任編集)、『世界の名著58 ラッセル/ウィトゲンシュタイン/ホワイトヘッド』、中央公論社、1971年(編者が『論理哲学論』という題名で訳している)。
- 山本信・大森荘蔵(編)、『ウィトゲンシュタイン全集1』、大修館書店、1975年(奧雅博が『論理哲学論考』という題名で訳している)。
- 末木剛博、『ウィトゲンシュタイン論理哲学論考の研究 I 解釈編』、公論社、1976年(著者が『論理哲学論考』という題名で解釈・説明を付して訳している)。
- ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン、『『論考』『青色本』読解』、2001年(黒崎宏が『論理的-哲学的論考』という題名で解説を付して訳している)。
- ウィトゲンシュタイン、『論理哲学論考』、岩波書店、2003年(野矢茂樹訳)。
- ルートウィヒ・ウィトゲンシュタイン、『論理哲学論考』、筑摩書房、2005年(中平浩司訳)。
- ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン、『論理哲学論考』、社会評論社、2007年(木村洋平訳)。
日本語の解説書としては以下を勧める。
- 野矢茂樹、『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む』、哲学書房、2002。文庫版、筑摩書房、2006年。
■ その他
(1)毎回1時間程度の予習が必要。
(2)テキストに関する注意を与えるので、初回の授業には必ず出席すること。
(3)標準履修年次は「3・4」になっているが、2年生でも履修可能である。
(4)授業中の入退室は禁止する。
(5)オフィスアワーは授業期間中の火4。研究室は人社棟 A819。
■ 普遍項目キーワード(どのような普遍理論にもとづくか)
哲学・倫理理論(ウィトゲンシュタイン)
■ 個別内容キーワード(どのような個別的現象をあつかっているか)
存在論、言語論、論理学