E301131 / AC30031 | 1単位 標準履修年次1・2年次 3学期 金曜4時限 |
現代思想の基本問題C
(Fundamentals of Modern Thoughts C)
担当教員 橋本康二
■ 主旨
現代思想の本をたくさん読んで知識を得ても、それだけで「思想する」ことができるようになるわけではない。思想し哲学するためには、それ特有の思考の道具をそろえ、その使い方をマスターすることも必要である。この授業では、哲学的テーゼを論証するときに使う概念的道具立てについて学ぶ。
■ 内容
(A)授業の内容と進め方
Julian Baggini and Peter S. Fosl, The Philosopher's Toolkit: A Compendium of Philosophical Concepts and Methods, Blackwell Publishing, 2003 を教科書に使う。この本は6章構成で、さまざまなタイプの道具が扱われているが、最初の二つの章が論証のための道具にあてられており、授業ではこの二つの章を読む。各章ともいくつかのセクションに分けられており、一つのセクションで一つの道具が取りあげられている。セクションのタイトル(=道具の名前)は以下の通り。
1.1 Arguments, premises and conclusions(論証、前提、結論)
1.2 Deduction(演繹)
1.3 Induction(帰納)
1.4 Validity and soundness(妥当性と健全性)
1.5 Invalidity(非妥当性)
1.6 Consistency(整合性)
1.7 Fallacies(誤謬)
1.8 Refutation(論駁)
1.9 Axioms(公理)
1.10 Definition(定義)
1.11 Certainty and probability(確実性と蓋然性)
1.12 Tautologies, self-contradictions and the law of non-contradiction(トートロジー、自己矛盾、無矛盾律)
2.1 Abduction(アブダクション)
2.2 Hypothetico-deductive method(仮説演繹法)
2.3 Dialectic(弁証法)
2.4 Analogies(類推)
2.5 Anomalies and exceptions that prove the rule(規則を証明する逸脱と例外)
2.6 Intuition pumps(直観ポンプ)
2.7 Logical construction(論理的構成)
2.8 Reduction(還元)
2.9 Thought experiments(思考実験)
2.10 Transcendental arguments(超越論的論証)
2.11 Useful fictions(役に立つ虚構)
一つのセクションを一人の学生が担当する。担当者はセクションの内容を日本語でまとめたハンドアウトを作成し、授業ではそれを配布して報告をおこない、出席者全員でその内容を検討する。一回の授業で二つか三つのセクションを検討する予定。
(B)予習
一つのセクションは2ページ(700語)程度と分量も多くなく、平易な英語で書かれている。しかし、受講生にとってはおそらく新奇な内容だと思われるので、十分に時間をかけて、丁寧に教科書を読んでから授業に臨む必要がある。そのためには、まず、辞書をしっかり引くことが必須である。それも高校時代の学習英和中辞典だけではなく、以下のような大きな辞典も引くようにしてもらいたい。
『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)
『ジーニアス英和大辞典』(大修館)
『新英和大辞典』(研究社)
Oxford English Dictionary
専門的な事項を調べたいときには哲学事典を見るべきである。
『哲学・思想事典』(岩波書店)
Routledge Encyclopedia of Philosophy
論理学のテキストも一冊持っておくと役に立つ。
野矢茂樹、『論理学』、東京大学出版会、1994
インターネット上にも無数のテキストがあり、検索サイトを使って簡単に事項を調べることができる。しかし、間違った情報も多く、意図的につかれた嘘もあるので、注意が必要である。教科書の巻末に信頼できるサイトがいくつか紹介されているが、そのうちの一つを参考にあげておく。
The Stanford Encyclopedia of Philosophy
http://plato.stanford.edu/contents.html
受講者は以上のような手段を使って教科書をしっかり読んでくることが要求される。特にハンドアウトを作成する場合は、担当セクションを十分に理解した上でハンドアウトを作成すること。英語を意味不明の日本語に機械的に置き換えただけのハンドアウトは認められない。また、報告担当者以外の受講者も必ず教科書を読んで理解しておくことが求められる。授業での議論に参加するにはそれが必要不可欠である。
(C)学期末の提出物
教科書の 3.14 Hume's Fork を日本語に翻訳したものを2/27までに提出してもらう(この締切を過ぎた場合は受け取らない)。翻訳はA4用紙の表のみに横書きでプリントアウトし、ステイプラーなどで綴じること(コンピュータが使えない場合はA4横書原稿用紙に手書きでも構わないが、鉛筆書きは禁止)。添削しやすいように、上下左右に十分余白をとり、行間を適度にあけること。氏名を明記すること。「予習」のところで述べたように、十分調べてから翻訳を作成すること。
(D)初回の授業
初回の授業では 1.1 Arguments, premises and conclusions を検討する。この回だけ担当教員(橋本)が報告を行うが、受講者もこのセクションを予習してから出席すること。そのため、初回の授業までに必ずテキストを入手しておかなければならない。以下の出版社のサイトから第1章の PDF ファイルをダウンロードすることができるので、取り敢えずはこれをダウンロードして、最初のセクションを読んでから、初回の授業に来てもらいたい。
http://www.blackwellpublishing.com/content/BPL_Images/Content_store/Sample_chapter/063122873X/001-037.pdf
また、次回以降の担当者を決めるので、この初回の授業には必ず出席しなければならない。
■ 評価方法・基準
以下の三点に基づいて、総合的に評価する。
(i)担当セクションの報告内容。
(ii)議論への参加状況。
(iii)学期末の提出物。
いわゆる「出席点」は付けない。
■ 参考文献
授業中に指示する。
■ その他
(1)欠席は望ましくないが、報告担当の回にやむを得ず欠席するときは、事前に電話かメールで連絡すること。なお、「欠席届」は意味がないので、持ってこないこと。
(2)授業開始後の途中入・退室は禁止する。
(3)私語は禁止する。
(4)3学期のオフィスアワーは水4。研究室は人社棟 A819。
■ 普遍項目キーワード(どのような普遍理論にもとづくか)
哲学・倫理理論
■ 個別内容キーワード(どのような個別的現象をあつかっているか)
哲学の方法論と論理的諸概念