E301121 / AC30021 | 1単位 標準履修年次1・2年次 2学期 金曜4時限 |
現代思想の基本問題B
(Fundamentals of Modern Thoughts B)
担当教員 橋本康二
■ 主旨
現代思想において、知識・言語・行為という三つの基本問題をめぐってどのような議論がなされているのかを、自然主義的見解と反自然主義的見解との「果てしない戦い」という観点から学んでゆく。本授業を履修した学生は、哲学は人生論ではないこと、哲学の議論は感情ではなく理屈(論理)によって進められていくことを理解するようになるであろう。また、哲学に限らず様々な分野において論理的に議論するための方法を身につけることができるであろう。
■ 内容
(A)授業の進め方
門脇俊介、『現代哲学』(産業図書、1996)を教科書として使用する(教科書売り場で販売される予定だが、売り切れの場合は一般書店で探して必ず購入すること)。授業では教科書を補足する解説も行うが、それは必要最小限にとどめ、もっぱら教科書の内容について議論することを中心に据える。具体的には次のように行う。(1)教科書を読んで考えたこと・疑問に思ったことを受講者に報告してもらい、それに基づいて議論する。(2)担当教員の側から教科書の内容に関して受講者に質問し、答えてもらう。(3)各章末にある問題のいくつかに関して、答を検討する。以上のような仕方で授業は進められるので、教科書を十分読んで授業に出席することが必須である。予習せずに授業での議論に参加することは不可能なので、必ず予習してから授業に臨むこと。
(B)授業計画
スケジュールは以下の通りなので、予定された教科書の範囲を必ず読んでから授業に出ること。なお、第4章の(2)と(3)、第5章の(4)と(5)、第7章の(1)、第8章の(3)、第12章は扱わないので、予習してくる必要はない。章末の「問題」は授業中に指示されたものだけ考えればよい。
9/5 序論:自然主義と反自然主義との果てしない戦い
9/12 第1章:知識はどこに宿るのか
9/19 第2章:ア・プリオリとア・ポステリオリ
9/26 第3章:知識・経験・実在、第4章:知識論の死
10/3 第5章:言語論的転回
10/17 第6章:知識と言語
10/24 第7章:行為と言語、第8章:意味の解体
10/31 第9章:心身問題
11/7 第10章:行為をどのようなものとしてとらえるか、第11章:意図の問題
(注意:授業では、時間の都合上、教科書の内容を網羅的に扱うことはなく、適当に話題は限定されることになる。)
(C)宿題
以下の問題を宿題として課す。
●第1回(9/19提出):教科書26頁の問題5(挙げられている信念を自分が持っていることを仮定し、その信念が正しいことを(間違いではないかと疑っている人に対して)弁護するような仕方で論じること。「知識のプロセス」には特にこだわらなくてよい。図を書くのではなく、論述すること。)
●第2回(10/3提出):資料Aを読んで、日本語に翻訳せよ。
●第3回(10/17提出):(1)三段論法「すべての動物は生物である。すべての人間は動物である。ゆえに、すべての人間は生物である」が妥当な論証であることを証明せよ(ベン図を援用して)。(2)三段論法「ある学生は女性である。ある人間は学生である。ゆえに、ある人間は女性である」が非妥当な論証であることを証明せよ(これもベン図を使って)。(3)後者の三段論法が一見して妥当であると思われる理由を考察せよ。
●第4回(10/31提出):資料Bを読んで、オースティンが「不適切性(infelicity, unhappiness)」をどのように分類しているか解説せよ(単なる翻訳は不可。箇条書きも不可。いくつに分類しているか、その名称は、特徴は、具体例は、などを読みとって論述すること)。
宿題の提出に際しては以下の注意を厳守してもらいたい。指定された提出日の授業時間中に提出すること。コンピューターで印刷するときはA4用紙に横書きで印字すること。手書きの場合はA4横書き原稿用紙(800字詰か400字詰)にインクで丁寧に記入すること(鉛筆の使用は禁止する)。2枚以上になるときは糊もしくはステープラー(ホッチキス)を用いて綴じること(ペーパー・クリップの使用は禁止する)。授業科目名、提出者の氏名を明記すること(書式は自由、表紙も付けなくて構わない)。電子メールによる提出は認めない。以上の注意を守らずに提出されたものは受け取らないので、十分気を付けること。なお、資料 A、Bは以下のサイトに置いてあるので、各自で入手しておくこと(学外からはアクセスできない)。
[資料 A] http://www.sakura.cc.tsukuba.ac.jp/~khashimo/campus/A.html
[資料 B] http://www.sakura.cc.tsukuba.ac.jp/~khashimo/campus/B.html
(D)試験
11/14に実施する(4時限目。授業期間中であることに注意。したがって、試験期間中の11/21は授業も試験も行わない)。時間の制約があるので、主に教科書の内容を理解しているか否かを問う暗記問題が中心。考えてもらう問題を出題するときは、授業中に出題内容を予告する。参考までに過去に出題した問題を挙げておく。
●「あることXが必然的である」とはどういうことか説明せよ。
●ア・プリオリな知識に関する、心理主義と規約主義の類似点と相違点を述べよ。
●あるひとが錯覚ないし幻覚によって間違った信念を抱いているとする。観念論の立場を取ったとき、この事態をどのように説明することができるであろうか。錯覚ないし幻覚による間違った信念の例を具体的に挙げて、説明せよ。
●「信念の正当化は全体論的になされる」とはどういうことなのか、簡単な例を使って解説しなさい。
●言葉の意味を心の中の観念(イメージ)とする考え方の欠点を述べよ。
●「Pのときかつその時に限りQ」(一般にP⇔Qという記号が使われる)という文における「⇔」の意味とは何か、を文脈原理を使って述べよ。ただし、P⇔Qの真理表を書いた場合、その結果は、(P→Q)∧(Q→P)の真理表と一致するものとする。
●行為をそれ以外の出来事から区別するための特徴とは何なのかを、具体的な行為の一例を挙げて、述べよ。
●デイヴィドソンの行為の因果説について説明せよ。
なお、第4章の(2)と(3)、第5章の(4)と(5)、第7章の(1)、第8章の(3)、第12章からは出題しない。
■ 評価方法・基準
授業への参加状況(討論への貢献度)、宿題、試験の成績をもとに総合的に評価する。いわゆる「出席点」は付けない。
■ 参考文献
教科書の章末に紹介されている文献。
■ その他
(1)授業開始後の途中入・退室は禁止する。
(2)私語は禁止する。
(3)初回の授業には必ず出席すること。
(4)できるだけ欠席しないこと。なお、「欠席届」は意味がないので、持ってこないこと。
(5)2学期のオフィスアワーは木5。研究室は人社棟 A819。
■ 普遍項目キーワード(どのような普遍理論にもとづくか)
哲学・倫理理論
■ 個別内容キーワード(どのような個別的現象をあつかっているか)
20世紀の英米の知識論、言語哲学、心の哲学