科目区分  専門基礎科目
対象学部  文学部・経済学部・経営学部
担当教官  橋本康二
開講学期  通年 火曜日・3時限

論理学(4単位)


授業のテーマと目標

論理とは、日常レベルの思考から科学的レベルの思考まで、人間の行なうさまざまな思考において用いられ、またそれらを規定している法則である。論理学とは、この思考の法則としての論理そのものについて思考し、それを分析・明確化していく学問である。この授業のテーマは、論理の中で最も基礎的でありかつ普遍的であると考えられている演繹論理の研究である。演繹論理学は、今世紀初頭に飛躍的な進歩をみたが、現在では、技術的な整備が進み、初学者でも一年間の授業でかなりの程度まで学ぶことが可能となっている。この授業では、「真理の木の方法」と呼ばれる、技術的に取扱いやすい構文論のシステムを一貫して使用し、最も単純な論理(命題論理)と比較的複雑な論理(等号と関数をもった第1階量化論理)が完全であることを、論理が完全であるとはどういうことかを含めて、厳密に理解することを第一目標とする。またその過程で、自ら徹底的に論理的に思考し表現するテクニックが要求される。そうしたテクニックを身につけることが、この授業の第二の目標である。(時間的に余裕があれば、チューリング・マシンの理論を導入することによって、量化論理一般が決定不可能であることと、第2階量化論理が不完全であることまで解説したい。)


授業の内容と計画(予定)

第1週 オリエンテーション。論証とその妥当性。演繹論理。
第2週 モデル論、構文論、決定可能性/不可能性、健全性、完全性の意味。
第3週 命題論理のモデル論:「かつ」、「または」、「ない(not)」、「ならば」の意味と真理表。
第4週 命題論理のモデル論:真理表による論証の妥当性の判定。
第5週 命題論理のモデル論:トートロジー、整合性、矛盾、論理的同値性。
第6週 命題論理の構文論:公理的方法。
第7週 命題論理の構文論:真理の木の方法。
第8週 命題論理の健全性。
第9週 命題論理の完全性(I)。
第10週 命題論理の完全性(II)。
第11週 命題論理の決定可能性。
第12週 量化論理:主語と述語、「すべて」 と「ある( some)」 。
第13週 (試験に備えて質問を受け付ける)
第14週 (前期定期期末試験)
第15週 量化論理のモデル論:集合論の装置を使ったモデルの構成。
第16週 量化論理のモデル論:集合論的モデルの持ついくつかの性質。
第17週 量化論理のモデル論:集合論的モデルによる論証の妥当性の判定。
第18週 量化論理の構文論:真理の木の方法。量化論理の決定可能性。
第19週 量化論理の健全性。
第20週 量化論理の完全性。
第21週 多重量化の導入による量化論理の拡張。
第22週 多重量化論理の健全性と完全性。
第23週 等号(=)の導入による量化論理の拡張。
第24週 等号をもつ量化論理の健全性と完全性。
第25週 関数の導入による量化論理の拡張。
第26週 関数をもつ量化論理の健全性と完全性。
第27週 チューリング・マシーンの理論。
第28週 量化論理一般の決定不可能性。第2階量化論理の不完全性。
第29週 (試験に備えて質問を受け付ける)
第30週 (後期定期期末試験)


履修上の注意

この授業では、いくつかの数学的道具立てを用いることになるが、適宜補足説明を行うので、数学的予備知識は必要ない。論理学の予備知識も前提しない。したがって、予習して授業に臨む必要はないが、授業後の復習は必須である。とくに、宿題を必ず提出することが要求される(成績評価に大きなウェイトを占める)。授業内容は連続して展開し、また教科書の内容とは必ずしも一致しないので、毎回出席するように。


成績評価方法

二週に一回程度の割合で宿題を出し、その成績と定期試験(前期と後期の二回)の結果によって総合的に評価をおこなう(宿題40%、定期試験60%の比率を予定している)。


教科書等

教科書:『形式論理学』 R.ジェフリー 戸田山和久訳 (産業図書)


学生へのメッセージ

論理を学ぶためにはそれを上回る論理が必要。このパラドキシカルな試みに諸君も挑戦してみませんか。