第二言語習得 (second language acquisition: SLA) に関する用語集 (2009年8月更新)

注:作成者:【H】・・洪、【HI】・・ 土方、【HS】・・ 清水遥、【I】・・ 印南、【IN】・・井上、【JY】・・吉田、【KI】・・ 北田、【KO】・・ 小泉、【KG】・・古賀、【KB】・・小早川、【KK】・・今野、【KN】・・中田、【KS】・・嶋田、【M】・・ 村田、【MK】・・小林、【MO】・・森本、【MU】・・村上、【Na】・・中川、【Ng】・・長橋、【O】・・大久保、【Oh】・・大塚、【S】・・ 清水、【ST】・・高波、【TA】・・田中、【YS】・・柴原、【W】・・渡邊

  参考文献で、引用が多いものについては、最下段にまとめました
*が付いている用語については、卯城 & 佐久間 (訳注) (1998) 『第二言語習得の研究』(大修館書店)の「付録(専門用語解説)」で解説されていますので、御参照ください。


ability (能力)
 ある言語行動を行うことができる現在の力のこと。能力は、skills (技能; e.g., 4技能) と、言語学習に関わる要因 (e.g., aptitude) などから構成されると考えられる (Davies, Brown, Elder, Hill, Lumley, & McNamara, 1999, p. 1)。更に、skills は複数の下位技能 (subskills) から構成され、言語学習に関わる要因の一例である aptitude はnumber learning, phonetic script などから構成されると考えられる (Davies, Brown, Elder, Hill, Lumley, & McNamara, p. 123; see "aptitude")。しかし、能力構造に関する研究はあまり進んでおらず、それは主に以下3つの理由のためである。第1に、各能力の定義が難しいため。第2に、第1の点を克服できたとしても、実証可能なように具体化することが難しいため。第3に、各能力の定義の基盤となる理論そのものがあまり支持されなくなったため (白畑, 冨田, 村野井, & 若林, 1999, p. 23)。【I】
〈参考文献〉
・Davies, A., Brown, A., Elder, C., Hill, K., Lumley, T., & McNamara, T. (1999). Dictionary of language testing. Cambridge University Press.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.

accidental gap (偶然の空白)
 実際に存在しない語の1つの種類。実在しない語のうち、言語構造には合っているのに偶然存在しない語彙を指す。例えば、英語でun-は「反対」の意味を表す接辞であり、形容詞 happy (幸福な)に付加してunhappy (不幸な)という反対の意味の語を作ることが出来る。しかし、形容詞 sad (悲しい)に付加して"unsad"という語彙は作ることが出来ない。これは、英語の規則には違反せず生成可能なはずだが、偶然英語には存在しない語と言える。この"unsad"のような語がaccidental gapである。よってaccidental gapの語が産出された場合、その学習者はovergeneralization (過剰般化)を起こしていると考えられる。(see "overgeneralization")【O】
〈参考文献〉
・安井 稔(編). (1996). 『コンサイス英文法事典』. 三省堂.
・Richards, J. C. & Richard W. S. (2003) Longman Dictionary of Language Teaching and Applied Linguistics. Addison Wesley.

acculturation *

acculturation model
 (see "psychological distance/social distance")

accuracy (正確さ)
 書かれたもしくは話された文を評価する際に、基準とされる観点の1つで、それらが目標言語と比較してどれだけ正しいかを測る尺度。規則に注目した文法シラバスなどの教授法ででも、大変重要とされる。文を評価する際、多くの研究では間違いのないTユニットや節を指標にして測定されている。しかし、どのような観点で正しいといえるのかには様々な因子が関係する。たとえば、アメリカ英語/イギリス英語のような地理との関係、上流/
中流階級といった社会的地位との関係によっても様々である。また安藤(1991)では、言語使用域(register)の観点から、文字/音声という媒体, 談話スタイルなどを考慮することも指摘している。単に文法が正しいかどうかではなく、容認可能性などについても検討す
る必要がある。また、書かれる(話される)文は正確であれば良い、というわけではない。コミュニケーションを行うには、正しくて、かつ、流ちょうであることが重要である。外国語学習ではこれら複数の能力を、同時にバランスよく発達させることが望ましい。【O】
〈参考文献〉
・安藤昭一 他(編). (1991). 『英語教育現代キーワード事典』増進堂.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.
・Wolfe-Quintero, K, Inagaki, S, & Kim, H-Y. (1998). Second Language Development in Writing: Measures of Fluency, Accuracy & Complexity. Second Language Teaching & Curriculum Center, University of Hawai'i.

accommodation theory(適応理論)
GilesとByrne(1982)による第二言語習得における社会心理学理論である。学習において民族的なアイデンティティを考慮に入れ、学習者の属する集団と目標言語の集団の流動的な社会関係に注目した理論である。批判としては、子どもの二言語習得のメカニズムについて説明がない点、歴史や言語移行の権力関係に注目していない点が挙げられている。 【TA】
〈参考文献〉
・ベーカー・コリン(著). 岡秀夫(訳・編). (1996). 『バイリンガル教育と第二言語習得』. 大修館書店. (Baker, C. (1993). Foundations of bilingual education and bilingualism. Clevedon: Multilingual Matters.訳)
・Giles, H., & Byrne, J. L. (1982). An intergroup approach to second language acquisition. Journal of Multilingual and Multicultural Development, 3, 17-40.
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学事典』. 東京: 研究社.
・Tollefson, J. (1991). Planning language, planning inequality: Language policy in the community . New York: Longman Inc.

achievement test(達成度判定テスト)
目標に対する学習者の達成度を測定するテスト。ある言語コース(プログラム)にはそのコースを受ける学習者の達成目標が設定されており、そのためのシラバス、マテリアルなどがある。達成度判定テストとは学習者がそのコースでどれくらい学んだのか(学習者の学習量)を測定するためのテストである。また、これによりコースのシラバスやマテリアルに基づくカリキュラムが実状(学習者の実態)に合っているかを確認することもできる。達成度判定テストはコースの最後に行われるのが一般的であり、コースの最後に行われるfinal achievement testを達成度判定テストとし、コースの途中に行われるprogress achievement testを診断テスト(diagnostic test)として区別することもできる。【HS】
〈参考文献〉
・ブラウン, J. D. (1999). 『言語テストの基礎知識』. (和田稔, 訳.). 東京:大修館書店. (Original work published 1996)
・Johnson, K. & Johnson, H. (1998). Encyclopedic Dictionary of Applied Linguistics. Blackwell.

acquired dyslexia(獲得性失読症)
正常に機能していた脳が後天的に(脳梗塞、脳の手術、事故などの要因により)損傷を受けたために、語彙アクセスに影響を及ぼしてしまう症状。失読症にはその障害の内容に対応して、純粋失読症(pure alexia)、表層性失読症(surface dyslexia)、音韻性失読症(phonological dyslexia)、深層性失読症(deep dyslexia)、non-semantic readingなどがある。non-semantic readingに関しては、進行性認知症の患者などにその症状が認められる。獲得性失読症(主に成人)は、これらの失読症の症例の様々な組み合わせが見られる。獲得性失読症に関する研究は英語以外の言語でも広く行われている。
※対応する語として、developmental dyslexia(発達性失読症)がある。)【ST】
〈参考文献〉
・Harley, T. A. (2001). The Psychology of Language: From data to theory. New York, NY: Psychology Press Ltd.
・門田修平. (2003). 『英語のメンタルレキシコン』. 東京: 松柏社.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.
・大石晴美.(2006).『脳科学からの第二言語習得論』.京都: 昭和堂.

action research(アクション・リサーチ)
外国語教育におけるアクション・リサーチ(以下AR)とは,指導上の問題を特定し,問題の解決策を探ることを目的として,教師自らが行う調査・研究である(白畑他, 1999)。また,Richards & Lockhart (1999, p. 12)はARを,授業実践に変化をもたらす,教師主導の授業研究と定義している。
ARの手順は,佐野(2001, pp.53-60)によると,@問題の確定,A予備的調査,B仮説の設定,C計画の実践,D結果の検証,E報告,という6段階がある。しかしながら,@からEまでを一通りおこなって,ARが終了するとは必ずしも言えない。ARを実施し,その中で更なる問題点や課題が発見された場合,再度仮説の設定や計画の実践,実践から得られた結果を検証していく。このようにスパイラルに進んでいくのが,ARの特徴とも言える。
ARの課題を佐野(2001, pp. 49-53)は,@実施可能性の問題(e.g., 教師にARを行う時間的余裕がない,研究の焦点が絞れない,教師自身の意識改革が必要),やAARに基づいた研究の信頼性・妥当性の問題がある,と指摘している。Aについて,ARは厳密な実験計画・分析手順に基づいた実験研究に比べ,結論の一般性が低くなるという問題がある(白畑他, 1999)。しかし,ARは教師と生徒が直面している問題の解決が目的である。ARにおいては,外的妥当性(調査で導き出された結論が一般化可能であるかどうか)を見ることではなく,むしろ授業を取り巻く環境に深く根ざした,多面的な要因を探る調査・研究を成立させることが重要である(佐野, 2001)。【YS】
〈参考文献〉
・Richards, J. C., & Lockhart, C. (1996). Reflective teaching in second language classrooms. Cambridge: Cambridge University Press.
・佐野正之. (2001). 『アクション・リサーチのすすめ』. 東京:大修館書店.
・白畑知彦・冨田祐一・村野井仁・若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京:大修館書店.

acquisition* (習得・獲得)
 (ある言語項目・言語を) 身につけること。「見につける」といっても、初めて使うことができた場合習得したと考える時もあれば、ある正確さの基準を越えて使うことができた時 (普通90%: Ellis, 1994, p. 14; 80〜90%: Tarone, 1998, p. 81) を「習得」したとする場合もある。また、言語が使えるかは見ずに、文法の知識を得れば「習得」と考えることもあり、研究者により「習得」が何を意味するかについては異なることもある。Krashen (1981, as cited in Ellis, 1994) の提唱したacquisition (自然な言語習得) とlearning (意識的な学習) を区別する考え方は有名だが、様々な異論がある (see Ellis, 1994; Mitchell & Myles, 1998; see also "interface position")。現在はlearningと区別をせずに使う場合が多い (e.g., Ellis, 1994, p. 14)。【K】
〈参考文献〉
・Tarone, E. (1998). Research on interlanguage variation: Implications for language testing. In L. F. Bachman, & A. D. Cohen (Eds.), Interfaces between second language acquisition and language testing research (pp. 71-89). Cambridge University Press.

activation (活性化)
 長期記憶に貯蔵されている情報が検索されることによって、検索しやすい状態になること。長期記憶の情報への検索しやすさ(accessibility)は刻々と変化するものであると考えられる。活性化はこうした状態のひとつである。記憶情報が検索されると、活性化がおこり、その情報のaccessbilityが高くなる。この活性化は時間が経つと減衰し、accessbilityが低くなる。活性化は記憶へのアクセスの確率と速度を決定する。【W】
〈参考文献〉
・中島義明・安藤清志・子安増生・坂野雄二・繁桝算男・立花政夫・箱田裕司(編). (1999). 『心理学辞典』. 東京:有斐閣.
・安部純一・桃内佳雄・金子康朗・李光五. (1994). 『人間の言語情報処理:言語理解の認知科学』. 東京:サイエンス社.

adaptive control of thought (ACT) model *
 (see "declarative knowledge")

additive bilingualism (加算的バイリンガリズム)
Lambert(1974)により提唱されたバイリンガリズムがアイデンティティに影響を与えるというモデルである。特に、生涯にわたる二言語使用を指す。個人的側面では、加算的バイリンガリズムによる認知面や情緒面での肯定的な効果が期待される。社会的側面では、文化的、民族的アイデンティティに関連し、両言語に対して肯定的な態度をとる。Landry, Allard and Theberge (1991)は、焦点を個人レベルより、より広義的意味をもつ社会的レベルにおくことを指摘している。このモデルからは、個人的要因と社会的要因両方がバイリンガリズムに影響を与えることが示唆される。⇔subtractive bilingualism 【TA】
〈参考文献〉
・ベーカー・コリン(著). 岡秀夫(訳・編). (1996). 『バイリンガル教育と第二言語習得』. 大修館書店. (Baker, C. (1993). Foundations of bilingual education and bilingualism. Clevedon: Multilingual Matters.訳)
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学事典』. 東京: 研究社.
・Lambert, W. E. (1974). Culture and language as factors in learning and education. In Aboud, F. E. & Meade, R. D. (ed). Cultural factors in leaning and education. Washington: 5th Western Washington Symposium on Learning.
・Landry, R., Allard, R., & Theberge, R. (1991). School and family French ambiance and the bilingual development of Francophone Western Canadians. Canadian Modern Language Review, 47, 878-915.

adjacency pair(隣接ペア)
会話分析、または談話分析において、隣接ペアを基に会話を分析することができる。4つの要素から隣接ペアは説明できる。(1) 2つの発話からなる。(2) それらは隣接している。(3) 別々の話者によって産出され、相対的な順序を有している。(4) 最初の要素が次に続く要素を特定するようなもの。これらのことが会話の中で行われており、一例をあげると、1人の話者が質問したならば、他の話者がそれに対する返答が期待されているということである。【KG】
<参考文献>
好井裕明・山田富秋・西坂仰. (1999).『会話分析への招待』世界史走者.

adjunct programs 
Writing Across the Curriculum (WAC) programsというものが開発され、このプログラムにおいて、学習者に様々な科目に必要なwritingの技術や科目特有な書き方が明示的に教授される。このWACのSLAバージョンがAdjunct programsであり、この中で、学習者は英語の授業ではなく、例えば心理学や物理学といった通常の授業を受講し、さらにその科目に関連する特有のwritingや語彙、言語を学ぶことができる授業を取ることによってwritingの技術を向上させることを可能にするプログラムである。【KG】
<参考文献>
・Nunan, D. (2003). Practical English Language Teaching. N.W.: McGraw-Hill Company.

affect (感情)
 Bachman and Palmer (1996) が提唱した、「言語使用」および「言語テストパフォーマンス」の構成要素および関連を示したモデルの構成要素の1つ。背景知識 (topical knowledge) と特に関連していると考えられる。パフォーマンスに正・負両方の影響を与えると想定されている。テスト作成において感情的な話題を使用する必要がある際には、パフォーマンスがどのように感情から影響を受けるかを考える必要がある。なお、affect (感情) は、affective schemata とも呼ばれる。【I】
〈参考文献〉
Bachman, L. F., & Palmer, A. S. (1996). Language testing in practice. Oxford University Press.

Affective Filter Hypothesis (情意フィルター仮説)
 affective filter(情意フィルター)と呼ばれる,学習者が持つ言語学習に対する感情的な壁が,第2言語および外国語習得に影響を及ぼすとした仮説。学習者がたとえ充分な量の理解可能なインプット(comprehensible input)を受けていても,その学習者側に不安や学習意欲の欠如,自信喪失などの心理的問題があると,それが障壁となり,インプットが学習者の中に入りにくくなる。その結果,言語習得の進展に支障が生じるとされる(Richards, Plat, & Platt, 1992; 白畑他, 1999; 米山, 2003)。学習者の言語習得を促進させるためには,教師は可能な限り学習者の不安を取り除き,自信や自尊心,動機づけを高めることで情意フィルターを低くすることが必要である(Arnold & Brown, 1999; Crandall, 1999; 白畑他, 1999)。【YS】
〈参考文献〉
・Arnold, J., & Brown, H. D. (1999). A map of terrain. In J. Arnold (Ed.), Affect in language learning (pp. 1-24). Cambridge: Cambridge University Press.
・Crandall, J. (1999). Cooperative language learning and affective factors. In J. Arnold (Ed.), Affect in language learning (pp. 226-245). Cambridge: Cambridge University Press.
・Richards, J. C., Platt, J., & Platt, H. (1992). Longman dictionary of language teaching and applied linguistics (2nd ed.). Essex: Pearson Education Limited.
・白畑知彦・冨田祐一・村野井仁・若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京:大修館書店.
・米山朝二. (2003). 『英語教育指導法事典』. 東京:研究社.

age of acquisition theory
 
早く習得された単語は、遅く習得された単語よりもnaming taskやlexical decision taskで反応時間が早くなるという理論である。Izura et al. (2004) ではこの理由について音韻の点、意味的表象の点、そしてマッピングのプロセスの点という3つを挙げている。音韻面から見ると、早く習得された語はより完全な形で貯蔵されているが、遅く習得された単語はより断片的な形で貯蔵されている。意味的表象の面から検証すると、新しく習得された単語は既に習得されている単語の意味に依存し、そしてそれらの単語の意味概念同士が強く連結し合っているので、早く習得された単語はより反応時間が早くなる。またマッピングに関しては、初期に習得された単語は形式と概念の結びつきを最初から構築しなければならないが、遅く習得された単語は既に構築されたマッピングシステムを利用して意味と概念が結び付けられる。よって、早く習得された単語は遅く習得された単語よりもマッピングするのにより努力を要しており、十分な結び付けの訓練がなされているために反応時間が早くなる。しかし、早く習得される単語には書記素や音韻面で共通した特徴があるかもしれず習得年齢の差による違いは決定的ではないと考えられる。【MO】
〈参考文献〉
・Izura, C., & Ellis, A. W. (2004). Age of acquisition effects in translation judgment tasks. Journal of Memory and Language, 50, 165-181.

analytic syllabus(分析シラバス)
 Wilkins (1976) によるシラバス・デザインの定義の一つ。シラバスを作成する際に、総合シラバス(synthetic syllabus)では文法項目などの言語構造に重点が置かれるが、分析シラバスでは言語活動が重視される。したがって、分析シラバスの内容は実際の言語使用に基づいて構成される。手順シラバス(procedural syllabus)、プロセス(過程)シラバス(process syllabus)、タスク中心シラバス(task-based syllabus)などが分析シラバスに該当する。【KB】
〈参考文献〉
・安藤昭一(編).(1991).『英語教育現代キーワード事典』.大阪:増進堂.
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.
・Wilkins, D. A. (1976). Notional syllabuses. Oxford: Oxford University Press.
・Nunan, D. (1988). Syllabus design. Oxford: Oxford University Press.

anomie*

anxiety (不安)
 神経が高まって、緊張したり、心配したり、そわそわしたり、イライラしたりといった感情 (Horwitz, Horwitz, & Cope, 1986, p. 125) で、第2言語の学習に影響を与える (Horwitz & Young, 1991)。不安の中にも、良い影響を与える不安 (facilitating anxiety) と悪い影響を与える不安 (debilitating anxiety) がある。Horwitz et al. (1986) がForeign Language Classroom Anxiety Scale (外国語教室不安尺度) を作成してから、言語に関係する不安 (language anxiety: 言語不安) の研究が盛んになった。Horwitz et al.の尺度の中には、「コミュニケーション不安・テスト不安・否定的な評価に対する恐れ」の要素が入っている。以前は、英語を話すこと・聞くことに関する不安が学習にどう影響するかという研究が多かったが、最近では、英語を読むこと・書くことと不安の関連も研究されている (Cheng, Horwitz, & Schallert, 1999; Cornwell & McKay, 2000; Saito, Horwitz, & Garza, 1999)。また、英語を話すことに関する不安の研究では、コミュニケーションをしようとする意欲 (willingness to communicate; MacIntyre, Clement, Dornyei, & Noels, 1998) との関連の中で捉え直されてきている。【K】
〈参考文献〉
・Cheng, Y., Horwitz, E. K., & Schallert, D. L. (1999). Language anxiety: Differentiating writing and speaking components. Language Learning, 49, 417-446.
・Cornwell, S., & McKay, T. (2000). Establishing a valid, reliable measure of writing apprehension for Japanese students. JALT Journal, 22, 114-139.
・Horwitz, E. K., Horwitz, M. B., & Cope, J. (1986). Foreign language classroom anxiety. Modern Language Journal, 70, 125-132.
・Horwitz, E. K., & Young, D. J. (Eds.). (1991). Language anxiety: From theory and research to classroom implications. NJ: Prentice Hall.
・MacIntyre, P. D., Clement, R., Dornyei, Z., & Noels, K. A. (1998). Conceptualizing willingness to communicate in a L2: A situational model of L2 confidence and affiliation. Modern Language Journal, 82, 545-562.
・Saito, Y., Horwitz, E., & Garza, T. J. (1999). Foreign language reading anxiety. Modern Language Journal, 83, 202-218.

appeal for assistance
 (see "communication strategy")

applied linguistics (応用言語学)
 3つの意味があり、(1) 言語教育に関係した研究分野、(2) 教育とそれ以外の関連分野に言語学を応用する研究、(3) 言語学と他の学問との学際的研究である (白畑, 冨田, 村野井, & 若林, 1999)。第二言語習得もapplied linguisticsの中の1つである。Ellis (1997) はapplied linguisticsとlinguistics appliedを明確に区別する必要があると述べている (p. 31)。linguistics appliedは、単に言語理論を応用するだけでよいが、applied linguisticsは教育と関連をもっていく責務がある分野 (Widdowson, 1984a, as cited in Ellis, 1997, p. 31) である。applied SLA (second language acquisition) とSLA appliedも同じ関係にあり、applied SLAの研究者はSLAと教育がどう関連付けられるかを考え、SLAと言語教育の両方の理論と実践の知識を持つことが必要である (用語の歴史的変遷についてはsee 岡, 1999)。【K】

applied SLA
 (see "applied linguistics")

approximative system*

aptitude (適性)*
 生まれつき人が持つ言語学習能力で、言語学習に影響力を持つ (Ellis, 1994)。有名な適性テストとしては、Modern Language Aptitude Test (MLAT) とPimsleur Language Aptitude Battery (PLAB) がある (白畑他, 1999, p. 23)。知能との関連では、適性を(1) 言語学習能力の基本になる能力と(2) 文脈のない (前後の文関係がない) 言語を扱う能力に分けた場合、(1) と知能はあまり関連がないが、(2) とは関連があり、(2) はCALP (see "BICS") とも関係がある (Ellis, 1994, pp. 494-499)。Skehan (1998, p. 233) は適性は(a) phonemic coding ability (音素を解読する能力)、(b) language analytic ability (言語を分析する能力)、(c) memory (記憶) の3種類に分け、それぞれをinput, central processing, memory/outputという情報処理の段階に対応させて説明している (p. 203)。(a) は学習初期に重要で、(b) は言語学習で一貫して重要だが、それだけ・ナは不十分で、(c) は (b) と同様に一貫して重要だが、習熟度が高くなるにつれて最も重要になるというように、異なる能力が言語学習の段階で要求されるとSkehan (1998) は主張している (完全に実証されたわけではない; pp. 217-218)。【K】

Aspect Hypothesis (アスペクト仮説)
動詞の意味 (内在アスペクト)が時制・形態素の習得にどのように影響するかについて論じたもの。L1での研究成果を基にL2へと応用された。Vendler (1959)の動詞の意味カテゴリー (状態, 活動, 完成, 達成)を用い、言語間の違いを考慮し、L2学習者の習得パターンについて予測をしている。
The Aspect Hypothesisは以下の予測をする (Shirai, 2003より)。
1) 学習者はまず完成, 達成動詞の過去 (完了)標識を使い、次第に活動, 状態動詞の使用へと拡張する。
2) 完了/非完了の区別が形態素的になされる言語では、非完了過去は完了過去の後に現れ、非完了過去標識は状態, 活動動詞 (i.e., 非完了動詞)から始まり、完成, 達成動詞 (i.e., 完了動詞)に拡張される。
3) 進行相を持つ言語では、進行標識の使用は活動動詞から始まり、完成, 達成動詞へと拡張される。
4) 学習者は誤って進行標識と状態動詞を結びつけることはない。
また、最近の研究から上記の習得パターンは学習者内要因 (e.g., L1の進行標識の欠如), 学習者外要因 (e.g., 教授の順序)に影響を受けることも分かっている。【HS】
〈参考文献〉
・Shirai, Y. (2000). The semantics of the Japanese imperfective-teiru: An integrative approach. Journal of Pragmatics, 32, 327-361.
・Shirai, Y. (2003). The aspect hypothesis in SLA and the acquisition of Japanese. 第二言語としての日本語の習得研究, 5, 42-61.

assessment of L2 proficiency (第2言語熟達度の測定)
 第2言語熟達度の測定に用いられる方法は大別すると以下の4つである。

(1) 研究者もしくは学習者自身の主観的評価。
(2) 機関によるもの。学年が上がるほど、熟達度も高いと考える。
(3) 各機関で開発されたテスト、および研究の目的に合うように作成されたテスト。
(4) 標準化されたテスト。TOEFL、Michigan Test of English Language Proficiency など。

それぞれの方法には問題があり、第2言語熟達度の測定は非常に難しい。具体的な問題として、(a) 第2言語熟達度を定義することの難しさ、(b) 標準化テストでは研究の目的とする第2言語熟達度の測定に合わない場合があること、(c) 第2言語習得の分野では、熟達度にあまり注意が払われてこなかったこと、(d) 母語話者との比較で熟達度を捉えようとすること、などがある。(以上この項目は、Thomas, 1994) 【I】
〈参考文献〉
Thomas, M. (1994). Assessment of L2 proficiency in second language acquisition research. Language Learning, 44, 307-336.

assimilation*

AS-unit(ASユニット)
発話を分析するために作られたユニットであり、The Analysis of Speech Unitの略である。HuntのT-unitを基にして統語的な単位を基準としているが、イントネーションとポーズも用いて区切る。Foster et al. (2000)によると、AS-unitは単一の発話者が発した独立した節、または独立した副節であり、これらに従属節を伴うこともある。独立節とは定形動詞を含む節であり、例えばI have a pen.がこれにあたる。また、副節とは1つもしくは1つ以上の句であり、談話や場面の文脈によって省略していた部分が復活できて完全な節になりうるものである。例として、"When did you go to John's house?" "Last Friday." の "Last Friday."がこれにあたる。なぜなら、この場合は文脈から"I went there last Friday."のように文が復活できるからである。更に、従属節とは"I have a brother whose name is Ben."の場合のwhose name is Benの部分である。
 AS-unitでは通常andやbutでつながれているような等位関係にある場合は1つのAS-unitとして数えるが、最初の動詞句が下降音調や上昇音調で区切られており、更にその音調の後に0.5秒以上のポーズがある場合には別のAS-unitとして区切ることが特徴である。【MO】
〈参考文献〉
・Foster, P., Tonkyn, A., & Wigglesworth, G. (2000). Measuring spoken language: A unit for all reasons. Applied Linguistics, 21, 354-375.

attribution theory 
この理論の主張は、過去の成功や失敗の原因の帰属は、将来の達成に対する努力に 影響を与えるということである。Graham (1994) (cited in Dornyei, 2001)による と、学校における代表的なattributionsとして、能力、努力、タスクの困難度、運、ムード、家族背景、他人からの助けや邪魔などを挙げている。成績の悪さなどを何が原因か見なすかが問題となり、例えば知能が低いから成績が悪かったと考える生徒 は、努力しなかったために成績が悪かった考える生徒よりも、将来の成功に対しての努力をあまり費やさない可能性があると考えられる。【KG】
<参考文献>
・Dornyei, Z. (2001). Teaching and Researching Motivation. England: Pearson Education Ltd.

attrition
 第二言語において、よく知っていた単語や文法などを、長い間その言語を使っていなかったために忘れてしまうこと。Attritionは発音や文法などよりも、単語において起こりやすい。また、受容能力よりも発表能力においてより起こりやすく、attritionは熟達度とは独立しているため、多くの単語を知っている学習者でも、数少ない単語しか知らない学習者でも、忘れてしまう単語の数は同程度である。【MO】
〈参考文献〉
・Schmitt, N. (2000). Vocabulary in language teaching. Cambridge University Press.

attention (注意)
 複数の対象の中から、一つまたは少数のものに対し、選択的・集中的に意識を向ける心理作用。受容可能な刺激のうち、特に注意を向けた対象だけが明確に認知されるが、選択されない対象に対しても何らかの処理がなされていると考えられる。このことを選択的注意 (selective attention) と呼ぶ。注意は、刺激を不正確ながら巨視的に捉える前注意過程 (preattentive process) と、個別の対象についてより正確に認知する集中的注意 (focal attention) との二段階から成る。【HO】
〈参考文献〉
・辻幸夫. (2002). 『認知言語学キーワード辞典』. 東京: 研究社.
・小池生夫 (編集). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.

attitude*

audiolingualism*

authenticity (真正性)
 
本物らしさのこと。どういうものが本物であるのかは、観点により異なる。Breen (1985)では、本物らしさを(1) input dataとしてのテキストの本物らしさ, (2) テキストに対する学習者の解釈の本物らしさ, (3) 言語教育のためのタスクの本物らしさ, (4) 教室での言語の現実社会での本物らしさ, の4つに分類した。例えば、テキストの場合は外国語学習を意図して作られたものではなく、母語話者が普段使用するような表現を組み込んだものがauthentic (本物らしい) と言える。また、テストの場合は、実際に話したり書いたりするといった、テスト条件や資料が現実の言語使用をどの程度反映しているかがauthenticityを決定すると言える。Authenticityを考慮する理由の1つとしては、学習場面と現実社会の言語使用場面とに差があると実際のコミュニケーションに対応できない、という考えがある。ただし、効果的な教育のためには常に本物がよいというわけではなく、特定の言語項目に焦点を当てるなど修正されたテキストも重要である。【O】
〈参考文献〉
・岡秀夫(監訳). (1999). 『外国語教育学大辞典』. 東京:大修館書店. (Johnson,
K., & Johnson, H. (1998). Encyclopedic dictionary of applied linguistics. Blackwell.訳)
・小池生夫, 井出祥子, 河野守夫, 鈴木博, 田中春美, 田辺洋二, & 水谷修. (2003).
『応用言語学事典』. 東京: 研究社.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京:
大修館書店.

automatic proceesing (自動的処理)
 意識や努力をせず、注意も向けずに、人が行う情報処理のこと。automaticityも同義である。意識的に努力をし、注意を向けて行う処理は統制 (的) 処理 (controlled processing) と呼ばれる。人が意識的に注意を払える範囲には限りがある。コミュニケーションをスムーズに行うためには、言語の自動的処理ができるようになることが重要である (白畑他, 1999)。統制的処理を何度も繰り返し行って、処理が習慣化するまで練習していくことで、統制的処理が自動的処理に変わる (automatization: 自動化) と言われている。この考え方は、認知心理学の情報処理理論から来ており、McLaughlin (1990a, as cited in Ellis, 1994) が情報処理モデルとして提唱した。もう1つMcLaughlinの主張するものとして有名なのがrestructuringである (see "restructuring"; Ellis, 1994, pp. 389-399)。【K】

automaticity
 (see "automatic processing")

automatization/automaticity (自動化)
 学習者が迅速にかつ容易に、そのタスクを行うことができるようになること。Automaticityの基準は研究者によって異なるが、DeKeyser (2001) によると、過去の研究者のautomaticityの基準は、主に「速さ」「同時並行的に行うことが可能」「努力の不要」「認知資源の容量を無制限にすることが可能」「非意図的」「一定の練習の結果」「干渉がほとんどない」「無意識」「いつでも記憶からの検索が可能」の中から成り立っている。さらにEllis (2003) は、自動化 (automatization) は単なる言語処理の強化や速度の向上という観点だけではなく、再構築 (restructuring) も関わっているし、知識の新たな形式への再組織も含まれていると主張している。
McLaughlin and Heredia (1996) によると、自動的な処理 (automatic processing) と対比されるのは統制された処理 (controlled processing) であり、そこではノードの活性化は意識的なコントロールと関わっている。自動的な処理はすばやく平行して行われるのに対して、統制された処理はゆっくり1つずつ行われるという相違点がある。 (see "automatic processing") 【HI】
〈参考文献〉
・DeKeyser, R. M. (2001). Automaticity and automatization. In P. Robinson, (Ed.), Cognition and second language instruction (pp. 125-151). Cambridge University Press.
・Ellis, R. (2003). Task-based language learning and teaching. Oxford University Press.

avoidance
 (see "communication strategy")

avoidance strategy*

baby talk (ベビー・トーク)/caretaker talk (養育者言葉)/motherese (母親語)
 養育者が子供に話しかける場合、言葉を調整することが、これまでの研究によって明らかにされている。これらは、ベビー・トーク、養育者言葉、母親語などと呼ばれ、次のような特徴をもっている。(1) より明快で言語的に単純である、(2) ピッチが高い、 (3) 機能語に対する内容語の割合が高い、(4) 語彙に関して、タイプ対トークンの比率が低い、(5) 発話の長さが短い、(6) 今この場 (here and now) のトピックが多い、(7) 注意を向けさせる言葉 (例: 'Look!' or 'Hey!')が頻繁に使われる、(8) 理解されていることを確認したり、繰り返しが多くなされる。しかし、このような特徴も、文化によって異なることが知られている。(Ellis, 1994, pp. 247-251) 【S】

Bachman and Palmer model (バックマン・パーマーモデル)
 Bachman and Palmer (1996) が提唱した、「言語使用」および「言語テストパフォーマンス」の構成要素および関連を示したモデル。言語テストの分野では、最新かつ最も包括的なモデル。
 モデル内の構成要素は、「受験者の要素」と「言語使用、もしくはテスト内のタスクや状況」に区分される。前者はさらに細分化され、背景知識 (topical knowledge)、言語知識 (see "language knowledge")、個人的特性 (see "personal characteristics")、感情 (see "affect")、ストラテジー能力 (see "strategic competence") から成る。背景知識、言語知識、個人的特性は、感情を通じて、ストラテジー能力と相互作用を起こす。
 「言語使用、もしくはテスト内のタスクや状況」は、状況・インプット・引き出そうとする反応、およびインプットと引き出そうとする反応の関係から成る。
 「受験者の要素」と「言語使用、もしくはテスト内のタスクや状況」は相互作用の関係にある。特に、前者におけるストラテジー能力と後者が相互作用すると考えられている。【I】
〈参考文献〉
Bachman, L. F., & Palmer, A. S. (1996). Language testing in practice. Oxford University Press.

basic interpersonal communication skills (BICS: 基本的対人伝達能力)
 Cummins (1981) は熟達度をBICSとCALPの2つのタイプに分けて区別した。BICSは、スピーキングにおける流暢さや社会言語学的な適切さと関係する能力で、コミュニケーションを通して自然に発達する。一方、CALPは、学習活動に必要な言語知識や識字技能から成る能力のことである。(Ellis, 1994, p. 198) 【S】
〈参考文献〉
・Cummins, J. (1981). Bilingualism and Minority Children. Ontario: Ontario Institute for Studies in Education.

behaviorism*

behaviorist position
 (see "mentalist theory")

Beliefs About Language Learning Inventory (BALLI)
Horwitz (1988) (cited in Dornyei, (2001))によって考案された自己診断的な質問紙であり、学習者の信念(learner beliefs)を以下の5点から調査するもの。(1) 言語学習の困難さ (2) 外国語学習の適性 (3) 言語学習の本質(nature of language learning) (4) 学習方略とコミュニケーション方略 (5) 動機と期待。【KG】
<参考文献>
Dornyei, Z. (2001). Teaching and Researching Motivation. Essex, England: Pearson Education Limited.

bilingual education*

body language*

careful style
 (see "variability")

carrot and stick hypothesis
 (see "motivation")

case grammar(格文法)
 生成文法の中で発展した文法の枠組みで、Chomskyを起点とした標準理論(standard theory)に対する代案としてC.J.Fillmoreが提唱した文法理論のことである。標準理論では、文の意味は深層構造(deep structure)に表された文法関係などで決定される、例えば、主語とは「S(文,sentence)に直接支配されたNP(名詞句,noun phrase)」、目的語とは「VP(verb phrase)に直接支配されたNP」といったことである。しかしFillmoreは、このような文法関係は文の意味に重要な役割を果たしているわけではないという立場をとり、標準理論からさらに一歩進んだ文法理論を提案した。【MU】
(1)The door opened.
 (2)John opened the door.
 (3)John opened the door with that key.
 (4)That key opened the door.
 (1)〜(4)において、John,that key,the doorそれぞれの持つ文法関係は、各文で異なっているものの、いずれにも共通した意味関係があるといえる。つまり深層で、Johnの機能は動作主格(agentive)、that keyの機能は具格(instrumental)、the doorの機能は対象格(objective)をこれらの例文は持っていることがわかる。このように、名詞句が文中で動詞に対してどのような働きをしているのかを表現する形式を格(case)と呼ぶが、この格の概念を取り入れることによって、意味関係まで把握が可能になる。【MU】
<参考文献>
・安藤昭一他編.(1991).『英語教育現代キーワード事典』.東京:増進堂.
・岡秀夫監訳.(1999).『外国語教育学大辞典』.東京:大修館書店.(Johnson,K.&Johnson,H.(1998).Encyclopedic dictionary of applied linguistics. Blackwell.訳)
・寺澤芳雄編.(2002).『英語学要語辞典』.東京:研究社.
・フィルモア,C.J.田中春美他訳.(1975).『格文法の原理――言語の意味と構造』.東京:三省堂

categorization(カテゴリー化)
 Lamberts (1997) はcategorizationについて "the process of assigning objects (of whatever kind) to categories (which are collections of objects that are grouped together for some purpose" (p. 371) と述べている。新しいカテゴリーに関する学習はその人の持つ類似カテゴリーについての知識の影響を受ける (e.g., manual transmission carsの運転を覚えるときにautomatic transmission carsの運転経験があるかないか)。このような知識が正の影響を及ぼすこともあれば負の転移を示す場合もある。カテゴリー学習にはsimilarity-based approach (similarity-based categorization: 類似性が高いものと同じカテゴリーに分類する) とtheory-based approach (theory-based categorization: どの特性が重要であるか・それらの特性がどのように関連付けられるかを背景知識と照らし合わせながらまたは直感的に判断する) がある。背景知識との関連から考察されるカテゴリー化の要因としてHeit (1997) は (a) selective weighting effects (物事の全ての特性に注目するのではなく特定の特徴に注目することによって分類する)、(b) feature interpretation effects (その人や物が持つ別の特性によって、同じ言葉でも持つ意味が異なる)、(c) facilitation effect (背景知識に近い情報は学習が早い) を挙げている。また、背景知識との関連を考慮したカテゴリー化のモデルにはexemplar model、rule-based models、connectionist modelsがある。 【Na】
〈参考文献〉
・Heit, E. (1997). Knowledge and concept learning. In K. Lambers & D. Shanks (Eds.), Knowledge, concepts, and categories (pp. 7-42). Cambridge, Massachusetts: The MIT Press.
・Lamberts, K. (1997). Process models of categorization. In K. Lambers & D. Shanks (Eds.), Knowledge, concepts, and categories (pp. 371-404). Cambridge, Massachusetts: The MIT Press.

ceiling effect (天井効果)/ floor effect (床面効果)
測定値の上限・下限が測定内容に与える効果。通常テストを受けると最低点は0点、最高点は満点(通常100点)である。しかしながらこれらのテストでは、(1) 100点を取った人はそれ以上実力があるのに上限の100点で評価されているのか、(2) 0点の人は到達度がもっと低いのに0点にしかなっていないのではないか、といったこと等は判断できない。このように尺度の両端近くはゆがんだ得点になってしまい、受験者間の能力を適切に判別することが難しくなる。満点付近でこの影響を受けることを天井効果 (ceiling effect)、最低点付近で影響を受けることを床面効果 (floor effect)という。テストの目的によってはこれらの影響が望ましくない場合もある。例えば、到達度テストの場合、満点が多ければそれだけ多くの受験者が目標達成していることになるが、受験者の能力の差を区別する必要のあるplacement testにおいては、この効果が存在するのは望ましくない。したがって、これらの効果を取り除くのに項目応答理論 (item response theory)での分析が有効となる。(see "item response theory")【O】
〈参考文献〉
・大友賢二. (1996). 『項目応答理論入門』. 東京: 大修館書店.
・靜哲人他. (2002). 『外国語教育とテスティングの基礎概念』. 大阪: 関西大学出版部.

clarification requests
 (see "question type")

closed question
 (see "question type")

cloze test (クローズテスト)
 統合的な言語能力を測るテストとして使われる。クローズテストは2種類に大別され、それはランダムクローズ (random cloze) もしくはfixed-ratio clozeと呼ばれるものと、作為型クローズ (rational cloze) もしくはselective deletion clozeと呼ばれるものである。前者はn後ごとに規則的に文章中の語を抜き(通常7語程度)、空白を作るものであり、後者はテスト作成者が意図的に抜き出す語を決めて空白を作るものである。この場合、空白と空白の間は5~6語以上あることが望ましい。この両者ともクローズテストと呼ばれているが、Alderson (2000) は前者のランダムクローズのみをクローズテストとし、後者はgap-filling testと呼ぶことを強く推奨している。なぜなら、この2つのテストは測定しているものが異なるからである。
 採点方法としては、元の文章に書かれていた単語以外は不正解にする方法と、文章中で意味が合致する単語は正解にする方法がある。【MO】
〈参考文献〉
・Alderson, C. (2000). Assessing reading. Cambridge University Press.
・隅田朗彦. (1997). 「第4章 リーディングについて、何が言われ、何がわかっているか 4. リーディングの能力の測定・評価」. 金谷憲 (編著)『英語リーディング論』(pp.119-132). 東京: 河源社.

cocktail party phenomenon/effect (カクテルパーティー効果/現象)
Cherry (1953) の発見によると、周囲で耳障りな騒音や別の会話がおこなわれていても意識的に耳を傾けている特定話者(一人もしくは数名)の声を聞き分けられることから、このような現象を命名した。聴解能力でそうした特徴は、創造的に言語を生成できる能力とも関係があるといわれている。つまり、人間の聴解システムは言語処理をするための高度な知覚メカニズムからできており、必要な音の情報だけを選び出し言語的に再構築していると考えられている。【Ng】
〈参考文献〉
・Cherry, E. C. (1953). Some experiments on the recognition of speech, with one and two ears. Journal of the Acoustical Society of America, 25, 975-979.
・Moore, B. C. J. (1982). An introduction to the psychology of hearing, 2nd ed. Academic Press.

code switching*

cognitive academic language proficiency (CALP: 認知・学習言語能力)
 (see "BICS")

cognitive theory
 (see "mentalist theory")

cognitive variables (認知的要因)& affective variables (情緒的要因)
Gardner(1985)が提唱するSocio-Education ModelのIndividual differencesは、この認知的要因と情緒的要因の2つから構成されている。認知的要因とは、異なった認知要素から成っており、例えば知能、言語適性、言語学習方略、過去の言語学習や経験を含んでいる。一方、情緒的要因は個々の学習者のあらゆる状況への反応を指す。言語姿勢、動機、不安、自信、性格、そして学習スタイルが情緒的要因として挙げられる。Socio-Education Modelによれば、個人、もしくは集団の社会文化的信念がこの2つの要因に影響を与え、そしてそれらの要因は学習状況や言語学習過程で重要な役割を果たし、結果、言語的、もしくは非言語的パフォーマンスにも影響を与えると考えられている。【KG】
〈参考文献〉
・Gardner, R. C. (1985). Social psychology and second language learning: The role of attitudes and motivation. London: Edward Arnold.
・Gardner, R. C. & MacIntyre, P. D. (1992). A student's contributions to second language learning. Part I: Cognitive variables. Language Teaching, 25, 211-220.
・Gardner, R. C. & MacIntyre, P. D. (1993). A student's contributions to second language learning. Part II: Affective variables. Language Teaching, 26, 1-11.

Common European Framework (CEF)
EU 諸国の言語教育(シラバス、カリキュラムの方針、試験、評価、教科書 等)で共通基盤を確立させるため、ヨーロッパ評議会(Council of Europe) によって作成された指標。ヨーロッパ各国の教育制度の違いで、専門的な国際間の対話・共同作業が進展しない現状の打開を目指し、教育の行政、コース・デザイン、教師やその養成者、テスト作成機関等が、それぞれ役割を確認し成果を共有できるように、また言語を通じて学習者の必要性に適合した仕事ができる手段を提示したものである。
もともとはEU圏内での言語教育を想定したものだが、応用言語学や第二言語習得の理論的背景を基に作られており、EU 以外の地域での言語教育にも応用できると考えられている。EU 圏外の諸国で言語教育にも取り入れられ始め、留学生を対象とする言語熟達度テストIELTS, University of Cambridge ESOL Examinations等の段階スコアで取り入れられている。日本でもCEFを用いた学習者の評価方法の応用可能性を試みた研究や、SELhiの特別事業での取り組みが発表され始めている(例:香住丘Can-Doグレード)。
CEFを作成したCouncil of Europeの文化協調会議(Cultural Co-operation)によると、一貫して長年にわたり三つの原則を守ることに同会議の存在意義を掲げ、大臣会議勧告文(Recommendation of the Committee of Ministers) のR(82)18前文にも、以下のような大意でまとめられている。

1)EUの多様な言語と文化は貴重な共通資源であり、保護・発展させるべきである。また多様性からのコミュニケーション問題を相互理解へと転換させるため、教育上の努力が必要とされる;
2)EUの多様な言語理解により、異なる母語話者同士の相互対話を容易にし、人の移動、相互理解や協力の推進、そして偏見と差別をなくす;
3)加盟国が現代語学習と教育の領域で、国家政策を展開・施行するにあたり、ヨーロッパ全体レベルの合意を目指し、政策協調が進展することを望む。

また学習者個人のレベルでも、以下のように一般的方策が加盟国政府に求められている。

1)他国のビジネスに関わるための援助、情報や意思・感情の伝達、生活様式・文化の深い理解に利用できるよう、コミュニケーション上の必要に応じられること。
2)学習者の必要性や動機など基盤を置き、明示的な目標設定、適切な教授法と教材、プログラムの評価形式や評価手段の開発で支援すること。
3)あらゆる教育レベルで、個人の必要性に応じたコミュニケーション能力習得に適した教材の研究開発を推進すること。

その他特筆すべきことに、使用する学習言語が必ずしも文法的に完璧でなくとも必要目的を達成しようとする複言語能力 (plurilingual competence) の概念や、そうした異文化への柔軟な態度を推進する複言語主義 (plurilingualism) の提案があり、多言語主義(multilingualism)とは異なる社会構想であると明示した点などが特徴的である。【Ng】
〈参考文献〉
・Council of Europe (2001). Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment. Cambridge University Press.
・ヨーロッパ日本語教師会(2005). 『ヨーロッパにおける日本語教育事情と Common European Framework of Reference for Languages』. 国際交流基金.
・永末温子. (2006). 香住丘高等学校SELHi研究をふり返って. TOEFL Mail Magazine vol. 50. Retrieved January 26, 2005, from http://www.cieej.or.jp/toefl/mailmagazine/mm50/selhi.html

common underlying proficiency (共有基底言語能力)
 
Cumminsによる、分離基底言語能力に対する言語能力の考え方である。第一言語能力が第二言語習得に影響を与えているという様々な研究結果から、2つの言語の機能は別々ではなく互いに依存しているといえる。つまり両言語とも一つの統合的な処理システムを通じて機能しており、認知・学習した技能を言語間で転移することが可能であることを示す。(see "separate underlying proficiency")【IN】
〈参考文献〉
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学事典』. 研究社.
・コリン・ベーカー(著). 岡秀夫(訳・編). (1996). 『バイリンガル教育と第二言語習得』. 大修館書店.

communication strategy (コミュニケーション方略・伝達方略・意思伝達ストラテジー)*
 文法や語彙の力が不足していて、自分の意思をうまく表現できない場合に用いられる手段 (白畑他, 1999, p. 62)。Tarone (1977, as cited in Ellis, 1994, p. 397) の分類が有名 (e.g., avoidance [回避], paraphrase [置き換え], conscious transfer [意識的転移], appeal for assistance [援助要請], mime [身振り])。例えば、conscious transferの例として、母語の使用がある (Where's the cat? → It's on … イス.)。他にも様々な分類が提唱されており、その様々な分類のcommunication strategyをBachman (1990) のコミュニケーション言語能力 (see "communicative competence") の枠組みの中で、包括的に捉える試みもなされている (岩井, 2000, pp. 108-114)。communication strategyを教えるべきか、教えられるのか (教育可能性) については、様々な意見があり、まだ結論が出ていない (岩井, 2000, pp. 206-227)。【K】
〈参考文献〉
・Bachman, L. F. (1990). Fundamental considerations in language testing. Oxford University Press.
・岩井千秋. (2000). 『第二言語使用におけるコミュニケーション方略』. 広島:溪水社.

communicative competence (伝達能力)
 正確な言語行為ならびに適切な言語行為についての知識、およびコミュニケーションの目的との関係における効果的な言語行為についての知識を含む。Hymes (1971a) は、Chomskyによる言語能力 (competence) と言語運用 (performance) の二分法は言語の一側面しか視野に入れていないと批判し、言語の運用には、(1) 文法的に可能か、(2) 実際に可能か、(3) 適切か、(4) 実際に生じるかの4側面を知っている必要があると主張した。また、Canale & Swain (1980)、Canale (1983)では、コミュニケーション能力を (a) 文法能力、(b) 社会言語能力、(c) 談話能力、(d) 方略的能力からなるとするモデルが提案されている。(Ellis, 1994, p. 13) その後、Bachman (1990) とBachman & Palmer (1996) により、名称は異なるものの、伝達能力のモデルが提案された。それは、方略的能力の意味を拡大し (問題が起きたときの対処法としての方略から、計画・実行などの認知的なものまで含んだ方略へ)、背景知識などとの関わりを示した、より複雑なモデルになっている。【S / K】
〈参考文献〉
・Bachman, L. F. (1990). Fundamental considerations in language testing. Oxford University Press.
・Bachman, L. F., & Palmer, A. S. (1996). Language testing in practice. Oxford University Press.
・Canale, M. (1983). From communicative competence to language pedagogy. In Richards, J. & Schmidt, R. (Eds.), Language and communication (pp. 2-27). London: Longman.
・Canale, M. & Swain, M. (1980). Theoretical bases of communicative approaches to second language teaching and testing. Applied Linguistics, 1, 1-47.
・Hymes, D. (1971a). On communicative competence. Philadelphia, P.A.: University of Pennsylvania Press.

Community Language Learning
 Community Language Learning(以下CLL)とは,カウンセリングの専門家であるCharles Curranが提唱した,第2言語・外国語学習におけるcounseling learningの応用である。CLLでは,心理的問題を抱えた人を支援するグループ・カウンセリングの手法を言語学習に応用しており,教師(カウンセラー)と学習者(クライアント)の役割を再定義している(Richards, Platt, & Platt, 1992; Richards & Rodgers, 2001)。したがって,CLLの基本手順はカウンセラーとクライアントの関係から由来していると考えられる。
CLLの授業展開として,Richards and Rodgers (2001)と米山(2003)は以下の手順を示している。
@学習者は輪を作り,向かい合うように並び,教師はその外に位置する。
A学習者は自由に話題を選んで目標言語または母語で話し合う。
B教師はそれぞれの発言者の後ろに立ち,必要な場合に小声で援助を与える。教師の助けにより、学習者は伝えたい内容を英語で表現することを学ぶ。
C学習者の会話は録音し,授業の後半で英語の部分を再生し,板書も併用して言語体系を学習する。
CLLは学習者の言語習得における不安など,心理的要因を軽減することに効果があるとされる(Koba, Ogawa, & Wilkinson, 2000)。しかし,教師は母語と目標言語双方に熟達していなければならず,心理カウンセリングでのカウンセラーの役割にも精通していなければならないことから,その負担は相当大きなものになるおそれがある(Richards & Rodgers, 2001; 白畑他, 1999)。【YS】
〈参考文献〉
・Koba, N., Ogawa, N., & Wilkinson, D. (2000). Using the community language learning approach to cope with language anxiety. The Internet TESL Journal, 6 (11). Retrieved February 10, 2009, from http://iteslj.org.Articles/Koba-CLL.html
・Richards, J. C., Platt, J., & Platt, H. (1992). Longman dictionary of language teaching and applied linguistics (2nd ed.). Essex: Pearson Education Limited.
・Richards, J. C., & Rodgers, T. S. (2001). Approaches and methods in language teaching (2nd ed.). Cambridge: Cambridge University Press.
・白畑知彦・冨田祐一・村野井仁・若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京:大修館書店.
・ 米山朝二. (2003). 『英語教育指導法事典』. 東京:研究社.

communicative language teaching(コミュニカティブ言語教育)
 概念・機能シラバス(notional-functional syllabus)に基づいた指導法。オーディオリンガル・メソッド(Audiolingual Method)のような指導法では言語能力(language competence)の育成に重点が置かれてきたが、コミュニカティブ言語教育ではコミュニケーション能力(communicative competence)の育成が重視される。
コミュニカティブ言語教育での指導内容は、ニーズ分析(need analysis)によって選定される。また、正確さ(accuracy)よりも流暢さ(fluency)を強調することやオーセンティック教材(authentic material)を活用すること、コミュニケーション活動(communication activity)を多く行うことなどがこの指導法の特徴として挙げられる。【KB】
〈参考文献〉
・Brumfit, C. J. and Johnson, K. (1979). The communicative approach to language teaching. Oxford: Oxford University Press.
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.
・Littlewood, W. (1981). Communicative language teaching: An introduction. Cambridge: Cambridge University Press.
・岡秀夫(監訳). (1999). 『外国語教育学大辞典』. 東京: 大修館書店.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.
・米山朝二. (2003). 『英語教育指導法事典』. 東京: 研究社.

communicative language test
実際のコミュニケーション状況下での言語運用力を測定しようとするテストのこと。communicative language testでは文法・語法などの言語知識だけでなく,社会的・文化的慣習に即した適切さや,コミュニケーションを効果的に進める能力なども含めて,外国語でのコミュニケーション能力を総合的に測定して,学習者の実際の英語運用力を判定する(白畑他, 1999; 米山, 2003)。また,言語運用力のどの部分に焦点を当てるかによって,テストの形式が異なる(Davies, 2005)。例えば,スピーキング・ライティングである発表技能や,リスニング・リーディングである受容技能を総合的に測定する方法(Kitao & Kitao, 1996)もあれば,4技能それぞれについて実施され,各技能に適した多様な形態をとること(米山, 2003)もある。このことから,communicative language testは言語が実際のコミュニケーションで使われるという考えを反映したテストであると考えられる(Kitao & Kitao, 1996)。【YS】
〈参考文献〉
・Davies, A. (2005). A glossary of applied linguistics. Edinburgh: Edinburgh University Press.
・Kitao, S. K., & Kitao, K. (1996). Testing communicative competence. The Internet TESL Journal, 2 (5). Retrieved February 11, 2009, from http://iteslj.org/Articles/Kitao-Testing.html
・白畑知彦・冨田祐一・村野井仁・若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京:大修館書店.
・米山朝二. (2003). 『英語教育指導法事典』. 東京:研究社.

Communicative Writing(コミュニカティブ・ライティング)
書き言葉による意思伝達をねらいとするライティング活動。McKay (1979)によれば,作文もコミュニケーション活動同様に,ある特定の状況においてどのように言葉を使うのかを知る技能が含まれるとしている。Communicative Writing (以下CW)では,文法的に正確で,流暢に書けることだけでなく,コミュニケーション能力を同時に伸ばせられるとしている。つまり,CWでは文法的に正しく書くことだけでなく,ある特定の状況において適切に,効果的に書くことも学習できるのである。
また,日本の英語教育においてコミュニケーション能力の育成が重点課題とされている現在,ライティングもコミュニケーション重視の学習活動へと転換が図られている。活動例としては,橋爪(2006)のダイアログ・ジャーナル・ライティングの手法が挙げられる。その活動では学習者が今日の授業の感想やその日一日の出来事を英語で書き,教師が英語でコメントを書いて学習者に返却する。その際,教師は学習者の文法・語法に関する誤りを訂正しない。その他CWの活動例として,新里(2000)や西山(2005)などが挙げられる。【YS】
〈参考文献〉
・McKay, S. (1979). Communicative writing. TESOL Quarterly, 13, 73-80.
・Zamel, V. (1976). Teaching composition in the ESL classroom: What we can learn from research in the teaching of English. TESOL Quarterly, 10, 67-76.
・沖原勝昭(編). (1985). 『英語のライティング』. 東京:大修館書店.
・新里眞男. (2000). 「ライティング場面をどう設定するか」『英語教育』第49巻,第9号,11-13.
・西山正一. (2005). 「中学生もその気になるライティング指導」『英語教育』第54巻,第6号,10-12.
・橋爪仙彦. (2006). 「コミュニカティブ・ライティングに向けて ダイアログ・ジャーナル・ライティングの導入」『鳥羽商船高等専門学校紀要』第29号, 5-12.

competence*

competition model(競合モデル)
 E. Bates & Mac Whinney(1982)によって提案された言語習得の認知主義モデルである。原理的には、言語産出(機能→形式)と理解(形式→機能)の双方を含む言語運用全般を扱いうるものである。この「機能」と「形式」は競合モデルでしばしば用いられる用語であり、「機能」とは意味論的側面と語用論的側面を含んだ広義の「意味」を指し、「形式」とは語や形態素の音声表現やその順序などの言語表現を示している。言語によって、同一の機能は異なる形式で表される。そのためこのモデルによると、言語習得とは、ある機能がどの形式によって表されるかを習得することである。そしてその習得は形式と形式を比べる(=競合する)ことによってなされる。【M】
〈参考文献〉
・Mac Whinney, B. (2001). The competition model: The input, the context, and the brain. In P. Robinson (Ed.), Cognition and Second Language Instruction (pp. 69-90). Cambridge University Press.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.

complexity (複雑さ)
ライティングやスピーキングのような言語産出を問題にする際、学習者がより発達・洗練された言語運用をしているかを説明する指標を総称したもの。現在のところ、複雑さの定義は更に2つに大別されることが多く、文法的複雑さと語彙的複雑さがこれにあたる。
Wolfe-Quitnero, Inagaki and Kim (1998) らは、L2作文における過去の研究から、説明し得る複雑さの測定尺度を数多く紹介し、共著書である種のメタ分析をおこなっている。代表的なものに、文法的複雑さは従属節(DC = Dependent Clause)・受動態の節数(PC = Passive Clause)や、主節を含む全節数からの割合(DC/C, P/C)といった節単位のもの、更には代名詞(PN = Pronoun)・接続詞(Conn = Logical Connective)といった品詞の頻度から示すものもある。一方、語彙的複雑さとは、異なり語(word types)による「語彙的豊かさ(WT/W = lexical variation/diversity)」や、総語数に対する内容語の割合によって「語彙密度(LW/W = lexical density)」と言い換えられることもある。また、使用頻度の少ない語彙を洗練語 (sophisticated words) とし、洗練語使用率(SWT/WT)で語彙的複雑さを定義する研究もあり、日本では語彙使用頻度をJACET 8000語彙リストの基準に用いたものが多くみられる。
 Wolfe-Quintero ほか (1998) の分析結果からは、先に挙げた指標全てが学習者の言語発達や熟達度に明らかな相関関係を示すわけではないことを報告している。可能性として調査データのサンプル・サイズやプロダクションの長さにratio等の値が影響を受けやすいことが考えられる。また、Foster and Skehan (1996) が統語的複雑さで「統語パターンの多様性」を提言することからも、熟達した学習者が常に複文・重文を用いるのではなく、単文と織り交ぜて使っている実態を量的に反映させるには、多指標の併用ばかりでなく、指標開発のための更なる研究・検証が求められる。【Ng】
〈参考文献〉
・Wolfe-Quintero, K., Inagaki, S., & Kim, H. (1998). Second language development in writing: Measures of fluency, accuracy, & complexity. University of Hawaii Press.
・Foster, P., & Skehan, P. (1996). The influence of planning and task type on second language performance. Studies in Second Language Acquisition, 18, 299-323.

compound/coordinate bilingualism*

comprehensible input*
 (see "Output Hypothesis")

comprehensible output hypothesis
 (see "Output Hypothesis")

comprehension
 (see "input/output")

comprehension approach
言語を理解してこそ、流暢な会話に発展するという、主に母語習得のプロセスに沿った考え方。オーディオリンガル・メソッドのように、規則(言語項目)をひとつひとつ積み重ねて覚えていくというよりは、主に音声面でのインプットを基盤として考え、十分に理解させてからアウトプットに移行するという方法をとるため、学習者に負荷がかかりすぎないと考えられている。過剰な負荷は発達を妨げてしまうため、学習者の理解に合わせるという手法である。共通する指導法としては、全身反応法(Total Physical Response: TPR)、ナチュラルアプローチなどが挙げられる。【ST】
〈参考文献〉
・Islam, C. (2003). Materials for beginners. In B. Tomlinson (Ed.), Developing materials for language teaching (pp. 256-274), London: Continuum.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 大修館.

comprehension checks
 (see "question type")

comprehension communication task
 (see "options in grammar teaching")

computer assisted instruction (コンピュータ利用の教育)
 コンピュータを利用して学習すること。特に言語教育にコンピュータを利用する場合を、computer assisted language learning (CALL: コンピュータ支援言語学習)と呼ぶ。CAIとはinstructionという語が示すように、教授する側から作られた用語であるため、現在では学習者の立場にたったcomputer assisted learning (CAL)ともよばれる。コンピュータを利用し始めた当初は、普段印刷されるような問題が単にモニターに映し出されただけのような学習ばかりであったが、現在ではプログラム開発も進んでいる。CAIによって、(1) 個別に効率の良い学習が可能になる, (2) 学習者への即時のフィードバックが可能になる、などの利点がある。ただし、いつもコンピュータを利用するのではなく、機器それぞれの利点を考慮しながら、場面に合わせて様々な教授法を組み合わせるのが望ましいと言える。【O】
〈参考文献〉
・岡秀夫(監訳). (1999). 『外国語教育学大辞典』. 東京:大修館書店. (Johnson, K., & Johnson, H. (1998). Encyclopedic dictionary of applied linguistics. Blackwell.訳)
・小池生夫, 井出祥子, 河野守夫, 鈴木博, 田中春美, 田辺洋二, & 水谷修. (2003). 『応用言語学事典』. 東京: 研究社.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.

confirmation checks
 (see "question type")

Connotation(内包:含蓄的意味)
Denotation(外延:指示的意味)としばしば対概念として用いられることが多いが、ある語が持つ意味の適用範囲の中心の典型的な部分が語の意味ということになる。しかし、外界の事物すなわち指示物を指す場合に固有名詞を除き、そこに結び付けられている価値的な要素例えば文化的なものやその語を用いる個人的な価値観などが含められることがある。このように、語の持つ意味の中心の典型的な部分のことを「外延」と呼ぶのに対し、その語に結び付けられている含蓄的もしくは周辺的な意味のことを「内包」と呼ぶ。【MU】
<参考文献>
亀井孝/河野六郎/千野栄一編 『言語学大辞典』、第6巻 術語編、三省堂、1996年
安藤昭一他編 『英語教育現代キーワード事典』、増進堂、1991年

Cooperative Language Learning(協同言語学習)
 協同言語学習(以下CLL)とは,ペアや小グループによる協同活動を最大限に生かした言語教育アプローチである。Olsen & Kagan (1992, p. 1)はCLLを,学習者が他の学習者と相互交流を図り,すべての学習者がお互いの学びを向上することができるようにするアプローチであると定義した。競争助長型・教師主導型の授業を懸念した影響もあって,CLLを提唱する教育者は,@すべての学習者の達成度を向上させること,A学習者の建設的な人間関係を育成するように教師を支援すること,B競争的な教室構造を,チームを基盤とした高い運用力のある構造へと組み替えること,へのアプローチを模索してきた(Richards & Rodgers, 2001)。また,CLLは教室でのコミュニカティブな相互作用を促進させることを可能にする,学習者中心型のアプローチとも考えられる。 CLLの課題としては,@熟達度の異なる学習者たちすべてにCLLの手法が使えるかどうか,A学習者のグループ分けに配慮が必要であること(fast learnersに過度の負担がかからないように,あるいはslow learnersがグループ学習に参加できるようにすること),BCLLにおいて学習者をペアもしくはグループとして機能させるための教師の工夫が必要であること,などが挙げられる(Jacobs, 2006; Richards & Rodgers, 2001; Yahya & Huie, 2002)。【YS】 <参考文献> ・Jacobs, G. M. (2006). Issues in implementing cooperative learning. In S. G. McCaffety, G. M. Jacobs & A. C. DaSilva Iddings (Eds.), Cooperative learning and second language teaching (pp. 30-46). Cambridge: Cambridge University Press.
・Olsen, R. E. W-B., & Kagan, S. (1992). About cooperative learning. In C. Kesseler (Ed.), Cooperative language learning: A teacher's resource book (pp. 1-30). Englewood Cliffs, NJ: Prentice Hall Regents.
・Richards, J. C., & Rodgers, T. S. (2001). Approaches and methods in language teaching, 2nd edition. Cambridge: Cambridge University Press.
・Yahya, N., & Huie, K. (2002). Reaching English language learners through cooperative learning. Retrieved October 21, 2008, from http://iteslj.org/Lesson/Yahya-Cooperative.html

consciousness raising (意識化)
 意識化の活動において、学習者は、目標言語構造を話したり、書いたりするよう求められることはなく、その構造がどのように機能するか、認知的表象を形成してそれを理解することが求められる。この意識化は、明示的知識 (see "explicit knowledge") の学習のために行われる。
 なお、Sharwood Smith (1991)は、インプット (see "input/output") を操作することによってそれが学習者にどのような影響を与えるかということは分からないと主張し、この「意識化」という用語に代わって、インプットをどう扱うかということを意味する「インプット強化」(input enhancement)という用語を用いた。テキスト内の目標言語項目を太字や斜体にして目立たせる方法などがある。(Ellis, 1994, pp. 643-645; p.661) 【S】
〈参考文献〉
・Sharwood Smith, M. (1991). Speaking to many minds: On the relevance of different types of language information for the L2 leaner. Second Language Research, 7, 118-132.    

conscious transfer
 (see "communication strategy")

context availability model
 この場合のcontextとは単語に含まれている情報と文脈としての情報の2種類を指す (Schwanenflugel, 1991)。ある単語を見て、その単語から想起される文脈の多さや、文脈を想起する時間の速さでcontext availabilityの高低が測られる。想起される文脈が多かったり、想起するまでの時間が短いほどcontext availabilityが高いと言える。Context availabilityが高い単語と低い単語を単一提示や中立的な文脈で提示して反応時間を測定すると、Context availabilityが高い単語の方が反応時間が短く低い単語の方が長い。しかし、supportiveな文脈でcontext availabiltiyの高い単語と低い単語をそれぞれ提示すると、反応時間の差は無くなることがSchwanenflugel et al. (1983) などの研究からわかっている。つまり、もともとのcontext availabilityの差は文脈の種類のよって消え、またcontext availabilityの低い単語の方が文脈の種類による影響を大きく受ける。【MO】
〈参考文献〉
・Schwanenflugel, P. J. (1991). Why are abstract concepts hard to understand? In P. J. Schwanenflugel, (ed.), The Psychology of Word Meanings (pp. 223-250). Lawrence Erlbaum Associates Publishers: NJ.
・Schwanenflugel, P. J. & Shoben,, E. J. (1983). Differential context effects in the comprehension of abstract and concrete verbal materials. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 9, 1, 82-102.

contrastive analysis*

contrastive grammar(対照言語学) 
 ある言語を言語史的に同族関係のない二つ(あるいはそれ以上)の言語と対比して、音、語彙、文法等の言語体系、さらには、それらを用いる行動である言語行動のさまざまな部分を対比させ、どの部分とどの部分とが対応しているのか、していないのかを明らかにしようとする学問分野のことを指す。対照言語学で取り扱われる複数の言語のうち、その一つは研究者の母語であるのが一般的で、その母語と研究対象の言語とどのように対比するのかということを研究するのが通常である。
 そもそも、対照言語学は、特にヨーロッパでは、プラーグ学派の創始者マテジウスによるチェコ語と英語の対照研究から始まる理論的な研究のことを指す。
 外国語学習の基礎ともなる言語の対比による研究を対照言語学として確立しようとする動きは、目に付くが、言語対比すべてに共通する基本的な目的や手段はいまだに確立していない。【MU】
<参考文献>
・安藤昭一他編 『英語教育 現代キーワード事典』、増進堂、1991年
・亀井孝/河野六郎/千野栄一編 『言語学大辞典』、第6巻 術語編、三省堂、1996年
・小池生夫他編 『応用言語学事典』、研究社、2003年

contrastive rhetoric(対照修辞学)
 対照修辞学(Contrastive Rhetoric)とは、文化による文章構成の違いについて取り扱う研究分野で、Kaplan (1966) によって初めて提唱された。Kaplanは文章の論理的構造は文化によって異なることを指摘し、文章構成に関する5つの型(i.e., English, Semitic, Oriental, Romance, Russian)を提示した。その中では例えば、英語のレトリックは結論に向かって直線的であるのに対し、日本語を含む東洋系言語(Oriental)の特徴は渦巻き型であると言われる。このようなレトリックの違いを踏まえKaplanは、言語学習では文章構成に関する学習も含めるべきであると主張した。【KB】
〈参考文献〉
・Kaplan, R. (1966). Cultural thought patterns in intercultural education. Language Learning, 16, 1-20.
・金谷憲(編). (2003).『英語教育評価論』. 東京: 河源社.
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.
・小室俊明(編). (2001).『英語ライティング論』. 東京: 河源社.

control group (←→experimental group)
 実験研究において、2群間に異なる条件を与えて比較を行う際に、条件を変化させない群をcontrol group(統制群)、変化させる群をexperimental group(実験群)と称す。例えば、新しい教授法の効果を見たい場合にはcontrol groupに対しては通常の指導を、experimental groupに対しては新しい教授法を用いた指導を行う。両群は年齢、学力、性別などの側面において同質である必要があり、無作為に抽出されることが望ましいが、実際には外国語教育分野においては、便宜上、クラスなどの単位間で比較が行われている場合が多い。【KN】
〈参考文献〉
・Richards, J. C., & Schmidt, R. (2002). Longman dictionary of language teaching and applied linguistics, 3rd ed. London: Pearson Education.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.

controlled composition/ writing(制限作文)
 
作文指導・学習法の一つで、作文の書く形式(form)や内容(content)にいくらかの制限を加えるライティング活動であることから、制限作文と呼ばれる。制限作文では学習者に、自由英作文に必要な文法構造や内容構成などの技法を身に付けさせることを目的とする。
制限作文では様々な手法が用いられる。例えば、制限作文の例として北内(1985)は、制限作文の手法を、@コピー(copying)のタイプ[(a)書写(copying)、(b)ディクテーション(dictation)、(c)ディクト・コンポ(dicto-comp)]、A置き換え表(substitution table/frame)を利用するタイプ、B書き換え(rewriting)のタイプ[(a)転換(conversion)、(b)置き換え(substitution)、(c)文の結合(sentence combining)]、C完成(completion)のタイプ[(a)空所補充(fill-in-the-blank)、(b)英問英答(question-answer)、(c)並べ変え(reordering)]、D付加拡充(addition)のタイプ、という@〜Dの5つのタイプに分類した。また、野田(1991)は制限作文のタイプとして、変更(alternation)、完成(completion)、質疑応答(Q and A)、置換(substitution)、文結合(sentence combining)、文拡張(sentence expansion)、ディクテーション(dictation)を挙げている。【KB】
〈参考文献〉
・北内薫. (1985).「制限作文」. 沖原勝昭(編). 『英語のライティング』(pp.130-170). 東京: 大修館.
・小室俊明(編). (2001).『英語ライティング論』. 東京: 河源社.
   ・野田哲雄. (1991).「書くことの指導」. 堀口俊一(編). 『現代英語教育の理論と実践』(pp.97-104). 東京: 聖文社.
・米山朝二. (2003). 『英語教育指導法事典』. 東京: 研究社.

controlled processing
 (see "automatic processing")

Controlled-to-Free Approach
 
オーディオリンガル・メソッド(Audiolingual Method)の考え方に基づいたライティング指導法。正確さ(accuracy)を重視した指導法であるため、ライティング学習では文法、統語法、機械的技術(mechanics:手書き、つづり、句読点など)に重点が置かれる。このような形式重視の学習を進めていくことで、自由英作文のための基盤を作ることがこの指導法の目的となっている。【KB】
〈参考文献〉
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.
・沖原勝昭(編). (1985). 『英語のライティング』. 東京: 大修館書店.
・Raimes, A. (1983). Techniques in teaching writing. Oxford: Oxford University Press.

convergence*

coordinate
(see "superordinate")

consolidated alphabetic phase
 学習者が単語のつづりを見て発音できるようになるまでの発達過程(発音までの4段階)の中の最終(第4)段階。成人と同じように発音ができる。つづりと発音の規則性(音素―書記素対応)が完全に理解できているため、音節や、rimes(ライム:音節よりも小さな音の単位。単語'sit'の場合であればsがオンセット、itがライムにあたる。cf., onset-rime awareness)、形態素の理解も可能となる。【ST】
〈参考文献〉
・Drake, D. A., & Ehri, L. C. (1984). Spelling acquisition: Effects of pronouncing words on memory for their spellings. Cognition and Instruction, 1, 297-320.
・Ehri, L. C. (1997). Learning to read and learning to spell are one and the same, almost. In C. A. Perfetti, L. Rieben, & M. Fayol (Eds.), Learning to spell: Research, theory, and practice across languages (pp. 237-269). Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associates Inc.
・Harley, T. A. (2001). The Psychology of language: From research to practice. NY: Psychology Press Ltd.

corrective feedback (修正フィードバック)
 
学習者の言語的誤りに対して聞き手が誤りを修正する意図を持って与えるフィードバック。否定フィードバック(negative feedback)とも呼ぶ。さらに、何が間違っているのかを学習者に明示する「明示的フィードバック」と、interactional modificationを用いて間接的に誤りに注意を向けさせる「暗示的フィードバック」に分類できる。【Na】
<参考文献>
・白畑知彦、冨田裕一、村野井仁、若林茂則(Eds.). (1999). A guide to English language teaching terminology. 東京:大修館書店.

counter balance model (カウンターバランスモデル)
 
家庭環境(family milieu)、学校環境(school milieu)、社会制度的環境(socio-institutional milieu)が言語能力向上に影響を与えると考える言語接触モデルである。言語維持力(ethnolinguistic vitality)(Giles et al., 1977)が低い言語集団の学習者(例えば、学習者の第二言語が社会制度的環境で優勢である場合)は、家庭環境と学校環境で第一言語を使用することにより、第一言語を失わず第二言語を習得できるという。また、言語維持力が高い集団の学習者(例えば、学習者の第一言語が家族環境や社会制度的環境で優勢である場合)は、学校環境が学習者の第二言語習得に有用であると指摘されている。【TA】
<参考文献>
・Giles, H., Bourhis, R. Y., & Taylor, D. M. (1977). Towards a theory of language in ethnic group relations. In H. Giles (Ed.), Language, ethnicity and intergroup relations (pp. 307-348). New York: Academic Press.
・Landry, R. & Allard, R. (1991). Can schools promote additive bilingualism in minority group children? In L. Malav? & G. Duquette (Eds.), Language, culture and cognition: A collection of studies in first and second language acquisition (pp. 198-231). Clevedon: Multilingual Matters.

creative construction*

creole*

critical period hypothesis (CPH)*

Crossing the Rubicon
Rubiconとはローマ時代の川の名前であり、ジュリアス・シーザーの軍隊が業を煮やしてその川をわたり、法律を犯してまでの戦争に踏み切ったという事実から、"crossing the Rubicon" という表現が、個人に何らかの行動を起こさせる最初の段階という意味を表すようになった。このことからHeckhausen (1991) (cited in Dornyei, 2001)は、'Rubicon Model of Action Phases'というモデルを用いて動機と行動の第一歩などの関係を調査している。【KG】
<参考文献>
Dornyei, Z. (2001). Teaching and Researching Motivation. Essex, England: Pearson Education Limited.

cross-section(al) study ( longitudinal study)
 言語のある側面など(e.g., 時制の使用)を測定・研究する際、同一時期に異なる参加者を対象に行われる実験をcross-sectional study(横断的研究)と称す。対照的に、時間の経過を追って(長期に渡って)同一の参加者を対象に行われる実験をlongitudinal study(縦断的研究)と称す。例えば、先述の時制の使用を対象とした場合、前者においては年齢などの要因を異にする参加者間の比較、後者においては同一参加者における時制の使用の年齢による変化・発達の過程を研究することができる。【KN】
〈参考文献〉
・Richards, J. C., & Schmidt, R. (2002). Longman dictionary of language teaching and applied linguistics, 3rd ed. London: Pearson Education.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.

C-Test
 
Klein-Braley & Raatz (1984)が発案 (川畑, 2001)。パッセージの1文目は削除せず、そのまま提示し、2文目以降の単語を削除する(ただし、1文目の長さによっては2文目もそのまま残す場合もあるようである)。単語の削除の割合は2語毎で、削除されるのは単語の後ろ半分である(単語の文字数が奇数の場合は削除する語の方が1文字多い)。利点としては、短いパッセージで多くの項目を確保できること、正答が原文中の単語1つのみとなり、採点が容易になることなどが挙げられる。C-testの例は以下の通り。
A study shows that gesturing is critical to thinking and communicating. To te a wid held the that gest is lea , investigators comp blind wi sighted chil . The aut of t study fo blind a sighted chil gesture a the sa rates wh speaking and u the sa range o gesture fo … (以下省略) 【HS】
〈参考文献〉
・川畑松晴 (2001). クローズテスト. In 門田修平・野呂忠司 (編著), 『英語リーディングの認知メカニズム』 (pp. 289). 東京:くろしお出版.
・Nakagawa, T. (2001). Validity and reliability of the C-test and the M-C cloze test. Tsukuba Review of English Language Teaching, 22, 99-116.

curriculum(カリキュラム)
 カリキュラムとは、各教科や科目、プログラムの教育内容や目標、指導計画、指導法、評価(assessment / evaluation)などを総合的に明記したものである。教育課程と同じ意味で扱われることもある。
シラバスはカリキュラムの一部であると考えられるが、アメリカではカリキュラムとシラバスの用語を区別せず、同じ意味として捉えられている(White, 1988)。【KB】
〈参考文献〉
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.
・岡秀夫(監訳). (1999). 『外国語教育学大辞典』. 東京: 大修館書店.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.
・White, R.V. (1988). The ELT curriculum. Oxford: Blackwell.
・米山朝二. (2003). 『英語教育指導法事典』. 東京: 研究社.


debilitating anxiety
 (see "anxiety")

declarative knowledge (宣言的知識)
 文法など事実についての知識。それに対して、実際に話す際などに、どう事実を使って行動するかについての知識は、procedural knowledge (手続き的知識) と呼ばれる。例えば、3単元のsの規則が説明できるが、実際に話すとその規則を適応できない学習者がいる場合、宣言的知識はあっても手続き的知識がないと考えられる (Mitchell & Myles, 1998, pp. 87-89)。Anderson (1985, as cited in Mitchell & Myles, 1998) が提唱したAdaptive Control of Thought (ACT)* Model (アクト・モデル) では、宣言的知識を繰り返し使うことで、学習者は、手続き的知識を持つようになる (proceduralization: 手続き化) とされる。【K】

decreolization*

deep dyslexia(深層性失読症)
 音韻性失読症と似通っているともいわれるが、意味的錯読症とも定義できる。目標語を提示したときに、意味的に関わりのある語が出てくるが、目標語は出てこない。(例えば、"daughter"という語を提示したときに"sister"、"pray"に対し"chapel"などが出てくる)ものの存在をイメージとしてとらえている傾向が見られる。イメージしやすい語ほど、発音しやすい(読みやすい)。しかし、具体性のある語全てを読むことができるわけではない。音韻性失読症と同じように、音韻を経由することに困難が生じ、書記素から音素への変換が難しいようである。また、意味体系の理解にも困難さを示す。 文中の理解に関していえば、例えば"FLY"という語は名詞であれば読めるが、動詞であると難しくなる。この場合、動詞としての"FLY"は名詞の場合よりもイメージ性が低く、それ故に読みにくさが生じる。音韻処理に関する誤り、書記素から音素への割り当て、転換などに関する誤りは、音韻性失読症と似通っているが、深層性失読症は特徴として、意味理解の間違いを起こしてしまう症状である。下位区分として3タイプ存在する。 @Input deep dyslexics: 正確な意味表象に到達するときに困難が生じる。聴解力は実際の発音(読み)よりも優れている。 ACentral deep dyslexics: 発音すること(読み)の困難さに加えて、重度の聴解力の欠損がみられる。 BOutput deep dyslexics: 語の意味表象に到達できるが、その意味を持つ語を発音する(読む)とき問題が生じる。(適切な語を発音できない。その語を発音できない) このように、3タイプあるものの明確な区別は難しいとされている。【ST】
〈参考文献〉
・Harley, T. A. (2001). The Psychology of Language: From data to theory. New York, NY: Psychology Press Ltd.
・門田修平. (2003). 『英語のメンタルレキシコン』. 東京: 松柏社.
・門田修平・野呂忠司編.(2001). 『英語リーディングの認知メカニズム』.東京:くろしお出版.
・Vallar, G. & Shallice, T. (Eds.). (1990). Neuropsychological impairments of short-term memory. New York: Cambridge University Press.

deep structure*

descriptive grammar(記述文法)
 ある言語の一定の時期に、現実に起こる特有の文法現象を忠実に記述する文法が記述文法である。そのため、詳細で正確な記述文法こそが、あらゆる文法理論を構築する上で、基礎的な資料となる。
 記述文法は、現実に話されている発話に基づくものであるので、規範文法とは異なり、表現上の正誤の価値判断を含まない。例えば、規範文法では、It's me.(それは私です。)は誤りで、It's I.としなければならない。
 記述文法には、音韻論(phonology)、形態論(morphology)、統語論(syntax)、語彙(vocabulary)の研究などがある。今後、意味論(semantics)を含めた総合的で、体系的な研究が求められる。【MU】
<参考文献>
・・安藤昭一他編 『英語教育 現代キーワード事典』、増進堂、1991年
・亀井孝/河野六郎/千野栄一編 『言語学大辞典』、第6巻 術語編、三省堂、1996年
・小池生夫他編 『応用言語学事典』、研究社、2003年
・田中春美編 『現代言語学辞典』、成美堂、1988年

developmental dyslexia (発達性失読症)
 英語を話す国々での研究が広く行われている。読みの能力の獲得における障害であるが、一方で書く能力に関する不具合もある。年齢として期待されるレベル(綴りなど)に到達できない子供などが、この障害を持っていると判断される。主に子供に関する研究が多いのもこのためである。綴りに困難さを示すという点から、音韻認識の欠落とも関連があるといわれているが、話すことや、ものの名前を言うときに問題を抱える場合もある。発達性失読症にも様々なタイプがあるが、主に音韻的欠落がこの障害の原因ともいえる。しかし、中には同義語の理解(例:"boat"と"ship"は同じ意味か?と聞かれ判断ができない)などが困難であるが、非語の発音などの能力には問題が見られない、という症例もある。学習障害とも分類できる。【ST】
〈参考文献〉
・Harley, T. A. (2001). The Psychology of Language: From DATA to theory. New York, NY: Psychology Press Ltd.
・Ziegler, J. C., Perry, C., Ma-Wyatt, A., Ladner, D., & Schulte-Korne, G. (2003). Developmental dyslexia in different languages: Language-specific or universal? Journal of Experimental Child Psychology. 86, 169-193.

developmental order (発達順序)
 学習者が言語項目を学ぶ順序。例えば、冠詞・be動詞など、機能の異なる言語項目が学ばれる順序である。Krashen (1977, as cited in Ellis, 1994) によると,
 (1) ing形・複数形・be動詞
 (2) 助動詞・冠詞
 (3) 不規則動詞
 (4) 規則動詞・3単元のs・所有の 's
の順で習得される (p. 94)。
 それに対してdevelopmental sequence (発達段階) は、ある言語項目を学ぶ際に、学習者がたどる段階であり、以下が例である。
<例:否定形がどのように学ばれるか>
 (a) noまたはnotを最初に付ける (No you are playing here.)
 (b) 主語と動詞の間にno, not, don'tを付ける (Mariana not coming today.)
 (c) 助動詞にnotを付ける (I can't play that one.)
 (d) 正しい使い方をする (She didn't believe me.) (Ellis, 1994, p. 100)
 developmental orderについては、日本人学習者でも発達順序には大きな違いがなかった研究と (Makino, 1980, as cited in Ellis, 1997, p. 61)、違いがあったものと両方がある (投野, 2001)。投野 (2001) では、(Krashenと用語を統一させて書くと、)
 [1] be動詞
 [2] 所有の 's
 [3] ing形
 [4] 複数形
 [5] 3単元のs
 [6] 不規則動詞
 [7] 冠詞 (時期は1, 2, 3と5, 6, 7がそれぞれ重なっている)
となった。投野 (2001) は、日本人の習得の特徴として、冠詞の習得が遅いことと、所有の習得が早いことを述べ、前者は、日本語にはないものであること、後者は日本語の「〜の」という表現と対応させられることを理由として挙げている。
 さらにdevelopmental orderについて、文法指導を受けた場合でも、その順序は変わらないという研究が多い (see "grammar teaching")。しかし、この結果は、暗示的知識についての発達順序であり、明示的知識の発達順序についてはまだ明らかでない (see "explicit knowledge"; Ellis, 1997, pp. 61-65)。【K】
〈参考文献〉
・投野由紀夫. (2001). 「学習者コーパス入門 最終回 実例に見る学習者コーパス分析 (2)」. 『STEP英語情報3・4月号』, 32-37.

developmental sequence
 (see "developmental order")

dichotic listening procedure*

dictation(ディクテーション)
 流れてくる音声を書き取る練習方法、もしくはテスト方法のこと。英文全てを書き取るだけではなく、英文の一部が空所になっておりその空所を埋める形式のものや、教師が発話した英文を絵にする形式のものもある。総合的な英語力を測定できると言われている。【MO】
〈参考文献〉
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京:大修館書店.

dictogloss(ディクトグロス)
 短くて内容の濃いテキストが学習者に向けて通常のスピードで読まれ、その間学習者は聞いているテキストに関するメモを取る。その後、少人数のグループ内でお互いのメモを共有しながら、聞いたテキストを再度組み立てて、元のテキストと比較する。元のテキストには目標とする文法項目が含まれており、テキストを組み立てる際に学習者はその文法項目について練習することになる。このdictoglossを通して、学習者はmetatalkをするようになることがわかっている。また、dictoglossの成功には目標となる文法項目が大きく影響している。【MO】
〈参考文献〉
・Swain, M. (1998). Focus on form through conscious reflection. In C. Doughty & J. Williams (Eds.), Focus on Form in Classroom Second Language Acquisition. Cambridge University Press.
・Williams, J., & Evans, J. (1998). What kind of focus and on which forms? In C. Doughty & J. Williams (Eds.), Focus on Form in Classroom Second Language Acquisition. Cambridge University Press.

Differential Item Functioning
 能力や知識が等しい2つグループのパフォーマンスが、ある項目に対して異なるときにDIFがあると言う。難易度が異なる時のことをuniform DIF、弁別力が異なる時のことをnon-uniform DIFと言う。多くの研究は民族や性差によって、このDIFがあるかどうかを調べており、またDIFがテスト全体 (Differential Test Functioning) に影響を及ぼすか調べた研究もあるが、一貫した結果は未だ出ていない。基本的には正解か不正解かというデータからDIFがあるかどうかを調べるが、錯乱肢に焦点を当てたDifferential Distractor Functioningという考え方もある。【MO】
〈参考文献〉
・Dorans, N. J., Schmitt, A. P., & Bleistein, C. A. (1992). The standardization approach to assessing comprehensive differential item functioning. Journal of Educational Measurement, 29, 309-319.
・Green, B. F., Crone, C. R., & Folk, V. G. (1989). A method for studying differential distractor functioning. Journal of Educational Measurement, 26, 147-160.
・Pae, T-I., & Park, G-P. (2006). Examining the relationship between differential item functioning and differential test functioning. Language Testing, 23, 475-496.

direct attention
 (see "metacognitive strategy")

direct method (直接教授法)
 母語を使わずに、目標言語だけを用いて指導する教授法。それまでの文法訳読法への反動として、19世紀後半から20世紀初めに現れた、様々な教授法 (例: Gouin Method (グアン・メソッド), Berlitz Method (ベルリッツ教授法)など)を総称してこう呼ぶ。これは、学習者は母語に翻訳したりせずに直接目標言語で処理・習得すべき、という考えに基づいている。直接教授法の基本原理は (1) 母語の仲介なしに直接目標言語だけで学習する, (2) オーラルコミュニケーションの技能が重視される、すなわち音声が重視される, (3) 文法は帰納的に指導される, (4) 意味は具体的な物や絵、動作などと結びつけて学ぶ, (5) 教師とのQ&Aで各技能を習得していく、などである。直接教授法には、学習者が最初から母語を介さずに目標言語に直接触れ思考できるようになる、listeningやspeakingのクラスに最適である、といった利点もあるが、母語が排除されているために理解に時間がかかったり、学習者が間違って理解する可能性があったりと、学習者にも教師にも負担の大きい非効率的な教授法でもある。(see "Grammar-Translation Method") 【O】
〈参考文献〉
・Richards, Jack C. and Theodore S. Rodgers (2001.) Approaches and Methods in
Language Teaching : a Description and Analysis. 2nd ed. Cambridge University Press.
・岡秀夫(監訳). (1999). 『外国語教育学大辞典』. 東京:大修館書店. (Johnson,
K., & Johnson, H. (1998). Encyclopedic dictionary of applied linguistics. Blackwell.訳)
・小池生夫, 井出祥子, 河野守夫, 鈴木博, 田中春美, 田辺洋二, & 水谷修. (2003). 『応用言語学事典』. 東京: 研究社.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.

discrete-point test*

display question
 (see "question type")

distractor(錯乱肢)
 受験者が答えを選ばなければならないような問題において、正答ではない選択肢のことを指す。錯乱肢は正答よりも難しくあってはいけないが、もっともらしくなければならない。なぜなら、受験者がほとんど選ばないような錯乱肢は機能していないために、錯乱肢の数が1つ減っているのと同じことであるためである。多肢選択式問題における錯乱肢の数は、3つでも4つでも受験者のパフォーマンスはほぼ変わらないことが複数の研究で示されている。【MO】
〈参考文献〉
・Davies, A., Brown, A., Elder, C., Hill, K., Lumley, T., & McNamara, T. (1999). Studies in language testing 7. Dictionary of language testing. Cambridge University Press.
・Haladyna, T. M., & Downing, S. M. (1993). How many options is enough for a multiple-choice test item? Educational and Psychological Measurement, 53, 999-1010.
・Shizuka, T., Takeuchi, O., Yashima, T., & Yoshizawa, K. (2006). A comparison of three- and four-option English tests for university entrance selection purposes in Japan. Language Testing, 23, 35-57.

divergence*

dual-mode system/dual-coding
 (see "formulas/formulaic speech")

dual storage model(二重貯蔵モデル)
 Atkinson and Shiffrin (1968) によって提唱された記憶モデルのひとつ。人の認知プロセスにおいて、視覚や聴覚を通じて入ってきた情報は、まず感覚登録器 (sensory register) に入り、感覚記憶 (sensory memory) と呼ばれるシステムで一時的にそのままの形で保存される。その後、選択的注意をかけられた一部だけが短期記憶(=ワーキングメモリ)として短期貯蔵庫 (short-term storage) へと送られる。短期記憶の特性として一度に保持できる情報の項目数やチャンク数は7±2であると言われており、リハーサルなどを経て残された情報だけが長期記憶 (long-term storage) へと送られる。長期貯蔵庫の容量には限りがなく、一度入った情報は失われないと考えられている。【MK】
〈参考文献〉
・Schulter, G. (1975). Functional aspects of information processing in human memory. Psychological Research 38, 23-36.
・中西義子.(2003).「第9章単語の処理と記憶:英単語リストの自由再生課題による検証」.門田修平(編).『英語のメンタルレキシコン』(pp.173-196).東京: 松柏社.
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.

dyslexia (失読症)
 aphasia(失語症) のうち読み書きの障害に関わるものはdyslexia (失読症) と呼ばれ、リーディングの障害に関わるalexiaとライティングの障害に関わるagraphiaに下位区分される (Sternberg,1993)。alexia患者は、聞き取れたことを書き下す (ディクテーションする) ことはできても、文字の形や語を識別できない (Richards, Platt, & Platt, 1985; Sternberg, 1993)。一方でagraphia患者は、他の目的に手を巧みに用いることはできても、書くことは全くできない。Alexiaとagraphiaの両方の症状が見られる患者は、読むことも書くこともできない (Sternberg, 1993)。
 Beebeは、バイリンガルの失語症患者の言語が必ずしも同じようには脳損傷に反応しないという事実から、言語は脳の同じ部分に局部化されているわけではなく、むしろ異なる部分に局部化されているのかもしれないのではないか、と主張している (Beebe, 1987)。
 また日本人の失語症患者を取り扱った研究からは、ブローカ野 (Broca's area) に障害のある患者は聞き取った内容を正しく書き下すことができるが、かな文字を書くことはできないという結果が報告されている (Sternberg, 1993)。一方でウェルニッケ野 (Wernicke's area) に障害のある患者は、流暢に漢字を書くものの、書かれたものは意味の通じない表記になる。いくら漢字とかなが似ている時でも、どちらか一方だけを損失してしまうことがある。【HI】
〈参考文献〉
・島岡丘 (監修). 卯城祐司 & 佐久間康之 (訳注). (1998). 『第二言語習得の研究--5つの視点から』. 東京:大修館書店. (Beebe, L. M. (1987). Issues in second language acquisition―Multiple perspectives. Boston, MA: Heinle & Heinle.訳)
・Richards, J. C., Platt, J., & Platt, H. (1985). Dictionary of language teaching & applied linguistics. London: Longman.
・Sternberg, D. D. (1993). An introduction to psycholinguistics. London: Longman.

echoic question
 (see "question type")

ellipsis(省略)
「省略」とは、形態的には完全な文にはなってはいないが、省略しても意味や伝達の際に支障がない要素を省略することを指す。省略の意味の解釈は、場面やコンテクストに依存することが多く、省略された部分を補いながら行ない、言語表現できる部分を表現しない省略は、復元可能であることを意味している。英語における省略は、その文脈における情報や場面、前提など既知的な場合に用いられる。【MU】
<参考文献>
小池生夫編 『応用言語学事典』、研究社、2003年
亀井孝/河野六郎/千野栄一編 『言語学大辞典』、第6巻 術語編、三省堂、1996年
安藤昭一他編 『英語教育現代キーワード事典』、増進堂、1991年

encoding*

epistemic question
 (see "question type")

error (誤り)
 Corder (1967)は、「間違い」(see "mistake")と区別して、学習者の言語能力 (competence) が不足していることによって生じるものを「誤り」と定義した。誤りの分類についてはいくつか提案されているが、伝統的なものとして、言語学的なカテゴリーに基づくものがある。それによると、誤りは「助動詞」に関する誤り、「受動文」に関する誤りなど言語的な観点から分類される。この他、Dulay, Burt, & Krashen (1982) による表層的ストラテジーによる分類は、誤りを、「省略」 (omissions)、「付加」 (additions)、「形式的な誤り」 (misinformations)、「順序に関する誤り」 (misorderings)などに分類している。 (Ellis, 1994, p. 51, pp. 54-57) 【S】
〈参考文献〉
・Corder, S. P. (1967). The significance of learners' errors. International Review of Applied Linguistics, 5, 161-169.
・Dulay, H., Burt, M., & Krashen, S. (1982). Language two. Oxford University Press.

error analysis*

error-avoiding
 (see "options in grammar teaching")

error-inducing
 (see "options in grammar teaching")

ethnography (エスノグラフィー)
質的研究の1つの手法。文化人類学や社会学で発達した方法論である。行動や事象などの研究対象が、社会や文化と不可分なものだとし、切り離して考えるのではなく、文化的社会的場面や文脈の中でその形式や機能をとらえていく。この手法では、研究者は長期の多角的観察・調査の中で、特定の文化や社会に深く入り込んでいる必要があると同時に、一定の距離を保ち、客観的な観察を行うことも必要になる。【O】
〈参考文献〉
・岡秀夫(監訳). (1999). 『外国語教育学大辞典』. 東京: 大修館書店.
・小池生夫 (編集). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.
・靜哲人他. (2002). 『外国語教育とテスティングの基礎概念』. 大阪: 関西大学出版部.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.

exemplar-based
 (see "formula/formulaic speech")

expectancy-value theory (期待価値理論)
 人間があるタスクを行う際、それを達成するための能力やスキル、自信を持ち合わせているかどうかの自己認識から生まれる成功への「期待」、そしてなぜ達成しなくてはならないのか、達成後どのようなことが起こるのかという自らがそのタスクに対して感じる「価値」に関して主観的評価を行うという理論であり、この認知的評価のプロセスが個人のタスクに対する行動を規定し、パフォーマンス、その後の学習選択に大きな影響を与えるとされている。「期待」は過去の学習経験や能力・知識の自己認知などによって決定され、 1) Attribution theory, 2) Self-efficacy theory, 3) Self-worth theoryの3つの動機づけ理論と関連している。また「価値」はそのタスクと、自らの目標や自己概念との関係から生まれるものであるが、1)内発的興味、2)重要性、3)有用性、4)コストという4つの次元から主観的に判断される。Isoda(2006)は、期待と価値が判断された後、行動の強さや方向性を決定する「意図」が形成されると想定した調査を行った。その結果、前提としてまずは価値が肯定されるべきであり、そして成功する見込みが高まれば、行動に対する意図が生まれるとしている。【KK】
〈参考文献〉
・Doernyei, Z. (2001). Teaching and researching motivation. London: Longman.
・Pintrich, P. R., & Schunk, D. H. (2002). Motivation in education: Theory, Research, and application (2nd edition). New Jersey: Merrill Prentice Hall.
・Isoda, T. (2006). A situation-specific view of motivation: Examining the process of learners' appraisal of a task. JACET Bulletin, 43, 15-28.

explicit knowledge (明示的知識)
 分析された形で存在する、規則などについての意識的な知識で、学習者がそれについて語ることができるもの (Ellis, 1994, p. 702)。言語について語る際に必要な文法用語 (例:名詞) の知識 (metalingual knowledge, メタ言語の知識) と類似しているが、文法用語を使わなくても意識的に規則を語れる場合も、明示的知識と呼ばれる (白畑他, 1999, pp. 107-108)。明示的知識に対するものとして、暗示的知識 (implicit knowledge) がある。これは、無意識的で直感的な知識で、実際に言語を使用する時にのみ現れる。ほとんどの母語話者が持っている知識は暗示的知識と言われる (Ellis, 1994, pp. 355-356, 707)。明示的知識が暗示的知識に変わるのかについては、練習により変わると考える立場 (e.g., Bialystok, 1978) と、暗示的知識の習得を助けるだけで、変化はしないと考える立場 (e.g., Terrell, 1991, both cited in Ellis, 1994, pp. 360-361) がある。【K】

exposure*

expressive question
 (see "question type")  

facilitating anxiety
 (see "anxiety")

feature focused
 (see "options in grammar teaching")

feedback options
 (see "options in grammar teaching")

field dependence (場依存)
 学習者の認知スタイルで、場依存は、認知が周りの場の全体的な構成に強く支配されるスタイルのこと。それに対し、場独立 (field independence)は、場の部分にあたるものを切り離してとらえる認知スタイルをいう。言語学習との関連については、(1) 場独立の学習者の方が形式的な学習において有利である、(2) 場依存の学習者の方が他の第2言語使用者とより頻繁にやりとりを行おうとする、(3) 場独立の学習者は演繹的な教授法に適していて、場依存の学習者は帰納的な教授法に適しているなどの仮説がたてられ、これらに基づく研究も行われているが、いずれも支持されるまでにはいたっていない。 (Ellis, 1994, pp. 500-506) 【S】

field independence (場独立)
 (see "field dependence")

first language
 (see "second language acquisition")

flooding
 (see "options in grammar teaching")

flow (フロー)
 タスクに従事している際に、学習者が目標言語を使った活動であることや時間の経過を忘れてしまうほど強く集中・熱中して取り組んでいる心理的状態。この状態にいる学習者は強く動機づけられており、高いパフォーマンスや自発的な活動の繰り返しが引き出され、学習者の言語スキルを向上させるものと考えられている。Egbert (2003)によると、言語学習におけるflowはタスクに関する以下の4つの条件が満たされる必要があるという。
(1) 学習者のスキルとタスクの要求するチャレンジに適切なバランスが保たれているかどうか
(2) タスク達成に重点的に注意を向けることができるかどうか
(3) タスクそのものが学習者の興味を喚起するものであり、オーセンティックなものであるかどうか
(4) 学習者が自らの学習をコントロールしていると実感できる自律的な状態を保障できるかどうか 【KK】
Egbert, J. (2003). A study of flow theory in the foreign language classroom. Modern Language Journal, 87, 499-518.
D?rnyei, Z. (2005). The psychology of the language learner. Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associates.

fluency (流暢さ)
 学習者が、自然でなめらかに目標言語を理解したり、話したり、書いたりできる状態。流暢さには広義の定義と狭義の定義があり (岩城, 1991)、広義の定義においては流暢さを判断する指標は、語彙やイディオムを記憶から自動的に引き出したり、よどむことなく文法構造を使うことができたりすることである (野呂, 2001)。なお、speaking fluencyには、語彙・イディオムや文法などの指標の他に、間の取り方 (pausing)、リズム (rhythm)、イントネーション (intonation)、強勢(stress)、話す速度、などの音韻的特徴も含まれる (岩城, 1991; 白畑他, 2001)。一方、狭義の定義においては音韻的特徴が重視され、間の取り方 (pausing)、リズム (rhythm)、イントネーション (intonation)、強勢 (stress)、話す速度、Tユニットあたりの平均語数 (T-unit)、間投詞やためらいや割り込みの表現を母語話者のように使うことができるか、などが流暢さの度合いを判断する指標となる。
 またGrabe (2002) を参考にすると、reading fluencyは、読みが迅速にかつ効率的に行われ、読み手は読む目的に従って、能動的に書かれてあることの解釈を種々の方略を用いて試み、その結果書かれてあることが理解可能になるような読みのことである。
 流暢さを重視するにあたり、どの程度の正確さを求めるかがしばしば問題になるが、正確さと流暢さは相対立するものではなく相互に補い合う関係であるので、第二言語習得においてはどちらも重視されるべきである (岩城, 1991)。【HI】
〈参考文献〉
・岩城禮三. (1991). 「正確さ / 流暢さ」. In 安藤昭一(編), 『英語教育現代キーワード事典』 (pp. 186-188). 東京: 増進堂.
・Grabe, W., & Stoller, F. L. (Eds). (2002). Teaching and researching reading. London: Longman.
・野呂忠司. (2001). 「繰り返し読みの方法」. In 門田修平 & 野呂忠司 (編), 『英語リーディングの認知メカニズム』 (pp. 352-361). 東京: くろしお出版.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.

fMRI(機能的MRI)
 脳内の部位ごとの血流量の変化を測定ないし推定することで、その部位の活動水準を調べるもの。この装置の中で被験者が所定のタスクを行い、タスク中の脳の活動状態を撮像する。近年は脳の機能と言語処理など、脳の機能についてさまざまな領域で研究が行われている。【W】
〈参考文献〉
・大村彰道(監修). (2001). 『文章理解の心理学』. 京都:北大路書房.
・門田修平, & 野呂忠司(編). (2001). 『英語リーディングの認知メカニズム』. 東京:くろしお出版.

focus (焦点)
 
文の中に含まれている情報の中で、最も重要かつ中心となる部分。発話には、聞き手・話し手共有の情報と見なす「旧情報」と、共有していないと考える「新情報」が含まれる。一般的に焦点となる要素は、新情報で強勢が置かれる。
(a) What John ruined was his SUIT.
(a)の文の焦点は_his suit_となる。一般的に焦点は、この文のように文末に置かれる。しかし、動詞など文末以外に焦点が置かれる場合もある。
(b) I saw JOHN at the market. (私は(他の人ではなく)ジョンに会った。)
(c) It was John who I saw at the market.
(b), (c)では、文末ではないが_John_が焦点になっている。また、談話においてはこの焦点がその後の主題を構成することになる。【O】
〈参考文献〉
・安藤貞雄 & 小野隆啓(編). (1993). 『生成文法用語辞典』東京: 大修館.
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.
・原口庄輔&中村捷(編). (1992). 『チョムスキー理論辞典』東京: 研究社.
・Richards, J. C. & Richard W. S. (2003) _Longman Dictionary of Language Teaching
and Applied Linguistics._ Addison Wesley.
・安井稔(編). (1996). 『コンサイス英文法事典』 東京: 三省堂.
注) 文中の例文は、安藤&小野 (1993)(例文(a))、Richards & Richard (2003)(例文
(b), (c))より引用した。

focused communication
 (see "options in grammar teaching")

focused task
 ある特定の言語要素、例えば文法構造の受容的かつ生産的学習が意図されており、その目的はコミュニカティブな言語使用を促し、ある特定の決められた要素の使用が目標とされている。焦点をあてる方法としては、特定の形式を使用することでのみパフォーマンスが完成するようにタスクを作成する方法や、言語自体をタスクの内容にする方法がある。3種類のfocused tasksをEllis (2003)は紹介しており、それらはStructure-based production tasks, Comprehension tasks, Consciousness-raising tasksである。前者2つのタスクは暗示的知識(implicit knowledge)に焦点をあて、理解のレベルで意識を高め、Consciousness-raising tasksでは、明示的知識(explicit knowledge)に焦点をあて、気づきの段階での意識を高めるよう作成されている。【KG】
〈参考文献〉
・Ellis, R. (2003). Task-based language learning and teaching. Oxford, New York: Oxford University Press.

focus on form
 (see "grammar teaching")

focus on forms
 (see "grammar teaching")

focus on meaning
 (see "grammar teaching")

foreigner talk (外国人言葉)
 母語話者が非母語話者に話しかけるときに使用される言葉。その特徴については、ベビー・トーク(see "baby talk")と共通する点も多いが、平叙文が多いといった異なる点もある。ベビー・トークが子供に指示を与えるものであるのに対し、外国人言葉は情報交換を主目的とするものであるからと考えられる。文法にかなっていない形での修正 (例: be動詞の省略)、文法にかなう形での修正 (例: 単純化、精緻化)、相互交流的修正 (interactional modification; 例: 理解確認、意味交渉; see "negotiation of meaning")などがある。(Ellis, 1994, pp. 251-265) 【S】

foreign language
 (see "second language acquisition")

foreign language classroom anxiety scale
 (see "anxiety")

forgetting (忘却) 
一般的には、時間の経過に伴う記憶の薄れ。または、以前の経験・学習したことを再生したり行動が再現できなくなること。Melton (1963) の理論によると、符号化→貯蔵→検索の3段階のうち1つ以上の段階で失敗が起こったとき忘却と定義される。例えば新たな語彙の意味を覚える場面では、その語彙にはじめて遭遇して意味を調べたり教えられたとき「符号化」がおこる。また、その意味を忘れないように保存することを「貯蔵」という。そして保存した語彙の意味を取り出して辞書なしに読めたとき「検索」したことになる。
忘却の原因を示す仮説で代表的なもの2つが挙げられる。最も古くから考えられていた説に、「減衰説」(または記憶痕跡の崩壊)がある。これは生物の生理的な変化を根拠にしており、使われない記憶の内部プロセスは時間とともに減少していくことが推論され、Ebbinghaus (1885)はこの説を基本として「忘却曲線」を紹介している。自動的に記憶項目は減るものだと説く減衰説に対して、「干渉説」では古い項目が新たに入った項目に対し記憶の妨害になる「順行抑制」と、新たな項目が古い項目へ置き換わる「逆行抑制」と呼ばれる作用がはたらいていると説明している。ただし、これらの仮説は現在でもまだ実証されたとは断定できず、それ以前にテストなどによる減衰した記憶項目群を取り出すための適切な刺激や、観測したい干渉のみを取り出す方法を編み出すことが難しいといわれている。【Ng】
〈参考文献〉
・Ebbinghaus, H. (1885). Uber das Gedachtnis. Duncker and Humbolt, Leipzig. [English translation, Dover Press, New York]
・Melton, A. W.(1963). Implications of short term memory for a general theory of memory. Journal of Verbal Learning and Verbal Behavior, 1, 1-21.
・小谷津孝明 (編). (1982). 『現代基礎心理学4 記憶』. 東京大学出版会.
・梅本堯夫(編). (1969). 『講座心理学 第7巻 記憶』. 東京大学出版会.

form-focused question
 (see "question type")

formulas/formulaic speech (決まり文句)
 学習者は、特に第2言語学習の初期の段階に、(1) "I love you."や(2) "My name is …." などの、分析せずに、既成のフレーズを学び使用するが、それをformulaと呼ぶ。その中でも(1) はroutinesと呼ばれ、全体として覚えたもの、(2) はpatternと呼ばれ、1つ以上の空所があるものである (Ellis, 1994, p. 703, 718, 722)。
 Skehan (1998) によれば、人が言語を使う際には、formulasに基づいて行う (exemplar-based) 場合と、規則に基づいて行う (rule-based) 場合と2つあり、それが同じ人の中で、状況に応じて適切なシステムを用いる (dual-mode system/dual-coding)。しかし第2言語を学ぶ場合、必ずしもそれがうまくいくとは限らず、2つの処理体系をバランスよく伸ばしていくような指導が求められる (pp. 88-92)。【K】

fossilization*

Free Writing(フリー・ライティング)
 
一定時間内に,ある1つのテーマに沿って学習者が思うこと・考えることを,書く形式に何の制限も受けずに書き進めていくライティング活動。Free Writing (以下FW)のねらいは,学習者の英語で書くことへの不安を軽減させる他に,書くことにおける流暢さへの足がかりとすることである。長谷川(1991)はFWの指導手順を,@学習者にテーマを与える,A1分間そのテーマについて考える時間を与える,B3分間free writeさせる,とした。Bの留意事項では,「思考の流れを途絶えさせない」,「必ずしも完全な文である必要はない(語,句を並べてもよい)」などの9項目がある。また,Dickson (2001)もFWの手順を,@Preparing for writing(FWを行う際に必要なものを準備する), ASetting up the task(学習者は教師から、「10分間,立ち止まることなくできる限り多くのことを書くこと。」と指示を受ける), BFreewriting(学習者は10分間のFWを行う), CPostwriting(FW終了後,教師は学習者にフィードバックを与える), とした。
長谷川(1991)はFWから始まり,書く過程へとつなげる指導についても提案している。それは,FWを出発点とし,プロセス・ライティングの始めの段階であるFirst Draftingへとつなげていく。さらにそこからAnalyzing in Group(書いたものを持ち寄り,グループ内で討議すること),Second Drafting,Writing Conference(生徒が書いたものを持ち寄り,教師と相談すること),Revising,Final Draft,Proofreadingへと進めていくのである。【YS】
〈参考文献〉
・Dickson, K. J. (2001). Freewriting, prompts, and feedback. The Internet TESL journal, VII, August 2001. Retrieved June 22, 2008, from http://iteslj.org/Techniques/Dickson-Freewriting.html.
・沖原勝昭(編). (1985). 『英語のライティング』. 東京:大修館書店.
・長谷川和則. (1991). 「表現力を育てるライティング指導 'free writing'からの出発」『筑波大学学校教育部紀要』第13巻, 239-253.

full alphabetic phase (level)
 学習者が単語のつづりを見て発音できるようになるまでの発達過程(発音までの4段階)の中の第3段階。文字と音の結びつきを完全に理解できる。規則性を理解しているため、単語が未知語であっても音読をすることが可能となる。音素―書記素対応を完全に理解している。また、学習を進めていくうちに、sight-word readingが可能となる。文字を見て発音してから、音と意味を結びつけるというプロセス(cf., 音韻ルート)を経由せずに直接文字から意味に結びつけられるようになるため、意味理解までの時間がはやくなる。【ST】
〈参考文献〉
・Drake, D. A., & Ehri, L. C. (1984). Spelling acquisition: Effects of pronouncing words on memory for their spellings. Cognition and Instruction, 1, 297-320.
・Ehri, L. C. (1997). Learning to read and learning to spell are one and the same, almost. In C. A. Perfetti, L. Rieben, & M. Fayol (Eds.), Learning to spell: Research, theory, and practice across languages (pp. 237-269). Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associates Inc.
・Harley, T. A. (2001). The Psychology of language: From research to practice. NY: Psychology Press Ltd.

function word(機能語)
単語には内容語 (content word) と機能語がある。内容語は名詞・動詞・形容詞・副詞などで事物、動作、様態、状況を表す。内容語は単独で使われても意味のある語である。一方、機能語は前置詞・冠詞・接続詞・代名詞・助動詞が含まれ、これらは主に文法的な役割を果たし、単独では意味をなさないものである。(白畑他, 1999を改編)。Nation (2001) によると、機能語が極端に多いテキストはその談話で重要な特徴を示しているかもしれないと述べており、談話様式の研究において機能語が大きな役割を果たす可能性がある。【MO】
〈参考文献〉
・Nation, I. S. P. (2001). 『Learning Vocabulary in Another Language』
・白畑知彦, 富田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 大修館.

Generalizability Theory (一般化可能性理論)
 理論的枠組みとしては、古典的テスト理論と分散分析を基に構築されたとみられる統計的分析手法。観測された変数(誤差の原因にもなるので、この理論では変動要因と呼ばれる)と、それによって得られる分散成分から、信頼性係数に相当する一般化可能性係数を求める。
例えば、スピーキングやライティングの直接テストを複数のトピック、複数人数の教師でおこなった場合、タスク・評価者・評価基準などの違いにより、測定した会話や作文の能力が一定の値で測定されるとは考えられない。この場合、テストで観測が認められた変動要因を「タスク」、「評価者」、「評価項目」といった変動要因を用いて分析する。
一般化可能性理論の自動処理を可能にした分析ソフトGENOVAでは、G-study (generalizability study) とD-study (decision study) 、2つの結果を返す。先の例で、前者G-studyは典型的に一般化された1つのトピック、1人の評価者、1つの評価基準における構造モデルの分解、そこから典型的な1人の受験者に対してどの程度信頼ある得点が与えられるのかを報告する。一方、後者D-studyでは分解された構造モデルを仮説的に組み合わせ、一般化可能性係数の推計をおこなう。そうしたある種のシミュレーション結果を解釈することによって、同じようなテストの実施回数や評価者の増員でどのくらいの信頼性に到達するのかを予測できる。【Ng】
〈参考文献〉
・Brennan, R. L. (2001). Generalizability theory. New York: Springer.
・三浦省吾(監修)前田啓朗・山森光陽 編著. 磯田貴道・廣森友人 (2004).『教育データ分析入門』. 東京: 大修館書店.

generalized context model (GCM)
 概念間の類似性や近似性を空間における距離で示すspatial models / similarity spaceを様々な状況下で使用するためにNosofsky (1984, 1986, 1988) によって考案されたモデル (計算式) でカテゴリー化に関するモデルのうち、exemplar model (Medin & Schaffer, 1978) を発展させたもの。このexemplar modelとは、XがカテゴリーAに含まれるかどうかを判断する際、XとカテゴリーAに含まれるもの (exemplars) との類似性を検証するというモデルである (Heit, 1997)。GCMとexemplar modelに含まれる他のモデルとの違いは "similarity" の捉え方にあり、GCMでは刺激 (stimulus) 間の距離は反比例の関係として扱われている (Lamberts, 1997, p. 385)。LambertsはGCMを更に発展させ、EGCM (extended generalized context model) を提案している。
【Na】
〈参考文献〉
・Hahn, U., & Chater, N. (1997). Concepts and similarity. In K. Lambers & D. Shanks (Eds.), Knowledge, concepts, and categories (pp. 43-92). Cambridge, Massachusetts: The MIT Press.
・Heit, E. (1997). Knowledge and concept learning. In K. Lambers & D. Shanks (Eds.), Knowledge, concepts, and categories (pp. 7-42). Cambridge, Massachusetts: The MIT Press.
・Lamberts, K. (1997). Process models of categorization. In K. Lambers & D. Shanks (Eds.), Knowledge, concepts, and categories (pp. 371-404). Cambridge, Massachusetts: The MIT Press.

global error/ local error(全体的誤りと局所的誤り)
 全体的誤り(global error)とは、第二言語習得段階で学習者が話したり書いたりした文構造全体に、コミュニケーションの妨げになるような大きなエラーがあることで、意味を理解することが出来ない、または意味を理解することが困難なエラーを指す。一方、局所的誤り(local error)とは、コミュニケーションをするためにはそれほど問題にならない小さなエラーを指す。ライティング指導においてBurt & Kiparsky (1972) は、学習者の全体的誤りは直し、局所的誤りは直さなくてもよいと述べている。【KB】
〈参考文献〉
・Burt, M. and Kiparsky, C. (1974). Global and local mistakes. In J. Schumann & N. Stenson (Eds.), New frontiers in second language learning. (pp.71-80). Newbury House.
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.
・米山朝二. (2003). 『英語教育指導法事典』. 東京: 研究社.

goal orientation theory (目標志向性理論)
 タスクに取り組む際にどのような目的やゴールを持つかによって、それを達成させるためにとるプロセスや態度、タスクへの従事の度合い、更にはパフォーマンス等が異なると考えられている理論である。当理論には2種類の目標が仮定されている。1つは習得目標(mastery goal)であり、自らの能力を向上させるために学習・習得そのものに興味を持って取り組むことが目標となる。もう1つは遂行目標(performance goal)であり、競争に勝つこと、社会的に認められる結果を出すこと、能力を低く見せないことなど、能力の証明や他者との比較に焦点が当てられる。遂行目標は更に接近(approach:良い成績を取る等)と回避(avoidance:能力を低く見せないための回避等)に区別される。習得目標とストラテジーの使用や内発的動機づけ、成績との相関関係が様々な研究によって明らかになっているため、習得目標を促進する指導が求められている。しかし遂行目標でも接近の場合には習得目標に見られるような様々な要因との正の関係があり、習得目標も必ずしもパフォーマンスに対して直接的な正の関係があるわけではないため、SLAの分野においても更なる研究が望まれる。【KK】
〈参考文献〉
・Doernyei, Z. (2001). Teaching and researching motivation. London: Longman.
・Pintrich, P. R., & Schunk, D. H. (2002). Motivation in education: Theory, Research, and application (2nd edition). New Jersey: Merrill Prentice Hall.
・Urdan, T., & Turner, J. C. (2005). Competence motivation in the classroom. In Elliot, A. J., & Dweck, C. S (Eds.). Handbook of competence and motivation (pp. 297-317). New York: Guilford Press.

Grammar-Syntax-Organization Approach
文構造や文法を学ばせる目的で書かせることと、書く目的を与えて必要なパラグラフ構造を同時に学ばせることを目的とした指導法 (Raimes, 1983)。たとえば、書く目的を家から学校までの道案内とした場合、right, leftなどの方向、方角を表わす語彙や目印となるものを示す語彙、go down, turn, seeなどの特定の動詞、動詞句、first, then, finallyなどの順序を示す副詞や副詞句から特定の文構造などを同時に指導して、それらを用いて作文させる。従来の指導と同じく文構造や文法的な正確さを強調するが、それに加えて目的のために書かせることに意義がある。【Ng】
〈参考文献〉
・Raimes, A. (1983). Techniques in Teaching Writing. New York: Oxford University Press.

grammar teaching (文法指導)
 学習者の注意を、第2言語のある特定の言語形式に向けさせ、学習させる指導のことで、formal instruction (形式の指導)、form-focused instruction (言語形式重視の指導) とも呼ばれる。Focus on Forms (言語形式を独立させて指導する指導法) とFocus on Form (意味の伝達を中心とする言語活動の中で必要に応じて学習者の注意を言語形式に向けさせる指導法)の分類や、明示的指導 (文法規則の説明、特定の文法項目に焦点をあてた練習、否定的フィードバック、文法規則の復習からなる指導法) と暗示的指導 (特に文法規則を説明することはしないが、学習者の目標言語への接触を増やすことで、自然に文法を学習させる指導法) の分類などがある。
 Norris & Ortega (2000) は、49の先行研究をそれぞれ指導タイプ別に分け、効果の大きさを比較した。その結果、Focus on FormとFocus on Formsの効果に違いはなく、また、明示的指導の方が暗示的指導よりも効果があるということが示された。
 さらに、Focus on Forms, Focus on Formに対応する語としてFocus on Meaning、form-focused instructionと対応する語としてmeaning-focused instruction (意味重視の指導; 形式重視の指導と意味重視の指導の関係については、see "meaning-focused instruction") がある。
 文法指導の効果については、Krashen (1982, as cited in Ellis, 1997, p. 46) を代表とする、「文法の指導の効果を否定し、自然に言語を使う機会を作れば、文法指導は必要ない」「コミュニケーションをしていれば完全な文法能力が習得できる」と主張するzero positionと呼ばれる立場 (see also "interface position") もある。しかし、現在では、その主張に反論する十分な証拠がある (Ellis, 1997, p. 55)。コミュニケーションを取る機会が多い授業を受けても、文法能力や社会言語学的能力 (言語を適切に使う能力) が高いレベルにはならないからである。
 では文法指導は効果があるのかというと、全てに関して有効ではない (例:発達順序は指導をしても変わらない; see "developmental order") が、ある部分に関しては効果があると言える。例えば、学習者が暗示的知識 (see "explicit knowledge) を持っている言語項目については、より正確に話す・書くことができたり、学ぶ進度が速くなったりする。しかし、その効果も学習者のレベルによって異なり、どの文法は教える必要があるのかなど、具体的な提案ができる段階にはまだない。(Ellis, 1997, pp. 71-73; see also "options in grammar teaching")。【S / K】
〈参考文献〉
・Norris, J. M. & Ortega, L. (2000). Effectiveness of L2 Instruction: A research synthesis and quantitative meta-analysis. Language Learning, 50, 417-528.

grammar translation method (文法訳読法)
 テクストを文法と構文解析により構造的かつ分析的に読み解き、学習者の母語に翻訳させる外国語教授法。文法訳読法は現在でも学校教育の現場では大勢を占めているが、当該の外国語が持つ音声的側面や実践面での応用力が軽視されるため、コミュニケーション能力の育成を重視する立場からの批判も強い。【HO】

grammaticality judgment task (文法性判断タスク)
 学習者に、ある文が文法的であるかを判断させる1つの方法。第2言語習得で広く使用されている。長所は、(1) 文の種類を限定し、データを集めることができること、(2) 学習者の直感についての情報を得ることができ、その結果、内在的な研究方法で言語習得を研究できると考えられること (Ellis, 1994, p. 705, p. 710)、などがある。特に、学習者が普段発話していないような文の文法性をどう理解しているかをみることに有効である。短所は、(1) 特に英語非母語話者に使用する場合、妥当性に問題があること (Hulstijn, 1997)、(2) ある文の文法性を判断する場合、第2言語学習者の使う知識が母語話者の使う言語能力と質的に異なること、などがある。(以上全体的に、この項目は、白畑, 冨田, 村野井, & 若林, 1999, pp. 130-131) 【I】
〈参考文献〉
・Ellis, R. (1994). The study of second language acquisition. OxfordUniversity Press.
・Hulstijn, J. H. (1997). Second language acquisition research in the laboratory: Possibilities and limitations. Studies in Second Language Acquisition, 19, 131-143.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.

grammatical syllabus(文法シラバス)
文法項目を中心として構成される形式重視のシラバスで、伝統文法に基づいて指導内容は決定される。シラバスの配列基準として、文法項目の使用頻度や難易度、学習者のレベルや目的、母語と目標言語の構造的な相違や類似を比較する対照分析(contrastive analysis)などが挙げられるが、明確な基準が設定されているわけではない。【KB】
〈参考文献〉
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.
・岡秀夫(監訳). (1999). 『外国語教育学大辞典』. 東京: 大修館書店.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.
・White, R.V. (1988). The ELT curriculum. Oxford: Blackwell.
・Wilkins, D. A. (1976). Notional syllabuses. Oxford: Oxford University Press.
・Nunan, D. (1988). Syllabus design. Oxford: Oxford University Press.

graphology 
これは言語のwriting systemを指すものであり、言語学習者は様々な異なった writing systemを獲得しなければならない。例えば、中国語などはlogographic writing systemと呼ばれ、文字や記号(symbols)が単語を表象しているものであり、クリ−語などは、syllabic writing systemであり、記号(symbols)は音節を表している。英語に関してはalphabetic systemを取っており、記号(symbols)は子音と母音を表している。学習の初期段階においてtarget languageの文字に慣れることが必要とされている。【KG】
<参考文献>
・Archibald, J., & Libben, G. (1995). Research Perspectives on Second Language Acquisition. Ontario: Copp Clark Ltd.

guessing(当て推量)
 選択式問題を解く際には、当て推量がテスト得点の解釈に含まれることがある。この当て推量に対しては、random guessing (もしくはblind guessing) とinformed guessing(もしくはsophisticated guessing)がある。前者は全くの当て推量で、言語知識などを使用せずに解答を選ぶことであり、後者は何らかの言語的知識や背景知識を使って推測をすることである。当て推量をテスト得点の解釈から除くため、correction for guessingが使われることもあるが、これはrandom guessingとinformed guessingを区別せずに解釈から省いてしまうことが欠点であるとされてきた。但し、informed guessingやテスト受験者の解答スタイルを考慮した方法も開発されてきている。【MO】

〈参考文献〉
・Bachman, L. F., & Palmer, A. S. (1996). Language testing in practice. Oxford University Press.
・Huibregtse, I., Admiraal, W., & Meara, P. (2002). Scores on a yes-no vocabulary test: Correction for guessing and response style. Language Testing, 19, 227-245.

Hawthorne effect(ホーソン効果)
被験者が観察されているという事実を知っていたら、本来以上の成果を出してしまうような心理的現象。例えばexperimental groupがcontrol groupよりも勝ってしまう可能性。これを防ぐために、Dornyei (2001)では、control groupに何らかの本来の目的とはあまり関係ないような偽治療(placebo treatment)を施すことで、このHawthorne effectを緩和できると述べている。【KG】
<参考文献>
Dornyei, Z. (2001). Teaching and Researching Motivation. Essex, England: Pearson Education Limited.

here and now
 (see "baby talk" and "task")


heritage/community language (継承語)
北米ではheritage language、オーストラリアではcommunity languageと言われる。北米やオーストラリアからみた(a)外国語という意味を含むが、(b)移民の家庭で話されている言語や(c)移民の先祖の言語の意味も指す。そのため、継承語という用語には、母語、第一言語、第二言語、家庭で使用される言語などの意味が複雑に混在し、今後の第二言語習得研究には継承語を考察する必要性が指摘されている。【TA】
<参考文献>
・Cummins, J. (2005). A proposal for action: Strategies for recognizing heritage language competence as a learning resource within the mainstream classroom. The Modern Language Journal, 89, 585-592.
・Vald?s, G. (2005). Bilingualism, heritage language learners, and SLA research: Opportunities lost or seized? The Modern Language Journal, 89, 410-426.

hierarchical structure (of categories)(カテゴリー階層構造)
 概念間の関係を樹形図状に表すと階層構造を示す。例えばMurphy and Lassaline (1997, p. 94) のFigure 3.1を見ると「animal」の下に「mammal」「fish」の二つの枝が伸び、「mammal」からは「dog」「deer」が、「fish」からは「trout」「sailfish」がそれぞれ枝分かれしている。より下の階層は、例えば「dog」の下層には「terrier」「Irish setter」が描かれている。このような階層構造のうち、上位階層をsuperordinate、下位階層をsubordinateと呼ぶ。この階層の数はその概念によって異なる (例えば犬のカテゴリーは下位となる犬種までよく知られているが、鹿の場合にはその種類が知られていないという違いがある)。
上位階層と下位階層の関係にはinclusion (包含) の関係があり、この関係はIS-A relation やIS-A link (Murphy & Lassaline, 1997; Collins & Quillian, 1969) とも呼ばれている。例えばall dogs are animalsである。一方、not all animals are dogsという関連も階層構造で成立する (この性質をasymmetricと呼ぶ)。また、1つ上の階層 (immediate superordinate) との関連だけではなく、例えば "all pines are evergreens, and all evergreens are trees; therefore all pines are evergreens" (Murphy & Lassaline, 1997, p. 95) のような性質 (これをtransitiveと呼ぶ) を持っている。しかし、この階層はどの階層も均等に重要であるとは限らず、より一般的に使用されるレベルがある。これを基本レベル (basic level) と呼ぶ。Aitchison (2003, p. 67) では、概念として視覚的にイメージされるレベルが基本レベルであると述べられている。 【Na】
〈参考文献〉
・Aitchison, J. (2003). Words in the mind: An introduction to the mental lexicon (3rd Ed.). Oxford, UK: Blackwell.
・Murphy, G. L., & Lassaline, M. E. (1997). Hierarchical structure in concepts and the basic level of categorization. In K. Lambers & D. Shanks (Eds.), Knowledge, concepts, and categories (pp. 93-131). Cambridge, Massachusetts: The MIT Press.
・Collins, A. M., & Quillian, M. R. (1969). Retrieval time from semantic memory. Journal of Verbal Learning and Verbal Behavior, 8, 241-248.

high-stakes test (利害関係の大きいテスト)
 教室内で行われる小テストなどと違い、受験者の未来に大きな影響を与えるテストのこと。留学するために受験するTOEFLやIELTS、そして入学試験などがこれに当たる。このようなテストはテスト作成に膨大な時間をかけることが多い。例えば、チームを組んでまず最初のテストを作り、そのテスト問題をテスト開発の経験がある教師らが校正する。その後、そのプロジェクトの監督者が確認をする。最後まで残った問題からテストを作成し、その他のチームがテストの採点を行う。【MO】

〈参考文献〉
・Bachman, L. F., & Palmer, A. S. (1996). Language testing in practice. Oxford University Press.
・Davies, A., Brown, A., Elder, C., Hill, K., Lumley, T., & McNamara, T. (1999). Dictionary of language testing. Cambridge University Press.

hypothesis testing*

idiom-principle(非選択原理)
 Sinclair(1991)の提唱した、どのようにテクストが構成されているかについての二つの原理のうち一つ(cf., open-choice principle)。自由選択原理ではカバーできない制約が談話における語彙選択にはあり、そのため言語使用者は単独で使える半固定フレーズ(semi-preconstructed phrases)を記憶して使用しているとする(島本, 2003)。そのため、(a) 語彙の共起には制限があり、(b) 多くの頻出語句が非語彙化(delexicalized)され、(c) 実際の使用場面においてはidiom principleが優位となる(Sinclair, 1991: 144, as cited in Skehan, 1998)。【Na】
〈参考文献〉
島本たい子. (2003). 「連語項目(multi-word items: MWI)の役割」. In 門田修平(編著).『英語のメンタルレキシコン』(pp. 252-255.).東京:松柏社.
Sinclair, J. (1991). Corpus, concordance, collocation. Oxford University Press.
Skehan, P. (1998). A cognitive approach to language learning. Oxford University Press.

illocutionary act
 (発話内行為; see "speech act" in 島岡 (監) 卯城 & 佐久間, 1998)

immersion program*

implicit knowledge
 (see "explicit knowledge")

incidental learning (付随的学習、偶発的学習)
 語彙習得の際によく使用される意味中心の学習方法であり、反対語は言語中心の学習方法であるintentional learning (意図的学習)である。多読、会話への参加、リスニングなどから可能になる。数多くの低頻度語を学習する際には、意図的学習で一つ一つ単語を覚えていくよりも効率的ではある。しかし、付随的学習の際には一人一人の学習者が注目する語が異なり、読解中に推測した単語の意味が間違っていることがある。また、意図的に学習した語彙よりも「使える語彙」になりやすいが、読解中に付随的語彙学習が起こるためにはその単語に何度も遭遇する必要があるので、多くのインプットに触れないと学習が起こりにくい、という意味では学習効率が低い。【MO】
〈参考文献〉
・Hulstijn, J. (1992). Retention of Inferred and Given Word Meanings: Experiments in Incidental Vocabulary Learning. In P. J. L. Arnaud & H. Bejoint (Eds.) Vocabulary and Applied Linguistics (pp.113-125).
・Nation, I. S. P. (2001). Learning Vocabulary in Another Language. Cambridge University Press.
・Paribakht, T. S., & Wesche, M. (1999). Reading and "incidental" L2 vocabulary acquisition. Studies in Second Language Acquisition, 21, 195-224.
・竹蓋幸生. (2003). 語彙指導. In 小池生夫(編),「応用言語学事典」. pp.26-27.

indirect negative evidence
 (see "options in language teaching")

individual learner differences (IDs: 学習者の個人差)
 学習者の言語学習に関するビリーフ(言語学習をどのように考えているか)、不安 (see "anxiety") などの情意、その他、年齢、言語適性、学習スタイル、動機などの一般的な要因などにおける個人差のこと。これらは、言語学習の結果 (熟達度・到達度・習得の速さ)に影響を与えると考えられる。なお、この個人差には、情意、動機など、学習者の経験によって変化しやすいものと、言語適性などの変化しにくいものとがある。(Ellis, 1994, pp.471-527) 【S】

information-gap task (インフォメーション・ギャップ・タスク)
 コミュニカティブな活動で使われるタスクの一つ。対話者の間に情報のずれがあり、そのずれを埋めるコミュニカティブな活動を引き出すタスクのこと。日常では、情報のずれがコミュニケ―ションを引き出すと考えられ、それを教室環境で自然に発生させようとすることを目的としている。具体例には、ロールプレイや、お互いに少し異なる絵を持ち、お互いの絵の類似点や相違点を伝達するタスクなどがある。(以上、白畑, 冨田, 村野井, & 若林, 1999, p. 142) 【I】
〈参考文献〉
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.

innatist position, innativist position
 (see "mentalist theory")

inner speech
 (see "Private and inner speech")

input-oriented
 (see "options in language teaching")

input enhancement
 (see "consciousness raising" and "options in grammar teaching")

input hypothesis*
 (see "Output Hypothesis")

input/output (インプット・入力/アウトプット・出力)*
 インプットとは、学習者が聞いたり読んだりする言語のこと。アウトプットとは、話したり書いたりして、学習者が作り出した言語のこと。この考え方を基本に、様々な第二言語習得のモデル・理論が立てられてきた (see "negotiation of meaning" and "Output Hypothesis")。また聞いたり読んだりすることをcomprehension (理解) またはreception (受容)、話したり書いたりすることをproduction (産出) と呼ぶ。【K】

instructed second language acquisition
 (see "second language acquisition")

instrumental motivation
 (see "motivation")

intake*

integrative motivation
 
(see "motivation")

integrative test*

Interaction Hypothesis(インタラクション仮説/相互交流仮説)
言葉を介して意味のやり取りをすることにより,言語習得が促進されるという考え方。インタラクション/相互交流(interaction)には言葉を使って,他の対話者と情報のやり取りなどの意思伝達をするという意味があり,それが果たす役割を村野井(2006: 46)は,「相互理解のための意味交渉」とし,明確化要求(clarification request)や理解度確認(comprehension check)を通して,学習者は理解不可能なインプットを理解可能なインプットへと変化させているとしている。同様に,Gass (2003: 234)もnegotiated interactionが言語習得に大きな役割を果たすとし,学習者が第2言語における既習事項と未習事項との間の溝を埋めるためにインタラクションは必要であるとしている。そのようなインタラクションを通して,学習者は話し手からフィードバックを受けることができ,同時に自分が構築した第2言語あるいは外国語に関する規則が適切であるかどうかを検証することができる(白畑他, 1999:150)。【YS】
〈参考文献〉
・Gass, S. (1997). Input, interaction, and the second language learner. Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associates.
・Gass, S. (2003). Input and interaction. In C. J. Doughty & M. Long (Eds.), The handbook of second language acquisition (pp. 224-255). Oxford, UK: Blackwell.
・白畑知彦・冨田祐一・村野井仁・若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京:大修館書店.
・村野井仁. (2006). 『第二言語習得研究から見た効果的な英語学習法・指導法』. 東京:大修館書店.

interactional modification
 (see "negotiation of meaning" and "question type")

interactionism
 (see "negotiation of meaning")

interactionist position
 (see "negotiation of meaning")

interdependency principle (相互依存原則)
 Cummins (1981)によって主張され、基本的対人伝達能力 (see "BICS")は第1言語と第2言語では別々に発達するが、認知・学習言語能力 (CALP)は言語によらず共通であるとされる考え方。この第1言語の学習スキルが第2言語のCALPを発達させるのに重要な基礎になっているとの考え方は、これまでの研究によっても支持されている。 (Ellis, 1994, p. 224) 【S】
〈参考文献〉
・Cummins, J. (1981). Bilingualism and minority children. Ontario: Ontario Institute for Studies in Education.

interface position (インターフェイスの立場)
 教室などの場所で勉強するという形で「学習 (learning)」した、意識的な言語の知識は、たくさんその言語を聞くなどして自然に言語を学ぶ形で「習得 (see "acquisition")」した、無意識的な知識に変わりうると考える立場 (e.g., McLaughlin, 1987, as cited in Ellis, 1994, p. 356)。逆に、2つの知識は変わらないと考える立場をnon-interface position (反インターフェイスの立場) と言い、Krashen (1982, as cited in Ellis, 1994, p. 356) が主張した。その後Krashen (1989) は立場を変え、規則は初め意識的に「学習」されるが、徐々に練習によって自動化されうるという考えを示し (Skill-building Hypothesis; Ellis, 1994, p. 723)、「学習」した知識が「習得」に変わることもあるという弱いインターフェイスの立場 (weak interface position; Ellis, 1997) に変更した。弱いインターフェイスの立場に対応させて、「インターフェイスの立場」・フことを「強いインターフェイスの立場 (strong interface position) 」と呼ぶこともある。【K】

interlanguage (IL)*
 (see "restructuring")

internal cause hypothesis
 (see "motivation")

international posture (国際的志向性)
 日本人学習者がL2(特に英語)を用いてコミュニケーションを開始しようとする意思決定に影響を与えると考えられている動機/態度要因。日本人大学生を対象とした調査により1)Intercultural Friendship Orientation(他国の文化や人間との友好関係), 2)Interest in International Vocation/Activities(海外で働くことへの関心), 3)Interest in Foreign Affair(国際的な時事問題への興味), 4)Intergroup Approach Avoidance Tendency(異なる文化的背景を持つ人々との関わりに対する傾向)の4つの要素によって定義されることが明らかになった。"Integrativeness"が様々な文化的社会的環境応じて再定義される必要性が求められている現代において、その新しい形の1つとして注目されている。【KK】
〈参考文献〉
・Dornyei, Z. (2005). The psychology of the language learner: Individual differences in second language acquisition. New Jersey: Lawrence Erlbaum.
・Yashima, T. (2002). Willingness to communicate in a second language: The Japanese EFL context. Modern Language Journal, 86, 54-66.
・八島智子 (2004)『外国語コミュニケーションの情意と動機: 研究と教育の視点』 大阪: 関西大学出版部.

intrinsic hypothesis
 (see "motivation")

Item Response Theory (項目応答理論)
 
テストから学力や言語能力を測定する場合、従来ある得点・偏差値・順位等では、問題の難易度や受験者集団によって値が変動する。そのため、信頼のある測定値を示すことが非常に困難である。項目応答理論では、こうした古典的テスト理論の問題点を解決するため、テスト問題(項目)の困難度と受験者の能力といった2つの特性との間にある確率的な関係を求めて学力の絶対値を測定する。現在、TOEIC、TOEFLをはじめとする大規模な言語テストの多くで用いられている。これら大規模テストの強みとして、特に項目バンクで過去に出題された問題で不変といわれる困難度が予測できるため、例えばある日時におこなわれたテストの問題が全体に易しすぎたり、たまたま能力の低い者ばかりで受験者が集まったとしても、得点上位者が不当に高い評価で結果報告されることはないと理論上は考えられている。
項目応答理論の発想は1940年代からといわれ、Frederic M. Lord (1952) が Psychometric Monograph に"A Theory of Test Scores" を寄稿したことにより、はじめて「項目特性曲線理論 (Item Characteristic Curve Theory)」として基礎となるモデルが世に現れた。その後1960年のGeorge Rasch による「ラッシュ・モデル (Rasch Model)」で脚光を浴びたといわれる。彼のモデルは実用性が高く、広く用いられているため、後述の1パラメータ・ロジスティック・モデルの代名詞的にほぼ同義で紹介され研究に用いられている。
項目に受験者が正答する確率の関係を示す公式は「ロジスティック関数 (logistic function)」と呼ばれ、グラフ作図上では累積正規分布曲線というS字の曲線を描く。この曲線の幅や傾き具合は、項目の困難度や受験者の能力、更には受験者の調子や不注意で本来正答すると期待される項目を誤答する確率、選択問題の当て推量から能力で期待される以上の正答が混在している確率までも、理論上関係づけて表わすことができる。これらの条件をどこまで扱うかで、以下の公式3タイプのモデルに分かれる。

1パラメータ・ロジスティック・モデル (1PLM):
ある能力の受験者(θ)がテスト項目(b)に解答して正答する確率(P)
 Pj (θ) = 1/(1+exp(-(θ-bj)))
2パラメータ・ロジスティック・モデル (2PLM):
弁別力(a)の問題を不注意などで誤る率(D)を考慮し、ある能力の受験者(θ)がテスト項目(b)に解答して正答する確率(P)
 Pj (θ) = 1/(1+exp(-D*aj*(θ-bj)))
3パラメータ・ロジスティック・モデル (3PLM):
当て推量で能力の低い受験者(c)が正答する率、および弁別力(a)の問題を不注意などで誤る率(D)を計算上組み込んで、ある能力の受験者(θ)がテスト項目(b)に解答して正答する確率(P)
 Pj (θ) = cj+(1-cj)*(1/(1+exp(-D*aj*(θ-bj))))

 これらのモデルは1PLMよりも2PLMや3PLMほど、より緻密な項目分析や受験者能力の測定が可能となる。ただし、あてはまりがよく一般化されたモデル構築をするには、最も単純な1PLMなら受験者100名程度から期待できる一方、3PLMは最低でも1000-2000人が必要と言われ、実用性という点で前者が好まれる。TOEFLでは3PLMを受験者能力の測定に用いているが、中には「当て推量」が受験者個人の特性であり、むしろ1PLMが望ましいと立場をとる研究者も少なからずいる。【Ng】
〈参考文献〉
・Henning, G. (1987). A guide to language testing. New York: Newbury.
・McNamara, T. (1996). Measuring second language performance. New York: Longman.
・大友賢二. (1996).『項目応答理論入門』. 東京: 大修館書店.

Japanese orthography/writing system (日本語の正書法/書記体系)
 日本語を書き表すために用いられる記号と規則の集合、またその体系。現代の日本語の正書法は、記号と規則の両面で極めて複雑な体系を形成している (Coulmas, 1996, 2003; Smith, 1996)。Smith (1996) は、日本語の正書法の複雑さを (a) multiscriptal nature と (b) complexities of kanji use という二つの側面から説明している。現代の日本語は、機能や形態において異なる漢字、平仮名、片仮名、さらに場合によってはローマ字を複合的に用いて書き表される。言語の表示に直接関わらない句読点やさまざまな記号を文字と併用することは多くの書記体系で行なわれているが、言語の表示に直接関わる書記要素として種類の異なる複数の文字を使用すること (multiscriptal nature) は、日本語の正書法の大きな特徴であるといえる。また、書記要素のひとつである漢字には、音読みと訓読みの区別に加え、同一の字が文脈によって複数の異なる音や訓を表示すること、語の表示に用いられる送り仮名の付け方に揺れがあることなど、複雑な用法上の規則がある (complexities of kanji use)。
 上記のような特徴を有するため、日本語の正書法は、しばしば過度に複雑な体系として描写されている (Smith, 1996; カイザー, 1994)。このことは、日本語の正書法、とりわけ漢字の用法について不正確な先入観を打ち立て、非効率的な教育法や学習法の固持につながっていると考えられる。とりわけ非漢字系の日本語学習者においては、先入観に基づいた「漢字神話」によって学習意欲が低下する可能性がある (カイザー, 1994)。これらの問題を予防・解決するためには、先入観を排し、観察と分析に基づいた科学的な正書法研究が必要である。(see "orthography", "writing system", "kanji learning")【HO】
〈参考文献〉
・Coulmas, F. (1996). The Blackwell encyclopaedia of writing systems. Oxford: Blackwell Publishers.
・Coulmas, F. (2003). Writing systems: An introduction to their linguistic analysis. Cambridge University Press.
・Smith, J. S. (1996). Japanese writing. In P. Daniels, & W. Bright (Eds.), World's writing systems (pp.209-217). Oxford University Press.
・カイザー シュテファン (1994). 「漢字神話と漢字学習:非漢字系学習者における漢字先入観について」 『筑波大学留学生センター日本語教育論集』9, 61-71.

kanji (漢字)
 日本語の正書法に用いられる文字の内、主に中国起源の表語音節文字 (logo-/morphosyllabary) で、一般に内容語の表記に用いられる。機能語や活用語尾、非漢語系の借用語などの表記には純粋な音節文字である仮名が用いられ、独特の漢字仮名混じり文を形成する。
 公用文などの表記の指針である「常用漢字表」に掲載された1945字と、人名の表記に用いることができる人名用漢字285字が、公に定められた字数である。新聞・雑誌で使用される漢字の調査によれば、「常用漢字表」に記載のない漢字を含む3300字前後が一般に使用されているが、実際にはこのうち約2000字が使用分布の99%を占めているため、日常生活の範囲では2000字前後を習得すれば十分にこと足りると考えられる。
 日本語学習においては漢字の習得が大きな難関となるが、その主な要因としては、字数の多さ、字形の複雑さ、字音の多様さが挙げられる。とりわけ字音に関しては、大多数の漢字が音と訓という2種類の読みを持つ上、同一の文字に対し複数の異なる音・訓が並存するなど、極めて複雑な様相を呈しているため、学習や運用が困難である。さらに、熟字の読み (音音、音訓、訓訓、訓音)、熟字訓や当て字 (「部屋」、「五月雨」)、一字多訓 (「生」に対しセイ、ナマ、イきる、ウむ、など) など、読みに関連する問題はさまざまであり、学習者にとっては大きな負担となる。しかし、実践的な日本語の習得のためには正書法の学習が不可欠であるため、漢字の習得は避けて通ることのできない課題である。このため、漢字の指導にあたっては、漢字に関して体系的で整理された情報を提供することで学習者の不安や先入観を取り除き、適切な指導法や効果的なシラバス・デザインを模索する必要がある。【HO】
〈参考文献〉
・河野六郎・永田英正・笹原宏之. (2001). 「漢字」. In 河野六郎・他 (編), 『言語学大辞典 別巻 世界文字辞典』 (pp. 256-281). 東京: 三省堂.
・笹原宏之. (2001). 「日本の文字」. In. 河野六郎・他 (編), 『言語学大辞典 別巻 世界文字辞典』 (pp. 696-706). 東京: 三省堂.
・佐竹秀雄 (1989). 「現代日本語 文字・表記」. In 亀井孝・他 (編), 『言語学大辞典 第2巻 世界言語編 中』 (pp. 1716-1723). 東京: 三省堂.
・Smith, J. S. (1996). Japanese writing. In P. T. Daniels & W. Bright (Eds.)., World's writing systems (pp. 209-217). Oxford University Press.

kanji learning (漢字学習)
 多くの日本語学習者にとって、文字、とりわけ漢字の学習は大きな関門となる。非漢字系学習者は漢字系学習者に比べ、日本語の漢字習得においてより大きな困難に直面するが、その理由としては、漢字が一般に非漢字形学習者がL1で使用する表音文字とは形態や機能の面で大きく異なることが考えられる。具体的には、字数が多く字形が複雑であること、読み方が多様で同音字が多いこと、一つの字が複数の読み方と意味を表すこと
、などが挙げられる。さらに、送り仮名の用法、近似の意味を表す字種の選択、独立で使用される場合と造語成分として使用される場合の相違など、漢字の使用に関わる周辺的な要因も影響する。一方、漢字系学習者においても、L1の漢字知識に基づいて日本の漢字を理解・使用する負の転移が見られる。
 日本語における漢字使用の複雑さを不用意に提示することは、日本語学習者、とりわけ非漢字系学習者の日本語そのものの学習意欲を低下させる。また、カイザー(1994)は、漢字について科学的な根拠のない先入観や、「漢字神話」とも呼ぶべきビリーフが存在し、学習の妨げになると指摘している。日本語学習者の漢字習得に際しては、このような先入観を同定した上でこれを排し、認知心理学や第二言語習得研究などの知見を取り
入れた学習のシラバスや教材、ストラテジーを構築することが必要となる。【HO】
〈参考文献〉
・海保博之, & Haththotuwa Gamage Gayathri Geethanjalie. (2001). 「非漢字圏学習者に対する効果的な漢字学習についての認知心理学からの提言」. 『筑波大学心理学研究』 23, 53-57.
・小池生夫 (編). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.
・カイザー・シュテファン. (1994). 「漢字神話と漢字学習: 非漢字系学習者における漢字先入観について」. 『筑波大学留学生センター日本語教育論集』 9, 61-71.

kanji/non-kanji learner (漢字系/非漢字系学習者)
 漢字系学習者とは、@中国など、現在でも日常的に漢字を使用する文化圏の出身者、A韓国など、現在でも一部で漢字を使用する文化圏の出身者、Bヴェトナムなど、現在では漢字を使用しないものの、漢字語彙(漢語)を多く使用する文化圏の出身者、を指す。これに対し、いわゆる表音文字を使用する非漢字使用文化圏の出身者は、総称的に非漢字系学習者と呼ばれる。一般に、漢字系学習者と非漢字系学習者とでは、日本語、とり
わけ漢字の習得の過程において相違があるとされている。(see "kanji learning") 【HO】
〈参考文献〉
・海保博之, & Haththotuwa Gamage Gayathri Geethanjalie. (2001). 「非漢字圏学習者に対する効果的な漢字学習についての認知心理学からの提言」. 『筑波大学心理学研究』 23, 53-57.
・小池生夫、他. (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.

kanji teaching for learners of Japanese (日本語学習者のための漢字教育)
 日本語の正書法、とりわけ漢字の学習は、多くの日本語学習者にとって大きな難関のひとつである。漢字教育においては、漢字系学習者と非漢字系学習者とで習得の過程に相違があるため、教育法にも工夫が必要となってくる (海保 & Geethanjalie, 2001)。また、漢字の複雑性や不規則性についての先入観が学習意欲に影響することがあるため、科学的な正書法研究と適切な教育法の構築が不可欠である (カイザー, 1994; 加納, 2003)。
 カイザー (2000) によれば、平仮名→片仮名→漢字という順序で段階的に行なわれる従来の教育法は、認知心理学的には必ずしも効率的なものではない。平仮名には画数の少ない単純漢字よりも形状が複雑なものがあるため、字形の認知や記憶において漢字全般よりも容易であると一概に言うことができない。このため、単純漢字と仮名の両方を用いて自然な形で単語や文を書き表し、語彙や文型の学習と統合した形で正書法の学習も導入するのが好ましいとされる。字形の複雑な漢字については、辞書による検索を行なうための基盤として、字の弁別や画数の数え方を練習する必要がある。また、加納 (2003) は、漢字の構造や用法、常用漢字などに関する正確な情報を与えた上で、学習者の年齢、学習目的、環境、レベル、学習スタイルなどに応じて柔軟な指導法を模索することが必要であると指摘している。(see "kanji learning", "kanji/non-kanji learner")【HO】
〈参考文献〉
・カイザー シュテファン (1994). 「漢字神話と漢字学習:非漢字系学習者における漢字先入観について」. 『筑波大学留学生センター日本語教育論集』, 9, 61-71.
・カイザー シュテファン (2000). 「非漢字圏日本語学習者のための漢字・語彙教育のシラバスに関する考察:認知心理学実験の知見を踏まえて」. 『筑波大学留学生センター日本語教育論集』, 15, 25-34.
・海保博之, & Geethanjalie, H. G. G. (2001). 「非漢字圏学習者に対する効果的な漢字学習についての認知心理学からの提言」. 『筑波大学心理学研究』, 23, 53-57.
・加納千恵子 (2003). 「漢字の指導 (teaching of kanji)」. In 小池生夫・他(編). 『応用言語学辞典』 (p.800). 東京: 研究社.

L1
 (see "second language acquisition)

L2
 (see "second language acquisition)

laboratory study (実験的手法)
 実証的研究手法の一つ。原因と結果の間に介入する諸要因の影響を、人為的処理により管理・統制し、因果関係を解明することを目的とする研究手法。第2言語習得研究において使用する長所として、(1) (部分的に) 人工的な言語の学習を実験中に行う場合、参加者はそのような言語に対する事前知識をもっておらず、学習後のテストの成績は実験での学習を反映したものと強く解釈できる、(2) 教え方:教え方を事前に録音したテープや、コンピュータを使用することで、要因の統制を厳密に行うことができる、(3) インプットの量:コンピュータなどの使用により、学習および練習問題を行う時間の管理をすることで、要因の統制を厳密に行うことができる、がある。一方、短所として、現実的状況から離れるため、実験的手法を用いた研究により分かったことを現実的状況に一般化させることは限られる (生態学的妥当性が低い) こと、現実の言語教育では行わないこと(例:例を記憶させる)を行うこと、などがある。(以上この項目は、Hulstijn, 1997) 【I】
〈参考文献〉
・Hulstijn, J. H. (1997). Second language acquisition research in the laboratory: Possibilities and limitations. Studies in Second Language Acquisition, 19, 131-143.

language analytic ability
 (see "aptitude")

language anxiety
 (see "anxiety")

language acquisition device (LAD: 言語習得装置)
 生成文法は、第一言語習得のモデルとして、人間が生得的に有するLAD(または普遍文法)に個別言語の資料が入力され、第1言語の文法が習得されるというモデルを仮定している(see "UG")。 (Ellis, 1994, pp. 433) 【S】

       経験 → LAD → 文法

      図1. Chomsky の言語習得モデル (Chomsky, 1981a)

〈参考文献〉
・Chomsky, N. (1981a). Principles and parameters in syntactic theory. In Hornstein, N. & Lightfoot, D. (Eds.), Explanation in linguistics (pp. 32- 75). London: Longman.

language awareness(言語意識)
 日本の社会言語学の分野において言語意識(language awareness)は次の五つの領域・観点に区分されている:(1)言語そのものないし言語行動についての評価・感覚、(2)言語使用ないし言語行動についての現状認識、(3)言語使用ないし言語行動についての志向意識、(4)言語そのものないし言語行動についての信念・期待、そして(5)言語そのものないし言語行動についての規範(真田他, 1992)である。これらの領域は言語話者がそれぞれの言語との関係を認識・評価し、選択する際の意識と、言語のあるべき姿を考え現状の正誤を判断する際の意識に大きく分類できる。これらの意識は排他的な関連ではなく複合的であり、その複合的な言語意識を真田他(1992)は"アイデンティティ"と呼んでいる。このアイデンティティを確立する要素として言語そのものに対する意識だけでなく、言語主体としての話者をどのように認識し評価するかに関わる意識も含められる。このアイデンティティという用語は同定(identify)の派生語であることからも分かるように、アイデンティティを確立する過程には二つの方向性が含まれているのである:(1)ことばの使い方(言語変種の選択)によって話し手や話し相手がどのような属性の人であるかの同定(identification)を行う方向性、そして(2)自分は何者であるかという言語主体のアイデンティティ意識がその言語行動にどう関わるかを決定する方向性である。【Na】
<参考文献>
・真田信治・渋谷勝己・陣内正敬・杉戸清樹(著). (1992). 社会言語学. 東京:おうふう.
・言語学研究会(編). (1999). ことばへの権利:言語権とはなにか. 東京:三元社.

language education policy(言語教育政策)
国や州が実施する言語に関係する学校教育政策を指す。例えば、言語習得教育があり、言語政策のなかに分類される。言語教育政策は、母語教育政策と外国語教育政策の二つの領域からなるが、さらに第二言語教育政策を含む場合もある。教育理念、教育する言語、開始年齢、教育期間、カリキュラムなどの方針を決定することが含まれる。【TA】
〈参考文献〉
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学事典』. 東京: 研究社.

language faculty
 (see "Universal Grammar")

language knowledge (言語知識)
 Bachman and Palmer (1996) が提唱した、「言語使用」および「言語テストパフォーマンス」の構成要素および関連を示したモデルの構成要素の1つ。以下の構成要素に細分化される。

1 Organizational knowledge
1.1 Grammatical knowledge
1.1.1 Knowledge of vocabulary
1.1.2 Knowledge of syntax
1.1.3 Knowledge of phonology/graphology

1.2 Textual knowledge
1.2.1 Knowledge of cohesion
1.2.2 Knowledge of rhetorical or conversational organization

2 Pragmatic knowledge
2.1 Functional knowledge
2.1.1 Knowledge of ideational functions
2.1.2 Knowledge of manipulative functions
2.1.3 Knowledge of heuristic functions
2.1.4 Knowledge of imaginative functions

2.2 Sociolinguistic knowledge
2.2.1 Knowledge of dialects/varieties
2.2.2 Knowledge of registers
2.2.3 Knowledge of natural or idiomatic expressions
2.2.4 Knowledge of cultural references and figures of speech

テストを作成する際には、これらの構成要素のうちのいくつかに焦点をあてることが多い。しかし、そのような場合にでも、言語知識全体におけるそれらの位置付けを考えることは重要である。【I】
〈参考文献〉
Bachman, L. F., & Palmer, A. S. (1996). Language testing in practice. Oxford University Press.

language maintenance (言語保持)
多言語社会において、主に少数言語話者が少数言語(minority language)と多数派言語(majority language)を使い分け、意図的に維持し続けることを指す。言語保持を促進するには経済的、社会変化的要因、政治的権力的要因、地域社会的要因、法的組織的要因等が考えられているが、どの要因が重要かはまだ明らかになっていない。 【TA】
〈参考文献〉
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学事典』. 東京: 研究社.
・ベーカー・コリン(著). 岡秀夫(訳・編). (1996). 『バイリンガル教育と第二言語習得』. 大修館書店. (Baker, C. (1993). Foundations of bilingual education and bilingualism. Clevedon: Multilingual Matters.訳)
・島岡丘 (監修). 卯城祐司 & 佐久間康之 (訳). (1998). 『第二言語習得の研究:5つの視点から』. 東京:大修館書店. (Beebe, L. M. (1987). Issues in second language acquisition: Multiple perspectives. Boston, MA: Heinle & Heinle.訳)

language proficiency*

language shift(言語移行)
 
多言語社会において、主に少数言語話者が様々な要因により自分の言語から地域の優勢言語に乗り換えることを指す。特に経済的、社会的、政治的、権力的、環境的、法的な言語間支援などが関係すると指摘されている。例えば、移民の多くは数世代のうちに言語移行するといわれている。 【TA】
〈参考文献〉
・ベーカー・コリン(著). 岡秀夫(訳・編). (1996). 『バイリンガル教育と第二言語習得』. 大修館書店. (Baker, C. (1993). Foundations of bilingual education and bilingualism. Clevedon: Multilingual Matters.訳)
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学事典』. 東京: 研究社.

language transfer*

language universals(言語普遍性) 
 人間が用いる個別言語例えば日本語、英語など全ての言語に共通して見られる特徴のこと。例えば、言語は声と聴覚を通して伝えられる、言語記号の形式と内容もしくは意味との間は恣意的である、人間にとって言語は、先天的に備わっているのではなく、後天的すなわち後から習得するものである、言語は常に変化する、あらゆる人間社会には言語を必ず有するなど。
 現在、言語普遍性に関する研究の中心となっているのは言語類型論である。中でも、文法的な現象の研究が進められている。【MU】
<参考文献>
・安藤昭一他編 『英語教育 現代キーワード事典』、増進堂、1991年
・亀井孝/河野六郎/千野栄一編 『言語学大辞典』、第6巻 術語編、三省堂、1996年
・小池生夫他編 『応用言語学事典』、研究社、2003年
・田中春美編 『現代言語学辞典』、成美堂、1988年

latency(潜時)
 
メンタルレキシコンにいかにアクセスして語の意味などの情報を認知するかについてオンライン法(on-line method:被験者の頭の中で行われている過程・状況を直接観察しようとする方法)を用いる際、与えられた刺激から反応までの時間を潜時(latencies)という。オンライン法としては語彙製判断課題(lexical decision task)、音読課題(naming task)、語探索課題(word search task)などがある。【Na】
〈参考文献〉
・門田修平 (2006). 第二言語理解の認知メカニズム:英語の書き言葉の処理と音韻の役割. 東京:くろしお出版.

lateralization*

learnability/learnability model (学習可能性/学習可能性モデル)
 母国語や第二言語習得において、ある規則が学習されるメカニズムを解明できる場合、learnability(学習可能性)があるといい、そのメカニズムをモデル化したものをlearnability modelという。第二言語習得のlearnability modelには、
 1) L2学習初期段階の学習者の状態
 2) 学習学習最期段階の学習者の状態
 3)L2インプット、
 4) L2学習のメカニズム、
 5) 学習者内で確立したL2文法に反する情報を見分ける基準、
の5つの要素が含まれる。第二言語習得理論は、learnabilityの観点からL2の言語能力がどのように獲得されるかを明確に説明できなければならないとされる。【KI】
〈参考文献〉
・Gregg, K. R. (2001). Learnability and second language acquisition theory. In P. Robinson, (Ed.), Cognition and second language instruction (pp. 152-80). Cambridge University Press.

learner autonomy (自律性)
 現在の外国語学習においては、「教室内外に関わらず自らの全ての学習をコントロールする能力」と定義される。この場合のコントロールとは学習のプロセスを、認知的なプロセスを通して効果的に学習者自ら学習過程を管理することを指す。つまり、これまでは教師側の役割であると考えられていた学習の計画、プロセスの監視、評価、方略や使用教材等に関する意思決定を学習者自身が行い、積極的に自らの学習に参加することが自律的学習であるとされる。多くの場合この「独立」という概念が自律性の定義に用いられるが、これは決して教師抜きでの学習ではなく、むしろ自律性の獲得の際には教師との間には相互関係が結ばれるべきであり、指導を通して得た能力を学習に生かしていくのが学習者自身であることを指している。外国語学習においては、学習ストラテジーの指導が自律性を高める1つの手段として考えられている。豊富なストラテジーを使用し、学習者自らが学習のプロセスをコントロールする能力を身に付けることで、効果的な自律的学習が望まれると考えられている。【KK】
〈参考文献〉
・Benson, P. (2001). Teaching and researching autonomy in language learning. London: Longman.
・Little, D. (1991). Learner autonomy 1: Definitions, issues and problems. Dublin: Authentik.
・Wenden, A. L. (1998). Metacognitive and language learning. Applied Linguistics, 19, 515-537.
・大学英語教育学会学習ストラテジー研究会 (編) (2005) 『言語学習とストラテジー −自律学習に向けた応用言語学からのアプローチ−』東京:リーベル出版.

learner belief (学習観)
 学習者がこれまでのあらゆる学習経験から得てきた知識や考え、性格や認知スタイル等を反映した自らの主観的な学習観を表す概念である。学習者個人は異なる学習観を持ち(例えば、正しく発音できなくても発話すべき等)、それらを元に行動を選択していると考えられているため、学習に対するアプローチは大きく異なり、外国語学習に取り組むプロセスに影響を及ぼす個人要因のひとつとして考えられている。学習観が実際の学習に与える具体的な影響を検証した結果、学習観がストラテジーの使用に影響することが報告され(中山, 2005)、個人の学習観は学習のプロセスに大きな意味を持つこと、また、個人の進歩の度合いや早さなどに関して誤った学習観を持つと、それが不可能であると判明した時に深い失望感が起こるということが言われているため(D?rnyei, 2001)、教師は常に個人の学習観には注意を払う必要がある。【KK】
〈参考文献〉
・Doernyei, Z. (2001). Teaching and researching motivation. London: Longman.
・Ellis, R. (1994). The study of second language acquisition. New York: Oxford University Press.
・下山幸成, 磯田高道, 山森光陽 (2002) 「学習観がCALL教室における英語学習の成果に及ぼす影響: クラスター分析を用いた学習者プロファイリング」 JALT Journal, 24, 155-166.
・中山晃 (2005) 「日本人大学生の英語学習における目標志向性と学習観および学習方略の関係のモデル化とその検討」 『教育心理学研究』53, 320-330.

learner performance options
 (see "options in language teaching")

learning*
 (see "acquisition" and "interface position")

learning curve (学習曲線)
古くは心理学における動物を用いた古典的条件づけの実験の記録においても用いられていた。これは実験対象から観測した目的となる反応(正反応数)の頻度や速度を縦軸に、試行回数や刺激回数を横軸で割当ててグラフに表わしていた。生徒の成績の変化を学習時間に応じて示す上でも利用可能となるが、その場合、縦軸がテストにおける正答数、横軸をテストの試行回数や学習時間で表わすのが一般的とみられる。
数理心理学研究分野からは数学的学習理論について曲線を解析的に表示しようとする試みがおこなわれ、指数関数やロジスティック曲線(概ねS字を描くのが特徴)などをあてはめる等の試みなどがみられた。学習に関するもっとも初期の数理モデルによると、習得は一定の確率でされるが、忘却も学習量に比例すると仮説だった。つまり学習曲線とは時間・量が増えると同時に加速が減少すると考えられていた時期がある。
Thurstone (1930) によると、練習と達成とが学習で主要となる2変数であり、練習は試行や練習時間によって、達成は行為の成功確率によって表示されると考えた。しかし、Gulliksen (1934) は成功と失敗のパラメターを分離して扱うことにより、Thurstoneのモデルを一般化に近づけたといわれる。彼の場合、Thurstoneが成功確率を全ての行為における成功行為の割合と仮定したのに対し、刺激と正しい反応との組み合わせによる相対的な強度の関係だと考えた。なお、Gulliksen の仮定からは、学習曲線は次のような方程式で導かれる。【Ng】

U = α ( 1− β/ w +β)^γ [ガンマは上付き文字で表記し、乗倍する]

U = 累積した誤りの反応数
w = 試行数
α = 誤った連合の初期強度と、罰の効果との比率
β = 正しい連合の初期強度と、報酬の効果との比率
γ = 罰の効果と報酬の効果との比率

〈参考文献〉
・Coombs, C. H., Dawes, R. D. & Tversky, A. (1970). Mathematical psychology : an elementary introduction, Englewood Cliffs, N.J. : Prentice-Hall. [小野茂 監訳. (1974).『数理心理学序説』. 新曜社.]
・Gulliksen, H. A. (1934). A rational equation of the learning curve based on Thorndike's law of effect. Journal of General Psychology, 11, 395-434.
・Thurstone, L. L. (1930). The learning function. Journal of Genetic Psychology, 3, 469-93.

learning plateau(学習高原) 
練習施行に伴う成績の変化を示す学習曲線(learning curve)というグラフの一つの特徴。ある技能を修得するための練習をするとき、何らかの理由により、その技能の発達がある段階でそれ以上伸びなくなることがある。この状態を数値化して折れ線グラフで表すと、その形が高原の形に似たものになることからこの名称がつけられた。その他の曲線としては、U字型の学習曲線(U-shaped learning curve)がある。【Na】
<参考文献>
白畑知彦、冨田裕一、村野井仁、若林茂則(Eds.). (1999). A guide to English language teaching terminology. 東京:大修館書店.
山内光哉、春木豊(Eds.).(2001). グラフィック学習心理学. 東京:サイエンス社.

learning strategy (学習ストラテジー)
 この学習ストラテジーについては様々な定義がなされているが、Oxford (1989)では、学習者が、言語学習を成功させたり、楽しいものにするため自発的に行う行動のこととしている。また、Oxford (1990)は、以下のような分類を行っている。    

学習ストラテジー
     直接ストラテジー  
       T. 記憶ストラテジー
       U. 認知ストラテジー
       V. 補償ストラテジー
     間接ストラテジー  

       T. メタ認知ストラテジー
       U. 情意ストラテジー
       V. 社会的ストラテジー

    図2. Oxfordの学習ストラテジーの分類 (Oxford, 1990, p.16)

 この他、O'Malley and Chamot によるの分類などもある。SLA分野においては、よい学習者はどのような学習ストラテジーを使用しているかを調べたり、第2言語熟達度と各学習ストラテジーとの相関を調べてどれが関連があるかをみる研究が多く行われている。(Ellis, 1994, pp. 529-560) 【S】
〈参考文献〉
・Chamot, A. (1987). The learning strategies of ESL students. In Wenden, A. & Rubin, J. (Eds.), Learner strategies in language learning. New York: Prentice Hall
・Oxford, R. (1989). Use of language learning strategies: A synthesis of studies with implications for teacher training. System, 17, 235-247.
・Oxford, R. (1990). Language learning strategies: What every teacher should know. Rowley, MA.: Newbury House.

Learning in tandem (タンデム学習)
タンデム学習とは異なる言語を母語に持つ者同士がペアになり、教室の外で自由に (open learning)、自立して (out of class learning)相手の言語や文化を学習するものである。例えば、韓国語を勉強したい日本人と日本語を勉強したい韓国人がペアとなり、互いの言語や文化を教えあう。これにより、@その国の文化や特徴をより知ることができる、A言語スキルの改善を補助することができる、さらにB専門的な知識などの付加的な知識を交換することができるといったことが期待される (Littele & Brammerts 1996)。一方で、どちらも教師としての訓練を受けていないため適切な学習法や教材を補助する必要があったり、学習者同士の学習経験が違うことでニーズが異なったり、性格や興味の相性なども関わってくる (Littele & Brammerts 1996; 竹内, 2007)。【HS】
〈参考文献〉
・Littele, D. & Brammerts, H. (1996). A guide to language learning in tandem via the Internet. Centre for Language and Communication Studies, 46, 1-83.
・竹内理. (2007). 『「達人」の英語学習法』. 東京:草思社.

lemmatization(見出し語化)
 
コーパスデータをコンピュータで利用可能にするための処理手続きの一つ。名詞や動詞などの変化形を一つの見出し語(lemma)に整理する作業のことを指す。例えば動詞goはwent, gone, going, goesという変化形があるが、これを基本形goという見出し語1つにまとめることがlemmatizationである。この作業を行うことにより、コンピュータで見出し語検索が可能になる。【KS】
〈参考文献〉
・梅咲敦子.(2005). 「コーパスとは何か」. 齊藤俊雄・中村純作・赤野一郎(編). 『英語コーパス言語学:基礎と実践(改訂新版)』(pp. 21-48). 東京:研究社.
・投野由紀夫.(1997). 「リサーチデザインT:学習者コーパスによるL2英語語彙知識の発達分析」. 投野由紀夫(編著). 『英語語彙習得論:ボキャブラリー学習を科学する』(pp. 130-136). 東京:河源社.

linguistics applied
 (see "applied linguistics")

linguistic category(言語カテゴリー)
 一般にカテゴリーは大きく3つに分けられる:(1)自然物カテゴリー(natural kind category)、(2)名目的カテゴリー(nominal kind category)、(3)言語カテゴリー(linguistic category)。言語カテゴリーは更に大きく3つに分かれる:(a) 統語カテゴリー(syntactic category:品詞や形態素、語、句、構文など、「かたち」と「はたらき」から見るカテゴリー)、(b) 意味カテゴリー(semantic category:意味を中心にことばを見たときのカテゴリーで、多義性や動作主性や受影性などがある)、(c) 音声カテゴリー(phonetic category:音素、異音、音節、イントネーションなど)。メンタルレキシコン内において語彙知識は類義語、反意語、関連語などの意味的な関連から構成される意味情報ネットワークと、音韻的、形態的に関連する語を結ぶ音韻・形態情報ネットワーク上に配置(門田, 2003)されている。【Na】
〈参考文献〉
・門田修平 (2003). 英語のメンタルレキシコン. 東京:松伯社.
・吉村公宏 (2004). はじめての認知言語学. 東京:研究社.

Linguistic Coding Difference Hypothesis
 L1での言語技能がL2学習の成否に大きく関わり、L2習得上の困難は特にL1におけるLinguistic coding skills(i.e., 音韻/表記技能、統語的知識)の欠如によるものであるとの考えを基に立てられた仮説。この仮説を検証する一連の研究の結果、1)L2習得が成功した学習者はそうでない学習者に比べてL1におけるLinguistic coding skillsが上回っていたこと、2)L2が成功した学習者は有意に言語適性が高かったこと、3)言語適性、そしてL1での言語技能が高い学習者はその後2年間の熟達度が大いに向上したことが確認された。また、多くの言語学習者が経験する言語不安は、このような上記のような認知的技能に欠けていることが原因であるとの見方も存在している。【KK】
〈参考文献〉
・Dornyei, Z. (2005). The psychology of the language learner: Individual differences in second language acquisition. New Jersey: Lawrence Erlbaum.
・Sparks, R., & Ganschow, L. (2001). Aptitude for learning a foreign language. Annual Review of Applied Linguistics, 21, 90-111.


literacy(リテラシー)
 読み書き能力に基礎的な計算能力を合わせたものを言う。自分で能力を活用できるようになるとリテラシーが定着したことになる。用語の定義はまだ一致していないが、近年単なる読み書き能力だけでなく、社会人として将来使用できる機能的リテラシー(functional literacy)を求める世界的傾向がみられる。例えば、OECD(経済協力開発機構)は、2000年、2003年、2006年に生徒の学習到達度調査(PISA)を行い、将来仕事や社会生活で活用していく新しい能力をみるため「読解力(reading literacy)「数学的リテラシー(mathematical literacy)」「科学的リテラシー(scientific literacy)」を調査している。【TA】
〈参考文献〉
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学事典』. 東京: 研究社.
・国立教育政策研究所(編). (2003). 『生きるための知識と技能2: OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2003年調査国際結果報告書』. 東京: ぎょうせい.

magical number seven, plus or minus two (7±2/マジックナンバー7)
 
Miller (1956)の1秒間隔で提示される系列(単語、数字、記号)の記録実験をまとめたものによると、短期記憶で直接覚えられる範囲は平均して5〜9(7±2)であると結論付けられ、心理学入門書の中には1つの用語として紹介されている場合がある。ただし、ここでの記憶項目は必ずしも個々の大きさや複雑さにきまりがなく、チャンク (chunk) のように個人が主観的に意味のあるまとまりを規定することができる。これによる短期記憶の容量が増える可能性はMiller自身も同論文の中で認めている。現実生活でも電話番号や歴史に関する年号を暗記するときに語呂合わせを使ったり、筆記具を持ち合わせずにいくつかのものを覚えなければならない時に、バラバラで覚えるのではなくイメージやストーリーを作って全てを関係づけると楽に覚えられるといわれるのは、このチャンクや再符号化の理論を背景にしている。【Ng】
〈参考文献〉
・Cohen, G. (1989). Memory in the real world. Lawrence Erlmaum Associates.
・Miller, G.A. (1956) The magical number seven, plus or minus two. Psychological Review. 63, 81-97
・Tulving, E. (1983). Elements of episodic memory. Oxford Univ. Press, UK. [太田信夫 訳. (1985). 『タルヴィングの記憶理論』. 教育出版:東京.]
・小谷津孝明 (編). (1982). 現代基礎心理学4 記憶, 東京大学出版会.

maintenance bilingual education*

majority language/minority language*

markedness/unmarkedness*

matched guise procedure*

meaning-focused instruction (意味重視の指導)
 意味の理解やメッセージの伝達、コミュニケーション能力 (see "communicative competence") を伸ばすことに重きを置いた指導。この指導は(1) 自然な言語の習得を促進する、(2) 言語を使うときの流暢さを高める、(3) コミュニケーションをうまく進めていくための方略的能力 (see "communicative competence" and "communication strategy") を高める、(4) 言語知識が自動化 (automatization; see "automatic processing") するのを助けるなどの効果がある。この指導に対応するものとして、form-focused instruction (see "grammar teaching") があるが、これら2つの指導法をバランスよく組み合わせる指導が求められている (白畑他, 1999, p. 182)。(see also "grammar teaching") 【K】

meaningful learning (有意味学習)
 心理学者Ausubelが提唱した学習過程で、新しい学習事項を学習者がすでに持っている認知概念と関連付けることにより、その学習内容を意味のあるものとして理解する過程を指す。meaningful learningは、既存の知識とは全くもしくはほとんど関連づけずに覚えるrote learning (機械的学習) と対比される (Brown, 1994; Richards, Platt, & Platt, 1985; 白畑, 冨田, 村野井, & 若林, 1999)。meaningfulであるということは、明確に言葉で表すことができ、正確に区別できる意識的な経験である、ということを表す (Brown, 1994)。学習状況が有意味になるためには、学習者に学習内容よりもより抽象的で一般的な「先行オーガナイザー」が与えられ、学習課題自体が学習者にとって有意味でなければならない (Brown, 1994; 白畑, 冨田, 村野井, & 若林, 1999)。rote learningによる暗記でもMillerが提唱した「7±2」の範囲で少しの間覚えることができるが、rote learningによる暗記は前後で学習した類似している内容から干渉を受けやすく、長期間の記憶の保持という点では有効ではない。それに対してmeaningful learningは干渉の影響がほとんどなく、記憶が効率的に行われる。Ausubelによって説明されたforgetting (忘却) の普遍的な本質によると、meaningful learningによって覚えられた事項も忘れられることはあるが、systematic forgetting (体系的忘却) であるので、個々の事例や経験は忘れられても、概念は保持される (Brown, 1994)。【HI】
〈参考文献〉
・Brown, H. D. (1994). Principles of language learning and teaching (2nd ed). Englewood Cliffs, NJ: Prentice Hall.
・Richards, J. C., Platt, J., & Platt, H. (1985). Dictionary of language teaching & applied linguistics (2nd ed). London: Longman.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館.

mediation
 Vygotskyの基本的理論の見解は人間の心的行動の高い形態はいつでも、どこでも象徴的な方法によって仲介される(mediation)ということである。Mediationには物理的なものと象徴的なものがある。これは人間を物の世界や心的行動の世界に結びつける活動への補助的な仕掛けの採用のことである。物理的な道具は人間が物理的な世界を組織したり、変えたりできるようにする。象徴的な道具は人間が心的過程を組織したり、統制したりできるようにする。象徴的な道具は人間が自分自身や心的または物理的な活動を組織し、統制することができる方法である。
Vygotskyの考え方から心的活動のmediationに役立つ最も重要な道具は言語である。 【H】

memory
 (see "aptitude")

mentalist theory (心的理論)
 学習者の生まれつき持っている能力を重視する理論。Chomsky学派は、子どもは言語の規則を習得する基礎となる、言語の抽象的な原理 (principles: see "parameter/principle") についての知識を持つと考え (Ellis, 1994, p. 713)、(1) innatist (innativistまたはnativist) position (生得的言語習得観) と呼ばれる。これは、刺激を与え、反応を得るという過程で人が言語を学んでいくと考える(2) behaviorist position (行動主義的言語習得観) に対抗する形で提唱された。現在、mentalist theoryに対立する大きな理論として、(3) 認知主義理論 (cognitive theory) がある。(1) と(3) の理論は、言語能力が他の一般認知能力 (例:数を数える能力) と異なるものと捉えるか、異ならないと考えるかで違う (白畑他, 1999, p. 36, 59, 142) が、Ellis (1994) は、現在の理論には2つの視点を取り入れたものもあり、包括的な第二言語習得理論は両方の要素を・謔闢・黷髟K要があると述べている (p. 347; その他の第二言語習得理論については、see Mitchell & Myles, 1998)。【K】

message-focused question
 (see "question type")

metacognitive knowledge (メタ認知知識)
 学習ストラテジーの使用において中心的な役割を果たすのはストラテジーの使用をコントロールするメタ認知であると考えられている。そのメタ認知は活動的側面と知識的側面によって構成されており、前者はメタ認知ストラテジーを使用するための技能に関するものであるが、後者はストラテジーを効果的なものにするために必要な知識であり、以下の3つの知識によって構成されている。
(1)Person Knowledge: 自身の年齢や適正、動機づけ、それら とこれまでの学習との関わり、自己効力感に対する信念など学習者自身に関係した知識
(2)Task Knowledge: タスクの目的の明確化及び自らのニーズとの適合性、タスクの分類、タスク達成のために必要な知識や技能等、取り組み方に関する知識
(3)Strategic Knowledge: ストラテジーとは何か、なぜ必要なのか、そしていつどのように使えばよいのかに関する一般的な知識
活動的側面と知識的側面は明確に区別されるものであり、これまで両者の関係性には焦点が当てられてこなかったが、両者を効果的に指導しなければ、ストラテジーを効果的に使用し自らの学習を制御する自律した学習者は育たないと考えられている。【KK】

大学英語教育学会学習ストラテジー研究会 『英語教師のための「学習ストラテジー」ハンドブック』 東京: 大修館書店
大学英語教育学会ストラテジー研究会 『言語学習と学習ストラテジー』 東京: リーベル出版
Wenden, A. L. (1998). Metacognitive knowledge and language learning. Applied Linguistics, 19, 515-537.

metacognitive strategy (メタ認知ストラテジー)
 学習ストラテジー (see "learning strategy")の一種で、学習者が認知プロセスに関する知識を利用して、計画、モニター、評価することで言語学習を方向づけようとするものである。あらかじめ、ある学習タスクを行うことを決めておいて、それ以外のものには関心を払わないようにするDirected attentionや、学習を助ける条件を理解してそれを作り出そうとするSelf-managementがある。(Ellis, 1994, pp. 536-538) 【S】

metaphor(隠喩・メタファー) 
 修辞の技巧を説くためにアリストテレスが、初めてこの語を用いた。もともとは、語の意味の転用のことを指していた。隠喩とは、「あたかも・さながら」などの語を用いる直喩とは対概念であり、例えを用いながら、表現面にはその形式例えば「ようだ・如し」などの語を出さない方法のことである。
 隠喩などの比喩表現は、言語によって異なり当然日本語と英語においても異なっている。そこには、両言語間における連想、発想の相違があり、対照言語学、あるいは比較文化の観点においても興味深い。
 隠喩を用いた日英語表現における相違の具体例を挙げる。日本語で、一人で両立しないような二つの業種を兼ねる際に「二足のわらじをはく」という表現を用いる。しかし、英語では、わらじにはたとえず、He is wearing two hats.と帽子にたとえるのである。【MU】
<参考文献>
・安藤昭一他編 『英語教育 現代キーワード事典』、増進堂、1991年
・亀井孝/河野六郎/千野栄一編 『言語学大辞典』、第6巻 術語編、三省堂、1996年
・小池生夫他編 『応用言語学事典』、研究社、2003年
・田中春美編 『現代言語学辞典』、成美堂、1988年
・レイコフ, G・ジョンソン, M 渡部昇一他訳 『レトリックと人生』、大修館書店、2001年〔第6版〕

metalingual knowledge
 (see "explicit knowledge")

microgenesis
 sociocultural theoryでは人間の学習を次のように二つに分ける。まず、phylogenesis。人類が連続的な生成を通して行う学習である。次は、ontogenesis。子供一人一人が発達の中で行う学習。このontogenesisにおいて、始めは意識的で概念的な発達は個人間で共有する相互心的現象として見られる。後になると、自分自身の意識を占有する個人の内的心理現象となる。
 子供にとって、言語は意識の発達のために仲介する重要な象徴的な道具である。成熟した人が新しい知識やスキルを獲得する時も同じような局所的な学習過程を示す。新しい概念はsocial/interactionalな方法を通して獲得され続ける。その過程は時々、熟達した人と未熟な人との話しの中で視覚的にたどることができる。この局所化されてコンテクスト化された学習過程をmicrogenesisとする。これが第二言語学習でのsocioculturalの考えの中心となる。【H】

microteaching(マイクロティーチング,模擬授業)
 大学での教員養成、あるいは現職教員を対象とした研修の中で,指導技術向上のために用いられる手法である。一つの授業を細かなセクションが統合されたものと捉え,実際の授業に含まれている様々な要因を制御することによって,一種の実験的環境を作り出し,その中で指導方法の練習を行うのがマイクロティーチング/模擬授業(以下MT)である(白畑他, 1999)。MTの基本的な流れは以下の通りである(Richards, Platt, & Platt, 1992; 米山, 2003)。
@指導者の説明やビデオによる実演の観察,討論などを通して指導手順・技術,手法の理解を深める。
A小グループに分かれて,指導案の作成・検討・修正を行う。
B他のグループの参加者を生徒に見立てて授業の一部を行う。
C録画・記録された模擬授業について参加者同士で討議し,改善の方法を探る。
DMTは多人数で同時に実施することは困難であるが,状況に応じた方法でMTの趣旨を取り入れた研修は可能である(米山, 2003)。【YS】
〈参考文献〉
・Richards, J. C., Platt, J., & Platt, H. (1992). Longman dictionary of language teaching and applied linguistics (2nd ed.). Essex: Pearson Education Limited.
・白畑知彦・冨田祐一・村野井仁・若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京:大修館書店.
・米山朝二. (2003). 『英語教育指導法事典』. 東京:研究社.

mime
 (see "communication strategy")

minimal pair
 1つの音素が異なる、一対の音のことであり、その音を含む2つの単語はそれぞれ意味が異なる。英語では、母音(bit―beat, cap―cup)、子音(shop―chop, pin―bin)の区別がこの例としてあげられる。最小対は2つの類似する音を対立させることで、音の差異を顕著にし、それが意味に変化を及ぼすことを認識させるものである。なお、訳語は上で使用した「最小対」の他に、「最小対立」、「ミニマルペア」のいずれも定着している。【MU】
〈参考文献〉
・安藤昭一他編.(1991).『英語教育現代キーワード事典』.増進堂.
・岡秀夫監訳.(1999).『外国語教育学大辞典』.大修館書店.(Johnson,K.&Johnson,H.(1998).Encyclopedic dictionary of applied linguistics. Blackwell.訳)
・亀井孝他編.(1996).『言語学大辞典 第6巻 術語編』.三省堂.
・竹林滋.(1996).『英語音声学』.研究社.
・寺澤芳雄編.(2002).『英語学要語辞典』.研究社

mistake (間違い)
 Corder (1967)によって誤り (see "error")と区別されて用いられた用語で、言語能力は有しているがその運用の段階で生じたものをいう。つまり、目標言語の規則を使用できず、それに代わって、正しくないが使用できる規則を学習者が適用する場合に生じる。(Ellis, 1994, p. 51) 【S】

modern language aptitude test (MLAT)
 (see "aptitude")

modularity (モジュラー性)
 人間の認知体系を1つの仕組みで説明しようとせずに、いくつかの下位部分 (module: モジュール) が相互に関係しながら機能していると考えること。そのモジュールの一つと考えられる「言語モジュール」は、語彙モジュール・文法モジュール・意味モジュールなどいくつかに分かれるとも考えられる。これを支持するのは、普遍文法 (see "UG") などを主張するChomsky学派 (see "mentalist theory") などで、支持しないのは、認知主義理論などで、そこでは言語はモジュールをなすとは考えない (白畑他, 1999, p. 193)。このように、第二言語習得の分野では、modularityやそれ以外の概念を使って、理論を構築しようとしている。
 なお、理論を作るにあたっての考え方については、(1) 1つの包括的な理論を求めていくアプローチと、(2) いくつかの理論がそれぞれ関連し合わずに、異なる部分を説明しようとするアプローチに対して、(3) 理論もモジュール的に考えて、相互に関係しあいながら全体像をつかんでいこうとするアプローチがあり、多くの研究者がそれを好んでいるとEllis (1994) は述べている (pp. 679-681)。【K】

monitoring (モニター)
 学習者は、話したり、書いたり、読んだり、聞いたりする際、自分の産出したものや理解の程度について注意を向けていて、問題があれば修正を行うと考えられている。de Bot, Paribakht, & Wesche (1997)をはじめ、多くのモデルにおいて、このモニターが組み込まれたものが提案されている。また、このモニターという活動を学習ストラテジーの一種と考え、よい学習者の特徴であるとする研究結果も報告されている。(Ellis, 1994, pp. 131-132; p. 546) 【S】
〈参考文献〉
de Bot, K., Paribakht, T. S., & Wesche, M. B. (1997). Toward a lexical processing model for the study of second language vocabulary acquisition; Evidence from ESL reading. Studies in Second Language Acquisition, 19, 309-329.

monitor theory*

monolingual*

morphology*

mother tongue/ native language (母語)
 親から学び家庭で使用される言語を母語と表すこともあるが、話者が幼児期に自然と習得して会話、読解をもっとも容易にできる言語を指す。第一言語(first language)と同義で扱われることもある。主に習得順序を指すが、言語能力、使用頻度、情緒面などを考慮する必要がある。母語は母国語と訳されていたこともあったが、母語と国家言語が一致しない国もあるため、母国語という用語は現在あまり使用されない。【TA】
〈参考文献〉
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学事典』. 東京: 研究社.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京:大修館書店.

motivation* (動機づけ)
 習得に大きな影響を与える要因。integrative motivation (統合的動機付け:言語を学ぶことで、それを話す集団と一体化したいために持つ動機付け) と instrumental motivation (道具的動機付け:大学に進学するなどの、目的達成のために学ぶ動機付け) の2つ (Gardner & Lambert, 1959) が有名。Skehan (1989, as cited in Ellis, 1994) は動機付けについての、以下の4つの仮説を提案した。
 (1) Intrinsic Hypothesis (内発的仮説),
 (2) Resultative Hypothesis (結果的仮説)
 (3) Internal Cause Hypoethesis (内的原因仮説; 研究の中心),
 (4) Carrot and Stick Hypothesis (ニンジンとムチ仮説)。
それぞれ動機付けが生まれる理由については、(1) 動機付けは内的な興味から来る, (2) 学習の結果生まれる, (3) ある程度内的に決まっている, (4) 外的影響と刺激に影響されると考え、(1) と(2) は学習が動機付けに影響する、(3) と(4) は動機付けが学習に影響すると考える。上のintegrative motivationと instrumental motivationは(3) と(4) に対応している。今後実証が必要である (p. 508-517)。【K】
〈参考文献〉
・Gardner, R. C., & Lambert, W. E. (1959). Motivational variables in second language acquisition. Canadian Journal of Psychology, 13, 266-272.

multilingual*

multiple intelligences
 Gardner (1983)は人間もつ7つの知能の存在を明らかにしているおり、学習者もその7つの知識を有効的に活用し、学習を促進することができると考えられている。言語知能(Linguistic Intelligence)は言葉を有効に使うことができ、学習者はクロスワードパズルなどといったものを好む。空間的知能(Spatial Intelligence)は空間的世界を捉える能力を指し、絵などといったヴィジュアルを好む。論理、数学的知能(Logical-Mathematical Intelligence)は数字を有効に使用できるため、数字を使わせるようなタスクを好む。音楽の知能(Musical Intelligence)は、音、リズムに敏感で、歌などから学習は促進される。身体、運動知能 (Bodily-Kinesthetic Intelligence)は、体の動かして物事を表現する能力で、TPRなどといった教授法は有効だと考えられる。Interpersonal Intelligenceは人と接する能力で、グループワークは効果的である。最後に、Intrapersonal Intelligenceは自らの事を正確に認識する能力で、個人での学習を好む。この7つの知能に加え、Natural Intelligenceといった観念も提唱されている。これは、自然から学習するような能力で、aboriginal peopleはこの知能が発達していると考えられる。【KG】
〈参考文献〉
・Gardner, H. (1983). Frames of Mind: The theory of Multiple Intelligences. New York: Basic Books.


native speaker (母語話者)
 ある言語を幼児期に習得した話者。当該言語の発音や文法、語句の用法などの正誤や許容性について、学習者は学習によって獲得された知識を用いて判断するのに対し、母語話者は生得的な直感 (intuition) によってこれを判断することができるとされる。【HO】

nativist position
 (see "mentalist theory")

natural approach*

natural method
 子供の母語習得過程である「聞き→話し→読み→書く」の自然的順序を外国語学習に適用するという考えのもと、学習者の母国語を使わずにすべて外国語で指導をおこなうという教授理論である。話しことば優先の考えは19世紀末当時の文法・訳読式教授法への批判と、その大きな反動ともいわれる。Natural Methodの考えを取り入れた代表的教授法にはGouinのPsychological MethodやBerlitzのBerlitz Methodが挙げられる。【Ng】
〈参考文献〉
奥田夏子.(1985). 『英語教師入門』. 東京: 大修館.
小池生夫 (編). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.

naturalistic second language acquisition
 (see "second language acquisition")

needs analysis(ニーズ分析)
 英語教育におけるニーズ分析とは、将来どのような目的で英語を使い、そのためにどのような学習が必要かという、学習者のニーズを分析すること。教師は学習者のニーズを考慮した上で、英語授業の内容や指導法、使用する教材などを決定しなければならない。日本の中学校における英語教育などEGP(English for general purposes / 一般目的のための英語教育)では学習者のニーズを予測することは難しいが、ESP(English for specific purposes / 特定の目的のための英語教育)では学習者の目的に応じたカリキュラムを準備しなければならないため、ニーズ分析の必要性は極めて高い。【KB】
〈参考文献〉
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.
・岡秀夫(監訳). (1999). 『外国語教育学大辞典』. 東京: 大修館書店.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.
・米山朝二. (2003). 『英語教育指導法事典』. 東京: 研究社.

negative evidence
 (see "positive evidence")

negotiation of form (形式交渉・形式のやりとり)
 ある話者の発言に言語的問題が生じた場合、対話者同士でその問題を見極め、さらには問題を解決しようとする過程 (Ellis, 2003)。言語的問題を見極めるために、相手に発話を繰り返させたり、自分の言ったことが正しいかどうかを相手に確認したりする。negotiation of meaningとnegotiation of formとの相違点は、前者においてはコミュニケーションが崩れてしまう可能性があるのに対し、後者においては崩れることとは関係がないということである(Ellis, 2003)。
 Form-Focussed Instruction (FFI) の役割は、negotiation of meaningだけではなく、同時にnegotiation of formも教えることができるかどうか、また教えられるならばどのようにしてか、ということが議論の中心になる(Spada, 1997)。【HI】
〈参考文献〉
Ellis, R. (2003). Task-based language learning and teaching. Oxford University Press.
Spada, N. (1997). Form-focused instructional second language acquisition: A review of classroom and laboratory research. Language Teaching, 30, 73-87.

negotiation of meaning (意味交渉・意味のやりとり)
 対話する中で、誤解が生じるなどの問題が起きた場合、聞き手・話し手がそれを解決しようと、意味理解のためにやりとりをするが、そのやりとりのことをnegotiation of meaningと呼ぶ。やりとりの中で、言語的な修正 (interactional modification: 相互交流的修正・会話的修正) を行うことが特徴で (具体的な例はsee "question type") ある。この修正が、学習者の理解を助け、アウトプットをする機会を作ると言われている。そのようなやりとりを重視する立場を、interactionist position (= iteractionism: 相互交流仮説・インタラクション仮説) と呼び、タスク中心教授法 (task-based instruction) がその考え方を基盤に据えている。なお、interactionist positionは、刺激を与え、反応を得るという過程で人が言語を学んでいくと考えるbehaviorist positionと、学習者の生まれつき持っている能力を重視するinnatist positionとは対照的な立場をとっている (see "mentalist theory"; 白畑他, 1999, pp. 36, 142, 150-151, 214)。【K】

neurolinguistics*

non-interface position
 (see "interface position")

non-kanji learner
(see "kanji/non-kanji learner" and "kanji learning") 【HO】

non semantic reading
失読症の一種。主に、成人のcentral dyslexiaのタイプの一つで、進行性認知症の患者に見られる。症例として、書かれた文字と絵を対応させることができ、それらの語をほぼ正確に読むことができ、不規則語や非語も読むことができる。しかし意味理解をしていない。意味の理解をしなくても単語の文字から読めてしまうということ。意味表象にアクセスしないルート、つまり、綴りから音韻のみの直接ルートがあるということを証明する種類の障害である。【ST】
〈参考文献〉
・Harley, T. A. (2001). The Psychology of Language: From data to theory. New York, NY: Psychology Press Ltd.

norm-referenced testing(集団規準準拠テスト)
 
テスト受験者の中で相対的な順序付けをして評価をするテストのことである。他者との比較を重視するために、相対評価として批判されることもある。熟達度テストとして用いられることが多い。一方、目標基準準拠テストは、各受験者がある目標を達成できたかどうかを重視する点で異なる。こちらは達成度テストとして用いられることが多い。テストを行う目的に応じて、それぞれを使い分けるべきである。【MO】
〈参考文献〉
・Brown, J. D. (2005). Testing in language programs: A comprehensive guide to English language assessment. NY: McGraw-Hill.
・渡部良典. (2004). 言語テストと評価. 小池生夫(編集主幹), 「第二言語習得研究の現在」 (pp. 275-294). 東京:大修館.

noticing(認識化)
 言語習得を進めるのに影響を与えると考えられている「意識」をSchmidt(1990)はいくつかに区別しており、そのうちの1つが「認識化」である。
認識化は、インプット中の言語形式に注目し、それを口頭で伝えることができる程度であり、第二言語習得を進める際に重要な役割を果たしている。学習者がインプットを受ける際に認識する言語の特徴は、学習者が言語を算出する際に、学習者の話し言葉にその特徴が現れるという研究結果が出ている。【IN】
〈参考文献〉
・岡秀夫(監訳). (1999). 『外国語教育学大辞典』. 東京:大修館書店. (Johnson, K., & Johnson, H. (1998). Encyclopedic dictionary of applied linguistics. Blackwell.訳)
・小池生夫(編). (2003). 「応用言語学事典」. 研究社.
・Doughty and Long (2003) The Handbook of Second Language Acquisition. Blackwell Publishing
・R.Schmidt (1990) The role of consciousness in second language learning. Applied Linguistics, 11, 129-58

obligatory occasion analysis
 学習者言語(learner language)を分析する方法の一つ。学習者が産出する目標言語のサンプルを集め、特定の言語形式(通常は文法項目)が使用すべき箇所で正確に使用されているかを割合で示す分析を行う。例えば過去時制を対象項目にした場合、I played tennis yesterdayという文は100%の正確さということになる。主に文法形態素の習得順序を、正確さの観点から検証するために用いられた分析方法であり、学習者の誤りだけを捉えた誤答分析(error analysis)を補う側面がある。しかしながら、対象となる特定の文法項目を、不適切な箇所で過剰に使用した場合を考慮していないという問題点も指摘され、その点を踏まえたtarget-like use analysis(Pica, 1983)という分析方法もある。【KS】
〈参考文献〉
・Ellis, R. (2008). The Study of Second Language Acquisition (2nd ed.). Oxford: Oxford University Press.
・Ellis, R. & Barkhuizen, G. (2005). Analysing Learner Language. Oxford: Oxford University Press..
・Pica, T. (1983). Methods of morpheme quantification: their effect on the interpretation of second language data. Studies in Second Language Acquisition, 6, 69-78.


onomatopoeia(オノマトペ)
 自然の音やある行為を言語音などによって暗示する語(白畑他, 1999, p. 212)。大きく擬音語・擬態語の二つに下位分類することが出来る。特に擬態語のうち、人間の心理状態を模写する物を擬情語と呼ぶ。オノマトペは声帯模写とは異なり、名詞や副詞といった品詞としての働きを持っている。日本語のオノマトペは反復・促音便で終わる語・撥音便で終わる語・「〜り」で終わる語・長母音化の特徴がある。一方、英語においてはrustleやcreakが過去形(rustled, creaked)や進行形(rustling, creaking)のような屈折形を持つなど、語彙化が進んでいる点に特徴がある。【Na】
〈参考文献〉
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 英語教育用語辞典. 東京: 大修館書店.
・吉村公宏 (2004). はじめての認知言語学. 東京:研究社.

open-choice principle (自由選択原理)
 Sinclair(1991)の提唱した、どのようにテクストが構成されているかについての二つの原理のうち一つ(cf., idiom principle)。文法規則に基づいて語彙の組み合わせが行われているとする。この原理に基づくと、話者はcapacity to use (and understand) unconstrained combination of wordsを有することになる(Skehan, 1998)。【Na】
〈参考文献〉
Sinclair, J. (1991). Corpus, concordance, collocation. Oxford University Press.
Skehan, P. (1998). A cognitive approach to language learning. Oxford University Press.

open question
 (see "question type")

operating principle model (操作原理モデル)
 Slobinが提唱したモデルで、操作原理モデルと呼ばれるものである。これは、言語習得がLanguage Making Capacity(言語創造能力)という多数の操作原理によって構成された能力を用いて説明できるとするモデルである。操作原理とは、学習者がいかにインプットを受信し、記憶の中に取り入れ整理をしているか、またそれをどのように記憶から取り出し、アウトプットしているかという一連の現象を説明する原理である。このモデルに基づいた第二言語習得の研究も進められているが、操作原理の項目数があまりにも多すぎ、またそれぞれの関連性も明確化されていないという批判もある。【KI】
〈参考文献〉
・Gregg, K. R. (2001). Learnability and second language acquisition theory. In P. Robinson (Ed.), Cognition and second language instruction (pp.152-180). Cambridge University Press.
・Slobin, D.I. (1973). Cognitive prerequisites for the development of grammar. In C. A. Ferguson and D. I. Slobin (Eds.), Studies of child language development (pp.175-208). New York: Holt Rinehart Winston.

options in grammar teaching (文法指導における選択肢)
 Ellis (1997) は文法指導に効果があることを受けて、文法をどのように教えるかについての選択肢をまとめている。
(1) 教師が学習者にさせる活動 (learner performance options)
  (a) 特性に焦点を置いた活動 (feature focused)
    [1] 宣言的知識 (see "declarative knowledge") を得ることが目標の活動
      [a] 直接的 (direct) 指導:規則・文法用語的なものを与える
      [b] 間接的 (indirect) 指導:規則の一般化にたどり着くために必要な、
          特定の文法構造を説明するデータを提供する
    [2] 手続き的知識 (procedural knowledge; see "declarative knowledge")
        を得ることが目標の活動 (= 練習: practice)
      [a] アウトプットが中心 (output-oriented):教えたい特性を正確に
          産出する機会を与える
        {1} 誤りを避ける (error-avoiding) 活動:限定された中で練習する
            タイプ・自分」で文を作り出すタイプの2タイプがある
        {2} 誤りを導く (error-inducing) 活動
      [b] インプットが中心 (input-oriented):特定の構造に注意を向けさせる
        {1} 洪水方式 (flooding):目標の構造を含む文などにたくさん触れる
            機会を作る
        {2} インプット強化 (input enhancement; see "consciousness
            raising"):目標の構造が目立つような形で提示する
 (b) コミュニケーションに焦点を置いた活動 (focused communication)
    [1] 産出コミュニケーションタスク (production communication task)
    [2] 理解コミュニケーションタスク (comprehension communication task)
(2) 学習者の誤りへの対処 (feedback options)
  (a) 隠されていない (overt) 対処
    [1] 文法用語を使って訂正する
    [2] 誤りを繰り返す
    [3] 誤りに注目させるようにする (例:声を高める、指を鳴らして合図をする)
  (b) 隠れた (covert) 対処
    [1] 間接否定証拠 (indirect negative evidence) を与える
        例:I meet Mr. Takano yesterday.
          ―> Oh, you met Mr. Takano yesterday?
 Ellis (1997) は、特性に焦点を置いた活動をFocus on Forms、コミュニケーションに焦点を置いた活動をFocus on Formと分類している。
 これらの選択肢のどれが最も効果が高いのかなどについては、まだあまり明らかでない。どれ一つを使うのでなく、組み合わせて使うことになるだろう (pp. 78-94)。【K】

orthographic depth/transparency (正書法の深度/透明度)
 個々の字素と音との対応関係が比較的単純で規則的な正書法と比較的複雑で不規則的な正書法とを区別し、前者を深い正書法 (deep orthography)、後者を浅い正書法 (shallow orthography) と呼ぶ。この場合の「正書法」とは、字素(の集合)とそれが表す言語との対応関係のことを指す (Katz & Frost, 1992, p.68)。このように正書法と音声の関係を深度という尺度で捉える見方を「正書法の深度」と呼ぶが、最近は「正書法の透明度 (orthographic transparency) 」という用語を用いる場合が増えている (Sproat, 2000, p.6)。Katz and Frost (1992) は、同一のアルファベットを用いる正書法であっても、深度の違いにより認知過程や学習過程が異なるという仮説 (orthographic depth hypothesis) を提示している。(see "Orthographic Depth Hypothesis") 【HO】
〈参考文献〉
・Katz, L., & Frost, R. (1992). The reading process is different for different orthographies: The orthographic depth hypothesis. In R. Frost, & L. Katz (Eds.), Orthography, phonology, morphology and meaning (pp.67-84). Amsterdam: North-Holland.
・Sproat, Richard (2000). A computational theory of writing systems. Cambridge University Press.

orthographic depth hypothesis (ODH; 正書法の深度仮説)
 正書法の深度によって認知過程や学習過程が異なるという仮説。この仮説によれば、深い正書法 (e.g., 英語) で書かれた語の読みが正書法レキシコンを経由して行われるのに対し、浅い正書法 (e.g., セルビア・クロアチア語) で書かれた語の読みは字素と音素の対応規則(grapheme-to-phoneme correspondence rules) を参照する形で行われる。従来の正書法仮説は、浅い正書法の読みにおいてはレキシコンが経由されないという「強い」立場を取るものであった。これに対し Katz and Frost (1992) は、いかなる正書法の読みであっても正書法レキシコンと対応規則の両方が活用され得るが、これらの活用の比重は正書法の深さによって異なるという、「弱い」正書法仮説を提示している。「強い」正書法仮説に対しては、セルビア・クロアチア語、ペルシャ語、日本語の読みに関する実験結果を踏まえた Besner and Smith (1992) や、中国語や日本語の読みに関する実験結果を踏まえたSproat (2000) などの実証的研究によって反証が提示されている。(see "orthographic depth/transparency") 【HO】
〈参考文献〉
・Besner, D., & Smith, M.C. (1992). Basic processes in reading: Is the orthographic depth hypothesis sinking? In R. Frost, & L. Katz (Eds.), Orthography, phonology, morphology and meaning (pp.45-66). Amsterdam: North-Holland.
・Katz, L., & Frost, R. (1992). The reading process is different for different orthographies: The orthographic depth hypothesis. In R. Frost, & L. Katz (Eds.), Orthography, phonology, morphology and meaning (pp.67-84). Amsterdam: North-Holland.
・Sproat, R. (2000). A computational theory of writing systems. Cambridge University Press.

orthography (正書法)
 書記体系に関する研究において正書法はさまざまに定義されるが、概ね以下の3種類に分けられる:@ある言語を書き表すために用いられる記号の集合 (e.g., Coulmas, 1996, p.379; Sproat, 2000, pp.25-26);Aある言語を書き表すために用いられるスペリングの規則の集合およびその原理 (e.g., Daniels & Bright, 1996, p.xliii);Bある言語を書き表すために用いられる記号とスペリングの規則の集合 (e.g., Sampson, 1985, p.19)。また、上掲の先行研究はいずれも正書法が有する規範的 (normative) または慣習的 (conventional) 性質について言及している。規範的・慣習的とは、当該の正書法がある社会の構成員によって共有されたものであることを意味する。ただし、文献によって規範的・慣習的性質の捉え方に幅があり、ある国語の標準的な書き表し方として制定された規則のみに限定する場合と、ある程度規範化され一般に用いられているものすべてを指す場合とがある (Sproat, 2000, p.26) 。以上を整理すると、以下のように定義することができる。正書法とは、ある社会において、慣習的または制度的に規範化された、特定の言語を書き表すための記号の集合またはスペリングに関する規則の集合、あるいはその両方を指す用語である。
 正書法に関する知識の習得は、リーディングやライティングの基礎となるため、言語習得の重要な項目のひとつであると考えられる。これに関連して、ライティング能力 (writing abilities) の一部としての正書法の知識や、リーディングにおける正書法処理 (orthographic processing) などに関する研究が行なわれている (e.g., 大井, 2003; 野呂, 2003) 。【HO】
〈参考文献〉
Coulmas, F. (1996). The Blackwell encyclopaedia of writing systems. Oxford: Blackwell Publishers.
Daniels, P. T., & Bright, W. (Eds.). (1996). World's writing systems. Oxford University Press.
Sampson, G. (1985). Writing systems. Stanford University Press.
Sproat, R. (2000). A computational theory of writing systems. Cambridge University Press.
大井恭子 (2003). 「ライティング能力 (writing abilities)」. In 小池生夫・他(編). 『応用言語学辞典』 (pp.70-71). 東京: 研究社.
野呂忠司 (2003). 「正書法処理 (orthographic processing)」. In 小池生夫・他(編). 『応用言語学辞典』 (pp.555-556). 東京: 研究社.

orthography teaching in SLA (SLAにおける正書法指導)
 学校などで外国語を学習する場合は、板書や教科書等を通じ文字で書かれたことばに接する機会が多くなるが、その際、学習者がすでに習得している正書法と目標言語の正書法が大きく異なると、学習意欲や習得に影響が出てくる可能性がある。例えば音素体系であるアルファベットに慣れ親しんだ学習者が日本語を学習する際、複雑な正書法を持つ日本語に対し不安や拒絶などの否定的態度を示したり、習得の質や速度を低下させたり
する事例がしばしば見られる。また、これらの問題は、学習者の内的要因によるばかりではなく、当該の正書法に関する不正確な言説 (e.g., 漢字は数万もの文字から成る表意文字である、アルファベットは最も合理的で優れた文字である、仮名は漢字よりもやさしい) や、不適切なシラバス・デザインや指導などの外的要因によって増幅される場合がある。SLA においては、適切な指導を通じ、学習者に正確かつ体系的に情報を提示する必要がある。【HO】
〈参考文献〉
・Sassoon, R. (1995). The acquisition of a second writing system. Oxford: Intellect.
・カイザー シュテファン. (1994). 「漢字神話と漢字学習: 非漢字系学習者における漢字先入観について」. 『筑波大学留学生センター日本語教育論集』, 9, 61-71.

other-regulation
 (see "Zone of Proximal Development (ZPD)")

output
 (see "input/output")

output-oriented
 (see "options in language teaching")

output hypothesis (アウトプット [出力] 仮説)
 言語を習得するためには、聞いたり読んだりするだけでなく、話したり書いたりすることが必要だという仮説 (白畑他, 1999, p. 217)。特に、相手に理解してもらうために、努力してより良いアウトプット (pushed output) を出そうとすることが大切だといわれる (Comprehensible Output Hypothesis: 理解可能なアウトプット [出力] 仮説; Swain, 1985, as cited in Ellis, p. 282, 697)。アウトプットにより、(1) 自分が表現したいことと、自分の現在の能力で実際に表現できることのギャップに気づいたり、(2) 情報の受け手 (聞き手・読み手) からの反応 (feedback) を得ることができたり、(3) どのように話したり書いたりしようかと意識的に考えることができたり、(4) 意味を文法などと結びつけることができたりする (白畑他, 1999, pp. 217-218) などの効果があると言われている。
 これは、学習者の現在持っている言語能力より、少し難しめの言語 (comprehensible input [= i + 1]: 理解可能なインプット) を多く聞いたり読んだりしていれば、自然にアウトプットも出てくる (Input Hypothesis: インプット仮説; 白畑他, 1999, p. 144) という主張に対抗して、提唱されたものである。【K】

overgeneralization*

parameter (パラメータ)/principle (原理)
 原理とは、あらゆる言語に適用される抽象的な文法特性のことをいい、「下接の条件」(α移動は、二つ以上の境界節点を越えて要素を移動してはならない)などがある。一方、パラメータは各言語によって可変的な部分を一つにまとめたもので、pro-drop(主語代名詞が表面に現れない現象で、これはイタリア語などに見られるが、英語などにはみられない)などがある。 Chomskyは、普遍文法 (see "UG")を原理の体系とした上で、その各々の原理(の一部)にはパラメータが組み込まれているとしている。(Ellis, 1994, pp. 430-432) 【S】

paraphrase
 (see "communication strategy")

partial alphabetic phase (level)
 学習者が単語のつづりを見て発音できるようになるまでの発達過程(発音までの4段階)の中の第2段階。semiphoneticなレベルともいえる。つづりと発音の規則をある程度認識できている。しかし、単語の発音の中に含まれる音の分解はできず(音素―書記素の理解はまでできていない)、また母音の理解も難しい。しかしpre-alphabetic phase (level)とは異なり、完璧ではなくとも、文字と発音の規則性の理解をし始めているため、文字(アルファベット)には注目する。既に知っている単語の情報を結び付けようと努力する【ST】
〈参考文献〉
・Drake, D. A., & Ehri, L. C. (1984). Spelling acquisition: Effects of pronouncing words on memory for their spellings. Cognition and Instruction, 1, 297-320.
・Ehri, L. C. (1997). Learning to read and learning to spell are one and the same, almost. In C. A. Perfetti, L. Rieben, & M. Fayol (Eds.), Learning to spell: Research, theory, and practice across languages (pp. 237-269). Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associates Inc.
・Harley, T. A. (2001). The Psychology of language: From research to practice. NY: Psychology Press Ltd.

pattern
 (see "formula/formulaic speech")

pattern practice (文型練習)
 文型の模倣と反復により言語習慣化を図る指導法。文型練習の基本的な方法として変換 (variation) と選択 (selection) が挙げられる。変換の練習法としては、置換 (substitution)、転換 (conversion)、拡張 (expansion) があり、選択の練習法としては、教材内会話 (controlled conversation)、生徒
間対話 (pupil-pupil dialogue)、自由会話 (free conversation) などがある。文型練習は基本的な文型の定着を可能にする一方で、学習者のコミュニケーション能力に貢献しないという指摘もある。【HO】

Pedagogical Grammar Hypothesis (教育文法仮説)
 学習者の文法知識を促進するには,学習者が目標言語に触れ,使用する過程を重視すると同時に,教師からの明示的な文法説明や文法記述が意味を持つという仮説。この仮説によれば,文法指導における文法規則などの明示的知識が,学習者の文法能力の向上および目標言語の習得を促進する働きがあるものとして考えられている(馬場, 1992, p. 24; 村野井, 2006, p. 91)。Terrell (1991, p. 52)は言語学習の流れとして,@教師の説明をもとに規則を学習する,Agrammar exerciseを通して規則について練習する,B意味ある相互交流を通して学習した規則を応用する,の3段階を挙げた。このことを踏まえて,文法能力はコミュニケーション能力の重要な一部であるが,文法を学習するだけではコミュニケーション能力は充分に向上しないとも述べている。また,Odlin (1994, p. 14)も学習者には明示的な文法指導と,それを用いた言語活動の両方が必要であることを述べている。これらのことから,文法を明示的・意識的に学習するだけでなく,目標言語を実際に使用し,学習した文法規則が正しいかどうかを仮説検証することを通して,言語を習得していくことが考えられる。
〈参考文献〉
・Odlin, T. (1994). Introduction. In T. Odlin (Ed.), Perspectives on pedagogical grammar (pp. 1-22), Cambridge: Cambridge University Press.
・Terrell, T. D. (1991). The role of grammar instruction in a communicative approach. The Modern Language Journal, 75, 52-63.
・馬場哲生. (1992). 「学習文法とは何か」. In 金谷憲(編)『学習文法論:文法書・文法教育の働きを探る』(pp. 15-38), 東京:河源社.
・村野井仁. (2006). 『第二言語習得研究から見た効果的な英語学習法・指導法』. 東京:大修館書店.


peer-teaching/learning/feedback
 生徒同士がお互いに教えあうこと。例えばクローズテストを行った際に学生同士の空所の位置が異なる場合、そのinformation gapを用いて、ある生徒が他の生徒に空所に入る単語を教える時などに使用できる。Feeny によると、教える側の学生は教わる側の学生とほぼ同様に学習できる。また、生徒が書いた英作文についてお互いに読み合ってフィードバックを行うことをpeer feedbackと言う。【MO】
〈参考文献〉
・Feeny, T. P. (1976). Vocabulary teaching as a means of vocabulary expansion. Foreign Language Annals, 9, 485-486.
・Nation, I. S. P. (2001). Learning vocabulary in another language. Cambridge University Press.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京:大修館書店.

performance*

personal characteristics (個人的特性)
 
Bachman and Palmer (1996) が提唱した、「言語使用」および「言語テストパフォーマンス」の構成要素および関連を示したモデルの構成要素の1つ。具体的には、age, foreign language aptitude, socio-psychological factors, personality, cognitive style, language use strategies, ethnolinguistic factors, multilingual ability, sex, nationality, resident status, native language, level and type of general education, type and amount of preparation or prior experience with a given test などがある。【I】
〈参考文献〉
・Bachman, L. F., & Palmer, A. S. (1996). Language testing in practice. Oxford University Press.

phoneme
特定の言語において、意味を区別する最小の音の単位のこと。英語のread[ri:d]は/r/、/i:/、/d/の個々の音がこの順序で並ぶことによって、「読む」という意味を表していると言える。この語をlead[li:d]と比べると、/r/と/l/の差によってこれら2つの語の意味の区別に役立っており、これ以上小さな単位には分けられず、/r/と/l/は異なった最小単位であることがわかる。pat[p?t]とbat[b?t]における/p/と/b/も同様である。これらは、1組の音だけが異なり、他は全て同じ音の組み合わせの語の組を比較することで、/r/と/l/、/p/と/b/がそれぞれ異なった音素であることがよりはっきりする。なお、訳語であるが、上で使用した「音素」の他に「フォネーム」が定着しており、記述する際は//に入れて記述する。【MU】
〈参考文献〉
・安藤昭一他編.(1991).『英語教育現代キーワード事典』.東京:増進堂.
・岡秀夫監訳.(1999).『外国語教育学大辞典』.大修館書店.(Johnson,K.&Johnson,H.(1998).Encyclopedic dictionary of applied linguistics. Blackwell.訳)
・亀井孝他編.(1996).『言語学大辞典 第6巻 術語編』.東京:三省堂.
・竹林滋.(1996).『英語音声学』.研究社.

phonemic coding ability
 (see "aptitude")

phonological dyslexia(音韻性失読症)
 
発音可能な非語、擬似語とされる語を発音することに関する選択的障害。正しい語を読む能力はあるものの、擬似語が読めない。(例えば、"sleep"は読めても、"sleeb"は読めない。GPCルート(非語彙ルート)が損傷しているため非単語の発音ができないと考えられる。(逆に言えば、語彙ルートは損傷していない)音韻性失読症には様々なタイプがあるが、綴りもしくは音韻の処理にかかわる混乱、と説明することができ、以下の2つのタイプに分けられる。
@書記素の解析が困難なタイプ・・・書記素的に複雑な非語(例:CAU)の発音の方が、書記素的に簡単な非語(例:IKO)の発音より、困難。
A音韻処理が困難なタイプ・・・非擬似同音語(non-pseudohomophones)よりも、擬似同音語(pseudohomophones)の方が良く読め、綴りの影響をうけない。
綴りから音韻への処理に関する障害、とまとめることができる。
綴りからの音韻処理のステージには以下のような段階が挙げられる。
ステージ@: graphemic analysis stage・・・文字列から書記素へ
ステージA: print-to-sound conversion stage・・・音素を書記素への転換
ステージB: phonemic blending stage・・・音韻表象へ
それぞれのステージにおける障害を持つ症例が認められている。【ST】
〈参考文献〉
・Harley, T. A. (2001). The Psychology of Language: From data to theory. New York, NY: Psychology Press Ltd.
・大石晴美.(2006).『脳科学からの第二言語習得論』.京都: 昭和堂.
・門田修平. (2003).『英語のメンタルレキシコン』. 東京: 松柏社.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.

phonology*

pidgin*

Pimsleur Language Aptitude Battery (PLAB)
 (see "aptitude")

planning time
 (see "task")

plateau phenomenon (高原現象)
 
現象そのものを発見したのは Bryan & Harter (1897) で、モールス信号の送受信に関する研究からはじまる。彼らは信号を介した文字・単語・文章の送受信で練習効果の経過を40週間観察した。結果、12週目あたりまでは練習の伸びは3尺度で似たような伸び具合だったが、その後、文字・単語受信の習熟が限界に達した。一方、文章の受信は、16週目から24週目にかけては文字・単語同様に効率が停滞したが、24週目以降にまた上昇が見られた。2人は中腹の停滞期間で句や文章の単位にまとめるコツを会得し、質的に技能を飛躍させる準備期間と結論付けた。
第二言語習得研究では、例えば80年代にカナダの小学校でおこなわれたフランス語のイマージョン教育の報告(Cummins, 1987など) をまとめ、読み書きの発達には部分的に同現象が関わっていたと紹介しているものもある (Reeder et.al, 1999)。
これらの説から、学習には単なる成果の一時的な停滞があると捉える以上に、処理単位で単純なものから複雑なものへの階層構造があること、それによって要求される準備期間の関係が存在することが考えられている。【Ng】
〈参考文献〉
・Bryan, W. L., & Harter, N. (1897). Studies in the psychology and psychology of the telegraphic language. Psychological Review, 4, 27-53.
・Cummins, J. (1987). Immersion programs: Current issues and future directions. In L.L. Stewin & S.J. McCann (Eds.) ・Contemporary educational issues: The Canadian mosaic.
・Reeder, K., Buntain, J. & Takakuwa, M. (1999). Intensity of L2 instruction and biliterate proficiency in the intermediate years of a French immersion program1, the Canadian Modern Language Review, 56 (1).

portfolio(ポートフォリオ)
 ライティングにおいてエッセイを書く際、最終版のエッセイだけではなく、それまでの校正や友人・教師からのフィードバックが含まれているもの。より様々な観点から学生を評価できるために妥当性が高いと言われている。しかし、時間がかかることや主観的な評価になってしまうことが欠点として挙げられる。また、ポートフォリオには教育的な側面もあり、ライティングのプロセスを重視する指導に用いることが可能である。【MO】
〈参考文献〉
・Davies, A., Brown, A., Elder, C., Hill, K., Lumley, T., & McNamara, T. (1999). Studies in language testing 7. Dictionary of language testing. Cambridge University Press.
・小室俊明. (編著). 「英語ライティング論」. 東京:河源社.

positive evidence/negative evidence (肯定証拠/否定証拠)
 言語習得の際に、ある文法規則が正しいと示す証拠をpositive evidence(肯定証拠)、逆に、ある文法規則が間違っていると示す証拠をnegative evidence(否定証拠)という。さらにnegative evidenceは、direct negative evidence(直接否定証拠)とindirect negative evidence(間接否定証拠)の二つに分けられる。Direct negative evidenceは、学習者に明示的な訂正や指示、メタ言語的説明を行うことによって与えられるものである。一方、Indirect negative evidenceは、ある文法規則が使用されないことによって、その文法規則が間違っていることを証明するものである。第二言語習得において、positive evidence、negative evidenceともに、何らかの役割を果たしていると考えられているが、これらのインプットだけで、本当にL2が獲得され、非文法的表現が完全に無くなるのかどうかは、明らかになっていない。【KI】
〈参考文献〉
・Gregg, K. R. (2001). Learnability and second language acquisition theory. In P. Robinson, (Ed.), Cognition and second language instruction (pp. 152-80). Cambridge University Press.

possible self (可能な自己)
 将来的な到達目標としての自己概念を表すイメージや考えと定義され、それが明確で精巧なほど個人はその達成のために効果的に動機づけられると考えられている。これは更にIdeal self (i.e., 自己実現に対する抱負や願い、希望)とOught self (i.e., 義務や責任感)という2つの自己に分類され、現実と理想の自己を乖離させないよう人は動機づけられる。D?rnyei (2005)はこの概念を元にIntegrativenessの再考察を行い、それに直接影響を与えるattitudes toward L2 speakers/communityとinstrumentalityはそれぞれIdeal self、そしてIdeal/Ought selfとして考えることができるとの見解を示した。前者の場合、L2の熟達した話者になりたいと考える場合、L2のコミュニティに住む人々のようになりたいと考えることが自然であり、また、後者にはL2のプロになりたい(Ideal self)、そして義務や罰の回避(Ought self)という2つの側面が考えられるため、言語学習に関する動機づけ理論と自己概念の理論は密接であると説明する。そしてintegrativenessを理想の実現の原動力として捉え、Ideal L2 Selfと捉えた。理想の言語使用者という自己概念と同一化するために、学習者は「言語学習」という行動を選択し、努力するものと思われる。これまでL2使用者との関わりを持つことができない環境ではintegrativenessという概念が適切ではないと考えられてきたが、L2コミュニティに属するL2話者を想定した理想の自己との「統合」は可能であるため、環境に関わらずintegrativenessの重要性が再認識された。【KK】

・D?rnyei, Z. (2005). The psychology of the language learner. Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associates.
・Csiz?r, K., & D?rnyei, Z. (2005). The internal structure of language learning motivation and its relationship with language choice and learning effort. Modern Language Journal, 89, 19-36.
・八島智子 (2004) 『外国語コミュニケーションの情意と動機』 大阪: 関西大学出版部

post-test (事後テスト/ポスト・テスト)
指導や学習が終わった後に行うテストのことを事後テストまたはポスト・テストとよぶ。一方、指導や学習を行う前に行うテストは事前テストまたはプレ・テストとよばれている。事前テストと事後テストを比較することで、学習者の力がどれだけ伸びたかや、指導の効果を確認できる。事後テストには、学習や指導の直後に行うものと、一定期間を経た後に行う遅延テストがある。遅延テストを行うことによって、学習や指導の持続的な効果を測定することが可能になる。【KA】
<参考文献>
・Bachman, L. (1990). Fundamental considerations in language testing. Oxford: Oxford University Press.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』.東京:大修館書店.

PPP Approach
 
文法項目を指導する手順の一つ。Audiolingualismの流れをくんでおり,以下に示すPresentation(提示)−Practice(練習)−Production(産出)の3段階を通して文法項目を学習する。
@Presentation(提示):文法項目はそれが使用される状況とともに導入で提示される。
APractice(練習):クラス全員で教師の後に繰り返し言ったり,個人で指名されて教師の後について言ったり,cue-response drill(教師がcueを出し,それに学習者は応じるドリル形式の練習)で言ったりして,@で提示された文法項目を練習する。
BProduction(産出):学習者は新しく学習した文法項目を用いて,文を作成する。
PPP Approachは教室を組織化し,教室学習での明確な目標を学習者に与えることができるとする主張(Skehan, 1996)がある一方,文法指導としてPPP Approachを疑問視するものもある(Harmer, 2007)。しかし,日本の英語教育において教科書を中心とした授業を展開する上で,PPP Approachはきわめて便利なものであると言える(村野井,2006)。【YS】
〈参考文献〉
・Harmer, J. (2007). Popular methodology. In J. Harmer, The practice of English language teaching, 4th edition (pp. 62-80). Essex, UK: Pearson Education.
・Skehan, P. (1996). Second language acquisition research and task-based instruction. In J. Wills & D. Wills (Eds.), Challenge and change in language teaching (pp. 17-30). Oxford, UK: Macmillan Education.
・村野井仁. (2006). 『第二言語習得研究から見た効果的な英語学習法・指導法』. 東京:大修館書店.

practice
 (see "options in language teaching")

practice effect (練習効果)
 
同じテストを複数回受験する際に、事前にテストを受けたことが、後に同じテストを受験する際に影響を及ぼすことを練習効果という。したがって、事前テストと事後テストを比較して、学習者の伸びや指導の効果を検証する際は、練習効果の影響も考慮する必要がある。実証的研究において指導の効果を検証する際には、指導を受けておらず、かつ実験群と同質の参加者で構成されている統制群を設けるなどの工夫が求められる。【KA】
<参考文献>
・Bachman, L. (1990). Fundamental considerations in language testing. Oxford: Oxford University Press.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』.東京:大修館書店.

pragmatics (語用論): 
 使用された言語・文があるコンテクスト(文脈)の中でどう解釈されるのかを研究する分野。友人に、「ペンを持ってますか?」と聞かれて「ハイ」というだけの人はほとんどいない。多くの人はペンを持っている場合そのペンを相手に差し出す。この発話には書かれていないが「ペンを持っていたら貸してください」という意味が含まれているためである。このように文は、文字通りの意味と直接表れてはいないが含まれている意味の2つが組み合わされて解釈される。そして、前者が研究されるのが意味論、後者が語用論である。
 Thomas (1995)では語用論をさらに詳しく、話者と聞き手の間で文脈からその発話に適切な意味を選びとる「相互作用における意味」に関わる過程だとしている。研究分野は、発話の前提(presupposition), 発話行為, 発話の含意, 談話構造の分析に関わるものなどがある。【O】
〈参考文献〉
・安藤昭一 他(編) (1991) 『英語教育現代キーワード事典』増進堂.
・小泉 保(編) (2001) 『入門語用論研究』研究社.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京:大修館書店.
・Thomas, J. (1995) Meaning in Interaction: An Introduction to Pragmatics (Learning About Language.) Addison-Wesley.

pre-alphabetic phase (level)
 
学習者が単語のつづりを見て発音できるようになるまでの発達過程(発音までの4段階)の中の第1段階。logographic、precommunicativeなレベルともいえる。文字と音の対応に関する理解はまださほど発達しておらず、機械的に発音する(direct accessする)ことしかできない。視覚的に見た単語を形としてとらえ、それを意味や概念と結びつけて覚える。単語として認識というよりは、形として認識する段階。系統だった知識はまだ構築されていない。主に感覚でつづりから音を再生する。例:単語'yellow'は長い棒が真ん中に2本、というように認識する。【ST】
〈参考文献〉
・Drake, D. A., & Ehri, L. C. (1984). Spelling acquisition: Effects of pronouncing words on memory for their spellings. Cognition and Instruction, 1, 297-320.
・Ehri, L. C. (1997). Learning to read and learning to spell are one and the same, almost. In C. A. Perfetti, L. Rieben, & M. Fayol (Eds.), Learning to spell: Research, theory, and practice across languages (pp. 237-269). Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associates Inc.
・Harley, T. A. (2001). The Psychology of language: From research to practice. NY: Psychology Press Ltd.


prescriptive grammar(規範文法)
 grammarの語源であるギリシャ語のgrammatik? tekhn?が「書く技術」を意味したが、ラテン語、ギリシャ語文法は、優れた文章を書くための文法で、規範を表す教科書であった。このようなラテン語、ギリシャ語の文法が、中世以後のヨーロッパを中心とした諸言語の文法の模範的なものとなり、これらの言語はラテン語、ギリシャ語の文法範疇や品詞の分類(8品詞※)をそのまま引き継ぐようになった。このような、「いかに正しく書くべきか」を考えた文法のことが「規範文法」のことで、現実的には学校文法(school grammar)として教育の立場から要請されるものである。【MU】
※・・・冠詞、名詞、代名詞、形容詞、副詞、前置詞、接続詞、間投詞。
〈参考文献〉
・安藤昭一他編.(1991).『英語教育現代キーワード事典』.増進堂.
・岡秀夫監訳.(1999).『外国語教育学大辞典』.大修館書店.(Johnson,K.&Johnson,H.(1998).Encyclopedic dictionary of applied linguistics. Blackwell.訳)
・亀井孝他編.(1996).『言語学大辞典 第6巻 術語編』.三省堂.
・田中春美他編.(1988).『現代言語学辞典』.成美堂

principle
 (see "parameter/principle")

private and inner speech
 子供の言語発達において、他人に向けて話すというより自分自身に話すという、まるで独白のような段階がある。その自分にむけた発話をsociocultural theoryではprivate speechという。private speechについての解釈は、PiagetとVygotskyの間で次のように異なる。
 ・Piagetian理論:子供のegocentrismの事実であるか、外界をみる能力がないとされる。
 ・Vygotsky:自分の行動を調整するための、子供の発達的能力の事実と見る。このprivate speechは結局inner speechとなる。inner speechとは外部への調音をしないで、内的思考を調整するための言語使用である。したがって、private speechは社会的で個人間の言語での早期使用の進歩を反映している。完全に自律した個人はinner speechを思考の道具として発達させていて、一般的に外的なprivate speechとして調音される必要はない。しかしながら、新しいタスクに取り組む時は、スキルのある大人も独り言を言いながら努力したり、調整したりする。【H】

probabilistic language model (確率的言語モデル)
 言語の数学的モデルとして,言語を記号列の集合ととらえ, 記号列の生起する確率(記号列の起こりやすさ)を考慮したもの【Oh】
<参考文献>
北研二 "確率的言語モデル" 東京大学出版会 1999

Problem-Solving Strategy (問題解決ストラテジー)
 このストラテジーは全体的ストラテジー(global strategy)の下位ストラテジーであり、望ましい結果に到達するために方法を選びながら学習していく、というストラテジーである。外国語を学習する際に使われ、例としては、名詞の前の冠詞のaとtheの選択がある。リーディング中では、問題の設定し、それを解決するという作業を繰り返すことで読解を進めていくストラテジーである。つまり、読み手はリーディング中に読んでいるテキストに対して問いかけをし、その答えを自分で導きながら読み進めていく。この際に、読み手が設定する質問はテキストの構造によってかわってくる。例えば、論説文ならその結論を答えとして求めながら読み進めたり、物語文ならその登場人物やストーリーについて問題設定して答えたりしていく。【JY】
〈参考文献〉
・小池生夫(編). (2003) 『応用言語学事典』. 研究社.
・Richards, Jack C., Schmidt, Richard, Kendricks, Heidi, & Kim, Youngkyu. (2002). Longman Dictionary of Language Teaching and Applied Linguistics. 3rd ed. Harlow: Pearson Education.

proceduralization
 (see "declarative knowledge")

procedural knowledge
 (see "declarative knowledge")

procedural syllabus(手順シラバス)
 手順シラバスとは、Prabhu (1987) によって推進されたCommunicational Teaching Projectで採用されたシラバスである。手順シラバスでは学習者がタスクに取り組み、コミュニケーション活動を行うことによって、言語を習得することを目的とする。タスクを中心に手順シラバスは構成されることから、Richards, Platt and Weber (1985) は手順シラバスとタスク中心シラバス(task-based syllabus)を同一のものとみなした。一方、2つのシラバスを別のものとして捉える考え方もある (Long & Crookes, 1992)。
 また、Long and Crookes (1992) によると、手順シラバスは分析シラバス(analytic syllabus)に分類される。【KB】
〈参考文献〉
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.
・Long, M. H., & Crookes, G. (1992). Three approaches to task-based syllabus design. TESOL Quarterly, 26, 27-56.
・岡秀夫(監訳). (1999). 『外国語教育学大辞典』. 東京: 大修館書店.
・Prabhu, N. S. (1987). Second language pedagogy. Oxford: Oxford University Press.
・Richards, J., Platt, J., & Weber, H. (1985). Longman dictionary of applied linguistics. London: Longman.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.
・米山朝二. (2003). 『英語教育指導法事典』. 東京: 研究社.

process writing(プロセス・ライティング)
 最終的に書き上げたもの(product)だけに注意を向けるのではなく、学習者の書く過程(process)を重視したライティング活動。White & Arndt (1991) はライティングのプロセスを@generating ideas(アイディアを生み出す)、Afocusing(焦点を合わせる)、Bstructuring(構成する)、Cdrafting(草稿する)、Devaluating(評価する)、Ere-viewing(再検討する)、という6段階で表した。このような過程重視のライティング活動において学習者は、この6段階を単に順番通りに進めていくのではなく、それぞれの段階を何度も繰り返しながらライティングを行うことになる。【KB】
〈参考文献〉
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.
・岡秀夫(監訳). (1999). 『外国語教育学大辞典』. 東京: 大修館書店.
・沖原勝昭(編). (1985). 『英語のライティング』. 東京: 大修館書店.
・Raimes, A. (1983). Techniques in teaching writing. Oxford: Oxford University Press.
・White, R. and Arndt, V. (1991). Process writing. London: Longman.

pro-drop
 (see "parameter/principle")

production*
 (see "input/output")

production communication task
 (see "options in grammar teaching")

proficiency scale (熟達度の尺度)
 言語熟達度の発達過程を記述した尺度。複数のレベル (もしくはバンド) に区分されることが多い。レベルの範囲は、言語熟達度がゼロの状態から、当該言語の母語話者と同じレベルまでなど場合による。代表的な例として、ACTFL/IFL scale がある。しかし、熟達度の尺度の多くは、教師の経験などに基づき作成されており、実証的には検証されていない。このような批判を受けて、近年は理論・実証的検証に基づいた熟達度の尺度が作成されてきた。代表的なものに、North (2000) がある。これに基づき、Council of Europe は、Common European Framework を作成した。(以上、e.g., Davies, Brown, Elder, Hill, Lumley, & McNamara, 1999, p. 153-154; North)【I】
〈参考文献〉
・Council of Europe. (2001). Common European Framework of reference for languages: Learning, teaching, assessment. Cambridge University Press.
・Davies, A., Brown, A., Elder, C., Hill, K., Lumley, T., & McNamara, T. (1999). Dictionary of language testing. Cambridge University Press.
・North, B. (2000). The development of a Common European Framework scale of language proficiency. New York: Peter Lang.

proficiency test (熟達度テスト)
 
言語を運用する総合的な能力を測定するテストのこと。熟達度テストは、特定の学習目標や、学習期間、学習方法から離れて、現時点の学習者の言語運用能力を測定することから、学習目標がどの程度到達されているかを測定する到達度テスト (achievement test) とは異なる。熟達度テストの用途には、学習者の選抜や、学習者をレベルの違うコースに振り分けることなどがある。英語の熟達度を測定するテストとしてよく知られているものには、TOEFL, TOEIC, STEPなどがある。【KA】
<参考文献>
・Bachman, L. (1990). Fundamental considerations in language testing. Oxford: Oxford University Press.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』.東京:大修館書店.

proposition (命題)
 英文を読む際に、読み手は文の頭からあるまとまりごとにイメージを組み立てていくが、そのまとまりのことを命題という。1つの命題とは、その中に意味上の主語と述部を持つものである。局所的な理解に関わる物はミクロ命題、全体的な理解に関わる物はマクロ命題と、区別されている。ミクロ命題は、文章を理解する際にはマクロルールによって統合・削除されていくと言われている(see also "Macrorules")。【MO】
〈参考文献〉
・Kintsch, W. (1998). Comprehension: a paradigm for cognition. Cambridge University Press.
・根岸雅史. (1997). 「第3章 リーディングの研究とは何か」. 金谷憲 (編著)『英語リーディング論』 (pp.38-55). 東京: 河源社.

prototype(プロトタイプ)
 ある範疇にある中心的メンバーのことである。プロトタイプには人間の知覚に関わるものと、場所や文化によって変化するものがある。前者の場合だと、どこまでの色を「赤」として知覚するか(ピンクに近い赤から紫に近い赤まで)などがあり、後者には「鳥」と言われて思い出す種類の鳥(イギリスではコマドリだが、日本ではおそらくカラス、ツバメ、スズメ等)、などがある。また、プロトタイプを決める際に重要となる事柄は、大きさや形よりもむしろその機能である。
 子供や第二言語学習者は、範疇の中では周辺的メンバーよりもプロトタイプを早く習得し、また母語話者にとってはプロトタイプの方が例として、より容易に想起しやすい。また、プロトタイプから離れた物を表現する時には、よく形容詞が用いられる(例:big birdは通常のプロトタイプの鳥よりも大きい鳥を表す)。【MO】
〈参考文献〉
・Hatch, E. & Brown, C. (1995). Vocabulary, Semantics, and Language Education. Cambridge University Press.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 「英語教育用語辞典」. 大修館書店.

psycholinguistics*

psychological distance (心理的距離)/social distance (社会的距離)
 Schumannの文化変容モデル (The Acculturation Model: 学習者が文化的に変化することとの関連から第二言語習得を説明するモデル)における概念で、学習者の文化変容は、「社会的距離」と「心理的距離」を決める要因によって決定されるとする。社会的距離とは個々の学習者が目標言語のグループのメンバーになる程度、つまり彼らと接触する程度のことをいい、他方、心理的距離とは個々の学習者が学習することを快く感じる程度のことをいう。また、Shumann (1978c)では、どのような場合が言語学習にとってよい環境であるかを論じている。なお、これまでの研究において、このモデルを支持する結果はごくわずかしかない。(Ellis, 1994, pp. 230-234) 【S】
〈参考文献〉
・Schumann, J. (1978c). Social and psychological factors in second language acquisition. In Richards, J. (Ed.), Error analysis: perspectives on second language learning. London: Longman.

pushed output
 (see "Output Hypothesis")

pygmalion effect(ピグマリオン効果)
 
小学生に学力試験を実施し、真の得点ではなく、得点が低いにもかかわらず高いと装った情報を教師に提供していた。結果、その偽情報を受け取っていた教師のクラス生徒に伸びが観察された(Rosenthal & Jacobson (1968) cited in Dornyei (2001))。このことより、教師の学生に対する期待度が高いと、期待されていない学生達よりも上達していくような現象。【KG】
<参考文献>
・Dornyei, Z. (2001). Teaching and Researching Motivation. Essex, England: Pearson Education Limited.

question type (質問のタイプ)
 質問の分類は様々なものがある (Ellis, 1994, p. 586-588; 岡, 1999, pp. 353-354; 白畑他, 1999, p. 151)。
(1)・closed question (閉じた質問):答えが1つしかない質問 (例:What is your name?)
  ・open question (開いた質問):様々な答えが可能な質問
    (例:What did you do yesterday?)
(2)・echoic question (繰り返しを求める質問):以下の3つのタイプの質問がある。
   (a) comprehension checks: 理解度の確認:理解したかを確かめる
      例:Does everyone understand "table"? / Are you with me?
   (b) clarification requests: 明確化要求:もっと明確に言うように求める
      例:What do you mean? / Sorry?
   (c) confirmation checks: 確認チェック:理解したことが正しいか確認する
      例:Do you mean …? / Did you say …?
  ・epistemic question (陳述的質問):情報を得るためにする質問
   (a) referential question (指示質問 [疑問文]): 聞き手が答えを知らずに
       尋ねる質問
    例:Why did you come so late?
   (b) display question (事実質問 [疑問文]):聞き手が答えを知りつつする質問
    例:How is the weather today?
   (c) expressive question (表現的質問):
    例:It's interesting the different pronunciations we have now,
         but isn't it?
   (d) rhetorical question (修辞的な質問):
    例:Why did I do that? Because I wanted to see him.
(3)・form-focused question (言語形式に焦点を置いた質問)
  ・message-focused question (メッセージに焦点を置いた質問)

 (2) の(a), (b), (c) は、interactional modification (相互交流的修正・会話的修正) と呼ばれるもので、意思疎通がうまくいかなくなった時に、お互いに質問しあうことで、より理解しあい、より良い発話をする機会を作り、それが言語の習得にも役立つと言われている (see also "negotiation of meaning"; 白畑他, 1999, p. 151)。【K】

readiness
 (see "Teachability Hypothesis")

recast (言い直し)
 誤りへの対処法 (error treatment) の一つ。誤りをあまり訂正せず、意味を変えないまま文法的に正しく言い直しをすること。

例:Child: I seed a bird.
Caretaker: Oh, you saw a bird? Where is it? (白畑, 冨田, 村野井, & 若林, 1999, p. 111)

 第1言語習得において、親が子供に対する会話などでよく見られる。第2言語習得では教師が学習者の誤りを訂正することとは対照的である。しかし、インタラクションを重視する立場の研究者からは、フィードバックの一種と考えられ、支持されている (以上、窪田, 2003, p. 41, as cited in 小池他, 2003)。
 また、適切な言語処理の介入の点からは、最も効率的で、将来性のある介入方法の一つとされる。その理由は、言い直しは、学習者に (a) 自分の意図と利用できる言語的資源とのズレ、または (b) 自分の中間言語の発話と付随する目標言語の発話のズレに気付かせる、からである。(以上この段落は、Doughty, 2001) 【I】
〈参考文献〉
・Doughty, C. (2001). Cognitive underpinnings of focus on form. In P. Robinson (Ed.), Cognition and second language instruction (pp. 206-257).
Cambridge University Press.
・小池生夫, 井出祥子, 河野守夫, 鈴木博, 田中春美, 田辺洋二, & 水谷修. (2003). 『応用言語学事典』. 東京: 研究社.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.

reception
 (see "input/output")

referential question
 (see "question type")

register*

reliability (信頼性)
 言語テストにおいて信頼性とは、テスト結果の安定性や精密度を指す。例えば、同一受験者に対して言語テストを何度行っても、また誰が行っても同じような結果が出た場合は、そのテストは信頼性が高いと言える。信頼性は「テストそのものの信頼性」と「採点者の信頼性」に分類される。前者は、同じテストを何度も行ない安定性をみる「再テスト法」、テストの質に問題がないか調べる「折半法」、テスト内部の不変性を調べる「キューダー・リチャードソン第20公式」や「キューダー・リチャードソン第21公式」で算出される。後者は、異なる採点者の採点の一定性をみる「採点者間信頼性」、採点方法に変化がないかを調べる「採点者内信頼性」から算出される。【TA】
<参考文献>
・岡秀夫(監訳). (1999). 『外国語教育学大辞典』. 東京:大修館書店. (Johnson, K., & Johnson, H. (1998). Encyclopedic Dictionary of Applied Linguistics. Blackwell. 訳)
・小池生夫(編). (2003).『応用言語学事典』. 東京: 研究社.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京:大修館書店.

RP (Received Pronunciation)*

restructuring (再構築)
 学習者が持つ言語の体系 (interlanguage: 中間言語) が発達していくにつれて起こる質的な変化。例として有名なのが、最初wentと使えていたが、次第にgoedと規則動詞の変化形もどきを使い始め、その後、またwentと使えるようになるという、U字型発達 (U-shaped development:正確さをグラフにすると、最初高く、次第に低くなり、最後にまた上がる形) である (白畑他, 1999, pp. 261-262)。それは、例に基づいた言語体系 (instance-based: exemplar-based) だったのが、次第に規則に基づいていく (rule-based) 変化を表している (Ellis, 1994, p. 390; see also "automatic processing" and "formula/formulaic speech")。【K】

resultative hypothesis
 (see "motivation")

rhetorical question
 (see "question type") 

rote learning(機械的学習)
 意味を介在させずに行う学習のこと。コミュニカティブな活動とはかけ離れているが、Tinkham (1989)での結果(日本人は機械的学習がアメリカ人に比べて得意である)を参照すると、機械的学習はコミュニカティブではないからという理由だけで無下にされるべきではなく、有効に利用するべきである。但し、意味を介在しない場合の保持は短期記憶にとどまるため、意味を介在させた学習の方が長期記憶に保持される、と考えられている。 【MO】
〈参考文献〉
・Nation, I. S. P. (2001). Learning vocabulary in another language. Cambridge University Press.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京:大修館書店.

routine
 (see "formula/formulaic speech")

rubric (指示)
 テストをどのように受ければよいかということに関する指示のこと。問題の解き方や時間制限、またどのような目的のテストであるか、などが書かれている。Bachman & Palmer (1996) ではこの中にinstructions, structure, time allotment, scoring methodの4つを組み入れている。特に、自由記述式のテストやスピーキングテストなどでは、どのように採点がなされるかについても記述を含めることが重要である。

〈参考文献〉
・Bachman, L. F., & Palmer, A. S. (1996). Language testing in practice. Oxford University Press.
・Davies, A., Brown, A., Elder, C., Hill, K., Lumley, T., & McNamara, T. (1999). Dictionary of language testing. Cambridge University Press.

rule-based
 (see "formula/formulaic speech")

Sapir-Whorf Hypothesis (サピア・ウォーフ仮説): 
 言語と思考の関係についての考え方の1つで、人間は使用する言語が異なれば、考え方も異なったものである、という考え方。アメリカの言語学者、E. SapirとB. Whorfの主張を基にした仮説である。例えば、日本語では「水」は沸騰すると「湯」となるが、英語では常に"water"である。日本語で「粉雪」「ボタン雪」というのは英語では全て"snow"になる。この違いは、日本人を英語母語話者との思考・認識の違いによると考えられる。サピア・ウォーフ仮説のような考えは、言語相対論とよばれている。これは、言語と人間の思考方法・文化には関係があり、影響を受けるという視点である。言語相対論と対比されるものとして、(1)言語が思考を支配するという言語決定論、(2)言語や文化・思考が違っても、全ての人間には共通の概念が存在しているとの言語普遍論がある。言語が異なると相互理解が不可能になるわけではないので、言語決定論は否定される傾向にある。上述の例のように文化間で用いられる言語に違いが見られるため、言語は人間の思考に全く影響を与えないとは言えない。しかし、多くの言語で共通する性質も見られることから、言語相対論と言語普遍論とは相互排除的な関係ではないと考えられる。【O】
〈参考文献〉
・安藤昭一 他(編) (1991) 『英語教育現代キーワード事典』増進堂.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京:大修館書店.

scientific grammar(科学文法)
 
「科学文法」は、規範文法(Prescriptive Grammar)に対して、ある言語において現実に起こる、もしくは起こりうるべき文法的な事実を理論的な立場からあるがままに隈なく詳細に記すという文法のこと。言語というものは絶えず変化しているものであり、規範的には誤りであるテキストや例文は少なからず存在する。だが、これらも「科学文法」という観点から分析する必要があり、その際規範文法も必要になってくることから、これら2つは不可分なものといえる。【MU】
〈参考文献〉
・安藤昭一他編.(1991).『英語教育現代キーワード事典』.増進堂.
・岡秀夫監訳.(1999).『外国語教育学大辞典』.大修館書店.(Johnson,K.&Johnson,H.(1998).Encyclopedic dictionary of applied linguistics. Blackwell.訳)
・亀井孝他編.(1996).『言語学大辞典 第6巻 術語編』.三省堂.

scope (作用域)
 文において、数量詞などの作用が及ぶ領域。数量詞や否定辞を解釈する際に利用され概念。例えば、否定の解釈を考える場合、文(1)は2つの解釈が考えられるあいまいな文である。
(1) All the students did not know the answer.
(2)a. All the students did [not know the answer.] (=全ての学生は答えをしらなかった)
  b. [Not all the students knew the answer.] (=全ての学生が答えを知っていたわけではない)
(1)の文は、文の一部の要素が否定の作用域内にあると考えると(2a)の部分否定の解釈になる。一方、文全体が否定の作用域と考えると(2b)のような文否定の解釈になる。【O】
〈参考文献〉
・安藤貞雄 & 小野隆啓(編). (1993). 『生成文法用語辞典』東京: 大修館.
・原口庄輔 & 中村捷(編). (1992). 『チョムスキー理論辞典』東京: 研究社.
・Richards, J. C. & Richard W. S. (2003) _Longman Dictionary of Language Teaching
and Applied Linguistics._ Addison Wesley.
・安井稔(編). (1996). 『コンサイス英文法事典』 東京: 三省堂.
注) 文中の例文は、安藤&小野 (1993)より引用した。

second language acquisition (SLA; 第二言語習得)*
 母語 (第1言語: first language: L1) を学んだ後に学ぶ言語を第2言語 (second language: L2) と呼ぶが、その第2言語がどのように学ばれるのかを研究する分野。外国語として言語 (foreign language) を学ぶ場合を区別して考える場合もあるが、区別しない場合の方が多い (e.g., Ellis, 1994, pp. 11-12)。また、第二言語習得の分野でも、例えば日本人がオーストラリアで英語をたくさん聞いて自然に学ぶ場合 (naturalistic second language acquisition) と、日本の学校で指導を受けて学ぶ場合 (instructed second language acquisition) は普通区別される (Ellis, 1994, p. 12)。applied linguisticsの中の1分野である (see "applied linguistics")。【K】

segmentation
 segmentationとは、音素成分によって発話を分割することを指す。segmentationの方法は言語間で異なる。フランス語では音節に基づいており、syllable-based segmentationと呼ばれている。その一方、英語では音節情報だけを頼りにsegmentationがなされるのではなく、音節の位置や内容語・機能語といった単語要因などにより決定するアクセント情報を基にsegmentationがなされており、metrical-segmentationやstress-based segmentationといった方法を使う。
英語におけるsegmentationに関連する問題として、ある音素の周囲の音韻環境によってassimilationやco-articulationなど、様々な音韻的な変化が起こり、基のsegmentationが曖昧になり発音が不明瞭になることがある。この音韻環境によるsegmentationの変化は、単語内で起こることもあれば、単語間で起こる場合もある。しかし、単語として機能するための制限により、segmentationの変化が起りにくい場合も多くある。【G】
〈参考文献〉
・Cutler, A. & Butterfield, S. (1992) Rhythmic cues to speech segmentation: Evidence from juncture misperception. Journal of Memory and Language, 31, 218-236.
・Harley, T. (2001). Understanding Speech. In The psychology of lanugage: From data to theory. (p.220). NY: Psychology Press.

selective attention(選択的注意)
人は多くの視覚的、聴覚的な情報を取り込み、自らにとって必要な情報に注意を向けることで情報の取捨選択を行っている。例えば、雑踏の中で友人と話しながら歩いているといった場面で、多くの他の音が聞こえてくるなか、友人の声だけを正確に聞き取って理解できるのは、聞き手の注意が特定の対象にきちんと向けられているからである。記憶の認知プロセスからいえば、感覚記憶として保持された記憶のうち選択的注意を向けられた情報のみが短期記憶として記憶される。人が一度に注意を向けることのできる情報量は限られているが、意識的にあるいは無意識的に注意が向けられえた情報は、そうでない情報に比べて処理も理解も速く、効率的に行われることが分かっている(Posner, 1995)。【MK】
〈参考文献〉
・Robinson, P. (Ed). Cognition and Second Language Instruction. New York: Cambridge University Press.
・大石晴美.(2006).「第2章言語習得における注意の役割」『脳科学からの第二言語習得論』(pp29-51)京都: 昭和堂.

self assessment (self evaluation; 自己評価)
 学習者自身が各自の言語熟達度などを判定すること。テストに基づく判定と比べると、より学習者中心の評価形態であるといえる。そのため、教育現場で使われることが多い。
 自己評価については、教育評価一般の分野で、広く研究が進められてきた。言語テストの分野でも、近年になり研究が行われてきた。明らかになったことは、4技能間で自己評価の信憑性が異なることである。したがって、重要な意思決定に関わる場面では、自己評価の使用は避けるべきだと思われる。(以上、Davies, Brown, Elder, Hill, Lumley, & McNamara, 1999, p. 177; Ross, 1998)【I】
〈参考文献〉
・Davies, A., Brown, A., Elder, C., Hill, K., Lumley, T., & McNamara, T. (1999). Dictionary of language testing. Cambridge University Press.
・Ross, S. (1998). Self-assessment in second language testing: A meta-analysis and analysis of experiential factors. Language Testing, 15, 1 - 20.

『全国英語教育学会南東北研究大会発表要綱』 (pp. 315-318). 第29回全国英語教育学会南東北研究大会にて. (平成15年8月9日・宮城教育大学にて).

self confidence (自信)
 タスクや目的を達成できるという個人の能力の自己認識と、その際に感じられる不安の低さによって構成される概念である。基本的には異なる言語のコミュニティが存在するコンテクストにおいて、他方(主に主流言語)のコミュニティとの接触の質・量によって上記の能力認知や不安が変化すると考えられていたため、Self confidenceとはESLのコンテクストに依存するものであるとされていた。しかし、現在では他言語への接触が限られているEFLのコンテクストにおいても、間接的に他言語のコミュニティと接触することが可能であることに加え、クラスルーム内での評価や活動に影響されることが判明し、それらは外国語学習にも影響する主要な概念として捉えられる。現在、新しい動機づけに関する理論的概念として存在するWillingness to communicate(WTC)に影響を与える要因の1つとしてSelf confidenceが想定されている。従来は状況をまたいで安定したTraitな要因として捉えられていたが、この場合のSelf confidenceは状況に特化し、それに応じて変化するState self confidence,そしてTrait self confidenceの2つに区別され、前者がWTCに対して直接影響を及ぼすと仮定されている。【KK】
〈参考文献〉
・Clement, R., Doernyei, Z., & Noels, K. A. (1994). Motivation, Self-confidence, and group cohesion in the foreign language classroom. Language Learning, 44, 427-448.
・Doernyei, Z. (2001). Teaching and researching motivation. London: Longman.
・MacIntyre, P. D., Cl?ment, R., D?rnyei, Z., & Noels, K. (1998). Conceptualizing willingness to communicate in a L2: A situational model of L2 confidence and affiliation. Modern Language Journal, 98, 545-562.

self-determination theory (自己決定理論)
 Deci and Ryan (1985)で提唱されているこの理論によると、内発的動機はあらゆる人間が持っているものであり、自らが決定した動機の種類として概念化されていると提案している。また、特徴的な点は外発的動機を内発的動機と相反するものとしては捉えておらず、外発的動機も自己の行動によって内面化していき、結果内発的動機へと移行することができると考えている点である。この連続体としての動機づけは以下の通りに現すことができる。まず、無動機(amotivation)、外発的動機(extrinsic motivation)、内発的動機(intrinsic motivation)に区分され、そして、外発的動機は1番自己決定性が低い外的調整(external regulation)、その次に、取り入れ的調整(introjected regulation)、そして自己決定性が高い同一視的調整(identified regulation)に下位分類されている。【KG】
〈参考文献〉
・Deci, E. L. & Ryan, R. M. (1985). Intrinsic motivation and self-determination in human behavior. New York: Plenum Press.

self-efficacy (自己効力感)
 ある特定のタスクに対して、学習者が目標達成のための自らの能力やスキル、知識が十分に備わっているかどうか、そしてそれらを持ってタスクに従事することから予想される結果を自ら判断する概念。自己効力感が高ければ、タスクへの従事が強まり、達成するための惜しみない努力が見られるようになる、つまり動機が高まるものと考えられている。自らの能力によってタスクを達成できるかどうか、つまりタスクに対する自信を判断するため、自己効力感とLinguistic confidenceは類似しているように思われる。しかし後者は目標言語使用者との質的/量的な関わり等の社会的側面に根ざしており、更にそこから判断されるものは熟達度である。従って、タスクというより具体的な状況に特化し、自身のタスク達成能力の判断から将来的な結果を予測する自己効力感からは区別される。Linguistic confidenceは一般的にtrait な概念として捉えられているが、自己効力感はタスクそのものやタスクが行われる環境によって左右されるstateな概念である。自己効力感を高める要因として、1)過去のタスクにおけるパフォーマンス、2)友人や教師など学習の手本となるべき存在からの学び、3)言葉による励まし、4)不安などの心理的要因が挙げられる。【KK】
・D?rnyei, Z. (2001) Teaching and researching motivation. Essex, England: Longman.
・Pintrich, P. R., & Schunk, D. H. (2002). Motivation in education: Theory, Research, and application (2nd edition). New Jersey: Merrill Prentice Hall.
・Tremblay, P. F., & Gardner, R. C. (1995). Expanding the motivation construct in language learning. Modern Language Journal, 79, 505-520.

self-management
 (see "metacognitive strategy")

self-regulation
 (see "Zone of Proximal Development (ZPD)")

Self-teaching Hypothesis(自己学習仮説)
 学習者が新出単語を符号化するとき,音韻処理の他に,そのつづりに関する情報も関係し,単語を学習するという考え方。読解能力の習得における自己学習モデル(self-teaching model)は,新出単語を読んで理解する過程において,つづりや文字の連なりの関係・文字情報である正書法表象(orthographic representation)がphonological recording(print-to-sound translation:文字から音への転換)の役割を果たし,文字と音との結びつきを関連付ける働きがあることを示している(Share, 1999)。またShare (1995)は,単語学習における音韻処理は,学習者が語に特有のつづりを覚える際に自律的な正書法辞書(orthographic lexicon)を習得するということを提示している。自己学習仮説において音韻処理はつづりの学習にとって必要であるということが示されており(Cunningham et al., 2002),単語のつづりを覚える過程には文字の連なりの順番など正書法についての詳細な情報を処理する他に,音と文字との関係を処理することが含まれる(Shahar-Yames & Share, 2008:23)。つまり,学習者が新出単語を学習する際,そのつづりを覚えるのに音韻処理が重要な役割を果たしているのである。【YS】
〈参考文献〉
・Cunningham, A. E., Perry, K. E., Stanovich, K. E. & Share, D. L. (2002). Orthographic learning during reading: Examining the role of self-teaching. Journal of Experimental Child Psychology, 82, 185-199.
・Shahar-Yames, D. & Share, D. L. (2008). Spelling as a self-teaching mechanism in orthographic learning. Journal of Research in Reading, 31, 22-39.
・Share, D. L. (1995). Phonological recording and self-teaching: sine qua non of reading acquisition. Cognition, 55, 151-218.
・Share, D. L. (1999). Phonological recording and orthographic learning: A direct test of the self-teaching hypothesis. Journal of Experimental Child Psychology, 72, 95-129.

semantic prosody
 共起語によって醸し出される語句の雰囲気のことであり、コーパス言語学の分野で近年一般的になってきている概念である。負のprosodyのことを指す場合が多いが(例:cause)、正のsemantic prosodyも存在する。Semantic prosodyがconnotationの一種かどうかについては、研究者間で意見が分かれており、Xiao & McEnery (2006) のまとめによると、Partington (1998), Stubbs (2001), Hunston (2002) はsemantic prosodyはconnotationの一種であるとみなしているが、Louw (2000) によると、semantic prosodyはconnotationだけではなく、コロケーションの要素も兼ね合わせている。 (see "connotation")【MO】
〈参考文献〉
・Whitsitt, S. (2005). A critique of the concept of semantic prosody. International Journal of Corpus Linguistics, 10, 283-305.
・Xiao, R., & McEnery, T. (2006). Collocation, Semantic Prosody, and Near Synonymy: A Cross-Linguistic Perspective. Applied Linguistics, 27, 103-129.

sensory register(感覚登録器)
 記憶の第一段階として情報が一時的に保存される場所のこと。ここでの記憶は視覚的な刺激による感覚記憶であるアイコニックメモリと、聴覚的な刺激による感覚記憶であるエコイックメモリに分類される。
それぞれ、そのままの形で視覚画像や音響的情報として入力され、その容量も多いとされている。しかし保持できる時間が非常に短いため、短期貯蔵庫に移行する前にかなりの情報が失われてしまうと言われている。例えば、初めての訪れる場所などでは、かなり多くの視覚的な情報がアイコニックメモリとして保存されるが、短期貯蔵庫に移行する前に消えてしまうため、後で思い出すことはできないということが起こる。【MK】
〈参考文献〉
・門田修平.(2006).「第1章ワーキングメモリの心理・神経機構」『第二言語理解の認知メカニズム』(pp.1-24).東京:くろしお出版.
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.

sentence combining(文結合)
 文結合は作文の指導法として1960年代から用いられ、「ある命題文の中に別の命題文を埋め込むことを教え、それによって文構造の選択力を増やそうとするもの」と定義される(高山, 2001, p. 52)。
以下の課題は、文結合の例である。
 ●2つの文を関係副詞を使って1つにしましょう。(安藤他, 2003, p.72)
1. We had to leave the earth. The water was polluted there.
2. That is the place. The eco-movement was started there.
文結合の利点として、文法構造の複雑な文が書けるようになることや、文法的正確さの向上を促進すること、興味を持って取り組めるため、学習者の意欲をかき立てることができることなどが挙げられる。このような文結合の効果を実証する研究は数多いと言われる(北内, 1985; 高山, 2001)。【KB】
〈参考文献〉
・安藤昭一他. (2003). NEW STREAMT. 大阪: 増進堂.
・北内薫. (1985).「制限作文」. 沖原勝昭(編). 『英語のライティング』(pp.130-170). 東京: 大修館.
・高山芳樹. (2001).「ライティングの学習と指導」. 小室俊明(編). (2001). 『英語ライティング論』 (pp.46-62, 99-125). 東京: 河源社.

separate underlying proficiency (分離基底言語能力)
 初期のバイリンガリズムと認知機能の研究では、2つの言語能力は別のものであり、それぞれ別々に発達すると考えられていた。脳の言語能力は限られたスペースしかないため、どちらかの言語能力があがれば、その分もう一つの言語能力はさがると捉えられ、また、二つの言語は別々に機能し、互いに転移することはないと考えられていた。この考え方を、Cumminsは分離基底言語能力と呼んだ。その後、分離基底言語能力の考え方を否定する研究結果が多数でている。(see "common underlying proficiency")【IN】
〈参考文献〉
・コリン・ベーカー(著). 岡秀夫(訳・編). (1996). 『バイリンガル教育と第二言語習得』. 大修館書店.

silent period (沈黙期)
 第一言語習得において、子供が話すようになる前に、このような周りから話しかけられる言葉を聞いているだけの期間が存在することが明らかになっている。なお、第二言語習得においては、必ずしもこの沈黙期があるとはいえないが、多くの学習者、特に子供の学習者にはこの期間が存在する。この間、学習者は言語の規則を発見し、話すための準備をしていると考えられるが、中には言語の学習を拒否しているだけの場合もある。(Ellis, 1994, pp. 82-84) 【S】

situational syllabus(場面/状況シラバス)
言語使用の場面を中心として構成されるシラバス。例えば、「道を尋ねる」「レストランで注文する」「電話をかける」「買い物に行く」など学習者が将来、実際の英語使用場面で対応できるように、シラバスは編成される。
シラバスにおける言語使用の場面や状況は、ニーズ分析(needs analysis)によって選定される。したがって、EGP(English for general purposes/一般目的のための英語教育)よりもESP(English for specific purposes/特定の目的のための英語教育)の方が学習者自身の目的が明確なため、場面(状況)シラバスは有効であるとされる。【KB】
〈参考文献〉
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.
・岡秀夫(監訳). (1999). 『外国語教育学大辞典』. 東京: 大修館書店.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.
・Wilkins, D. A. (1976). Notional syllabuses. Oxford: Oxford University Press.
・米山朝二. (2003). 『英語教育指導法事典』. 東京: 研究社.

skill-building hypothesis
 (see "interface position")

SLA applied
 (see "applied linguistics")

social distance
 (see "psychological distance/social distance")

sociocultural perspective
 社会的な面を言語学習に取り入れた観点である。学習者と他人とのinteractionは、単に内的学習や自動化の'input'の源だけではなく、むしろ、学習においての中心的役割をするという観点。Interaction自体が学習過程を成し、そしてこれが本質的に個人より社会的なのである。この考え方はソビエトの発達心理学者Lev Semeonovich Vygotskyの学習理論をもとに第二言語学習の領域においても1990年代から盛んになっている。
 Lev Semeonovich VygotskyはJean Piagetと同じ1896年に生まれ、1925年から1934年の死までモスクワで活躍した心理学者である。1962年にThought and Languageとして英語に翻訳された以来、彼の子供の発達におけるsociocultural理論は次第に影響を与え、Jerome Bruner,James Wertsch,Barbara Rogoffのような心理学者や子供の発達理論家により進められ、多くの教育関係の研究者により教室における学習に適用された。SLL理論家によってもたらされたVygotskyの現代の解釈や議論での中心的な概念には、Mediation、regulation、scaffolding、Zone of Proximal Development(ZPD)、Microgenesis、.Private and inner speech、activity theoryなどがある。 【H】

socioeconomic class(社会経済的要因)
 少数派言語集団の第二言語習得や学業の不振は民族集団によって差があるという調査報告があり、その原因のひとつとされる、少数派民族の社会的、経済的要因のこと。その特徴として、多数派集団と少数派集団との関係から生まれる社会的地位や差別、人種的偏見といった社会的特徴や、物質的な環境や生活水準といった経済的特徴があげられる。【IN】
〈参考文献〉
・コリン・ベーカー(著). 岡秀夫(訳・編). (1996). 『バイリンガル教育と第二言語習得』. 大修館書店.

sociolinguistics*

spacing effect (分散効果)
 ある事象を同じ回数覚える機会があるときに、一度に何度も覚えるよりも、ある程度の期間を置きながら覚えた方がより記憶が促進される効果のことを指す。但し、学習と学習の間の時間があまりにも長いと、以前に学習を行ったことを忘れてしまい、あたかも新出語を覚えているような状態になってしまう。従って、以前の記憶痕跡がまだ残っていることが重要である。分散効果が現れた例として、Bahrick & Phelpsでは、30日の間を置いて学習させたほうが間を置かない場合よりも2.5倍多く単語がリコールされていた。【MO】
〈参考文献〉
・Bahrick, H. P., & Phelps, E. (1987). Retention of Spanish vocabulary over 8 years. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 13, 344-349.
・Whitten, W. B. & Bjork, R. A. (1977). Learning from tests: Effects of spacing. Journal of Verbal Learning & Verbal Behavior, 16, 465-478.

speech act*

speech style* 

statistics for natural language (言語統計)
 言語の性質として, 統計的性質を調べること
言語の統計的性質として簡単な例:ある英語文書中の文字出現確率のうち,空白の出現確率が16%であった場合, その文書の1単語の平均文字数は1 - 1/0.16=5.25(文字)とみることができる 等【Oh】
<参考文献>
・長尾真 "自然言語処理" 岩波書店 1996

strategic competence (ストラテジー能力)
 Bachman and Palmer (1996) が提唱した、「言語使用」および「言語テストパフォーマンス」の構成要素および関連を示したモデルの構成要素の1つ。細分化され、goal setting, assessment, planning から成る。ストラテジー能力は、Bachman and Palmer のモデル内の全ての要因と関わることから、適切な「言語使用」および「言語テストパフォーマンス」を行うためには、非常に重要な役割を果たす。第2言語習得ではストラテジーの研究が行われてきたが (e.g., Cohen, 1998)、言語テストの分野では研究が始まったばかりである (Phakiti, 2003)。言語テストの分野での具体的な研究例に、 Phakiti (2003), Purpura (1999) がある。【I】
〈参考文献〉
・Bachman, L. F., & Palmer, A. S. (1996). Language testing in practice. Oxford University Press.
・Phakiti, A. (2003). A closer look at the relationship of cognitive and metacognitive strategy use to EFL reading achievement test performance.
Language Testing, 20, 26-56.
・Purpura, J. E. (1999). Learner stategy use and performance on language tests: A structural modeling approach. Cambridge University Press.

strong interface position
 (see "interface positions")

Stroop effect(ストループ効果)
 色に関する単語について、その文字を単語が表している色と異なる色で提示し、その単語を発話させると反応時間が長くなる効果のこと。例えば、REDと言う文字を緑色で提示した場合と、REDという文字を赤色で提示した場合を比較すると、前者において反応時間がより長くなる。また、REDと言う文字をL1で発話させる場合とL2で発話させる場合では、L2の方がストループ効果が大きくなる。【MO】
〈参考文献〉
・Altarriba, J., & Mathis, K. M. (1997). Conceptual and lexical development in second language acquisition. Journal of Memory and language, 36, 550-568.

Structure Equation Modeling(SEM: 構造方程式モデリング)
 共分散構造分析とも言い、直接観測することができる変数(観測変数)と共に、直接観測できない変数(潜在変数)を扱うことが可能である。重回帰分析や因子分析などがSEMの一部と考えられる。重回帰分析のように直接的に説明できる変数(直接変数)だけでなく、他の変数を介して影響を与える変数(間接変数)をモデルに組み込むことが可能となる。様々なモデルを作り、そのモデルが適しているかどうかをカイ二乗の値やGFI (Goodness of Fit Index) などを通して調べることができるが、モデルが数値として適しているかどうかよりも、理論に基づいたモデルを構築することがより肝要である。【MO】

〈参考文献〉
・狩野裕 & 三浦麻子. (1997). AMOS, EQS, CALISによるグラフィカル多変量解析. 東京:現代数学社.
・小塩真司. (2004). SPSSとAmosによる心理・調査データ解析. 東京:東京図書.

style continuum
 (see "variability")

style shifting*
 (see "variability")

submersion program*

subordinate
(see "superordinate")

subset principle (部分集合の原理)
 Berwickが提唱した原理で、部分集合の原理と呼ばれるものである。この原理によれば、二つの文法(G1とG2)を提示され、G1がG2の部分集合を成す場合、学習者は部分集合をなす小さい方の文法G1を正しい文法として選択するとされる。つまり、学習者は、G1でもG2でも許される文法規則より、G1でしか許容されない、より条件の厳しい方の文法を正しいと見なすのである。この原理によって、誤った表現を一般化し、正しい文法だと思い込む危険が回避される。しかし、実際のデータを分析すると、L1,L2習得において、学習者は、まずはじめに、より制約の緩やかな文法を選択し、学習が進むとより制約のきつい文法を獲得するという傾向がみられることもあり、この原理が実際、言語習得にどのように関わっているかは不明である。【KI】
〈参考文献〉
・Gregg, K. R. (2001). Learnability and second language acquisition theory. In P. Robinson (Ed.), Cognition and second language instruction (pp.152-80). Cambridge University Press.
・Berwick, R. (1985). The acquisition of syntactic knowledge. Cambridge, MA: MIT Press.

subskills (下位技能)
 能力 (ability; see "ability") の一部と考えられる skills (技能; e.g., 4技能) の下位に位置付けられる技能。例えば、reading の下位技能には、「文字通りの意味を理解する能力」、「推論を働かせて筆者の真の意向を理解する能力」などがあると考えられている。しかし、研究はあまり進んでおらず、それは主に以下2つの理由のためである。第1に、各能力の定義が難しいため。したがって、異なる定義の数だけ、異なる数の下位技能が仮定されてしまう。第2に、第1の点を克服できたとしても、実証可能なように具体化することが難しいため。具体化する際には、複数の研究者の話し合いを経たとしても、研究者間で一致を得ることは簡単ではない。一致を得たとしても、それはそのような下位技能が存在することを必ずしも意味しない。(以上、e.g., Alderson, 2000; Brindley, 1998, pp. 122-123)【I】
〈参考文献〉
・Alderson, C. J. (2000). Assessing reading. Cambridge University Press.
・Brindley, G. (1998). Describing language development? Rating scales and SLA. In L. F. Bachman & A. D. Cohen (Eds.), Interfaces between second language acquisitionand language testing research (pp. 112-140). Cambridge University Press.

subtractive bilingualism (減算的バイリンガリズム)
 
Lambert(1974)による加算的バイリンガリズム(additive bilingualism)に反する側面を持つものとして提示されるものである。例えば、移民の第一言語である母語を喪失し、第二言語である多数派言語使用になる過程を指し、文化的アイデンティの喪失が指摘される。⇔加算的バイリンガル(additive bilingualism) 【TA】
〈参考文献〉
・ベーカー・コリン(著). 岡秀夫(訳・編). (1996). 『バイリンガル教育と第二言語習得』. 大修館書店. (Baker, C. (1993). Foundations of bilingual education and bilingualism. Clevedon: Multilingual Matters.訳)
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学事典』. 東京: 研究社.
・Lambert, W. E. (1974). Culture and language as factors in learning and education. In Aboud, F. E. & Meade, R. D. (ed). Cultural factors in leaning and education. Washington: 5th Western Washington Symposium on Learning.

superordinate(上位語)
 単語の上下関係には、上位語、同位語 (coordinate) 、下位語 (subordinate)がある。望月(2003) によると、上位語とは1つの単語の意味が他の単語の意味を含んでいるときの後者の単語のことである。例えば、foodはmeatやfruitsの上位語であり、更にfruitsはorange、apple、bananaなどの上位語となる。また逆に、orange、apple、bananaはfruitsの下位語と呼ばれ、更にorange、apple、bananaはそれぞれ同位語である。food・fruits・appleの順に階層構造をなしているとすると、foodはfruitsを包含し、更にfruitsはappleを包含している。門田 (2003) によると、幼児の語彙獲得ではまずappleの階層である基礎水準語からスタートし、appleより更に下の階層である「ふじ」や「紅玉」やappleの上位語はappleより遅く習得される。また、階層が近いほど語彙項目間の関連性の把握の速度も速くなる。つまり、今回の例だと「りんごは果物である」といった1階層の違いの方が、「りんごは食べ物である」という2階層の違いよりも早く判断ができることがわかっている。【MO】
〈参考文献〉
・門田修平. (2003). 語彙ネットワークと第一・第二言語のメンタルレキシコン. 門田修平 (編著), 『英語のメンタルレキシコン』. 松柏社.
・望月正道. (2003). 単語を知っているとはどういうことか. 望月正道, 相澤一美, & 投野由紀夫 (著),『英語語彙の指導マニュアル』. 大修館書店.

surface dyslexia(表層性失読症)
 不規則語を読むことに関する選択的障害。規則語と擬似語の発音はできる、あるいは比較的発音できるが、不規則語に困難を示す。単語の読みをover-regularization(過剰規則化)してしまうことによる誤りが多いことが報告されている。(例えば、"broad"を"brode"と発音し、"steak"を"steek"と発音し、"island"を"eyesland"と発音する) 一方で、規則語や非語を読む能力は損なわれておらず、意味理解に関する能力は損なわれていないため、islandが何を意味するかということは理解できる。(二重経路モデルでいう、GPCルート(非語彙ルート)は損傷していない。意味理解はできる)【ST】
〈参考文献〉
・Harley, T. A. (2001). The Psychology of Language: From data to theory. New York, NY: Psychology Press Ltd.
・大石晴美.(2006).『脳科学からの第二言語習得論』.京都: 昭和堂.
・門田修平. (2003).『英語のメンタルレキシコン』. 東京: 松柏社.

surface structure*

syllable-monitoring task 
 syllable-monitoring taskとは、協力者に音を聞かせ、ある特定の一連の音(音節)が聞こえたかどうかをできるだけ迅速に判断させるというテストである。このタスクは、心的辞書内にある単語の音韻表象の性質をを検証する際に用いられる。例えば、バイリンガル話者が2つの言語のうちどちらの言語が優勢な言語なのかを特定する時に使用することができる。Cutler, Mehler, Norris, and Segui (1992)の研究では、フランス語と英語のバイリンガル話者がフランス語と英語のどちらの言語を優勢な言語としているのかを検証するためにこのsyllable-monitoring taskを用いている。その際、英語とフランス語のマテリアルを使用し、協力者が、英語に特徴的なstress-based segmentation とフランス語に特徴的なsyllable-based segmentationのどちらを使用するのかを調査している。【G】
〈参考文献〉
・Cutler, A., Mehler, J., Norris, D., and Segui, J. (1992). The monolingual nature of speech segmentation by bilinguals. Cognitive Psychology, 24, 381-410.
・Harley, T. (2001). Understanding Speech. In The psychology of lanugage: From data to theory. (p.221). NY: Psychology Press.
・Taft, M., & Hambly, G. (1985). The influence of orthography on phonological representations in the lexicon. Journal of Memory and Language, 24, 320-335.

syntactic analysis (構文解析) 
 
文法規則(制約)および種々の優先規則によって入力文を解析し, その構造を明らかにすること【Oh】
<参考文献>
・長尾真 "自然言語処理" 岩波書店 1996

syntax*

synthetic syllabus(総合シラバス)
 Wilkins (1976) によるシラバス・デザインの定義の一つ。総合シラバスにおいて学習者は、異なった一つ一つの言語項目(文法事項、語彙など)を段階的に学ぶことで、それら個々の言語項目を学習者自身の中に徐々に蓄積することができる。そして最終目標として学習者は、それら別々の言語項目を自分自身で統合することが期待されている。文法・構造シラバス(grammatical / structural syllabus)、状況(場面)シラバス(situational syllabus)、話題シラバス(topical syllabus)、語彙シラバス(lexical syllabus)などが総合シラバスに該当する。【KB】
〈参考文献〉
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.
・岡秀夫(監訳). (1999). 『外国語教育学大辞典』. 東京: 大修館書店.
・Wilkins, D.A. (1976). Notional syllabuses. Oxford: Oxford University Press.
・Nunan, D. (1988). Syllabus design. Oxford: Oxford University Press.

systematic gap (体系上の空白)
 実際に当該言語に存在しない語彙の1つの種類。accidental gap (偶然の空白)と異なり、言語構造自体に違反するため実在しない語彙のことで、structural gap (構造上の空白)や、構造言語学ではhole in the pattern (型の穴)と呼ばれる。例えば、英語にはcny [発音記号: knai]やcnay [knei]という語彙は実在しない。これは、語頭が[kn-]となる子音の結合が英語の音韻規則に違反しているためである。したがって"cny", "cnay"は、言語規則に照らし合わせて不適格なsystematic gapであると言える。(see "accidental gap")【O】
〈参考文献〉
・安井 稔(編). (1996). 『コンサイス英文法事典』. 三省堂. (文中の無意味語の例はここから引用した)

target language (TL: 目標言語・対象言語)*
 学習者が学んでいる・学ぼうとする言語で、第二言語習得の分野では第2言語のことを指す。【K】

task (タスク)
 ある目的を成し遂げるために行う作業や課題 (白畑他, 1999, p. 300)。(1) タスクの要素や条件を変えると難易度や産出 (書いたもの・話したもの) がどう変化するのか、(2) タスクをどう分類するかなど、様々な研究が行われている (e.g., Skehan, 1998; Robinson, 2001)。例えば、(1) については、現在ここで起こっていること (here and now) を語る方が、過去の別な場所で起こった出来事 (there and then) を語るより簡単、事前に準備する時間 (planning time) を少しとると、正確さと流暢さが高まり、その後に複雑さが高まることなどが分かってきている。学習者のニーズに合わせタスクを選び、タスクを中心に授業を組み立てる指導法をtask-based instruction (タスク中心教授法) と呼ぶ (白畑他, 1999, p. 301)。日本でも、高島 (2000) が、ドリル的な活動・ある言語項目を学んだ後にやるコミュニケーション活動以外にも、今まで学んだ言語項目を統合する機会として、タスク活動を行うことを提唱している。また、タスクは指導に用いられるものだけでなく、評価 (テスト) で用いられる課題もタスクと呼ばれる (白畑他, 1999, p. 301)。【K】
〈参考文献〉
・Robinson, P. (2001). Task complexity, task difficulty, and task production: Exploring interactions in a componential framework. Applied Linguistics,  22, 27-57.
・高島英幸. (2000). 『実践的コミュニケーション能力のための英語のタスク活動と文法指導』. 東京:大修館書店.
・Tarone, E. (1998). Research on interlanguage variation: Implications for language testing. In L. F. Bachman, & A. D. Cohen (Eds.), Interfaces between second language acquisition and language testing research (pp. 71-89). Cambridge University Press.

task-based instruction
 (see "negotiation of meaning" and "task")

task-based syllabus(タスク中心シラバス)
 シラバスの編成を、文法・構造・概念などを提示し練習中心とするのではなく、タスクを中心とする。学習者がタスクを完成する作業の中で、言語使用が促され、言語を習得するという考え。基本的にグループで課題に取り組む。作業の中で意味交渉が頻繁に起こり、インプット、アウトプットの両方から言語を習得する。コミュニカティブな教室を標榜する場合に使用されることが多い。シラバスについての議論は応用言語学事典(2003,92-98)参照。【IN】
〈参考文献〉
・岡秀夫(監訳). (1999). 『外国語教育学大辞典』. 東京:大修館書店. (Johnson, K., & Johnson, H. (1998). Encyclopedic dictionary of applied linguistics. Blackwell.訳)
・岡崎眸&岡崎敏雄. (2001). 「日本語教育における学習の分析とデザイン−言語習得過程の視点から見た日本語教育−」. 凡人社.
・小池生夫編. (2003). 「応用言語学事典」. 研究社.

task difficulty and complexity (タスクの困難度と複雑性)
 Robinson (2001)によると、タスクの困難度と複雑性は、取替え可能な用語として見なされているが、実は両者には違いがある。まずタスクの困難度は、学習者の要因が関わってくる。その要因は2つに下位分類され、1つは自信、動機、不安といった情緒的要因(affective variables)を指し、もう1つは知能、適性、認知スタイルといった能力的要因(ability variables)である。これとは反対にタスクの複雑性は学習者要因を含まず、タスクの構成によるattentional, memory, reasoning,そして他の情報処理のデマンドによる結果としてもたらされるものである。複雑性に影響を与えるものとして、たくさんの資源(resources)を要求するresource-directingと注意や記憶に負担を掛けるようなresource-depletingの2つに分けられる。【KG】
〈参考文献〉
・Robinson, P. (2001). Task complexity, task difficulty, and task production: Exploring interactions in a componential Framework. Applied Linguistics, 22, 27-57.

task motivation (タスクモチベーション)
 タスクの取り組み方、タスクに見出す価値、タスク達成に必要となる能力の自己認知に関する個人の態度や信念はタスクによって異なることから、タスクの特性やデザインよって学習者の動機が変化すると考えられている概念。学習者個人の言語習得プロセスと動機づけの関係性が動機づけ研究の焦点である現在では更に、そのような動機づけはタスク実行中に一定ではないものとして捉えられている。つまり、学習者の行動はタスク内に起こるそれぞれの行動段階によって異なるため、その段階に応じて動機がダイナミックに変化し、そして各段階での学習者の言語的行動に影響を及ぼし、最終的なタスクの成功の是非を左右するのである。D?rnyei (2005)は次の相関する3つのタスクプロセスメカニズムに対してタスク実行中に活性化された動機づけが影響を及ぼすと考えている。
Task execution: 教師、もしくは学習者自身による行動計画に沿ったタスク達成のための行動に対する従事
Appraisal:環境からの刺激や自身の進捗状況の評価による、実際のパフォーマンスと予期されたパフォーマンスの継続的比較
Action control:行動をモニタリングし、問題があれば改善策を取るなど行動の自己制御
【KK】
・D?rnyei, Z. (2005). The psychology of the language learner. Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associates.
・Julkunen, K. (2001) Situation- and task-specific motivation in foreign language learning. In Z. D?rnyei & R. Schmidt (Eds.), Motivation and second language learning (pp. 29-41). ・Honolulu, HI: University of Hawaii Press.

teachability hypothesis (教授可能性仮説・指導可能性仮説)
 
学習者にある言語項目を教えようとしても、学習者がそれを学べる発達段階にないと、指導して学ばせることはできないという考え方で、Pienemann (1985, as cited in 白畑他, 1999, pp. 302-303) がMultidimensional Model (多次元モデル) に基づき主張している。それによると、ある言語項目が学習が可能かどうかは、学習者の発達段階によって予測でき、指導は学習者のreadiness (レディネス) にあわせることが重要になる。しかし、Ellis (1997) は宣言的知識 (see "declarative knowledge") については、この仮説は当てはまらないのでは、と述べている (p. 85)。【K】

teacher talk (教師言葉)
 教師が第2言語学習者に話しかける場合、話す速度、ポーズの置き方、統語などを調整することが知られている。また、学習者の第2言語熟達度によってその調整の
仕方は異なる。この教師言葉には、外国人言葉 (see "foreigner talk)とも共通する点が多いが、順序だてられた会話を続けなくてはならないという教室の環境を反映するような特徴も見られる。
また、教師言葉は第二言語習得に効果があるともいわれるが、どのような教師言葉が習得に最も効果的であるかについては、まだ明らかにされていない点も多い。 (Ellis, 1994, pp. 581-583) 【S】

team teaching
2人以上の教師がチームを組み,協力して指導に当たる教育方法のこと。英語教育におけるチーム・ティーチング(以下TT)では,1人の日本人英語教師(Japanese Teacher of English: JTE)と1人の英語母語話者の外国語指導助手(Assistant Language Teacher: ALT)とが協力して指導にあたることが多い(白畑他, 1999; 米山, 2003)。TTを行うことによって,@創造的な指導法が期待できる,Aお互いの指導法から多くのことが学べることが期待できる,B学習者の小集団に働きかける機会が期待できる,などといった利点が得られる(Richards, Platt, & Platt, 1992)。また,Benoit and Haugh (2001)やRichards and Farrell (2005)が指摘するように,TTとはチームである教師たちが指導するクラスへの責任を共有・協同して,授業計画を立案し,指導を行い,学習者を評価していく過程でもある。【YS】
〈参考文献〉
・Benoit, R., & Haugh, B. (2001). Team teaching tips for foreign language teachers. The Internet TESL Journal, 7 (10). Retrieved February 11, 2009, from http://iteslj.org/Techniques/Benoit-TeamTeaching.html
・Richards, J. C., Platt, J., & Platt, H. (1992). Longman dictionary of language teaching and applied linguistics (2nd ed.). Essex: Pearson Education Limited.
・Richards, J. C., & Farrell, T. S. C. (2005). Professional development for language teachers: Strategies for teacher learning. Cambridge: Cambridge University Press.
・白畑知彦・冨田祐一・村野井仁・若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京:大修館書店.
・米山朝二. (2003). 『英語教育指導法事典』. 東京:研究社.

TESOL*

testing effect (テスト効果)
 ある題材について学習した後にテストを行うほうが,同じ題材を繰り返し学習することよりも記憶の長期保持が向上するということ。Roediger & Karpicke (2006)の実験1では,120名の大学生を2つのグループに分け,各グループに250語程度の文章をできるだけ覚えるタスクを課した。A群では文章の暗記学習を2回行う(各7分ずつ)のに対し,B群は文章の暗記学習を1回とテストを1回行った(暗記学習・テストは各7分ずつ)。その後,A・B群ともに5分後,2日後,1週間後に,その文章を覚えている限り書き起こしていく再生テストを受験した。5分後のテストでは,A群のほうが成績はよかったのだが,2日後・1週間後のテストではB群のほうが成績はよかった。また,Karpicke & Roediger (2007)の実験では,何度も繰り返し集中して学習することは短期保持には効果はあるが,長期保持にはさほど効果がないことが示された。これらのことから,テストを学習の一環として行うほうが,学習した内容を記憶にしっかりと固定するのに有効であることが考えられる。【YS】
〈参考文献〉
・Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. (2007). Expanding retrieval practice promotes short-term retention, but equally spaced retrieval enhances long-term retention. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 33, 704-719.
・Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Scicence, 17, 249-255.

test method effects (テスト方法の影響)
 学習者のパフォーマンスを引き出すために使用するテスト (タスク) が、パフォーマンスやテスト得点に与える影響のこと。例えば、リーディングテストにおいては、多肢選択式、記述式、要約式、information transfer, matching, true-false, 総合問題形式などがあり、使用するテストによって引き出されるパフォーマンスは変わる可能性がある。テスト方法の影響は、言語テストの分野では過去20年あまり研究されてきたが、第2言語習得の分野ではあまり注意が払われてこなかった。今後はテスト方法の影響を考慮することで、第2言語習得の研究はさらに進むものと思われる。(以上、e.g., Davies, Brown, Elder, Hill, Lumley, & McNamara, 1999, p. 203-204; Shohamy, 1998, pp. 156-176) そのような一例に、卯城, 小泉, 印南, 清水, 土方, 中川, 納谷, & 村田 (2003) がある。(see "variability")【I】
〈参考文献〉
・Davies, A., Brown, A., Elder, C., Hill, K., Lumley, T., & McNamara, T. (1999). Dictionary of language testing. Cambridge University Press.
・Shohamy, E. (1998). How can language testing and SLA benefit from each other? The case of discourse. In L. F. Bachman & A. D. Cohen (Eds.), Interfaces between second language acquisitionand language testing research (pp. 156-176). Cambridge University Press.
・卯城祐司, 小泉利恵, 印南洋, 清水真紀, 土方裕子, 中川知佳子, 納谷政史, & 村田恵里奈. (2003). 「背景知識がL2読解へ与える影響: 背景知識測定テストに注目して」. 『第29回全国英語教育学会南東北研究大会発表要綱」, pp. 315-318.

test-taking strategy
 言語テストに解答するために、意識的に受験者が選択する心的操作や心的処理のことである。例えば、クローズテストは全体的なリーディング能力を測定しているとされているが、実際のtest-taking strategyを調べたところ、テスト受験者はより局所的で、単語レベルの読みを行っていることがわかった。また、要約のテストでは、テスト受験者は通常、要約とはどういうものかを分かっている読み手を想定して要約を書くが、現実世界で要約を行うときには大抵、自分が後で読み返したり、原本を読んだことが無い読み手を想定して要約を作るため、要約のテストの際にはtest-taking strategyが働いているといえる。テスト受験者がどのようなtest-taking strategyを使用したかというデータは、発話プロトコル法によって集められることが多い。【MO】
〈参考文献〉
・Cohen, A. D. (1998). Strategies and processes in test taking and SLA. In L. F. Bachman & A. D. Cohen (Eds.), Interfaces between second language acquisition and language testing research (pp. 90-111). Cambridge University Press.

test-wiseness
 テスト受験者があるテスト形式に対して解答練習をした量や、受験者の過去の経験に関するものであり、test-wisenessがありすぎると得点を高く見積もりすぎたり、またtest-wisenessが無いと得点を低く見積もりすぎてしまうことがあったりするために、test-wisenessはテストの妥当性に関わる。また、具体的なtest-wisenessの例としては、答えにたどり着くためにショートカットをするようなストラテジーを用いている場合(例:読解において文章全体を読まずに答えだけを探すような読み方をしている場合)などが考えられる。【MO】
〈参考文献〉
・Cohen, A. D., & Upton, T. A. (2007). 'I want to go back to the text': Response strategies on the reading subtest of the new TOEFL. Language Testing, 24, 209-250.
・Davies, A., Brown, A., Elder, C., Hill, K., Lumley, T., & McNamara, T. (1999). Studies in language testing 7. Dictionary of language testing. Cambridge University Press.

text grammar(テクスト文法)
 テクスト文法とは、特定のテクスト形式の中で、連続する文における語や意味の形式的な規則を記述するものである。これを行なうことが、テクスト言語学の活動である。言語は、文ではなく談話に現れるもので、談話には、テクスト単位の文法が存在するというのが、基本的な理論である。これにより、文文法で処理できない文構造が説明可能になるとされた。
 しかし、この研究は、特に人工知能においてなされているのだが、テクストの展開や一貫性が、形式的な用語では予測あるいは説明は不可能であり、語用論などの方に言及しなければならず、テクスト言語学は談話分析、テクスト文法はジャンル研究に取って代わられた。しかし、これらの研究において、テクスト文法の理論を利用するケースも多いと言える。【MU】
<参考文献>
・安藤昭一他編 『英語教育 現代キーワード事典』、増進堂、1991年
・亀井孝/河野六郎/千野栄一編 『言語学大辞典』、第6巻 術語編、三省堂、1996年
・小池生夫他編 『応用言語学事典』、研究社、2003年
・ジョンソン, K,ジョンソン, H 岡秀夫監訳 『外国語教育学大辞典』、大修館書店、1999年
・田中春美編 『現代言語学辞典』、成美堂、1988年

there and then
 (see "task")

tolerance of ambiguity
Field dependence/independenceなどと同様に、tolerance of ambiguityは認知スタイルに分類される。第二言語・外国語学習においては、非常に多くの矛盾した情報を取り扱わなければならない。例えば、過去形を作るためには動詞に-edを付けると最初に教わるが、不規則動詞も存在するために必ずしも-edを付けるという規則は当てはまらなくなってしまう。このような際に、曖昧性に寛容な学習者は、現在認知している情報とたとえ異なっていても、そのような曖昧の情報を受容することができる。一方、曖昧性に寛大でない学習者はそのような情報を提示されると困難を感じてしまう可能性が大きいと言われている。【KG】
<参考文献> Archibald, J., & Libben, G. (1995). Research Perspectives on Second Language Acquisition. Ontario: Copp Clark Ltd.

topic syllabus(話題シラバス)
 話題(topic)を中心に構成されるシラバス。それらの話題は主に学習者のニーズや関心などにしたがって選定され、学習者の動機付けを高めることが一つの目的となっている。例えば話題には、学校、家庭生活、環境、スポーツ、ボランティアなどが挙げられ、日本の多くの英語教科書では話題が重視されていると考えられる。
 また、Long and Crookes (1992) によると、話題シラバスは総合シラバス(synthetic syllabus)に分類される。【KB】
〈参考文献〉
・小池生夫(編). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.
・Long, M. H., & Crookes, G. (1992). Three approaches to task-based syllabus design. TESOL Quarterly, 26, 27-56.
・米山朝二. (2003). 『英語教育指導法事典』. 東京: 研究社.

Total Physical Response (TPR)
理解中心の外国語教授法の1つで、母語習得を外国語教授にも反映させるべきと考えたJames Asherによって提唱された指導法。つまり、外国語を話す以前に聞き取りが言語能力基盤となり、その充分な言語能力が内在化されて学習者が自ら外国語を話せるようになると考えている。具体的な指導としては、教師が命令形で生徒に指示を出し、生徒は即座に全身を使って反応する。これにより、理解を体で示すことによる積極的な学習参加を促し、基本的文法と語彙を与えられる。【Ng】
〈参考文献〉
小池生夫 (編). (2003). 『応用言語学辞典』. 東京: 研究社.

transfer
 (see "language transfer")

transformational-generative (TG) grammar*

transitional bilingual education (TBE) *

triangulation
 (質的研究において)ある現象に関して、より包括的な理解を得るために、いくつかの異なる情報源や手法を用いてデータを収集する過程をtriangulationと称す。最も主要なのは、インタビュー、観察、文書などの複数の情報源からデータを集めることであるが、異なる手法の使用(e.g., インタビュー、質問紙、テスト得点)、複数の研究者による共同、データ解釈の際の複数の理論の使用にも関係する。【KN】
〈参考文献〉
・Richards, J. C., & Schmidt, R. (2002). Longman dictionary of language teaching and applied linguistics, 3rd ed. London: Pearson Education.

TSI (Transactional Strategic Instruction)
 この教授法では同時に複数のストラテジーを教えていく。相互教授(reciprocal teaching)では質問すること(questioning)、明らかにすること(clarifying)、予測すること(predicting)、要約すること(summarization)の4つのストラテジーを教えるが、TSIではそれらに加えて、内容理解で生じる問題をモニターすることと修正すること、イメージを使うこと、そしてテキストへ反応することも教える。もうひとつの相互教授との違いは、教室での生徒中心のディスカッションである。TSIでは先生はリーディングで使われるストラテジーを明示的に説明し、生徒に教える。その際に、先生は実際にストラテジーを使って生徒に示したりする。しかし、中心となるものは教室内での学習者間での対話を通じた学習である。つまり、ディスカッションを通じて生徒同士の相互作用により学習を深めていく。先生は、生徒にどこでどのストラテジーが有効に使えるかを教えたり、生徒のストラテジーの使い方に対してコメントしたりするが、次第にそのようなサポートを減らしていき、生徒の自立を促していく。【JY】
〈参考文献〉
・Stahl, Steven A. (2006). Understanding Shifts in Reading and Its Instruction. Reading Research at Work: Foundations of Effective Practice. Edited by Stahl, Katherine A. Dougherty, and McKenna, Michael C.. New York: Guilford Press. 45-75.
・Taylor, Barbara M. et al. (2006). Improving Students' Reading Comprehension. Reading Research at Work: Foundations of Effective Practice. Edited by Stahl, Katherine A. Dougherty, and McKenna, Michael C.. New York: Guilford Press. 303-315.
・William, Joanna P. (2002). Reading Comprehension Strategies and Teacher Preparation. What Research Has to Say about Reading Instruction. Edited by Farstrup, Alan E. & Samuels, S. Jay. Newark, Del.: International Reading Association. 243-260.

T-unit (Tユニット) 
 書かれたり話されたりした文を評価する為に用いられる指標の一つ。K. Huntにより定義され、1Tユニットには主節が1つ含まれる。主節に従属節が続いていたとしても、主節の数だけが考慮される。そのため、
(a) His eyes are blue. (彼の目は青い)
(b) When the movie is over, I'm going straight home. (映画が終わったら、まっすぐ家に帰ります)
(c) The police officer blew his whistle and the car stopped. (警官が笛を吹くと車は止まった。)
(a),(b)の場合、T-unitは1である。しかし、(c)のように、等位接続詞があらわれている場合は主節が2つとなるので、Tユニットは2と考えられる。
 Tユニットは学習者の熟達度を測るのに、ライティングが文法の観点からどれだけ複雑であるかを検討する際の指標として用いられたりする。また、誤りが全く含まれないTユニット(error-free T-unit)を指標として、正確さを評価することもある。【O】
〈参考文献〉
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京:大修館書店.
・靜哲人他(編). (2002)『外国語教育リサーチとテスティングの基礎概念』関西大学出版部.
・Wolfe-Quintero, K, Inagaki, S, & Kim, H-Y. (1998). Second Language Development in Writing: Measures of Fluency, Accuracy & Complexity. Second Language Teaching & Curriculum Center, University of Hawai'i.
*文中の例文は綿貫他(2000)『ロイヤル英文法』(旺文社)から引用した。

type/ token (タイプ・型/ トークン)
語彙を研究する際に良く用いられる基準。前者は以下に様々な語が使われているか「異なる語の種類」を数える単位であり、後者は以下に多くの語があらわれているか「総語数」を基準とした単位である。例えばシェイクスピアの『ハムレット』の台詞の"To be or not to be, that is the question.(生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ)"の場合、トークンは10となるが、タイプ(用いられる語の種類)は8となる。タイプ/トークンという観点は、書かれた(話された)文の評価基準にもなる。熟達した学習者ほど、文は複雑になると考えられるが、その要因に「語がどれだけ複雑であるか」が考えられる。そのため、文(章)全体で特定の語のタイプをどれだけ使用しているかを測って評価する方法などが考えられている。ただし、単純にタイプ・トークンを比較することは妥当ではない。学習者の能力が発達するほど長い文を産出できるようになるが、その分冠詞などは繰り返し用いられる。よって、言語発達の指標としては有効であるものの、測定には条件で統制したり(例: 長さを限定する)、計算式の修正が求められる。
 ちなみに、言語学の場合タイプは「言語記号の型」と考えられる。その場合、「おはよう」「こんにちは」は2つのトークンであるが、同じ「あいさつ」という1つのタイプに分けられる。
〈参考文献〉【O】
・Richards, J. C. & Richard W. S. (2003) Longman Dictionary of Language Teaching and Applied Linguistics. Addison Wesley.
・Shakespeare, William (1994) Hamlet (Penguin Popular Classics)  Penguin Books.
・安井 稔(編). (1996). 『コンサイス英文法事典』三省堂.
・Wolfe-Quintero, K, Inagaki, S, & Kim, H-Y. (1998). Second Language Development in Writing: Measures of Fluency, Accuracy & Complexity. Second Language Teaching & Curriculum Center, University of Hawaii.

uniqueness principle (独自性の原理)
 文法がまだ完全に習得されていない段階で、学習者が自分で作り上げた形式と、対立する形式を含むインプットを受信した場合、インプットに含まれた対立する形式を正しいと判断し、採用するという原理。この原理によれば、例えば、eatの過去形をeatedと思い込んでいた学習者が、ateを聞くと、こちらを正しいと判断するようになるということである。しかし、この原理は、語彙レベルには適用できるが、統語レベルには適用が難しく、またなぜ、対立する形式が正しいと判断されるのかというメカニズム自体が明確に説明されていないとの批判も受けている。【KI】
〈参考文献〉
・Gregg, K. R. (2001). Learnability and second language acquisition theory. In P. Robinson (Ed.), Cognition and second language instruction (pp. 152-80). Cambridge University Press.

Universal Grammar (UG: 普遍文法)
 生成文法理論の立場から提出されている仮説として、ヒトは生まれながらにして脳の一部に「言語機能」(language faculty)とよばれる器官を持っているとされ、これが言語刺激を受ける前の状態またはそれに関する理論のことを普遍文法という。第二言語習得において、学習者はUGにアクセス可能であるかについては、(1) 完全にアクセス可能であるとする立場、(2) アクセス不可能であるとする立場、(3) 原理 (see "principle")に関してはアクセス可能であるが第1言語と異なるパラメータ (see "parameter") に関しては不可能とする立場、(4) アクセス可能だが一般的な学習ストラテジーと競合するととらえる立場など見解が分かれている。【S】

usage (用法)
 Widdowson (1978)は「用法」と「使用」(use)という用語を区別して用いて、「用法」は「言語使用者が言語規則の知識を有していることを示すこと」(p. 3)、「使用」は「効果的にコミュニケーションを行うため、言語使用者が言語規則の知識を使用する能力を示すこと」とした。SLAの分野では、これまで、学習者の用法についての研究が主流であったが、近年、文の形式と機能の観点から分析を進めていくなど、学習者の使用についての研究も行われてきている。(Ellis, 1994, pp. 13-14) 【S】
〈参考文献〉
・Widdowson (1978). Teaching language as communication. Oxford University Press.

use (使用)
 (see "usage")

U-shaped development
 (see "restructuring")

utterance*

valence theory(結合価理論)
生成変形文法などにおける文の分析方法は、文をまず「主部」と「述部」に二分することである。このような方法は、論理学の影響を受けたものであるが、この分析方法に異を唱えたのがフランスの文法学者Tesniere(テニエール)である。彼は、文の中心要素を述語動詞とし、このような動詞と共起する要素が名詞句や前置詞句などの要素を必要としていると述べた。この述語動詞の持つ能力は、ある原子が別の原子といくつ結合可能なのかを示す結合価と似た概念から、Tesniereが考案し名づけた理論である。彼によると、この結合価は0〜3まであり、0価の動詞は、形式主語itをとるrainなどで、1価は0価の動詞以外の自動詞などとなる。【MU】
<参考文献>
・亀井孝/河野六郎/千野栄一編 『言語学大辞典』、第6巻 術語編、三省堂、1996年
・安藤昭一他編 『英語教育現代キーワード事典』、増進堂、1991年

validity (妥当性)
 
言語テストにおいて妥当性とは、測定方法がどの程度適確に言語能力を測定しているかを表す指標である。例えば、口頭言語能力を測るのに文法問題テストを行った場合、測定しようとしているものと測定しているものが異なるため、妥当性は低くなる。妥当性には、内的妥当性、併存的妥当性、構成概念的妥当性などがある。適切な推測(inference)を行うため信頼性を必ず必要とする。【TA】
<参考文献>
・岡秀夫(監訳). (1999). 『外国語教育学大辞典』. 東京:大修館書店. (Johnson, K., & Johnson, H. (1998). Encyclopedic Dictionary of Applied Linguistics. Blackwell. 訳)
・小池生夫(編).(2003).『応用言語学事典』. 東京: 研究社.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京:大修館書店.


variability (可変性・異変性)
 ある言語項目について、学習者が2つ以上の言語形式を使う現象 (白畑他, 1999, p. 318)。例えば、言語項目に注意を向けた時は3単元のsが正確に使えるが、注意を向けないと、使えたり使えなかったりすることは、これで説明される。Tarone (1983) は、学習者は様々なスタイルを持っていて、注意を向けた時のスタイル (careful style) から日常語スタイル (vernacular style) までという、スタイルの連続帯 (stylistic continuum) があると主張する (as cited in Ellis, 1994, p. 725)。スタイルの変化 (style shifting) に影響を与えるものとしては、対話者が誰か、その対話者と学習者の関係、対話でのトピック、学習者が正確さに焦点をあてるように求められるか、コミュニケーション上の圧力 (情報を正確に伝えなくてはいけないなどと、学習者が感じているか) などがある (Tarone, 1998, p. 76)。【K】

variable*

variable rule*

vector-space model (ベクトル空間法) 
情報検索の分野で, 文書と検索質問の両方をある統一的な表現によって表し, この間に類似度(similarity)を定義することによって似ている文書を探し出す方法【Oh】
<参考文献>
・長尾真 "自然言語処理" 岩波書店 1996

vernacular style
 (see "variability")

voice (態)
 文の主語と、動詞によって表される動作との関係を表す形態。英語には「主語がある動作を受ける関係」を表す受動態と、「主語がある動作を行う・ある状態にある」ことを表す能動態の2つがある。
(a) ネコがネズミを追いかける。
(b) ネズミがネコに追いかけられる。
上の2つの文はどちらも同じ状況 (ネズミが走る後ろをネコが走る)を表している。しかし、(a)の文は「ネコ」が「追いかける」動作を行うことから能動態で表されているのに対し、(b)の文は「ネズミ」が「追いかけられる」と影響を受けているので受動態である。受動態と能動態に関しては、全ての動詞が能動態・受動態の両方で表されるとは限らない。受動態に出来ない動詞もある。また、全ての能動態と受動態が同一の意味であるとも限らない。【O】
〈参考文献〉
・安井稔(編). (1996). 『コンサイス英文法事典』東京: 三省堂.

washback effect(波及効果)
 backwash effectとも呼ばれる。教えたことや学習したことをテストした影響のことを言い、この効果は学習者、教師、教育システム、社会全体にまで及ぶ。波及効果には正の効果と負の効果があり、正の効果は、テストのタスクが実生活に使用するような言語と類似している場合に起こる。一方負の効果は、英語圏の大学に入学するために受けなければならない語学テストが、実際に大学で使うような技能を測っていない場合に起こる。良い波及効果を得たい場合には、テストしやすいものを測定するのではなく、本当に重要なことを測定するべきである。また、様々なタイプのテストを用いるべきである。例えばリーディングテストであれば、メインアイディアをつかむテストだけを行うのではなく、スキャニングやスキミングなどという様々な読み方についてテストをすることで、よりよい波及効果が得られる。【MO】
〈参考文献〉
・Hughes, A. (2003). Testing for Language Teachers. Cambridge University Press.
・金谷憲. (2003). 『英語教育評価論』. 河源社.

weak interface position
 (see "interface position")

weighting (重み付け)
 テストにおいて、ある項目が他の項目よりも重要であったり時間がかかるために、ある項目に対する配点の比重を高くすることを言う。ライティングの採点に使用されるESL Composition Profileやリーディングにおけるリコールテストなどにも用いられている。しかし、このような重み付けを行うことでテストの妥当性や信頼性が上がることはないと言われている。【MO】

〈参考文献〉
・Alderson, J. C., Clapham, C., & Wall, D. (1995). Language test construction and evaluation. Cambridge University Press.
・Jacobs, H. L., Zingraf, S. A., Wormuth, D. R., Hartfiel, V. F., & Hughey, J. B. (1981). Testing ESL composition: A practical approach. Rowley, MA: Newbury House.
・Stein, B. L., Kirby, J. R. (1992). The effects of text absent and text present conditions on summarization and recall of text. Journal of Reading Behavior, 24, 217-232.

Whole Language (ホール・ランゲージ)
 1980年代にアメリカを中心に欧米各国に広がりつつある言語教育運動。ホール・ランゲージ(以下WL)の動きは,言語および言語にかかわるスキルを細分化して指導する方法に異を唱えた教育者たちが,言語は「全体で(whole)」教えるべきであると主張したことから始まった(Rigg, 1991; Richards & Rodgers, 2001)。桑原(1992, p. 2)によれば,WLの基本的立場とは,wholeは「部分」に対する「全体」という意味で,言語の学習は「全体から部分へ」という方向が鉄則であると述べられている。
WLで特に重視されるのが,できるだけ作られた教材ではなく,オーセンティック・マテリアルを使用することであった(Richards & Rodgers, 2001)。また,読み書きの指導,特にライティングにおいて,学習者が完成した作文を教師に見せることが目的ではなく,書くことを通して学習者の考えを見つけ出すことが目的であり,書いたもの(written products)ではなく,書く過程(processes of writing)に焦点を当てている(Rigg, 1991)。【YS】
〈参考文献〉
・Richards, J. C., & Rodgers, T. S. (2001). Approaches and methods in language teaching, 2nd edition. Cambridge: Cambridge University Press.
・Rigg, P. (1991). Whole language in TESOL. TESOL Quarterly, 25, 521-542.
・桑原隆. (1992). 『ホール・ランゲージ 言葉と子どもと学習 米国の言語教育運動』. 東京:国土社.

willingness to communicate
 (see "anxiety")

word class (part of speech)
 word class(品詞)は語の文法的範疇を表す。多くの潜在的な品詞の存在が想定されるが、言語研究の大多数は名詞、動詞、形容詞、副詞の4つに焦点を絞っている。また、多くの研究が品詞によって学習の困難度が異なるとしている。【KN】
〈参考文献〉
・Schmitt, N. (2000). Vocabulary in language teaching. Cambridge: Cambridge University Press.

world Englishes(世界の英語)
 Kachruによって提唱された用語で、英語には文化間で複数の変種が存在しており、もはや伝統的にそれが母語として見なされてきた国々に限られた使用のみを想定したものではないことについて言及したものである。故に、world Englishesはイギリス、アメリカ、オーストラリアや他の母語としての英語のみならず、嘗てイギリスやアメリカの植民地や属国であった国々において使用されている英語の新しい変種をも包含する。これらの新しい英語は社会的多元性を有する国々において、正当な英語の変種として特有の役割を果たしている(e.g., シンガポール、インド、パキスタン、フィリピン、ナイジェリア、フィジー)。【KN】
〈参考文献〉
・Richards, J. C., & Schmidt, R. (2002). Longman dictionary of language teaching and applied linguistics, 3rd ed. London: Pearson Education.
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京: 大修館書店.

willingness to communicate (WTC)
 
この概念は、母語・第一言語を指すものとして最初にMcCroskey & Baer (1985) (cited in MacIntyre, P. D., Clement, R., Dornyei, Z., & Noels, K. A., 1998) により提唱された。McCroskey & Baer (1985)によると、WTCは、選択する自由が あるときに、コミュニケーションに従事する可能性として概念化されたものである。 WTCはさまざまな場面においてコミュニケーションをするための性質を指すため に、性格特性として捉えられていた。よって関連する要因は、コミュニケーションに対する不安、自信、内向性や外向性などである。しかし、MacIntyre et. alなどは、WTCはより状況に志向するものとして捉え、第二言語・外国語学習における役割を議論している。【KG】
<参考文献>
・MacIntyre, P. D., Clement, R., Dornyei, Z., & Noels, K. A. (1998). Conceptualizing willingness to communicate in a L2: A situational model of L2 confidence and affiliation. The Modern Language Learning, 82, 545-562.

writing system (書記体系)
 言語を書き表すことを目的として規則的に用いられる記号の体系 (Daniels & Bright, 1996, p.xlv; Sampson, 1985, p.19; Sproat, 2000, p.25) 。書記体系研究の領域では、研究の対象や目的により、言語を表示するために用いられる一般的な文字の種類を指す場合と、ある特定の言語において使用されるスペリングの種類を指す場合とがある (Coulmas, 1996, p.560) 。書記体系という用語を前者の意味で用いる場合は文字の種類の分類が問題となってくる。さまざまな基準による分類法が文字論 (grammatology) や書記体系研究 (study of writing systems) の分野で提案されている(e.g., 表示される言語単位による分類 (Gelb, 1963) ;表語 vs 表音の区別による分類 (Haas, 1983) ;表語 vs 表音、完全 vs 不完全、音節 vs 単音、線状 vs 非線状の区別による分類 (Faber, 1992);言語単位の表示の方法による分類 (Daniels, 1996);表音の種類と表語の度合いによる分類 (Sproat, 2000), etc.)。一方、書記体系を特定の言語におけるスペリングの種類として捉える後者の場合には、二つあるいはそれ以上の体系が有するスペリングの規則の異同などが問題となってくる。
 書記体系に関する研究はSLAや応用言語学などの領域でも行なわれている。SLAにおいては、学習者がL1と異なる書記体系を習得しなければならない場合がしばしばあるため、このことが習得にどのような影響を与えるか、また、同一あるいは類似の書記体系を用いる場合とはどのような異同があるか、といった研究が行なわれている (e.g., Sassoon, 1995)。特に日本語教育の分野では、漢字や漢字仮名混じり文の習得が学習者にとって大きな課題となるため、教授法や学習法、学習動機や意欲などとの関連で研究が進められている (e.g., カイザー, 1994, 2000; 加納, 2002)。さらに科学技術の領域でも、テキスト音声合成 (text-to-speech synthesis) などの分野で書記体系に関する研究が行なわれている (e.g., Sproat, 2000)。【HO】
〈参考文献〉
・Coulmas, F. (1996). The Blackwell encyclopaedia of writing systems. Oxford: Blackwell Publishers.
・Daniels, P. T. (1996). Grammatology. In P. T. Daniels, & W. Bright (Eds.), World's writing systems (pp.1-17). Oxford University Press.
・Daniels, P. T., & W. Bright (Eds.). (1996). World's writing systems. Oxford University Press.
・Faber, A. (1992). Phonemic segmentation as epiphenomenon. Evidence from the history of alphabetic writing. In P. Downing, S. Lima, & M. Noonan (Eds.), The linguistics of literacy (pp.111-134). Amsterdam: John Benjamins.
・Gelb, I. J. (1963). A study of writing (2nd ed.). University of Chicago Press.
・Haas, W. (1983). Determining the level of a script. In F. Coulmas, & K. Ehlich (Eds.), Writing in focus (pp.15-29). Berlin: Mouton de Gruiyter.
・Sampson, G. (1985). Writing systems. Stanford University Press.
・Sassoon, R. (1995). The acquisition of a second writing system. Oxford: Intellect.
・Sproat, R. (2000). A computational theory of writing systems. Cambridge University Press.
・カイザー シュテファン (1994). 「漢字神話と漢字学習:非漢字系学習者における漢字先入観について」. 『筑波大学留学生センター日本語教育論集』, 9, 61-71.
・カイザー シュテファン (2000). 「非漢字圏日本語学習者のための漢字・語彙教育のシラバスに関する考察:認知心理学実験の知見を踏まえて」. 『筑波大学留学生センター日本語教育論集』, 15, 25-34.
・加納千恵子 (2002). 「上級漢字クラスにおける漢字語彙学習の方法」. 『筑波大学留学生センター日本語教育論集』, 17, 47-59.

zero position
 (see "grammar teaching")

zone of proximal development (ZPD)
 学習が最も生産的に行われる領域のことである。学習者がまだ独立した活動の能力を持っていなく、活動の解決に関係のある、あるいは解決を助けてくれるような足場になる援助を伴うと、望まれる産出ができる知識やスキルの領域である。 Neo-Vygotskianの議論ではscaffoldingという新しい概念が導入され、ZPDにおけるother-regulationタイプの特徴を捕えるものとして発展してきた。
・other-regulation
 子供やスキルのない個人はよりスキルのある人の下での活動やタスクを行うことによって学習する。これは典型的に言語を仲介する。
・self-regulation
 成熟していて、スキルのある個人が自律した活動をする能力がある。【H】


〈入門書〉
Ellis, R. (1997). Second language acquisition. Oxford University Press.
  (授業のハンドアウト
  http://www.modern.tsukuba.ac.jp/~ushiro/Seminar/syllabus01.html )

〈引用が多いものの参考文献〉
・Ellis, R. (1994). The study of second language acquisition. Oxford University Press.
  (授業のハンドアウト
  http://www.modern.tsukuba.ac.jp/~ushiro/Doctor/syllabus01.html )
・Ellis, R. (1997). SLA research and language teaching. Oxford University Press.
  (授業のハンドアウト
  http://www.modern.tsukuba.ac.jp/~ushiro/MA/syllabus01.html )
・Mitchell, R., & Myles, F. (1998). Second language learning theories. U.K.: Arnold.
・岡秀夫(監訳). (1999). 『外国語教育学大辞典』. 東京:大修館書店. (Johnson, K., & Johnson, H. (1998). Encyclopedic dictionary of applied linguistics. Blackwell.訳)
・島岡丘 (監修). 卯城祐司 & 佐久間康之 (訳注). (1998). 『第二言語習得の研究--5つの視点から』. 東京:大修館書店. (Beebe, L. M. (1988). Issues in second language acquisition―Multiple perspectives. Boston, MA: Heinle & Heinle.訳)
・白畑知彦, 冨田祐一, 村野井仁, & 若林茂則. (1999). 『英語教育用語辞典』. 東京:大修館書店.
・Skehan, P. (1998). A cognitive approach to language learning. Oxford University Press.
  (授業のハンドアウト
  http://www.modern.tsukuba.ac.jp/~ushiro/MA/syllabus991.html
  http://www.modern.tsukuba.ac.jp/~ushiro/MA/syllabus992.html )

SLAに関する用語集TOPへ戻る