「ヤマ二つです。」
→プロソディグラフって何?
→」←これって何?
→教材をどう使えば良いの?

 右のイラストは、日本語教師が、韻律指導上の単位である 「ヤマ」 を教えているところです。


→ プロソディグラフとは

 音声に関することを日本語学習者に聞くと、「できるだけ自然な発音やイントネーションで話をしたい」という声がよく聞かれます。 その一方で、日本語教育の現場では、「音声教育は大切だと思うけど、時間もないし、教材もないし、何をどう教えたら良いのか…。」 という悩みがよく聞かれます。

 日本人から「日本語らしい自然な発音だ」と評価されるためには、子音だけでなく、韻律、特に、高さや長さの教育が大切だと 言われています。しかし、通常、書き文字には高さが表されないので、何度もリピートさせるだけでは効果がない場合、高さに 関する情報を視覚的に与えるための、何らかの特別な方法が必要となります。

 そこでわたしたちは、フランス語の語学教材などを参考にして、音声分析機を用いて高さを表すピッチ曲線を抽出し、 それを音節単位で区切ってわかりやすく示した「プロソディグラフ」を用いて音声教育を行うことを考えました。

上から、ピッチ曲線、波形、プロソディーグラフ
図 1

 簡単に説明すると、次のような特徴があります。  学習者からも、「目で見てわかりやすい」という意見が多くあげられています。

* ヤマについて

 プロソディグラフを使った音声教育では、通常「高いか低いか」の2段階で表されることの多い「アクセント」を、 「ヤマ」と「アクセント」という二本立てで教えます。つまりアクセントとは、拍ごとの高低配置そのものではなく, 次拍にむけての下がり目をさします。たとえば、図1の/ドーゾ/は「/ドー/で下がる」、/ヨロシク//オハヨー/は 「下がらない」「平らだ」という具合に教えます。

 これに対するヤマは、それよりもっと大きな「音調のひとかたまり」、詳しく言うと「句頭のピッチ上昇から次の立て直し に至るまで」のことをさします。自然な日本語発音の習得には、小さな単位であるアクセントだけでなく、文のイントネーションを 把握させることが大切だと考えられます。

 ヤマの形がアクセントにより異なっても、同じくヤマ1つと考えます。 たとえば、図2の「京都へ行きます」「明るい部屋」「お母さんのプレゼント」は、どれもヤマ1つです。 また、アクセントの下がり目が何度あっても、句の立て直しがない限り、ヤマは1つと数えます。 たとえば、図2の「お母さんのプレゼント」は、/オカーサンノプレゼント/のように /カー/と/レ/で下がりますが、ヤマは1つです。

どれもヤマ1つです
図 2

 図1の 「おはようございます」 はヤマ1つです。 「どうぞよろしくおねがいします」 はヤマ2つです。教師のイラストの黒板にある、 「カナダのどこですか」 は、ヤマ2つです。このような、様々な例文を効果的に配置して、学習者にヤマを数えさせる練習をさせます。

 従来の音声指導は、語単位でアクセントの高低配置を教え、その後、必要ならば連語アクセント規則の教育を行う、という、「小→大」の呈示順をとっています。しかし、本方式では、まず、ヤマによって文全体の韻律のイメージを把握させ、文末のイントネーションをそこから分離し、さらに細かくアクセントを把握させるという順で教育を行います。つまり、従来とは逆の、「大→小」の過程をたどることで、抽象的なアクセント核の概念を理解するには、ヤマの把握が重要な作業になると考えるわけです。


* 教材の使い方

 発音練習をするときは、まず聞きとりから入ることが大切です。理由は、

・・・などなど、いろいろ挙げられます。 練習1のような2択の聞き取り問題であれば、教室でいっせいにできるし、正解か不正解かも明確です。

 教材の練習1では、まず,練習1の例をもとに、プロソディグラフを見せながら 簡単な説明を加えます。これは、たとえば4月号のその1であれば、「ヤマ」とは 何かについて、学習者の母語で延々と説明するよりも、
「『おはようございます』は、ヤマ1つの文です。『どうぞよろしくおねがいします』は、ヤマ2つの文です。」
という程度の、具体的で簡単な説明ですませたほうが良いでしょう。その後、練習2・練習3の各文をランダムに 聞かせて、ヤマ1つかヤマ2つか、アクセントの下がり目があるかないか、などを判定する簡単な作業をさせます。 このような作業をすることを通して、学習者自身に「基準」を作らせるわけです。 100円ショップで売っている○×札を利用して、いっせいに挙げさせたりすると、盛り上がります。

 練習1の問題数は、教材では10問になっていますが、必要に応じて同じ例文を 何度聞かせても良いと思います。各々の図をクリックすると音声が出ます(要JavaScript。Windowsでしか動作確認していません。 スミマセン)。教室で教材を使うとき、発音に自信がなければ、wavファイルをダウンロードして 活用してください。

 練習2・3では、まずプロソディグラフを見せながら教師が例文を読んで聞かせ、学習者に指でなぞって高低を把握させます。 また、教師が学習者から見て左から右に手を動かし、教材と一致する形で高低を表すのも良いでしょう。 そのあとで学習者にリピートさせ、練習してください。 発音は、最初はゆっくりめで構いません。また、あまり厳しく直しすぎないようにして学習者を追いつめないことも大切です。 なかなか直らない個人的な誤りであれば、クラス外の個人指導で練習するのが良いでしょう。

詳しくは、 などをご覧ください。

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